So-net無料ブログ作成
検索選択

エアシーバトル批判に5つの視点(Five Myths)で:オフショア・コントロール論に反論 [Air-Sea Battle Concept]

RIMPAC2010.jpg15日付「War on the rock」サイトに、Bryan McGrath氏が「Five Myths about AirSea Battle」との小論を寄稿し、エアシーバトル(ASB)を取り巻く誤解や誤情報を嘆いて真の姿を訴えると共に、エアシーバトルを過激だと批判するT.X. Hammes氏の「オフショア・コントロール論:OC論」のいい加減さを批判しています

手前味噌ながらCSBAのASBレポートを発表翌日には日本で最初に紹介(2010年5月19日)し、その後もオフショア・バランシング論やオフショア・コントロール論がもてはやされる中でも、「チマチマ」とASB関連の米国防省や米軍の動きをフォローしてきたまんぐーすとしては、McGrath氏の主張に大いに共感する部分も多く、概要をご紹介する次第です

CSBAレポート一番乗り紹介記事
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18

McGrath氏が如何なる人物かは不明(軍事コンサルタント企業FerryBridge Group LLCの経営者)ですが、Hammes氏を「血税で食わせてもらっている輩」と表現する辺り公務員ではなさそうですが、ASBやA2ADウォッチャーとして国防省のASB検討室にも通じ、同検討室の仕事ぶりをよく把握しています。

Andersen AFB2.jpg彼の問題意識は、ASBが正しく認識されておらず、誤解や誤情報や意図的な中傷に基づいて勝手に議論され、その結果として同盟国等や議会の軍理解者にも懸念を生み、陸軍や海兵隊からは反抗的な態度を示されるに至っている現状にあります。

そこでMcGrath氏は、ASBに関する「5つの疑問:Five Myths」に答える形で、相反する立場の人たちの「reconcile」を図ろうとしています

ただ同氏は明確に表現していませんが、このASBを巡る混乱の背景を単なる誤解ではなく、組織防衛や売名行為や諸外国勢力による反ASBプロパガンダにあると直感しており、決して正直にASBを説いているわけではなく、皮肉たっぷりに現状を描写し、難解な表現でFive Mythsに対応しています。

まんぐーすの英語力では正確な内容把握が困難な部分も多いのですが、雰囲気を「5つの疑問:Five Myths」へのMcGrath氏コメントを通じて感じて頂ければ・・と思います

Myth Number 1:ASBは海空軍の予算獲得策?
B-2Whiteman.jpg●過去10年以上の陸上での対テロ戦は、陸軍や海兵隊を中心にし、2軍種は大幅に拡大した。この戦いが収束に向かう中で、2軍種の縮小は当然である。一方で、陸軍と海兵隊の縮小は海空軍の自動的拡大を意味しないが、急速に拡大する中国やイラン軍事力の状況を見れば、海空軍力の再確認は極めて自然である

国防省のASB検討室は、決して海空のためにだけ働いているのではない。A2ADに対処するため、統合で如何に効率よく、重複を無くして作戦するかを必死で考え、日々の訓練やドクトリンに如何に組み込むかに取り組んでいる。各軍種の細部計画にまで入り込み、統合戦力発揮のための調整を行っている
●阻害されたように感じている地上部隊関係者はよく考えるべきだ。中国軍相手には、まず海空軍が道を開かねば地上部隊は運べないのだ。地上部隊関係者からの「中国との戦いは決して起こらないから、金の無駄」との意見には気分が悪くなる

Myth Number 2:ASBは中国との戦いを誘発する?
EnterpriseUSS.jpg●「(中国の主張そのままに)中国が経済力を付ければ、軍事力を近代化するのは自然。だからASBで過激に反応するのは地域を不安定化させる。中国との協力の道を探るべき」との主張がある
●端的に反論すれば、中国はASBが構想される以前から軍事力拡大を進めているのだ。ASBを止めたら、中国との戦いの可能性が低下するのか? 我々が退却することで、中国の安全に良いと考えるなら別だが。中国は西太平洋で共存することに興味はない。主張有るのみである

ASBを止め、地域同盟国の米国への信頼が揺らぐことは、中国の野望を強くするのではないか? 不安定化した同地域は中国をして軍事行動を誘発するのではないか? さもなければ地域の「フィンランド化」を容認するのか。我の撤退や縮小は、誤認識を招き、国益の主張や防御手段の確保は誤認識を防ぐ

Myth Number 3:ASBは戦略か?
●先週ある討論会で、高名な研究者が「ASB」と「封じ込め」を対比して議論していた。私は椅子から転げ落ちるかと思うほど驚いた。ASBは単に、軍事力を活用してA2AD下で行動の自由を確保するコンセプトで、限定的な軍事力使用の概念なのに、「封じ込め」といったスケールも目的も手段も異なる大きな概念と対比できるものではない
●教養のある高名な人物でさえ、巷にあふれる誤情報に踊らされている。その責任の一端は、ASB関連情報を適当に関連性無く流布させている国防省にもあるが・・・。

