So-net無料ブログ作成
検索選択

F-35AとB型が英航空ショーで海外デビューへ [亡国のF-35]

TATTOO2.jpg26日、米海兵隊と米空軍はそれぞれ、今年7月に英国で開催される2つのエアショーRoyal International Air Tattoo」と「Farnborough International Airshow」に、F-35A型2機とF-35B型2機をそれぞれ参加させると発表しました
「Air Tattoo」が7月7日から9日、「Farnborough」が11日から17日です。

F-35は2014年、「海外初お目見え」として同じ2つのエアショーへの参加を表明していましたが、同年発生した地上でのエンジン火災により参加を取りやめており、因縁のエアショーに「リベンジ」の意味合いも込めた海外デビュー計画です

F-35エンジン火災関連の過去記事
「エンジン火災で飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「英国エアショー欠席へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-14

26日付Defense-News記事によれば
TATTOO3.jpg●米空軍のF-35A型2機はアリゾナ州のLuke空軍基地から参加し、海兵隊のF-35B型2機と共に、地上展示と「heritage flights」(WW2、朝鮮戦争、ベトナム戦争当時の航空機と共に飛行)を行う予定である。

海兵隊の航空担当副司令官Jon Davis Jon Davis中将は、「7月に英国の空で、F-35Bの能力をご披露できることを楽しみにしている。国防省や企業、海兵隊の派遣チームが協力し、海外展開や海外運用が可能である事を証明したい」と声明を発表している
●また同中将は、海兵隊はこの海外展開の経験を、2つめのF-35飛行隊(VMFA-211)立ち上げ(2016年夏)と、VMFA-121飛行隊の岩国派遣に生かしたいとも述べている

26日付米空軍発表では
Farnborough2.jpgWeish空軍参謀総長は「F-35A型機の能力を世界に示すこの機会に興奮している」、「F-35は、新たな概念であるデータ融合や兵器や戦術を体現する機体であり、この最新鋭機とそれを支える優れた空軍兵士達を是非披露したい」と声明で述べている
●F-35Aを派遣する第56戦闘航空団司令官は、「世界に向けF-35を学んでもらうと共に、heritage flightsによりエアパワーの変遷をご覧頂きたい」と述べている
///////////////////////////////////////////////

7月まで何事も無く、F-35が英国に展開できることを祈念しております
最近は、自衛隊からも色々参加しますので、話題になるかも知れません。

Royal International Air Tattoo
http://www.airtattoo.com/

Farnborough International Airshow
http://www.farnborough.com/

F-35エンジン火災関連の過去記事
「エンジン火災で飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「英国エアショー欠席へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-14

米国防長官が「force of the future」に追加策 [カーター国防長官]

family.jpg28日、カーター国防長官が会見し、就任直後から取り組んでいる人的施策改善検討「force of the future」に関する追加施策を発表し、産休の延長、基地内託児所の時間延長、同一勤務地での連続勤務の柔軟化、体外受精を含む出産支援などについて言及しました。

これまでの「force of the future」検討では、産業界や大学との人材交流、長期休暇制度等による一般大学での勉学支支援、インターン制度の拡充による有能人材確保等々の施策や、2016年から開始の「女性兵士への例外なき全職種開放」が発表されていました

今回の発表は、「家族への支援」や「家族の生活の質」の改善を目指したもので、精子や卵子の保存や、体外受精(IVF)支援まで含んでおり、かなり突っ込んだ内容となっています。
諸外国軍の体制にも、影響が及ぶかも知れません

米国防省「force of the future」特設webページ
http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0315_Force-of-the-Future

28日付米国防省web記事によれば
Reagan.jpg●カーター長官は、軍人家族を支援し、継続勤務率を改善し、将来の米軍を強化するため、産休日数の増加などの施策を発表した
●一連の施策に関しカーター長官は、有能な人材を引き寄せて継続勤務してもらうと同時に、国のために、我が身を捧げ勇敢に戦いに臨む米軍兵士達に相応しい雇用主となるため、国防省や米軍を「family-friendly」にするための取り組みの一環でだと説明した
●そして「我々の考えはシンプルであり、米軍兵士たちが、国のための任務に精励することと、家族を持ち支えていくことの2つのバランスを取ることを可能にしたいのである」と語った

産休期間を2倍に
有給の産休期間をこれまでの2倍の12週間とし、「米国防省を本分野でのトップレベルの機関にし、軍人家族の意思決定に大きな影響を与える」とも長官は表現した
●ただし、米海軍が昨年産休をより長い18週間としていることに関しては、30日間以内に妊娠が明らかになった場合は、引き続き18週間を認めると説明した
●また、50人以上の女性が勤務する国防省施設には必ず「mothers’ room」を設けることを指示し、更に父親が取得できる育休を現在の10日間から14日間に延ばす法整備進めることを表明した

軍施設内の保育施設充実
軍施設内の保育施設に補助金を出して運営を支援する。「保育サービスの提供を通じ、兵士たちが任務を継続できるよう支援し、家族を支えることと任務の両立を支える」と長官は語った
●軍施設内の保育時間と、両親の勤務時間の整合が取れず、基地外の保育施設を利用する軍人家族も多いことから、米軍全体で保育施設の開設時間を14時間に拡大する

同基地での延長勤務を柔軟に
Reagan5.jpg●同一勤務地に様々な家族関係の理由で継続して勤務を希望する場合、例えば、身内の近傍で勤務したい、特別な治療を要する子供のため特定医療機関の傍で勤務したい、子供が高校を卒業するまで勤務場所変更を避けたい等々の希望を持つ兵士の処遇について長官は言及した
●このような場合、所属部隊が許容できるならば、「(当該兵士が)負荷的な義務を負うことを条件に:in exchange for an additional service obligation」、部隊指揮官は当該兵士が当該勤務地に継続勤務することに関し、適切な措置を取る権限を与えられる、と長官は述べた

家族計画に柔軟性を付与するため
●米軍は、将来子供を持てなくなるような犠牲を強いられる可能性のある厳しい任務遂行を、兵士に要求している。これらを考慮に入れ、国防省は現役の操縦者が精子や卵子を冷凍保存する費用を負担する
●また国防省は、現在6か所で行っている体外受精(IVF)のような技術の利用経費補助を、多くの兵士が利用できるようにする方法を検討する。
●これらの施策は、家族を編成するに際してのより高い柔軟性を与え、兵士たちの将来に自信を持たせるためのものであると長官は説明した
///////////////////////////////////////////////////////

Les&Gay month.jpg産休に関しては、米海軍と海兵隊の兵士には「期間短縮」になります
数日前、James空軍長官が、国防省がそうしなくても空軍は3倍増の18週間にしたいと語っていましたが、どうなるのでしょうか?

それにしても、「精子や卵子を冷凍保存」とは、さすがと言えばさすがですねぇ・・・

本年元旦から効力発揮の「全職域を女性に開放」や、今回の「産休期間の2倍増」や「同一基地継続勤務に柔軟性」などは、前線部隊指揮官が単純に受け入れることが難しい話であり、いろいろなこぼれ話があるかもしれません

カーター国防長官の会見トランスクリプト
http://www.defense.gov/News/News-Transcripts/Transcript-View/Article/645952/department-of-defense-press-briefing-by-secretary-carter-on-force-of-the-future

「force of the future」関連記事
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

ハリス司令官個人的見解:島々は中国に属さない [Joint・統合参謀本部]

「I made clear my personal view that those islands do not belong to China」

Harris CSIS.jpg27日、ハリス太平洋軍司令官がCSISで講演し中国を含む担当地域諸国との関係について語り、インドとの関係を重視し、タイとの関係が懸念との見方を披露しています。

軍人として政策面で語れる分野は限定されており、中国に関する部分は22日のカーター国防長官ダボス会議発言のラインと一致ですが、「個人的見解」として、中国の南シナ海領土主張が間違いだ、中国には属さない、と一歩踏み込んだ発言も見られます。

日本では、記者の質問を受け無理矢理言わされたのであろう、「中国に攻撃されれば、我々は尖閣を明確に守る」との発言が注目されていますが、それは政治レベルの判断だと思いますし、最近のRANDの研究では「尖閣に米国は手を出さない方が賢明」との提言も見られます
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45849

