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CSBA中国対処構想 [Air-Sea Battle Concept]

CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら

CSBA2ndjasbc.jpg18日、シンクタンクCSBAが中国だけをを念頭に置いた米軍の軍事対処構想をレポート「AirSea Battle: A Point of Departure Operational Concept」として発表しました。発表は民主党の元副大統領候補リーバーマン上院議員と共和党の次の大統領候補とされるテューン上院議員(John Thune)の主催で、上院内で行われました
米海空軍は両軍制服トップの覚書に基づき、昨年9月から「Joint air-sea battle concept(JASBC)」を共同で策定中ですが、本レポートがその骨格をなすモノと考えられます。

同レポートはhttp://www.csbaonline.org/4Publications/PubLibrary/R.20100518.Air_Sea_Battle__A_/R.20100518.Air_Sea_Battle__A_.pdf
発表会で使用されたスライドはhttp://www.csbaonline.org/4Publications/PubLibrary/R.20100518.Slides_AirSea_Batt/R.20100518.Slides_AirSea_Batt.pdf

Krepinevich.jpg本レポートを出したCSBAは、理事長のクレピネヴィック(Andrew F. Krepinevich)が「Joint air-sea battle concept(JASBC)」の提唱者であり、2月に「Why AirSea Battle?」との第1弾レポートを発表しています。
また同シンクタンクからは昨年5月に海軍次官としてロバート・ワーク(Robert O.Work)が、空軍には空軍参謀総長特別補佐官としてトーマス・エアハード(Thomas P. Ehrhard)が昨年から派遣され、具体的な政策化を推進している模様です。

MarshallADRW.jpgそしてこれら全ての関係者を過去部下として率いた経験のあるアンドリュー・マーシャル国防省相対比較評価局長(91才:Andrew W. Marshall)が全体に睨みを利かせ、ゲーツ長官を補佐しています。このマーシャル局長は1973年から40年近く同じポストに就いている「スターの後見人」と呼ばれる国防省の怪人です。

第1弾レポートが中国とイランのAnti-accessとArea-denial (A2AD)能力の状況を解説し、第2弾で対処方策を提言すると予告していますが、第2段では中国のみを対象として検討しています。第1弾でイランは中国と比較すると遙かにレベルが低い、とレポートで述べているように、元々明確に中国をその目標に据えたコンセプトだったのでしょう第1弾の概要は・・・
→「Air-Sea Battle Conceptの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1

では第2弾レポート(約140枚)の概要をサマリー斜め読みでご紹介・・・
CSBA 2ndRed.JPG●本コンセプトはあくまでも出発点である。また特定の地域、例えば台湾、を念頭に於いたモノでなく、安定的な好ましい通常戦力の配備を持って地域の好ましいバランスを保つことを目的としている。
●西太平洋作戦地域(WPTO)の米軍の特徴は、少数の防御態勢の弱い基地に戦力が集中していること。
このコンセプトは米国だけのモノではない、日本と豪は、恐らく他にも安定的な軍事バランスを維持するために重要な役割を果たさなければならない。(国名が出てくるのは日本と豪だけ。日本への要求は豪より遙かに多い。後述)
●中国の軍事論文等から判断すると、紛争時、中国は大規模な先制攻撃により短時間で米軍基地や作戦中の部隊、指揮統制ネットワーク、補給ルートに大きな被害を与えることを計画している。

●米軍は行動の自由が確保された環境に慣れきっているため、敵の航空攻撃を想定せず、十分なISR、自由な電波使用を当然として装備体系を準備している。足の短い攻撃力に投資することにより、本当に必要な突破力のある長距離ISR攻撃力、空中給油、前方基地の抗たん化、戦闘補給部隊(CLF)、ミサイル防衛のためにエネルギー指向兵器への投資が犠牲になっている。そしてこのため中国のA2AD能力による攻撃で、前方の物理的及びバーチャルな拠点を失い、地域へのアクセスを失い、戦略的作戦的主導権を失う。
●上記を防ぐため、本コンセプトでは2段階の対応を考えた。
第1段階
・初動の攻撃に耐え、被害を局限 ・中国軍の戦闘ネットワークを盲目にする ・中国軍の遠距離ISRと攻撃力を制圧 ・空海宇宙サイバー空間での主導性を確保し維持する
第2段階
・多様な領域で主導性を確保するねばり強い戦い ・「distant blockade」作戦の実施 ・戦闘補給の継続 ・軍需生産の部門集中(特に精密誘導兵器)

CSBALightning.jpg●本コンセプトのための施策候補
・グアムや関連基地、海上戦力へのミサイル攻撃脅威を減殺する
・中国と米国間の長距離攻撃能力のギャップを埋める。長距離突破ISR精密攻撃能力の獲得
・水中活動能力の拡大 潜水艦とロボット水中システム
・指揮統制、通信、ISRの脆弱性克服 宇宙アセットバックアップのため、高性能空中C3リレー機の導入
・データリンク、データ構造、C2、ISRの標準化と相互運用性確保
・軍種間で共有する電子戦能力
・サイバー防御と攻撃能力
・DEW (Directed energy weapon)の開発と配備