Myth Number 4:OC論は完全? 戦略不在批判に
Hammes-NDU.jpgOC論のHammes氏は、戦略を伴わないASBは時間と金とエネルギーの無駄だと言う。同氏は効果的な経済封鎖とエスカレーション管理で、中国との紛争を終結できるとの戦略を中心においている
●この考え方は大いに重要で、私も最上位で参考にしたい。しかし、彼はASBを(過激だとか核戦争を誘発するとか言って)厳しく批判するが、彼のOC論にはそれを支える軍事戦略がない。軍事戦略がないのに、海上封鎖アセットへの給油や弾薬補給を当然のこととしている。恐らく中国に知られたくないから、その戦術を隠しているのだと思うが

●Hammes氏は18ヶ月前にOC戦略を公表し、誰かがASBを上回るような軍事戦略を構想するのを待った。しかし誰も出来ていない。戦略無き作戦コンセプトは意味がないと同氏は言うが、敵のA2ADに対処する作戦コンセプトは、どのような戦略にも容易にフィットするものだ
●Hammes氏のアプローチは、A2AD対処能力構築を最低限に押さえ込むための戦略に見えるが、中国の反応を考察する際に理解不能な前提を置いている

NK-Bomb.jpg●彼は中国による核反撃を警戒しているが、ASBが中国本土の奥深くを必ず攻撃すると誤解しているのではないか? そのようなオプションを外すことで、核戦争への危機を低下させることが出来ると考えないのだろうか? 
●一方、経済封鎖により中国共産党の依って立つ経済成長神話が崩れ、彼が警戒する中国大陸攻撃と同様の反応を引き起こすとは全く考えないのだろうか? 

●更に言えば、私が最も懸念するのは、中国に対するのに私ならA2AD対処作戦と経済封鎖の両手段を組み合わせるが、彼のOC論アプローチによれば経済封鎖しかない点である。
●第一列島線は東シナ海~南シナ海までの膨大なエリアを取り囲んでおり、中国の増強を続けるA2AD能力に対処するのに「ASB無し」で可能とは考えられない。(まんぐーす注:列島線を構成する日本の立場からすれば、ASB無しでは日本はサンドバック状態の防波堤になる恐れ有り)

Myth Number Five:財政的にASBは不可能か?
●不可能ではないし、十分可能である。出来るかではなく、それを選択するかどうかである。ASBのロードマップによれば、毎年2兆5千億円が追加で必要になるが、不可能ではない
●2兆5千億円とは、2014年国防予算案53兆円の5%以下(4.6%)であり、国家予算の1.9%であり、GDPの0.16%にすぎないのだ
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

cyberStuxnet.jpg読者のコメント欄には、最後の経費分析に関し異論続出ですが、見積もりの前提が無い状態では議論が困難です。ただし筆者はASB検討室に詳しいらしく、「毎年2兆5千億円でASBを」は何らかの根拠のある数字なのでしょう。

ASBとOC論との関係に関し、岡崎研究所が「経済制裁や封鎖を柱に、ASBを補助的手段に」との論を展開していましたが、財政面で準備段階から効率的に組み合わせられれば、被害を受けやすい日本としては良いアプローチだなと考えていたところです。
しかし大きな戦略論としてはあり得ても、その細部を考えるといろいろ難しいと言うことでしょう。

岡崎研究所の「経済制裁や封鎖を柱に、ASBを補助的手段に」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-09

Hammes氏は財政支出を抑える効能を全面に出して強調し、ここぞとばかりに持論の「OC論」を売り込み、McGrath氏は「実効性や細部の曖昧さに問題のある」OC論が、強制削減ムードの中で勢いを得るいい加減さに我慢できず、感情的に手厳しく・・・といった様相でしょうか。

組織防衛や研究業績宣伝が幅をきかせる様相は「だから面白い」側面もあるのですが、脅威の正面に立つ日本国民としては、程々にしてほしいところです
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

F-35A NgtFt.jpgエアシーバトルがどのような形になろうとも、また仮にコンセプトとの位置づけが消滅しても、中国軍事力の近代化方向を踏まえれば、米海軍と空軍の対中国戦略が「遠方から」を基本とし、無人機や長距離ミサイルを組み合わせた方向にあることは間違いありません
また、「作戦面で打たれ強く、地理的に分散し、政治的に持続可能」との米軍体制の方向性は変えようもありません。

エアシーバトルが米軍内で合意できなければ、国防省や議会や政府の理解を得られなければ、上記の方向が各軍種バラバラに非効率な形で進められ、予算削減の中、中途半端にまだら模様で構築されるだけだけです。西太平洋地域の米同盟国にとっては大きなマイナス要素です。

いずれにしても、日本は日本として自身が真剣に枠組みにとらわれない議論を基に、新たな道を切り開いていく必要があるのですが・・・。

でも・・・防衛省は希望的観測?を捨てず!
米国は「米国の一部シンクタンク(注:恐らくCSBA)が主張する、遠方攻撃能力の強化と前方展開兵力の削減よりも、空母や地上発着の戦術航空機を中心とし、A2AD下で作戦上の抗たん性を高める多様なな措置を講じていく方向」(防研の研究者)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-24

米海軍大学のヨシハラ教授等は日本への提案として、不正規な戦術には不正規な戦術で対応との考え方を提示しています。中国は大国ですから、小さな島国である日本が弱者としての立場を理解し、正規・不正規な手段を巧みに組み合わせる方向性を追求すべきとまんぐーすは考えますが・・

「ヨシハラ教授の来日講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29

ご参考:オフショア・コントロールの概要
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-13

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
メッセージを送る