とりあえず、日本人の血を引く、有事に対中国の作戦指揮官ですから、新年に辺り、その言葉をご紹介しておきます

なおカーター長官のダボス発言は
http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/644261/carter-us-welcomes-rise-in-power-of-asia-pacific-nations

27日付Defense-News記事によれば司令官は
Harris CSIS2.jpg中国の発展は悪いことではないが、その力の使い方に懸念を覚える。中国の意図するところが、雲がかかっているようによく分からない。

南シナ海における領土主張や具体的行動は、過去40年間に5カ国が行ってきているが、全ての国にとりあえず一端主張を停止するよう(話し合うよう)求めてきている
●過去40年間でベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾が主張してきた領有権の面積は「215エーカー」だが、中国が過去1年半で主張したのは「3000エーカー以上」である

●昨年イージス艦ラッセンが「航行の自由作戦」を実施した直後に中国を訪問したが、かなり興味深いやりとりを中国側と行った。米側は緊張緩和の機会について話したが、中国側は彼らの領有主張に固執した
私は中国が主張する島々は中国に属さず、中国側の行動が地域の緊張を増す攻撃的なものだとの「個人的見解:my personal view」を明確に述べた。中国は大国として採るべきで無い行動を行っている
(原文:I made clear my personal view that those islands do not belong to China

中国は世界の中で良いことも行っている。例えば、ソマリア沖での海賊対処パトロールを20回以上行い、イエメンから外国人を脱出させ、シリアの化学兵器除去を支援し、病院船「Peace Ark」を巡回させ、不明になったマレーシア民航機捜索に大規模な艦隊を派遣したりしている
●これらの行為は、我々が大国として相応しい行為だと考える前向きな出来事である。また私の訪問中、彼らの接遇は素晴らしく、最高の敬意を持って対応してくれた

他国との関係についてハリス司令官は
Harris CSIS3.jpg●当地域に於いては、米国との2国間関係がほとんどだが、私は多国間の関係に発展させたいと主張してきた。共に行動することでより強くなれると考える。例えば、日韓米、また印日米、豪日米はより広範な関係の好例である
●私は当地域の司令官として、インドとの関係改善を主要目標に掲げ、軍事関係を発展させてきた。米印関係については、楽観的でわくわくする事しかない
アジア太平洋地域を語る際は、「Indo-Pacific region」との用語を使用するようにいつも心がけてきた。

●(質問に答え、)2014年の軍事クーデター以降、タイ国内の人権問題があり、タイとの関係が低調になっている。軍同士の関係を切っ掛けとして、両国関係を改善したい
重要で根本的な面で、タイとの間には「some big disagreements」がある。継続して同盟国としてのタイに米国の立場を維持し、語りかけて行くことが必要で、彼らが民主主義に戻り、今より関係が良くなるよう働きかけたい
/////////////////////////////////////////////////

2月2日にカーター国防長官が、2017年度予算案について説明会見を行うようですが、推測記事によれば、対ISや対ロシアの経費が増加し、将来に向けた開発投資が犠牲になる方向がにじみ出るようです。

もちろん、「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」関連は頑張るとの説明でしょうが、将来の投資が減ることは、対中国の投資が減るのと同義に近く、不明確だとCSIS報告書に酷評された「アジア太平洋リバランス」政策は、推進力を得られないままの模様です

Harris CSIS4.jpgそんな現実を察してでしょうか、ハリス司令官は「個人的見解」まで持ち出し、つまり米国の領土問題に対して「どちらの側にも立たない」主義から離れ、「中国には属さないと思う」と語ることで地域諸国の思いに答えようとしたのでしょう・・・軍人として精一杯の発言だと思います
今後たたかれる可能性もありますが・・

タイに関しては、ミャンマーでもそうですが、米国は人権を主張しすぎです。いいじゃないですか、幸せならば・・・

議会要請でCSISがリバランスに提言
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-20

F-35AとKC-46Aがそれぞれ「初試験成功」 [米空軍]

年の初めですから、おめでたい話題を!

日本とも関わりの深い米空軍の最重要事業である開発中の「F-35A」と「KC-46A」が、それぞれの課目で「初試験」に成功しました。

F-35は短距離格闘戦ミサイル「AIM-9X」の初発射試験、KC-46Aは初の空中給油試験に成功したとのニュースです

空軍用F-35が赤外線ミサイル9X初発射
F-35A 9X.jpg21日付米空軍web記事によれば、12日にF-35Aが「初めて」格闘戦用の短射程空対空ミサイル「AIM-9X」の発射試験をカリフォルニア沖合の太平洋上6千フィートで行った模様です。

なお、「AIM-9X」は赤外線追尾の空対空ミサイルで、サイドワインダー(Sidewinder)シリーズの最新型です。
同米空軍記事は、この発射試験により、同ミサイルによる「off-boresight and targeting」能力活用の道が開けた、と紹介しています
/////////////////////////////////////////////////////

いくつかコメントを
●「初」発射と言うことで、目標に命中させたと言うことでは無く、機体から「無事」発射できるかどうかを確認したものと思われます。今年夏に米空軍F-35は初期運用能力IOC獲得(僅か10数機ですが)を目指していますが、今頃大丈夫?・・と気になります。
f35-bay.jpg●恐らく、中距離空対空ミサイルAIM-120とJDAMだけで当面良しとするので、AIM-9シリーズの試験は「ゆったり」進めているのかも知れません

●なお、F-35のステルス性を生かすには、ミサイルや爆弾を「内部弾薬倉:Internal Bay」に格納して飛行することが望ましいですが、F-35Aは内部弾薬倉にアムラームと誘導爆弾しか内蔵格納できません
●つまり、今回試験発射した格闘戦用AIM-9シリーズのミサイルは格納できませんので、ステルス性を犠牲にする覚悟で、翼の下にぶら下げなければ使用できません

●これは、F-35に対地攻撃任務を主に期待する米軍の運用思想からきたものでしょうが、日本がどの程度これを考慮したかは不明です。英国は内部に収まる赤外線ミサイルASRAAMを開発して搭載するようですが、日本の対応は不明です
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


KC-46A空中給油機が初給油試験
24日、米空軍の次期空中給油機で航空自衛隊も購入を決定しているKC-46Aが、初めての空中給油試験に成功し、シアトル近傍の空域でF-16戦闘機に1600ポンドの給油を行った模様です。
航空機としてのKC-46Aの初飛行は、配線トラブル等で当初計画の2014年から大きく遅れた2015年9月となりましたが、それ以後は比較的順調に試験は進捗している模様です

米空軍とボーイング社との契約では、2017年8月までに、まず最初の18機を運用可能な状態で引き渡すことになっており、合計では179機を製造することになっています

25日付Defense-News記事によれば
KC-46A2.jpg●当日の飛行は5時間43分に及ぶもので、「boom方式」による給油試験を行った。この方式は、米空軍の固定翼機が使用する方式である。なお一方で、米空軍のヘリや海軍海兵隊の航空機は「probe-and-drogue方式」である

●KC-46Aは経費固定契約であるが、開発中のトラブル対処で約1000億円、配線トラブル対処で約500億円を、ボーイング社は予定外経費として自社負担で対応している
●米空軍の同機計画責任者は「まだやるべき事は多く残っているが、この計画に携わってきた全ての人にとって興奮を抑えられない初給油となった」と語っている

KC-46A関連記事
「初飛行試験に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-18
「予定経費を大幅超過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-21
「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01
タグ:KC-46A F-35A AIM-9X

慶応の神保氏がOffset Strategy解説 [安全保障全般]

Zinpo3.jpg25日付読売新聞13面の「論壇キーワード」で、慶応大学の神保謙准教授がThird Offset strategy」を「第3の相殺戦略」として紹介しています。
これまでも折に触れ、神保氏は米国防戦略の解説を同コーナーで実施されており、「Cost imposing」との概念も「費用賦課戦略?」として以前紹介されていたような記憶があります・・・

