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「第3の相殺戦略」は万能薬ではなく思考の枠組み [米国防省高官]

Prabhakar3.jpg8日、米国防省の技術開発をリードするDARPA(国防高等研究計画庁)のArati Prabhakar長官がCSISで講演し、「第3の相殺戦略」を万能薬のように考えるのは誤りであり、またそれ以前の相殺戦略のように長期に渡る技術優位を確保できると考えるのも間違いだと語りました

更にDARPA自身も、GPSやインターネットを開発した当時のような研究所でなく、ベンチャー企業の技術を育てるようなインキュベーターの様に、新たな技術を見いだして進化させるような複合システム組織に変革し、国防省を支援するようになるべきと語りました

以前よりも情報の拡散が急速で、軍事が先端技術を独占した時代ではもはやなく、世界中の民間企業や研究機関やベンチャー起業家が技術革新を担うように時代が変化してきたことが背景にありますが、最先端の軍事技術研究を行う機関トップの発言だけに重みが違います

百戦錬磨のPrabhakar長官がCSIS講演で
Prabhakar4.jpg米国防省は「第3の相殺戦略」を万能薬や決定打(silver bullet)の様に考えるべきではなく、深い思考の枠組みを表現する言葉と理解すべきである
技術発展の世界で起こっている大きな変化は、特定の一つの技術で起こっているのではなく、我々が研究開発活動を行っている「技術エコシステム」の変革という形で起こっているのだ

●現在の国防省は未だに、数十年も全ての先端技術を独占できた時代へのノスタルジアに取り付かれている。そんな昔のことは忘れなければならない。今は時代が違うのだ
●今では、技術開発は世界中の産業界が推進しており、それは米国だけで行われているのではない。そして開発の速度は加速しており、国防省が設立された時代とは異なるペースで進んでいるのだ

●精密誘導兵器やステルス機に代表される「第2の相殺戦略」時代には、我々は相当な期間で軍事技術の独占支配が可能だった。
Prabhakar5.jpgしかし「第3の相殺戦略」では、技術は急速に進化発展して拡散するので、かつてのように20~40年間も技術優位を確保は出来ない。この厳然たる情勢認識を持ちつつ、第3の相殺戦略に取り組むべきだ

急速な全ての技術進歩は、米軍の最新装備に敵対的な意味を持つことさえある。例えば、まだ完全な運用態勢を確立していないF-35だが、急速な技術進歩で時代遅れになった電子部品を交換する必要に迫られ、500億円もの投資を迫られる事態が発生している

●このような時代には、DARPA自身も変化を迫られており、GPSやインターネットを開発した当時のような研究所でなく、ベンチャー企業の技術を育てるインキュベーターの様に、新たな技術を見いだして進化させるような複合システム組織に変革し、国防省を支援するようになるべきだ
●我々の生きる時代では、このようにして時代に先んじることが唯一の生き残る道だ
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Arati Prabhakar長官(57才)は、2012年からDARPA長官を務めているベテランで、まだ30才台だった1993年に当時のクリントン大統領から約3000名で構成された「National Institute of Standards and Technology」所長に任命され、企業等を束ねて技術開発に取り組んだ実績もある有能な人材です

Prabhakar6.jpg最初にDARPAに所属した1986年には、半導体技術関連の研究ーリーダーとなり、「Microelectronics室」に発展させた実績を挙げています。
DARPA長官になる以前は、ベンチャー企業の幹部やベンチャーキャピタル幹部も歴任しており、官民両サイドから技術開発の現場を見てきた人材で、その言葉には重さがあります

下記のCSISイベントでも、統合参謀副議長が相殺戦略に関する過剰期待を戒める発言をしていましたが、そこに活路を求めたい人が多いことの裏返しでしょう

先日、関西大学が古式騒然とした「軍事研究には関わらない宣言」を行い、防衛省が募集した官学共同研究資金への応募を禁じる事を決定しましたが、なんか情勢認識が半世紀ずれているような気がしてなりません。

CSISが相殺戦略特集イベント
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1

DARPA関連の記事
「自身が創造したサイバー空間に苦しむ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20
「超超音速兵器に進化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-11
「新型の宇宙監視望遠鏡」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19

「科学技術革新会議の中間報告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-11
「電子戦への人工知能応用」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-31
「対潜水艦の無人艦艇」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11

Prabhakar長官関連
「対中国に対艦ミサイル重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18
「2014年度の研究開発重点は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-18

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