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Air-Sea Battle遂行宣言:米海空軍トップの連名論文 [Air-Sea Battle Concept]

ASBConcept.jpg「Air-Sea Battle Concept」は、中国への配慮か、または予算的縛りが原因なのか、2010年QDRで作成着手を明らかにした以降、国防長官が正式にConcept作成完了を表明しないまま今日に至っています。

また、昨年12月に議会が国防省に要求した「Air-Sea Battle」報告書の公開バージョンが、どの程度細部を明らかにするか予想が付きません。

そんなモヤモヤ感のある本年2月、米海軍と空軍のトップ(グリーナート海軍作戦部長とシュワルツ空軍参謀総長)が連名で「Air-Sea Battle」と題する論文を発表しています。
同論文発表後、同論文は軍幹部がASBを説明する際の基準となっており、各種講演(例:5月16日のブルッキングスでのセミナー:両名が揃って登壇)や軍webサイトでも論文の中身に沿ったASBの説明が行われています。

同論文は英語で約4800語27000文字からなる本格的なもので、これ以上の内容の説明が「Air-Sea Battle」に関して公になることは当分無いのでは・・と考えています。抄訳全体は分量が多いので下記の別サイトに掲載しますが、本日は抄訳から抜粋して「さわり」をご紹介します。

抄訳全体は別サイトに
「米軍兵士に語るAir-Sea Battle」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

論文は一般雑誌「American Interest」に掲載されたものであり、CSBAのレポートのように中国を対象に絞るような記述はありません。また、一般公開用のため作戦運用に関する具体的な言及は限定的ですが、海空軍組織内の抵抗勢力に対する強い警告を発している点で、大いに歴史的価値のある論文だと思います。

発表からかなり時間が経っていますが、同論文が余り日本で話題にならず、一方で防衛大臣が「米国防省はAir-Sea Battleを正式に採用していない」との趣旨の逃げ国会答弁をする事態になっていますので、警告の意味も込め、「脅威の変化」と「意識改革の必要性」を訴える海空軍トップ連名による渾身の論文をご紹介します。


論文「Air-Sea Battle:Promoting Stability in an Era of Uncertainty」の概要

問題認識
ASBM DF-21D.jpg●我々は冷戦後の約20年間、湾岸戦争のような戦力緊急展開による対処で、ボスニア、ユーゴ、アフガン、イラク、リビア等での作戦で成功を収めた。過去約20年間、我々は本モデルで巧みに実行してきたのだ。
●しかし米国の影響力に挑戦しようとする指導者達はこの状況を観察し、旧ソ連の教義に基づき米軍の介入を阻止することが不可能だと悟った。そして我々の弱点を見いだしたと信じ、A2AD戦略を利用し、我々が公海、国際空域、宇宙を合法的に使用するのを妨げようとしている。

●これら軍事的脅威の変化は、冷戦終了後に訪れた変化と何ら変わらない大きな変化である米国への信頼が揺らげば、同盟国等が脅威国との繋がりを求めたり、大量破壊兵器を含む装備の取得を含む行動に出て、地域の安全保障環境に競争対立を持ち込む懸念が生じるAir-Sea Battleはこれらの懸念に答えるモノである

新国防戦略(DSG)とAir-Sea Battle
本年1月5日発表された新国防戦略(DSG:Defense Strategic Guidance)に沿い、部隊を整斉と編成組織して訓練し、装備を整えて地域戦闘コマンドに供しなければならない
Air-Sea Battleは、勃興しつつある脅威、つまり弾道・巡航ミサイル、先進潜水艦、戦闘機、電子戦、機雷等の挑戦に打ち勝つための概念や必要な能力・投資を示してくれるコンセプトである。またAir-Sea Battleは、統合戦力の有効性や信頼性を高めるモノである。更にAir-Sea Battleは、海空軍間の高度な融合(Integration)や緊密な協調作戦を必要とするコンセプトである。

RIMPAC2010-2.jpg●このレベルの高度な融合には、緊密な相互依存を制度化するだけでなく、派遣に備えた軍の管理や準備プロセスの融合も視野に入れる事が必要である。
●更に、効率的な組織、作戦、調達面での戦略も必要となる。世界の海や空、サイバー空間での活動の融合に際しては、他省庁とのより緊密な連携もAir-Sea Battleでは求められる

過去の拒否戦略対処と海空融合作戦
A2ADを巡る戦史として、サラミスの海戦、真珠湾攻撃、ノルマンディー上陸作戦前の状況
海空融合作戦として、日本空襲時の陸海共同、連合軍艦隊援護に陸軍航空、ベルリン封鎖や第4次中東戦争時のイスラエルに空輸で対処