「Third Offset strategy」については、重要概念として「ちまちま」とWork副長官講演をご紹介しながら取り上げてきましたが、背景も踏まえた短節で平易な解説ですので概要をご紹介します

「相殺戦略」の背景と過去の相殺戦略
Birds-Tra2.jpg●「米国は主要な戦闘領域における優位性を失う時代に入った」・・米国防省が2014年11月に公表した「防衛革新イニシアチブ」(DII:Defense Innovation Initiative)は、潜在的な敵国が、米国の軍事力への明白な挑戦となっていることに警鐘を鳴らした
●また、国防予算の削減により研究開発投資が圧迫され、(従来の延長では)米国が将来に亘って世界で軍事的優位を保つことが難しいとの認識が示された

●米国防省はこれらを踏まえ、軍事技術、作戦コンセプト、兵器調達、兵站などにまたがる全省的な改革が必要だと訴え、「第3の相殺戦略」と総称される改革を中核に据えて取り組んでいる
●「第3の相殺戦略」を知るために、まず米国が冷戦期に掲げてきた「第1」と「第2」の相殺戦略の概要を把握する

●「第1の相殺戦略」は、1950年代にアイゼンハワー政権で推進されたニュールック戦略であり、冷戦下での「東側」の通常戦力優位を「相殺」するため、核兵器による大量報復能力で抑止しようとした事を指す
●「第2の相殺戦略」は、1970年代にソ連による核兵器の大量配備で東西の核戦力がバランスする一方、依然として「東側」が通常戦力優位を維持していた環境で生み出された。ステルス技術やネットワーク技術(精密誘導兵器技術もか)で、東側の優位を相殺しようとしたものである

「第3の相殺戦略」とは
AFcyber1.jpg●翻って「第3の相殺戦略」は、伝統的な作戦領域における米国の優位が自明で無く、米国の戦力投射に対する(中国やロシアによる)A2ADが拡大する環境下で、米国の先端軍事技術の優位性を維持し、米軍のアクセス確保が目的である
●具体的には、無人機(空中と水中)能力、海中戦闘能力、長距離攻撃能力、ステルス性兵器、伝統的戦力と新たな技術を結びつける統合エンジニアリングなどの重要性が提唱され、国防省内で構想検討やシミュレーションが続けられている

●しかし、以上の取り組みがどこまで伝統的戦力を「相殺」できるのか、独占的に技術開発の優位を長期維持できるのか、米軍の前方展開戦力をどう位置付けるのか・・・等々、米国の軍事的優位性維持にはかくも困難な道が控えているのである
//////////////////////////////////////////////

対中国に絞って考えると、上記では触れていませんが、西太平洋地域では米軍の作戦基盤基地が少ないことや、兵站支援や補給が米本土から遠くて困難な事が、対処をより困難にしています。
ですから、「第3の相殺戦略」では、防御能力強化に人工知能による自動化、兵站負担の少ないレーザー兵器等の開発、長距離や無人化兵器への期待が高くなっています

また、米国側に立って対中国の仲間になってほしいASEAN等諸国が、中国の経済圏にあって立場が微妙な点も対応を難しくしています。この点は、対ロシアで欧州に米軍の拠点や物資集積の動きが迅速に進んでいるのとは対照的です。

Rethinking Seminar.jpg神保氏が最後にさらっと触れている、「米軍の前方展開戦力をどう位置付けるのか」は、極めて重大な問題です。
軍事的合理性からすれば、早い段階で中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの餌食になる事が明白な、西日本や南西諸島に米軍戦力を配備する事(又は有事初動でそこに戦力が存在する事)はあり得ません

同盟国との関係に置いて、この問題をどう位置付けるかは、極めて切実です。翁長沖縄県知事に「米海兵隊は抑止力にならない」と指摘されるまでもなく、日本として腹をくくる必要があるでしょう

Third Offset Strategy解説by副長官
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

国防省試験評価部長:現F-35計画は非現実的 [亡国のF-35]

Gilmore.jpg22日付Defense-News記事は、米国防省Michael Gilmore試験評価部長のメモを入手し、既に遅延しているF-35ソフト開発について、米国防省F-35計画室が現在発表している計画が「現実的でない:not realistic」と指摘しているとスクープしています

またこれに対し、F-35計画室報道官が22日付電子メールで、リスクはあるが2017年夏に試験が終了する予定に変更はないと回答してきたとも報じています。
時間が経てば結果は明らかになるのですが、開発と製造を同時並行で進められていることから、ソフトの遅れは機体成熟の遅れに繋がり、後に機体改修が必要な機体がどんどん製造されることになります

更にGilmore部長は、「疑惑の真打ち」であるF-35の自動兵站情報システムALISの開発状況も多くの課題を抱えたままであると指摘しています

22日付Defense-News記事によれば
F-35 N.jpg昨年12月11日付のメモでGilmore試験評価部長は、F-35計画室が今公表している完成版ソフト「3F」の完成時期2017年7月は、切迫した試験スケジュールにより達成できないリスクが高く「現実的ではない」と表現している
海兵隊F-35Bは、昨年夏に赤外線ミサイルとJDAMしか使用できない「2B」ソフトで初期運用体制IOC確立を宣言し、米空軍のF-35Aは今年の夏に多少回路を改良した「3I」ソフトでIOCの予定であり、完全版のソフトは2018年IOC予定の海軍用F-35Cに搭載予定である

●本件に関するDefense-News社からの質問に対し、F-35計画室報道官は22日付電子メールで、4ヶ月ほどの遅延リスクがあると認識しているが、現時点では「3I」ソフトの試験は2017年夏に完了すると回答してきた
●また同報道官は、試験完了期日を守るため、試験を省略するようなことは無いと強調し、試験項目を削減する場合には、計画室と企業と米軍チームが機体の能力確保に必要な事項を徹底的に吟味した後に行うと述べている

●更に報道官は、15日時点でソフト「3F」の基礎試験は約半分が終了し、見つかった不具合等は関係部署が緊密に連携して対処に当たっていると述べている
一方でGilmore部長は前段階の「3I」開発試験で「不出来が明らかに」なっていると指摘している。これに対し報道官は、初期の「3I」には多くの問題があったが、最新バージョンでは「改善された結果」が得られていると述べ、米空軍と海軍のIOC時期に変更はないとしている

Gilmore2.jpg米議会もF-35開発には依然として懸念を持っており、2016年度予算では、2018年に完成版「3F」ソフトでF-35が完全状態になるまで調達ペースを制限する事になっている。その結果、空軍が44機要求したのに対し34機しか予算が認められていない。
●これは、完成した機体に再び改修費用が多額発生することを恐れているためである

●Gilmore部長はまた、F-35関連の最大懸念事項の一つである自動兵站情報システムALIS開発に関し、「引き続き、要求性能未達成、開発遅延、開発試験のための過剰な人員要求、複数の多方面に渡る不具合、サイバー対処面で不備な未検査の複雑な構造と格闘している」と表現している
●これに対しF-35計画室報道官は、2000以上のサイバー関連試験をこれまで行い、F-35のサイバー対策を完全にすべく取り組んでおり、米国防省の試験評価部の指摘し完全に同意しており、サイバー脅威への対処に継続的に対応していると述べている
/////////////////////////////////////////////////////////

米国として、「なりふり構わず売り込んでいるF-35」に関し、率直に発言するMichael Gilmore試験評価部長(DOT&E:director of operational test and evaluation)に拍手です!