●空海軍相互支援運用の中核(確固な空海軍作戦の融合)
・空軍は中国の海面監視システムを無効化し、米海軍アセットの行動の自由を確保(海軍も要求に応じ支援)
・海軍イージス艦は、米空軍や日本の基地のミサイル防衛を補完
・海軍の潜水艦や空母搭載(実現したら)IRSや攻撃力で、米空軍の脅威となる中国の統合防空システムを攻撃
・空軍の長距離突破攻撃で、中国の海上監視地上施設や弾道ミサイル発射機を攻撃し、海軍を支援
・米空母搭載機は、中国のISR機や戦闘機を押しやり、空軍の空中給油機や支援機運用をサポート
・空軍爆撃機による機雷散布でASW支援。非ステルス爆撃機で海軍の「distant blockade」作戦を支援

●日本に出来る支援(日本への要求?)
選択された基地の強化、滑走路補修資材の増加、主要司令部や運用拠点の地下化や山岳部へ移転(山に埋める?)
対空対ミサイル防御システムとその運用の米軍との完全統合 対空対ミサイル防衛力の増強
米軍戦闘機の攻撃への振り向けのため、日本の4世代戦闘機の増加と5世代機の調達
水中作戦能力拡大と対潜水艦作戦能力強化 潜水艦と無人潜水艦を含む
琉球列島の特長を生かし、米海軍と協力で対潜水艦バリア構築

●米国が日本を支援すべき事
DEW (Directed energy weapon)の有効性効率性が確認できたら、日本にオファー
日本に5世代戦闘機購入をオファー
(以上が超斜め読み概要 日本への要求部分は本文から)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コンセプトの細部(特に2段階の細部)まで読めていないので表面的なコメントしかできません。あしからず・・・

●Holylandの見方・感想
しかししかし・・中国のA2AD能力が強力で、米軍には足の短い戦闘機が役に立たないと言いながら、日本には戦闘機を増やせと・・この部分には正直がっかりしました。米国の軍需産業を支えろとの意味でしょうか・・
JASBCを出してきた米国内事情も様々有りましょうが、根本的には純軍事的な情勢の理解、つまり米軍が圧倒的に優勢な通常戦力同士の正面対決を中国は挑んでこない、戦闘機対戦闘機、空母対空母のガチンコだけで挑んでくる事はない、との至極当然な見方が基盤にあります。

gatessnt.jpg・中国の各種ミサイル、潜水艦、艦艇航空機、サイバー、対衛星兵器・・・これらの脅威を素直に受け止め、足の短い戦闘機や脆弱さを増す空母中心の運用を考え直そうとの健全な主張です
・米軍が依存するネットワークアセット(衛星やサイバー世界)の脆弱性克服に知恵絞ろうとの素直な取り組みです。
・経費ばかりが肥大化し、少数しか配備できない最近の装備品開発への自己批判であり、厳しい予算の中、軍種間の縄張り争いに終止符を打ち、効率的に戦力を整備しようとの決意表明でもあります

okadagates2.jpgしかし、米国にとっては純軍事的に正当なモノでも、日本にとっては厳しいコンセプトです
恐らく米国は新ガイドラインの線に沿って、「日本は自国の防衛に当たり、米国は主体的にそれを支援すると規定されている」、「米国はこのJASBコンセプトで支援するから、後は日本自身で頑張ってくれ!」、「これまでGDP1%以下の防衛費でやってこれたのは米国のお陰だが、米国は苦しい中でもコミットメント確保のため努力する。後は日本が義務を果たして努力すべきだ」と主張するのでしょう

●昨年5月ゲーツ国防長官は日本に対して言いました・・・
gateshol.jpg「日本と韓国は、自ら防衛任務を担えるよう取り組んでいる。その結果として、米国と両国はパトロンではなく、パートナーとしてより適当であるように調整を続けてきた。しかし、依然として、パートナーとして完全に準備し、全ての、くり返すが、同盟国としての全ての義務を果たすことができるパートナーでなければならない。」


●今年3月にシーファー国防次官補代理が米議会で・・
schiffer_michael.jpg「今後数ヶ月から数年の間に、より多くが日本と日米同盟に対して要求されるだろう。私は日本がステップアップし、より多くを行う道を見つけるだろうと確信している。そして日本は、米国がそれを依頼するからではなく、むしろそれが日本の利害に関わり、負うべき責任を持ち、変化する能力を持ち合わせているがためにそのような方向に進むであろう」


既にシグナルは出ていたのです。
JASBCslide2.JPG欧州には親身でも、アジアには「血の通わない」対応をした米国の歴史も忘れてはなりません。しかし現在の米国は、少なくとも政府は同盟国との関係無しでは国益を維持できないと認識しています。トヨタ問題にあらわれた米国民感情には注意が必要でも、不安定な極東の方程式に日本という定数が入ってることを米国は望んでいると思います。 普天間問題はさておき、お手上げにならず、自暴自客にならず、日本国内のドグマの中で軍事音痴・安全保障知らずにならないように考えましょう。

Air-Sea Battle関連記事(CSBAレポート解説)
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2

「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

「Air-Sea Battleの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「Air-Sea Battleの起源」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1

「嘉手納から有事早々撤退?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「2QDRから日本は何を読みとる?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「QDRから日本は何を読みとるべき」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07

「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04

「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「ゲーツ長官が国防省にも宣戦布告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
「海軍海兵隊とも全面対決へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「アイゼンハワー・ライブラリ演説」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-11
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