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米海軍トップが文書「将来の海軍」を発表 [Joint・統合参謀本部]

Future Navy.jpg17日、米海軍トップのJohn Richardson大将(CNO)が「The Future Navy」との9ページの文書を発表し、2020年代半ばに向けた米海軍の「ビジョン」を明らかにしました。
情勢認識や今後の海軍アセット作戦運用を前半で説明し、米海軍の国際情勢認識や運用の基本的考え方にも触れており、頭の整理に役立ちます。

中心となる内容は艦艇体制や増強の話で、海軍航空戦力の話は正面に出てきません。355隻体制への増強(現有装備の延命も含む)、艦艇建造能力の維持強化、艦艇設計コンセプトの変革などに言及しており、本ペーパーのビジョンを皆で共有することで前に進もうとの主旨です

ビジョンと言う事は「ビジョン」で、艦艇数を現在目標311隻から355隻にするとの数値目標以外は、何となく具体性に欠けるモノで、それほど新しい画期的な方向性が打ち出されたわけではありませんが、今後様々な形でこの文書の表現や考え方が具体化されるのでしょうから、事前の会見と併せ文書の概要を学びたいと思います

17日付Defense-News記事によれば
(記事内に「The Future Navy」全文も掲載:図表除く)
Richardson.jpg●17日、シンガポールで開催されたIMDEX2017で講演したRichardson大将は、「The Future Navy」との文書を発表し、2020年代半ばに向け、米海軍はより多くの艦艇を急速に整備する必要があると訴えた
●また同大将は、海軍の戦いは根本的変革の時代を迎えており、その変化は「帆船から蒸気船への変化」、「木造船から鉄製への変化」、または「原子力推進線の登場」にも匹敵する海軍の変化に当たると表現した

●更に、中国やロシア海軍が急速に改善されている現状を踏まえ、単に右肩上がりで迅速な米海軍増強を行うのではなく、級数的な成長が必要とされていると語った
●そして艦艇数に関し、現在は310隻体制を目指しているが、その目標値を355隻体制にまで引き上げる必要があるとし、建造数の増加だけで無く、現有艦艇の延命など、考え得ること全てに取り組んで艦艇体制を増強すべきと述べた

Aegis3.jpg●艦艇体制増強の基礎となる軍需産業体制についても繰り返し触れ、短期的施策としてパートナーとしての造船業界を重視すると同大将は語り、更に「造船業界はより多くが可能でアリ、そのレベルに到達するよう米海軍も全力で取り組む」と宣言した

●また具体的な言及を避けたが、米海軍戦力の破壊力増強のため、艦艇や航空戦力を結ぶリンクの強化増強の必要性も強調し、「個々のプラットフォームだけではなく、より広範なアセットの組み合わせを可能とする、新たな次元のネットワーク力」を重視すると訴えた

●更に艦艇の設計について、より「モジュラー化:modularity」を追求し、艦艇が年齢を重ねても、より安価に近代化改修が可能なモノにしたいと語り、現状の設計から運用まで10年必要とする現状を戒めた
●そして「艦艇建造に長期間を要する現実に挑戦し、建造する艦艇には最新の技術導入を可能にし、完成後もより迅速に容易に最新技術を取り込める設計を目指したい。そのためモジュラー化や多用途な装備導入を考えたい」、「皆さんには長く使える船の建造と、成長し近代化する船の製造に協力して欲しい」と語った

Richardson11.jpg●(とりあえず短期的に何を行うのかとの質問に対し、明確には答えず、)(本文書の重要性を訴え、)まずなし得るビジョンを打ち出す事だ。我々に出来るビジョンがこれだ、と答え、
喫緊の取り組みは、艦艇購入予算を強く継続して要求していく事だと述べ、更に、一つ明確なことは、米国の艦艇建造ラインは稼働しており、仮に必要な資源が投入できればより多くの建造が可能だと言う事だと述べた
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図表を含め「The Future Navy」を見たい方は
https://news.usni.org/2017/05/17/document-chief-of-naval-operations-white-paper-the-future-navy

CV  Carl Vinson.jpg「The Future Navy」の冒頭には、最近実施した米海軍等の研究・分析結果から導かれた3大結論
第1に、国家はより強力な350隻レベルの無人及び有人システムを含む海軍を必要としている
第2に、数だけでは不十分で、海軍は新たな技術と作戦コンセプトを導入しなければならない
第3に、そしてそれを直ちに開始し、迅速に変革しなければならない・・・と記されています

上記のように概要にすると味気ないですが、最初の「情勢認識:Faster and More Complex. And Faster」部分では、海洋交通の重要性やその将来、中露NK等の軍事力強化、海軍から見た中東の不安定要素などが記載され、特に沿岸部の巨大都市が31から40に増加するとの、米陸軍と似たような将来変化を前提として重視していることが伺え、面白いです

次の「Response: Naval Forces」部分では海軍の伝統的役割から新たな任務を分析し、次項「Shape of the Future Navy」での必要な戦力構成や規模、更には新たな兵器技術やその必要性の議論につなげ、最後の「Getting and Staying There」部分で、以上の新たな体制を極めて迅速に達成するために必要な産業政策から調達改革、先ほど触れた設計思想の変革に至る実務的な改革ビジョンを語る構成です

Richardson22.jpg変わり者と言われる米海軍トップのRichardson大将ですが、細かく分割された組織に一本の横串を通し、ゴールや目標を共有して効率的効果的に前進しようとする姿勢は指揮官のあるべき姿でしょう。
少なくとも海軍関係の皆様は、しっかり読むべきでしょう
頭の整理に一度は・・

併せて見て頂きたい過去記事
「更に後退:空母艦載無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27
「米陸軍:巨大都市戦に備え」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-22
「米海軍:用語A2AD使用禁止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-04
「再び陸軍に南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

Richardson海軍大将の関連
「初海外は日本」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-25
「海軍内では信頼薄い!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-14
「ノミネート会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16-1

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LRLAPの計画が中止されたのは正直に衝撃的でした。
艦砲射撃の時代が再到来する象徴的な計画だっただけに残念です。
生産コストが解決されなかったのが原因でした。
しかし、レールガンに望みを繋ぎたいところです。
日本に導入するなら巡航ミサイルよりも遥かに米国に警戒心を抱かせる可能性が少なく、
コストパフォーマンスの高さが好感されます。
但し、電力消費の問題から搭載可能な艦船が限られます。
by X (2017-05-26 04:43) 

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