国防省試験評価部長の公開レポート(大きいファイル)
http://www.airforcemag.com/DocumentFile/Documents/2016/2015DOTEAnnualReport.pdf

F-35-test.jpg同時に、このF-35の惨状に沈黙の航空自衛隊や防衛省に心中より軽蔑の念を捧げると共に、導入を決定した民主党の責任を明示しておきます

なお、この夏に初期運用体制を確立する米空軍担当部隊は、わずか12機で宣言する模様です。IOCに嘘はないけれど、たった半分規模の飛行隊1個をショウアップするとは、情けない限りです

F-35の主要な問題や課題
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

欧州米海軍司令官:妨害対処を考えよ [Joint・統合参謀本部]

Ferguson2.jpg先週、欧州米海軍司令官のMark Ferguson大将が米海軍協会の水上艦艇総会で講演し、ロシア艦隊と対峙することが増加している第6艦隊の主要幹部に、センサーや通信等に関する電波発射を厳しく吟味するよう繰り返し注意していると語りました

冷戦時代には一般的だったが、最近は少し緩やかにしてきた電波放射について、最近「ふんどしを締め直し」ているようです。また同時に、衛星通信やGPSが使用できない事態を常に考えろ、と部隊指揮官に言い聞かせているとも語っています。

20日付Defense-News記事によれば
●Ferguson司令官は「2016 Surface Navy Association's national symposium」で講演し、スペインのロタ島に展開している4隻の艦艇(イージス艦:欧州BMD用)や第6艦隊の艦艇に対し、レーダーやセンサーの電源をオフにして「ステルス性」を高めるよう求めていると語った
●また、水上艦艇の文化を変える必要があるとも述べ、サイバー戦や電子戦を戦う心構えの必要性を強調しているとも語った

Ferguson3.jpg●部下の指揮官達には、問題はどの装備の電源を切るかではなく、なぜその装備の電源をONにするのか、なぜそのレーダーの電源をONにするかであると問うているこの質問は部下達の思考力を鍛えるのに最適だ
●同司令官はまた、攻勢的なロシア軍の動きに直面し、欧州の米海軍艦艇はレーダーや無線等の電波発射制限が常態になってきており、冷戦時代のパターンに戻りつつあると表現した

●更に同大将は、我々は衛星やGPSが機能しない状況下に置かれた場合に、どのように情報を得るか、どう対処するかに関する演習や訓練を行っている
弾道ミサイル防衛をどうするか、サイバー攻撃にどう対処するかに関する訓練や演習もである

Aegis Ashoreの状況について
Aegis Ashore Map.jpgルーマニアのDeveseluに設置された「Aegis Ashore」(SM-3とレーダー)は全てが機能しており準備万端で、操作員等も配置されているが、(他の施設も含めたNATOシステム全体として)作戦態勢承認をまだ受けていない
●我々は現在、NATOシステムとしての融合に取り組んでおり、ポーランド配備の「Aegis Ashore」(SM-3とレーダー)の準備も最終段階にある

注:欧州のBMDはイランからの弾道ミサイル対処を念頭に体制構築が進んでおり、まずスペインのロタ島にイージス艦が配備され、トルコに通称Xバンドレーダーが配備され、現在ルーマニアとポーランドに「Aegis Ashore」システムが整備中です。このシステム全体はドイツの施設で指揮統制される構想になっています)

上図と注解説は「海国防衛ジャーナル」から拝借
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50750556.html
///////////////////////////////////////////////////////

欧州米海軍の動きを見るまでもなく、被害状況下を前提とした作戦運用を考えることはアジア太平洋地域に置いて必要不可欠です

当然、陸自の組織防衛と戦闘機だけ命を追求していると、被害状況下などに頭は向きません
サイバーも宇宙も他人任せ、ただ飛んでいれば幸せ。統合の名の下に、バラバラさを増す我が国国防政策は、霧散していくのでしょうか?

「Aegis Ashore」を日本にも・・との声が米議会内にもあるようですし、なま暖かく欧州のBMD体制を眺めていきたいと思います

被害状況下を考える
「Resiliencyを捨てたのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13-1
「2014年版中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「米空軍C2の脆弱性議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-18-1
「作戦基地の脆弱性議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-05-1
「被害状況下で訓練せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
「国防科学委員会の警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-10-1

BMD「Aegis Ashore」関連の記事
「米海軍2015年6大ニュース」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-31
「米議会が日本配備を要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-19
「米BMD予算は悲哀を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-22
「地上配備型イージス」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10

「進化するイージスIAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「黒海NATO演習と露軍反応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03 

匿名国防省幹部がA-10引退要求は延期と [米空軍]

A-10 4.jpg13日付各種米軍事メディアが、米空軍が2年前から要求してきたA-10攻撃機の全廃要求を当面取り下げると報じており、対ISや対露で存在感を見せているA-10の存続要求派から歓迎するコメント等がでています。

正式には、2月初旬に政府が公表する2017年度予算案で明らかになるのですが、いわゆる一つの「事前リーク」です

元々、米空軍は経費節減とF-35用整備員確保のため、苦肉の策としてA-10全廃を打ち出したのですが、その後の中東や東欧での需要や、予算強制削減の2年間猶予によって「当面維持」に落ち着くようです
しかし、F-35整備員確保はどうするのでしょうか? 薄く広く、いろんな所から捻出するのでしょうか

13日付各種米軍事メディアによれば
A-10 turn.jpg●2017年度予算案について匿名で語った国防省幹部は、現時点で正式には言えないが、A-10全廃要求案は凍結すると語った
米空軍の報道官は本件に関し、2017年度予算案は政府内で決定されたわけでは無く、何もコメントできないとしている

昨年11月、米空軍戦闘コマンド司令官のカーライル大将は、A-10への需要が前線部隊に有ることから「(A-10全廃)延期は正しい方向だろうし、それを少し延期することも現状からは考慮に値し、将来に先送りもあり得よう」と語っていた
●別の米空軍高官は、新たな航空機を導入するため依然としてA-10引退は必要だが、前線指揮官の要望に応えるため、引退時期を遅らすとの計算もあると述べている

McSally.jpg●上院軍事委員長のマケイン議員は、「米空軍が2017年度予算案でA-10維持案を打ち出す事を歓迎する。同機は対地支援機として地上部隊にとって世界中で不可欠である。世界が混迷の中にある中、早計に最高の対地支援機を引退させる事は出来ない」とコメントしている
自身がA-10操縦者だったMartha McSally上院議員(女性)は、「オバマ政権はやっとA-10の重要性を認識したようだ。中東でISと対峙し、欧州でロシアの侵攻を抑止し、朝鮮半島でも期待されるA-10を、もはや政権は否定できない」とコメントしている
/////////////////////////////////////////////////

米空軍はかねてより、A-10全廃により4000億円以上の削減効果が期待できると主張してきたわけですが、その部分をどこかにしわ寄せするわけです

McSally2.jpg前線部隊からの要求は無視できないのですが、A-10存続派のメンツがすごいです
上記の元A-10操縦者McSally上院議員(女性)の他にも、夫が元A-10操縦者のAyotte上院議員(軍事委員会メンバー:A-10の件でJames空軍長官の承認を一時拒否)とか、強力な女性パワーが後ろに付いています

なお、A-10全廃を提案したWelsh空軍参謀総長はA-10操縦者としてキャリアを開始しており、A-10をよく知るメンバーが賛否に分かれて激突する構図となっています
それにしても、全世界から不安視されているF-35維持整備を担当する米空軍要員はどこから捻出するのでしょうか? そっちの方が興味津々です

A-10攻撃機関連の記事
「シリアへ派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-21
「米陸軍は全廃容認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-29
「視界不良:A-10議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-07
「CASを統合で議論したい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-16-1

「F-35整備員問題は何処へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-18
「米空軍:A-10はあくまで全廃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-15
「A-10全廃案が浮上」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-16

米空軍の宇宙への姿勢をシフトする [サイバーと宇宙]

James CSIS.jpg14日、シンクタンクCSISが主催した「Smart Women Smart Power Initiative」で討議に参加したJames空軍長官は、宇宙ドメインの扱いを他のドメインと同様にするための「cultural shift:文化の転換」が必要だと語りました

具体的な取り組み内容が不明ですが、昨年後半から、米空軍幹部が同様の発言を始めていますので、昨年9月の宇宙コマンド司令官発言と併せてご紹介していきます
その内、具体的な動きが明らかになると思います

CSISでJames長官は
James CSIS2.jpg●将来の戦いにおける米国宇宙アセットへの脅威に備え、米空軍は訓練を変えつつ有り、宇宙ドメインにおける「cultural shift:文化の転換」を図りつつある
我々は、宇宙を他の米軍事力が(陸海空を)扱うのと同じように扱うことを開始している。我々は地球での戦いが宇宙に波及する日に備えなければならない