●このようにA2ADを駆使した敵は過去にも存在したが、今日ではより巧妙に国家及び非国家対象が米国の戦力投射妨害に取り組んでいる。長距離精密攻撃力、宇宙やサイバー攻撃力を備えた新興国等が包括的手法をとりつつある。典型的な脅威に、中国の対艦弾道ミサイルDF-21Dや長距離巡航ミサイルDH-10のような長距離精密誘導兵器の開発と蓄積がある。

過去の海軍と空軍の融合努力は、一時的でその場限りの傾向があり、一度脅威が去ると時間を掛けて形成された協力関係も瞬く間に消え去った。しかし現在の我々が直面する複雑な脅威は、より永続的で深く制度に根付いた手法を求めている

米国の対応
GreenertCNO.jpg●Air-Sea Battleは特定の敵対者を対象としたモノではない。また、ASBは我が軍種が組織し、訓練し、装備調達する努力方向を示すモノであり、ASBに沿って立案される作戦計画はペンタゴンではなく、各戦域戦闘コマンド司令官によって作成される
●我々は厳しい予算の中で拒否戦略脅威を撃破するため、従来のように大量のより先進で高価で融通性の少ない艦艇や航空機に期待することは出来ない

●Air-Sea Battleが次世代の海空軍兵士を形成し、例えばISR、EW、指揮統制、更に同盟国等との国際協力関係に構築発展に、かつて無いシナジー効果を発揮することを望む

●Air-Sea Battleが追求する緊密に融合されたドメイン交差作戦の考え方は、「Networked, Integrated Attack-in-Depth 3D(NIA-3D)」と表現できる。この考え方でA2AD脅威を撃破し、将来の投資やドクトリン開発やイノベーションを誘導する
3Dとは、敵のA2AD能力を寸断攪乱・破壊・撃破(3D:disrupt, destroy and defeat)する事を意味する
●Air-Sea Battleに関する海空融合の例(記述省略:一例として海軍艦艇が発射したトマホークの飛翔プログラムを、飛行中のF-22から変更する実験に昨年成功)

SchwartzAF.jpg●Air-Sea Battleを通じ、共通性や相互運用性、更に統合効率性を追求する。単一軍種だけで能力不足部分を埋めるのではなく、統合で不足や過剰部分を探し、必要な重複は確保しつつ、競争の利点も活用して敵に対抗する能力を高める。従って、自らの軍種の利益のためにAir-Sea Battleの旗を掲げて軍種計画を推し進めるようなことは戒めよ

Air-Sea Battle無くともA2AD対処は進むであろう。しかしそれは海空がバラバラに行う対処で、一体感無く極めて非効率であり、伝統的な手法であるがもはや機能しないであろう
我々は官僚的な鎖を断ち切り、偏狭な組織防衛を脇に置き、新たな時代のために協力的な能力開発に取り組まねばならない
Air-Sea Battleは懐疑的な見方や根強い官僚主義との戦いを生き延び、米軍の優位性や我が国の反映と安全を守る重要な努力指針となる

抄訳全体は別サイトに
「米軍兵士に語るAir-Sea Battle」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
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Waterdrop.jpg「Air-Sea Battle」を採用するか、しないとかの議論は余り意味がないと思います
なぜなら、特殊な作戦をやるわけではなく、両軍トップ論文も指摘しているように「Air-Sea Battle無くともA2AD対処は進むであろう」し、かつ脅威の変化を軍事的合理性を持って見つめれば、自然とその対処は「Air-Sea Battle」の方向に進むと考えられるからです。

しかし、そうであるならば、なぜ「Air-Sea Battle」を強調するのか? それはやはり予算の縛りが厳しく、無駄や軍種間の重複が多い従来の手法では対応できないからだと思われます。そして予算や海空軍の縄張りを巡る争いが激化している現実があるのかも知れません。

「Air-Sea Battle」での海空融合作戦の具体例が示すように、そんなに驚くような新戦術があるわけではありません。これまで以上に重複を廃し、有効に戦力を組み合わせるイメージです。
しかしそこに繋がる予算や新規装備調達の精査には、多くの軍需産業や利害関係者が絡み、軍人も巻き込んだどろどろが潜んでいるわけです。

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2
「対イランのAir-Sea Battle」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-26

「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

「AS-Battleを議会に報告せよ!」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07
「AS-Battle検討室はよい話?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10-1
「Air-Sea Battleに波風の年」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04

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