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小論「エアシーバトルの実行」に思う [Air-Sea Battle Concept]

謹賀新年 本年もよろしくお願いいたします!

FitzgeraldADM.jpg米国防大学が発行する機関紙JFQ(Joint Force Quarterly)の11月号に、退役海軍大将による「エアシーバトルの実行:Delivering Air Sea Battle」との小論が掲載されました。

退役海軍人(ADM. Mark P. Fitzgerald)の論文ながら、国防大学の出版物だからでしょうか、中国に絞ったエアシーバトル論ではなく、一般的なA2AD対処を取り上げて必要な分野への予算投入や施策推進を訴えています。

全般にはCSBAの提示したA2AD環境での紛争様相を基礎とし、本年2月に米海軍と空軍トップがエアシーバトル共著論文で表明した「networked, integrated, attack-in-depth」の方向性推進を主張する中身で、上記方向でエアシーバトルをより具体化して煮詰めていかないと議会の支持を得られない、との締めになっています。

「CSBAの対中衝突シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「CSBA同後半シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「海空軍トップのAS-Battle論文」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

JFQ67.jpg今回この小論を取り上げるのは、米国防大学発行の機関紙で、国防省の準公式見解として中国の脅威をどのように描写しているかを紹介するためです。

小論ではエアシーバトルに関する将来の課題を3つの視点から指摘していますので、その流れに沿って準公式見解「中国軍事力の脅威」を紹介したいと思います。
防衛計画の大綱を見直すということなので、米国と日本が直面する脅威は同じだが、受ける被害は異なる点を肝に銘じていただくためにも・・

第1:ミサイル脅威への対処
●敵領土の奥深くに隠された弾道ミサイルや巡航ミサイルの大量同時発射は、米軍のこれまでの優位性を否定する可能性を持っている。これらミサイルは、戦いの初期段階において我々の飛行場、防空ミサイル基地、海軍機動部隊を迅速に攻撃する能力があり、我々の作戦を数時間「麻痺」させる。

ASBM DF-21D.jpg●この「麻痺」に続く敵航空機や巡航ミサイルによる攻撃で、我が戦力を基地や空母から前線に投入前に「全滅」させることが可能になる
●敵は政治的又は地理的要因を利用し、米軍が近傍基地から航空戦力中心の戦力投射することを防ぐため、ハイ・ローミックスの手段を用いるだろう

●このような脅威に対処するには、強靭なISR攻撃力(ISR-S)が必要である。具体的には、米空軍の長距離攻撃爆撃機(LRS-B)や空母艦載の無人攻撃偵察機(UCLASS)である。これらは敵の勢力範囲外から敵を危機に置く事が出来る
●敵の基地だけでなく、地上の航空機やミサイル支援施設を迅速な目標特定によって破壊しなければならない。ISRと迅速な情報共有が欠かせない

第2:強固に敵対的な電磁環境対処
●エアシーバトルでは、(敵の攻撃に対して脆弱な)衛星通信やGPSへの依存度を低下させることが求められる。
通信ネットワークは、自立形成可能な設計思想で構築されるべきである。ミサイル防衛はネットワークが行き残らなければ機能しない。敵領域で運用するアセットは、生き残りのため、電磁スペクトラムから隠れたり防御したりする手法を見出さなければならない
兵器システムの発展に比べ、通信手段は恐ろしいまでに不適切なままである。今すぐシステム設計をまとめ、計画を開始せよ

第3:防御強固な戦闘域に対処する長距離攻撃
現在、航空作戦センター(AOC)や海洋作戦センター(MOC)で目標選定と兵器の割り当てが実施されているが、同作戦センターは将来の戦闘地域で作戦を遂行する十分な通信手段や周波数帯がなく、迅速に作戦に対応できない
●また同作戦センターは敵精密誘導兵器による攻撃の危険が大きいため、生存可能な場所やプラットフォームからの任務遂行を考慮する必要がある

AOC.jpg●将来AOCやMOCは、リンクを強化して前線の戦闘指揮官に統制権限を委譲可能でなければならない。前線でのローカルなネットワークが重要となる
ローカルネットワーク内のISR情報分析では、電波、光学、赤外、その他のデータを迅速に融合し、ネットワーク内のシステムに配信し、戦術サイバー攻撃や通常攻撃に活用し、時間的余裕の無い目標攻撃を可能にしなければならない
●敵地奥深くでは、上記ローカルネットでの情報分配が無人システム間で自動的に行われるべきである。

●将来の戦場では、戦闘資源を戦線に投入し、戦闘管理を前線に委ね、現場を信頼して事態に対処させることになる。
●前線への権限委譲は、過去20年間行ってきた「弱い敵」対処の中央管理方式に比べて非効率だが、長距離のリアルタイム通信依存が削減でき、より敵攻撃に対し強固である。

最後に・・・
CSBA LRS3-2.jpg●上記で指摘した不足部分を早急に手当てしなければならない。最も重要なのはネットワーク設計であり、国防省は早急に措置しなければならない。また無人システムはエアシーバトルの鍵である「networked, integrated, attack-in-depth」に必要不可欠である。
●一連のシステム(A Family of Systems)の中で、個々のアセットの役割を明確にし、要求を定義しなければならない。現状は、あまりにも多くの見解が乱れ飛ぶ状況になっている。
●エアシーバトルは依然不完全であり、適切に構築され議会の理解と支持を獲得しなければならない
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読者の皆さんに想像していただきたいのは、上記のような戦いを米側が対中国で行った場合、日本はどうなるか・・・です。
第一列島線より東側から無人爆撃機を発進させ、第一列島線より西側全体が「denied battlespace」や「Contested Battlespace」となって前線に権限を依存する戦いが繰り広げられるイメージです。

chinaFlag.jpg例えば、AOCやMOCといった指揮所は、普通に考えれば危険な日本国内に置く事は難しいでしょう在日米軍戦力は危機が迫った段階でどのような行動をとるでしょうか?
在日米軍基地や自衛隊の数少ない基地は、作戦の基盤としてカウントできるでしょうか? 
戦闘機による空中戦は、どの場面で、どのような重みを持って実施される必要があるのでしょうか?
金科玉条のごとき陸海空自衛隊の予算配分は何のため? 「専守防衛」は何のため? 

より戦略的に見れば、このような戦いの最後はどのような「収め」になるのか? この戦いで軍事力はどのような役割を果たすことを期待されるのか?
戦いを抑止するためにはどのような軍事力が最も効果的か?

China12Liang.jpg米国防省や米軍は厳しい財政状況に直面しており、組織削減の危機に直面しています。そんな中、中国の脅威は理解できても急激に戦略や戦術が変更できるでしょうか?
特に前線の太平洋軍は「とりあえず同盟国との訓練や関係を強化しろ」との指示を受け従来どおりの訓練や目先の事態対処用の議論に熱心になっているかもしれませんが、先を見通したアドバイスを日本にくれるとは限りません。ワシントンDCの国防省だって似たり寄ったりです

「防衛計画の大綱見直し」議論は、この辺りをよく頭にいれ、日本の防衛をよく自身で考えた上で行うべきです。特に米国との防衛協力を再構築するに当たっては・・。
五月雨式に提示される米国からの要求に対応するだけでは、決して目的地には到達しません。日本の主張をぶつける中で妥協点を見出さなければ・・

著者Mark Fitzgerald退役大将の現役時代
「商船も武装すべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17

関連のエアシーバトル過去記事
「CSBAの対中衝突シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「同後半シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「海空軍トップのAS-Battle論文」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

「脅威の変化を語らせて」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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