●そのために米空軍は、資源をシフトし、我々の衛星網を防御する訓練をどのように行うかを試しつつある。これは他のドメインで関連アセットの防御を訓練するのと同じである
中国やロシアがこの分野で投資や試験を試験を行っており、米軍はより衛星の防御に取り組む必要がある

9月15日Hyten空軍宇宙コマンド司令官は
Hyten.jpg●コロラド州のSchriever空軍基地に設置された新しい「統合宇宙作戦センター:Joint Integrated Coalition Space Operations Center」は、紛争が宇宙にまで波及した際に、情報コミュニティーがどのように情報を共有するかを試す場所である
現在の宇宙作戦センターは、宇宙の交通を管理し、前線指揮官を情報アセットで支援する役割を担っているが、戦いが宇宙に波及した際の備えは行っていない

●戦いが宇宙に波及した場合にどうなるかを正確に把握できているわけでは無いが、米国はその領土を守り、指揮統制能力を確保しなければならない。そのため全ての宇宙ドメインを防御する必要がある
●なお「3,000-square-foot」の作戦室は、将来の宇宙作戦運用のコンセプト実行に必要な事項を洗い出すための実験場である。
//////////////////////////////////////////////////////

Schriever Wargame.jpgSchriever空軍基地は、政府機関や同盟国や民間専門家も交えた大規模サイバー宇宙演習「Schriever Wargame」を定期的に開催している基地で、この分野のメッカとも言える基地です

多くの同盟国がこの演習に参加したと聞いていますが、未だ日本が参加したとの話は聞きません(私に知る限り)
恐らく、日本の中でどの省庁が何を担当するのかさえも曖昧なママなのでしょう。サイバードメインとともに、今後早急な対応を迫られている分野です

サイバー宇宙演習「Schriever Wargame」関連
「2015年は欧州を主舞台に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「2012年の同演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19

2010年演習の教訓
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

米国が台湾に中古ハリアー売却の可能性? [安全保障全般]

よくわからない怪しい記事ですが、ご参考に

F-35 Taiwan.jpg16日付台北発のDefense-News記事は、米国政府筋の情報として台湾空軍が米海兵隊が引退させる中古AV-8ハリアーを購入する機会を得るだろうと報じています。
一方で同記事は、中古ハリアーが能力的にも維持経費的にも台湾空軍を満足させる装備では無く、また台湾空軍は「実現可能性が無い」F-35B購入を米国に強く要望しているとも報じています

また記事は、ハリアー製造企業のボーイングが、中国での商売がやりにくくなるので、台湾とのビジネスに消極的な様子も紹介しており、何処にハリアーを台湾に売却する推進力が存在するのだろう?と疑問が残る内容です
それでも、台湾は近未来の日本の国防を考える上で「注視すべき国」ですので、関連事情を知るためにご紹介します

16日付台北発Defense-News記事は
AV-8 Harrier.jpg米国政府筋は、米海兵隊がF-35B(垂直離着陸型)を導入することで不要になるAV-8ハリアーを、台湾が購入する機会を得るだろうと語った。この中古ハリアーは「米国Defense Security Cooperation Agency」を通じて台湾に提供されるだろう
●中国との有事の際、中国が1400発保有すると言われる弾道ミサイルにより数時間で台湾空軍基地が破壊されると見積もられることから、山間部に隠して運用可能な垂直離着陸機のハリアーが有効だと見られている

●米国の軍需産業専門家は、中古ハリアー売却を良いアイディアだとしながらも、「米海兵隊のハリアーは機体が既に使い古されており、高価な機体改修や搭載装備のアップグレードが無ければ使用に耐えられない」と語っている
台湾軍も中古ハリアーに魅力を感じているわけでは無く、台湾国防省報道官は台湾空軍は超音速で垂直離着陸ができステルス等を備えた機体を求めており、「過去にハリアーを検討したことがあるが、台湾軍の要求性能を満たさない」と述べている

●一方で、台湾軍が強力にF-35Bの調達要求を続けていることには疑問の声が多い。米国政府筋は「台湾は新型のF-16C/Dも入手出来なかったのに、F-35Bが調達可能と考えているのか」と述べている
●また中国高官は、台湾への新型F-16C/Dの売却を「レッドライン」と呼んで米国を牽制している

ハリアー製造企業のボーイングにとっても中古売却は問題の種で、中古ハリアーの台湾売却に関する質問に対し、ボーイング社は「何も言うことは無い」とコメントするに止まっている
AV-8 Harrier2.jpg●同社は2006年に台湾事務所を閉鎖し、また何度もDefense-News社に、ボーイング製アパッチヘリの台湾売却を記事にしないよう要求してきている
ボーイング社は中国民間航空産業に多大な投資と事業関係を持っており、中国当局はこれらの関係を利用してボーイング社だけでなく、他の軍需産業にも影響力を行使しようとしている
/////////////////////////////////////////////////////

米国政府としては、台湾がしつこく垂直離着陸型のF-35Bを要求するので、同じ垂直離着陸能力を持つ中古ハリアーを交渉の場に持ち出すのでしょうか?
台湾で民進党に政権が移行し、中国経済の先行きが怪しくなり、加えて中国指導部の舵取りも迷走模様ですが、今後も「米国の台湾戦線異常なし」なのでしょうか・・・

台湾空軍の姿勢もどうなんでしょうか? 垂直離着陸ができるからと言って、F-35に大金を投入する事が最適な投資なんでしょうか?
記事の冒頭に紹介したのは「台湾空軍にF-35を」ワッペンで、2013年頃から台湾で出回っているようです。

台湾を巡り、政治面で新たな局面を迎えた今年、他に誰も関心が無いようなので、軍事面での動きにも注目して参りましょう

台湾関連の記事
「4年ぶり米が台湾武器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-22
「イメージ映像中国軍島嶼占領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「台湾軍事見本市で見えた」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-10
「台湾が国産潜水艦を目指す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17

台湾国防政策を考える
「台湾劣勢戦略に学べ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25
「CSBAが提言:台湾軍事戦略」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
「10分野で米中軍比較」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-18
「親中の国民党が大敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-09

岡崎研究所の台湾記事(2015年12月)
同床異夢の中台→http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5760?page=1
中台首脳会談の解釈→http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5692

CSISが議会要請でリバランスに提言レポート [安全保障全般]

CSIS rebalance2.jpg19日、シンクタンクCSISが米議会から委託されたアジア太平洋リバランスに関する提言レポート「Asia-Pacific Rebalance 2025」(約270ページ)を発表し、国力を増す中国を主要な脅威と捕らえ、オバマ政権による戦略も資源配分もなく、ただ演説や形容詞に満ちた抽象的な文書だけが飛び交う現状を厳しく捕らえ、大きく4つの提言を行っています

4つの提言は大まかに言うと、「戦略を明示せよ」「地域同盟国等の能力強化を図れ(特に日本)」「米軍プレゼンスを増強せよ」「軍事危機に対処する技術革新を」の4つで、レポート全体を読んだわけではありませんが、お馴染みの事項です

GreenCSIS.jpgただし、270ページもあれば多数のデータや図が提示されていると考えられ、いろいろと参考になりそうですので、取りあえず19日付Defense-News記事で、4つの主要提言をご紹介します。

なお、レポートを中心となってまとめたのは「お馴染みMike Green, Kath Hicks、Mark Cancian」ですが、10数名が関係協力者として名を連ねています

CSISの関連webページ
http://csis.org/publication/asia-pacific-rebalance-2025

なお米国防省は「アジア太平洋リバランス」特設webページのトップページに同レポートを掲載し、結論に賛同し、提言に取り組んでいると紹介
http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0415_Asia-Pacific-Rebalance

その前にレポートの情勢認識
●中国内の不安定要因により、中国の経済、軍事、地政学的影響力の成長が今後も持続するかは「up in the air」だし、過去2年間の攻勢的な姿勢が、中国の隣国を米国よりに向かわせた事は確かである
北朝鮮とロシアも、アジア太平洋地域で米国の目標達成を阻害する要因である

提言1:「戦略を明示せよ」
obama.jpg●一貫性のあるメッセージを発せよ。演説や形容詞に満ちた抽象的な文書だけが飛び交い、米国政府のリバランス戦略に関する中核ステートメントがない
●本レポート作成のため、複数の政府指導者にインタビューしたが、リバランスが何を意味するかが不明確だった
●この状況を打開するため、「アジア太平洋戦略レポート」を作成し、議会に働きかけ、戦略と資源配分を結びつけ、同盟国等との協力促進に活用し、中国との信頼情勢と危機管理を強化せよ

提言2:「同盟国等の能力強化を(特に日本)」
●最近国防省が力を入れてはいるが、地域の同盟国等の安全保障に関する容量、能力、強靱性、相互運用性を増強せよ
●一般的に言われている同盟国等の能力強化に加え、米国は海洋安全保障に関する「joint task force」を構築せし、日本に「joint operations command」を編成するよう働きかけよ

提言3:「米軍プレゼンスを増強せよ」
LRS-B4.jpg●アジア太平洋地域の米軍のプレゼンスを増強せよ。特に中国が強化しつつあるA2AD能力により米国の接近が困難になることがないように
水上艦艇の増強、水中戦力の改善、着上陸輸送能力を追加して危機対処能力を強化、
●継続して航空戦力運用基盤の多様化、地域BMD能力強化、米陸軍の「Regionally Aligned Forces concept」の深化と適応、
兵站上の課題への対処、重要な弾薬等の事前集積強化、同盟国等とのISR協力強化

提言4:「軍事危機に対処する技術革新を」
●国防省は最も重大な軍事的危機に対処するため、革新的な能力やコンセプトを追求せよ。特に2つの分野が重要
Aegis.jpg●一つは弾道ミサイル脅威に対処する技術、もう一つは米国に「非対称で、敵対者にコストを課すような」能力につながる技術である。
●必要な技術革新に関する部分は、Work副長官が取り組む「Third Offset strategy」での検討事項と似ている。「high-end guided munitions」を鍵とするところなどがそうだ
/////////////////////////////////////////////////

サマリーも読まずにご紹介するは気が引けますが、ご興味のある方はじっくり270ページご覧下さい(約30ページの短縮バージョンもあります

日本に関する要望事項の多くは、すでに各種の日米間協議で提案されているのかもしれません。「joint operations command」が何を指すのか? 米軍と一体となる意味での「Joint」何でしょうか?
本文を読めば判るのでしょうが・・・疲れました・・・

CSISの関連webページ
http://csis.org/publication/asia-pacific-rebalance-2025

Work副長官のThird Offset strategy説明
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

「無人機の群れ:Swarm」で艦艇の攻撃や防御 [Joint・統合参謀本部]

Coyote UAV.jpg4日付Defense-Techによれば、米海軍が、安価な無人機の「群れ」をグループとしてコントロールする試験を今年の夏に予定し、将来の攻撃兵器や防御手段として検討しているようです。
「無人機の群れ」を最も精力的に研究しているのが、「群れ」を艦艇への脅威と切実に感じている米海軍で、「群れVS群れ」の空中戦(Aerial Combat Swarms)まで研究している科学者が存在しているそうです

先日、米海軍研究所が開発の大量同時使用を想定した滑空無人機(CICADA)が、著名科学雑誌の「2015年新たなアイディア賞」に選定されたとご紹介しましたが、米海軍のこの分野への力の入れようが感じられる出来事でした

軍事分野の研究に関し、米国の裾野の広さを改めて感じさせる米海軍の取り組みですので、これを機会にご紹介します

4日付Defense-Techによれば
Coyote UAV2.jpg●超音速の巡航ミサイルや最新の戦闘機を迎撃する最新の海軍艦艇にとって、「群れ」であってもありふれた性能で低速の無人機は片手間で対処可能な脅威のような気がするが、現実は違
米海軍はこの分野の研究のリーダー的存在で、公開非公開をあわせ多数の研究ペーパーが存在しているが、2012年の「UAV Swarm Attack」は読む者を不安にさせる論文である

●同論文の想定は単純で、市販の速度150km程度の小型でレーダーに映りにくい無人機10機程度が、イージス艦に全方向から侵攻することを多様な700以上のパターンでシミュレーションしたものである。
●イージス艦は対空ミサイルやCIWSシステムのほか、5インチ機関砲を備えているが、研究では追加で6つの重機関銃が装備された場合も想定されている

発見が難しい小型無人機に対しては、発見から艦艇到達まで約15秒間しか対処時間がなく8機が侵攻した場合、平均2.8機が防空網を突破する。仮に捜索センサーや防空網を強化した場合でも、8機の内で少なくとも1機には突破される結果となった
●侵攻無人機数を増やした場合、防御側が対処可能なのは最初の7機前後であることも明らかになった

●このような結果を元に、米海軍は低コスト無人機群技術(LOCUST:Low-Cost UAV Swarming Technology)に取り組んでおり、今は30機の無人機を個々に操作するのではなく、「鳥の群れ」を互いが衝突することなく操ることを狙っている。
●研究責任者のLee Mastroianni博士は、1機180万円程度の無人機の群れを「LOCUST計画」で使用しており、1発1億5000万円する対艦ミサイルより安価だと考えている。同博士は30機の「無人機の群れ」で、今年の夏試験を計画している

「無人機の群れ」対処に「無人機の群れ」
●無論、無人機1機の破壊力は対艦ミサイルより小さいが艦艇のレーダーを無効化するには十分であり、盲目化された艦艇は他のどんな兵器でも攻撃可能になる

Aerial Combat Swarms.jpg●海軍の研究者であるTimothy Chung氏は、「無人機の群れ」攻撃を「無人機の群れ」で対処する方策を検討している。正式研究名は「Unmanned Systems Swarm versus Swarm Development and Research」との名称だが、Chung氏は「群れによる空中戦:Aerial Combat Swarms」と呼んでいる
●Chung氏は無人機による攻撃と防御に分かれた「50対50」のシナリオを検討しており、どの程度の自立性が無人機に必要か、群れの管制者は迅速な戦いにどの程度対応可能か、無人機の質と量の関係は、等々の疑問に取り組んでいる

●有人機とは異なり、安価な無人機では「犠牲者」の懸念がなく、全く異なった空中戦の世界が存在するだろうし、研究で明らかになる戦術は新たな戦いの様相を形成するかもしれない
●「無人機の群れ」が空母を襲う将来、「無人機の群れ」がその迎撃に使用されるだろう。どちらが勝利するだろうか? それはどちらが新たな戦いの様相を把握しているかによって決まるだろう
//////////////////////////////////////////////////////////

Coyote UAV3.jpgハード的にそれほど難しいとは考えられないので、ソフトの勝負になるのでしょうか?
ソフトとなれば、サーバー戦で盗まれたりしたら・・・と考えてしまいます。

「目の上のたんこぶ」である米空母やその取り巻き艦艇を制圧するため、中国も同様のことを考えているのでしょう・・・
有人機の戦闘機操縦者は、恐らく「Aerial Combat Swarms」から目を背け、自身のアセットが依存する脆弱な地上システムの存在も忘れ、今日もF-35導入と戦闘機部隊の引越しだけに・・・

2015年の「Best of What’s New」に選ばれた
「NRLの滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04

NG社が考える第6世代戦闘機の論点 [Joint・統合参謀本部]

NG-6th.jpg14日、Northrop Grumman社(NG社)が記者団をカリフォルニア州の研究拠点に招待し、同社が検討中の第6世代戦闘機(F-22やFA-18の後継として2030年代に導入)のコンセプトについてアピールした模様です

F-35の開発や製造がまだまだ序の口の段階にありますが、次期戦闘機に関しては米空軍が基礎的な検討を開始し、Lockheed Martinやボーイングも検討開始をアピールし始めているところです。
NG社が「旅費」等を負担する宣伝活動で、15日付Defense-Newsは正直に「申し出を受け入れた」と明示して記事をアップしています

NG社も明確にコンセプトを固めているわけではなく、同社の航空機部門副社長や開発担当副社長が様々な論点を提示して検討状況を説明しており、15日付Defense-News記事は興味深いレポートとなっていますでご紹介いたします

デジタル「白血球」でサイバー対処
●サイバーでのハッキングが横行する世界に於いて、全てのサイバー攻撃を防止する事は不可能に近いが、なんとか侵入の試みを探知して被害を防がなければならない
●人間身体も皮膚で全ての病気の感染を防ぐことは出来ないが、「白血球」の持つ免疫機能という信じがたく素晴らしいシステムで、侵入したウイルスが人体に悪影響を及ぼすのを防いでいる
2030年代に我々が導入するシステムには、これに似た仕組みを取り入れる。次世代の制空は、サイバー攻撃被害を防止する「デジタル版白血球」によってもたらされる

速度と航続距離のトレードオフ
NG-6th2.jpg速度と航続距離はトレードオフの関係にある。歴史的に戦闘機開発は速度や機動性を重視してきたが、NG社の技術開発担当副社長は、将来戦闘機は速度を犠牲にして航続性能を求めるのではと考えている
●同副社長は、将来は戦闘機運用の根拠基地確保がより困難になることから、優れた航続性能が極めて重要になると力説し、「亜音速機は超音速機より遙かに航続距離が長い」と付け加えた
●そして「結論にはまだ早いが、次期戦闘機は超音速性能は持つが、その程度は現代の最高レベルではなく、航続性能がより重要性を示すことになろう」と語った

大量の熱処理が大きな課題
エネルギー兵器を搭載して超音速飛行を行う第6世代戦闘機の大きな課題の一つは、熱処理である。特に高出力レーザー兵器を搭載する際に、この問題が大きなものとなる
●現在考えられている対処では不十分で、「我々は多くの時間をこの問題解決に投入している状態で、発生する熱をまとめて再利用できないかの検討もその一つだ」と語った

有人機か無人機か
●これはもちろん、軍需産業や技術の問題だけでなく、国防省がどう考えるかの問題でもある。当然、単純な問題ではない。
boeing-6th.jpg●NG社航空機担当副社長は「物理的に人間が操縦席に座るのではなく、離れた場所から操縦するのだろう」と語り、「人間が操縦席にいて果たすべき任務があるか? それは任務は何か?」とも自問した

●技術担当副社長は、有人機と無人機の混合編隊を想定し、無人アセットが「人間のmission commander」に指示されるイメージを語った
●航空担当副社長は「ロボットは人間の頭脳の代替は出来ない」と語り、その中でも「NG社はリアルタイムの判断ができるようなソフト設計に取り組んでいる」と語った
/////////////////////////////////////////////////////////

短節にポイントや論点がまとめられ、新年のスタートに相応しい記事だと思いご紹介しました

技術的な面では、熱処理やデジタル白血球とのプロの視点が興味深いですが、特に戦略戦術面からの視点「速度と航続距離のトレードオフ」には深く感銘を受けました
作戦基盤がますます脆弱になる中、このような視点が、日本が「亡国のF-35」を選定する際にあったのかどうか・・・。

いろいろと皆様の刺激になればと思います

次期(第6世代)戦闘機を考える記事
「kill chain全体で考えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27
「Air Dominance 2030検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-09
「海空共同で次期戦闘機検討へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-30
「将来制空機は大型機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

「女性将軍が次世代制空を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-23
「海長官:F-35は最後の有人戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-17
「空軍参謀総長当面有人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-23

「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22

スウェーデンが人材確保難で徴兵復活検討 [安全保障全般]

Wallström.jpg13日付Defense-News記事は、スウェーデン外務大臣が、軍の人材確保が困難になりつつあるため、2010年に一度廃止した徴兵制を何らかの形で復活させることを検討する必要があると講演したと報じています
また、世論調査では、7割以上が徴兵制復活に賛成で、反対はわずかに16%だとも報じており、興味深いのでご紹介します

背景について、同記事はあまり詳細に触れていませんが、ロシア軍の活発化等もあるものの、国家として必要な軍事力はしっかり維持しておくことが望ましく、2010年以前の徴兵制が社会全体から見て適切なものだったとの「大人の見識」が国民に共有されているように思います

世界で徴兵制を採用している、または復活を目指している国には、「対ロシアの軍備強化」や「究極の男女平等」や「社会福祉の人材確保」や「国防意識の共有」や「若者の鍛錬・教育」等々、様々な背景がありますが、スウェーデンはどの類型なのか新型なのかはよくわかりません

ちなみに、スウェーデンは人口約980万人で、軍は約1万2千名の軽武装国家(陸軍5.5千人、海軍3.0千人、空軍3.3千人)です
外務省スウェーデン概要
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/sweden/data.html

13日付Defense-News記事によれば
Wallström2.jpg●スウェーデンのMargot Wallström外相は、主要な政治家や国防関係者が出席した「Sälen Society and Defense conference」で講演し、スウェーデン軍が直面している現在および将来の人的戦力確保の問題を解決する有効なオプションを検討すべきだと語った
●そして外相は、2010年に当時の中道右派政権が廃止した徴兵制の復活を示唆し、スウェーデンの国防組織は「近代的な徴兵制度」によって恩恵を受けるだろうと語った

現在政権を担う「Social Democrat-Green coalition」は徴兵廃止の再検討を行っているところであり、外相はこの動きについて言及したものである
4日に報道機関が調査会社に依頼して行った世論調査によると、7割以上が徴兵制復活に賛成で、反対はわずかに16%だとの結果が出ている
●同外相は、国防軍事組織のモデル再構築は、中心となる国防能力の強化につながるだけでなく、災害対処や救難救助や環境浄化に関する文民機関を支援する能力提供にもつながる

Wallström3.jpg●スウェーデン軍は2016年末までに組織改編を行う計画を進めており、本年年初には人の充足を完了している予定であった。しかし現実には1000~1200名の正規兵が不足している
●また「part-time positions」の不足はさらに深刻で、6千~7千人が不足している状況だ。更に予備役も約千名足らない

スウェーデンは2010年に、徴兵制から3~11か月間の志願制訓練に変更した。これは、志願制にすることでよりプロフェッショナルな軍に移行することを選択したのだ
●しかし現在スウェーデン軍は、人員不足が発生している各部隊の状況を改善するため、従来の徴兵制と予備役制度の復活を求めている
//////////////////////////////////////////////////

日本の面積の1.2倍の国土があり、人口も1000万人近くあり、ロシアの潜水艦らしい物体が首都ストックホルム沖合で無断接近しているのが発見されて大騒ぎ(2014年10月http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-23)なのに、軍が1.2万人程度とは、流石に19世紀のナポレオン戦争以降は戦争に参加せず、「軍事非同盟」を外交政策の基本として推進(NATO非加盟)する国家です

Swedish forces.jpgODA実績は62億ドル(世界第6位)で、対GNI比は1.1%(世界第1位)。国際平和協力活動(PKO等)に積極的に参加しており、軍縮・不拡散、人権、環境問題等にも貢献

ただ、NATOには非加盟であるものの、2014年9月にはNATOとの「ホスト国支援」に関するMoUに署名するなど、情勢の変化に対応したような動きも見せています
流石に最近のロシアの動きを見て、国民の視点も変わってきたのでしょうか?

なお、同じく自衛隊の人材確保に苦労している日本の場合は、まず陸上自衛隊が「無駄に」維持している巨大な定員を削減し、自衛隊入隊者を海空自衛隊に振り向けることが必要です。
徴兵制なんかにしたら、教育訓練に人員を割かれて極めて非効率です

世界の徴兵制:背景は様々
ロシアの脅威に対抗するため
脅威対処と国民意識の醸成でイスラエル
「ルーマニア・チェコ・リトアニアが復活へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-04
「写真で確認:イスラエル女性兵士」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27

究極の男女平等のためのノルウェー
国民意識と社会福祉への人員確保のオーストリア
「ノルウェーは女性徴兵へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「オーストリア徴兵制維持へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

若者の社会教育?とイラン対処
「UAEが徴兵制導入」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-21-1

「砂漠の嵐」作戦25周年:過去の栄光は今・・ [米空軍]

米空軍の絶頂期だった「砂漠の嵐」作戦25周年

Desert Storm3.jpg25年前の1991年1月17日、イラクのサダム・フセインに侵略占領されたクウェートを解放すべく、「砂漠の嵐作戦:Operation Desert Storm」が開始され、約6週間の航空作戦とそれに続く約100時間の地上作戦でクウェートは解放され、イラク軍は大きな被害を受けました

同作戦をリードした米空軍を中心とした12カ国による航空作戦は、初めて実戦投入されたGPSやレーザー誘導の精密誘導兵器やステルス機が、近代的な防空システムを備えたイラク防空網と直接対決した戦いでしたが、開戦後僅か60分で、フセインはイラク軍との指揮通信や目となる監視レーダーをほぼ全て失ったと言われています

このように、精密誘導兵器やステルス機と言った航空戦力が戦いを主導し、米空軍が一つの絶頂期を迎えたのがこの「砂漠の嵐作戦」で、その後米空軍はこのモデルを様々な作戦に適応していくことになります

米空軍はこの過去の絶頂を懐かしむように、「砂漠の嵐」作戦25周年「特設webページ」を立ち上げ、関係者のインタビュー映像や解説映像を大量にアップしています
また、米空軍webサイトも、現状を踏まえて控えめながら、幾つかの記事をアップして振り返っていますのでご紹介します。

米空軍「特設webページ」
http://www.af.mil/AboutUs/DesertStorm25thAnniversary.aspx
米空軍協会の機関誌記事「25年を振り返る」
http://www.airforcemag.com/MagazineArchive/Magazine%20Documents/2016/January%202016/0116scrapbook.pdf

同航空作戦を計画したDeptula元中将は
Desert Storm2.jpg●「砂漠の嵐」作戦の初動24時間で、多国籍軍はイラク国内に散らばる重要目標150以上を攻撃した。この攻撃目標数は、WW2当時、欧州戦線で当時の第8空軍が1942年と43年に攻撃した全ての目標とほぼ同じ目標数である

●同航空作戦は、敵の指揮統制中枢から最前線部隊までを「同時並行的に攻撃」し、双方の犠牲者を局限し、精密誘導とステルスと宇宙アセットを有機的に活用し、統合作戦でかつ多国籍部隊による作戦であった点で「過去の戦いからの劇的な離別」であった
●更に、歴史上初めて、航空戦力やエアパワーが戦いの鍵を握る中心となった戦いであり、戦争戦略の実行に置いて初の戦いであった

米空軍アップの映像例:初投入GPS誘導の巡航ミサイル

///////////////////////////////////////////////////////////////////

しかし、世界に衝撃を与えたこの作戦は、米国の軍事技術に驚嘆した中国や「非国家組織」をして、知恵を絞らせ、米軍を分析させ、A2ADや非正規戦(テロ等)の道へ駆り立てることになります

中国はA2ADへ、米軍は対テロへ
Desert Storm.jpg●ステルス機等による米軍の圧倒的通常戦力優位を痛感した中国は、西太平洋地域で米軍拠点が少ないこと、米軍が宇宙アセットやネットワークに依存している事を弱点と捕らえ、また1996年の台湾総統選挙時に空母2隻に沈黙させられた屈辱を「臥薪嘗胆」エネルギーとした
●更に比較的容易に獲得できる弾道ミサイルや巡航ミサイル技術に注力し、また新ドメインであるサイバーや宇宙戦で米軍の弱点を突くべく、経済成長を追い風に、20年に渡りA2AD態勢構築に取り組んだ

一方米空軍は、バルカン半島の民族対立やアフガンやイラクでの戦いに引き込まれ、対テロ地上作戦支援を中心に取り組み、強固な防空網を備えた敵との戦いを忘れ、敵から空襲やミサイル攻撃や電子妨害を受ける記憶を失ってしまう
2010年QDRは、初めてエアシーバトル検討を公式文書に掲げ、本格的な相手となる中国の軍事力台頭に備えた検討を開始するが、陸軍や海兵隊の足引っ張りや強制削減がちらつく中、米空軍はその方向性が揺らいでいる

●「砂漠の嵐作戦」の夢を追うかのような「亡国のF-35」計画はますますその混迷を深め、「ある意味、米空軍はその成功の犠牲者」と2010年当時の国防長官に呼ばれるに至った苦しい状況に追い込まれ、中国の新たな脅威の前にただ呆然と立ちすくしています
●そしてその米空軍に盲従し、未だ「25年前の米空軍」を目指すかのような航空自衛隊は・・・これぐらいにしておきましょう

ロバート・ゲーツ語録100選より
●米空軍は、空対空戦闘と戦略爆撃に捕らわれすぎており、他の重要な任務や能力を無視しがちである。ある意味で空軍は、その成功の犠牲者とも言える
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07 

いい加減にしろ戦闘機命派
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「悲劇:F-3開発の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「悲劇:日本でF-35組立開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

米空軍2015年度の飛行事故統計 [米空軍]

Class A mishap.jpg7日付米空軍web記事は、米空軍2015年度の飛行事故統計の概要を紹介し、非常に事故が少なかった2014年度からの増加を報じています。
なお、ここでいう米国の予算年度とは、2015年度の場合は「2014年10月1日~2015年9月30日」を指します

事故増減の背景まで細かく突っ込んだ分析はありませんが、小さなとこからコツコツと精神で、2013年度の統計も一部含めてご紹介します。

7日付米空軍web記事等によれば
(13年度の数字は昨年1月号米空軍協会機関誌記事より)

各数値の記載は「2013年度→2014年度→2015年度」の順
なお数値は「Class A」事故(大事故:死者あり又は被害額2.4億円以上)を指し、事故数総計には飛行中事故、飛行関連事故、航空機地上作業事故、無人機事故が含まれている

事故数総計 35→24→35
うち飛行中事故 19→7→19
うち無人機事故数 12→16(2014年度→2015年度の順)
10万飛行時間当たりの事故数 1.13→0.44→1.12
(2014年末時点で過去10年の平均値は1.09

米空軍協会機関誌記事など分析
Class A mishap3.jpg過去10年間の年間「Class A」事故数総数の平均は「18.5」であり、2013年度と2015年度は平均とほぼ同じ
●予算の強制削減の影響で、2014年度(2013年10月1日~2014年9月30日)は米空軍全体で飛行時間が減少したため「事故数総数」が減少したとも解釈できるが、事故率自体も大幅に減少している点は注目に値する

現在の米空軍は、空軍史上最も「高齢」の装備品(平均26.2年間使用:2014年末時点)を使用している米空軍だが、米空軍の「chief of safety」は、維持整備に万全を期しており、装備の高齢化と事故との関連性は否定している
一方でWeish空軍参謀総長は、B-1爆撃機の燃料系の火災や、F-16戦闘機のキャノピー破損で半数の同戦闘機が飛行停止になった事例を挙げ、「アセット老朽化」を訴えている

他軍種の「10万飛行時間当たりの事故数」は、2014年度の統計で、米陸軍が1.49(飛行時間の大半はヘリによる)、米海軍は1.69(過去10年平均:0.88)、米海兵隊1.94(過去10年平均:2.09)である
///////////////////////////////////////////////////

Mueller.jpgもう少し米空軍のデータも分析がほしいところですし、他国との比較や日本との比較もできればよいのですが、そこまで突っ込む気力がありません
恐らく航空自衛隊は米空軍より事故率は低いと思いますし、米空軍の事故率は全世界で実戦も含めた飛行が多いので、主要な空軍国よりは事故率は高いと思います

米空軍の「chief of safety」であるAndrew Mueller少将がコメントしているように、「大きな視点で数値のトレンドを見ることが重要で、毎年の変化だけに注目すべきではない」との俯瞰的視点が必要でしょう

もちろん「Class A」レベルの事故ともなれば、詳細で分厚い事故報告書が作成され、事故原因と対策が示されるのでしょうが・・・

飛行事故関連の事故
「ロシア空軍事故続発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「米空軍事故増加警戒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-05

メッセージを送る