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インド首相の米国訪問で軍事協議はおだやか!? [安全保障全般]

外国首脳と初のホワイトハウス夕食会
痛いところにあまり突っ込まず友好を軽く演出
パキスタンや環境パリ協定に触れず、記者質問も受けず

trump Modi3.jpg25日から26日にかけインドのモディ首相がワシントンを訪問し、25日には外国首脳として初のホワイトハウス夕食会、26日はトランプ大統領と会談しました。オバマ政権時代に3回訪米したインド首相ですが、トランプ政権後は初の訪米です

全般に米メディアによれば、まだアジア太平洋での立ち位置が定まっていない米国政権も、内外に諸問題を抱えるインドも、以前の3回のインド首相訪米と比較し「low-key」だったとの評価ですが、双方に良い関係を模索しつつ、主張を今後持ち出したいとの思惑もみえる会談だったようです

米国側はインド首相到着の数時間前に、国務省がパキスタンのテロ組織「Hizbul Mujahideen」のリーダー「Syed Salahuddin」への制裁措置を発表し、会談前にC-17輸送機の輸出許可や、総額2000億円以上の無人海洋偵察機「Guardian」22機の取引推進を明らかにし、首脳会談の環境作りに配慮しています

首脳会談の主要ポイント
trump-Modi2.jpg会談後ホワイトハウスの庭に登場した両首脳は、2回もハグしてより緊密になりつつある関係をアピールした。2日間の滞在だったが、両首脳が対話する時間は十分に確保された

●対テロに関しては、トランプ大統領はパキスタンとの言葉は使用せず、「両国ともテロの被害を受けており、テロと過激思想の撲滅の決意を固めている。我々は過激なイスラムテロを撲滅する」と表現した
●一方で1.8億人のイスラム教徒を国内に抱え、パキスタンを根拠とする過激派を警戒するモディ首相も直接パキスタンには言及せず、更に「イスラム」との言葉も使用せず、テロリストの聖域や安住の地を根絶する重要性を語り、米国との情報共有を強化すると表現した

中国に関して両国は懸念を示しており、過去10年間の米印の関係改善はこの要因が大きいが、現時点でトランプ政権は中国を北朝鮮対策の重要な関係国としてしか具体的な動きを示しておらず、米印鑑の具体的な協議内容は不明
インドが2001年以降に総額3000億円を超えるアフガニスタン支援を行っていることも取り上げられ、両国がアフガンに共通の利害を持っていることも確認された

trump Modi.jpg●「America First」と米国内雇用確保を掲げるトランプ大統領と、「Make in India」を推進するインド首相は、経済関係面で難しい関係にある。特に米側は約3兆円もの対インド貿易赤字を抱え、またインド人技術者への米国ビザ発行も問題も検討課題に挙げている
●米大統領は会談後インド首相の前で、「インド市場への米国製品の輸出障壁を取り除くことが重要だ。そのことで対インド貿易赤字を削減する」と明確に述べている

一方で米大統領はインド首相の経済運営を讃え、モディ首相もトランプ大統領やその家族のビジネスマンとしての業績をたたえ、米大統領の指導力が両国関係の「積極的で未来志向の」発展に寄与すると表現し、米大統領をインドに招待すると語っている
●しかし、インドが厳しく非難している米国のパリ協定脱退については、両国首脳とも言及を避けた

軍事協力はまだまだ初期段階か
2016年後半にインド側が米側に要望していた海洋監視無人機「Guardian」は、オバマ政権が次期政権に判断を委ねることにした案件である。
●この他にもインドは米国製無人機を希望しており、その中には無人攻撃機も含まれている。しかし攻撃型無人機の売却は、有志連合を組むレベルの同盟国だけに認めており、これをインドに許可することは「大きな政策変更」を伴うモノと専門家は指摘している。

trump Modi2.jpgインド国防省関係者は匿名で、今回の首脳会談でトランプ大統領は、戦略的な問題に関する重い課題の議論を避け、経済問題を重視していたと語っており、この様な米国の姿勢を受け、インドはイスラエル製の攻撃型無人機の検討も進めるとも明らかにした
●米印間の国防関係は、米がインドに兵器を売却する関係(これまでの総額約1.7兆円)だが、インド側はこれを共同開発レベルにしたいと考えている。この枠組みがオバマ政権時代に結ばれたDTTI(Defence Technology and Trade Initiative)であるが、具体的な共同開発計画に至っていない

オバマ政権時代は、カーター長官が盛んに訪印してDTTI関連協議が行われたが、今回の首脳会談ではDTTI関連議論はなかった
モディ首相は会談後に「トランプ大統領と2国間の国防技術協力強化について議論した」と発言したが、第4世代機であるF-16のインド国内製造レベルに議論が限定され、全ての高価値部品が米国製で占められることから、インド側の技術獲得希望からは大きく離れている
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trump7.jpg米国側は、依然として国防省や国務省の政治任用ポストに「大量の空席」があり、新たな政策や方針を打ち出せる段階にはありません。とりあえず首脳会談を行い、時間を稼いでいる感じでしょうか・・・

トランプ大統領は「America First」を主張する姿勢を、モディ首相も「Make in India」で受けて立ち姿勢をメディアの前でアピールし、「イスラムやパキスタン」への表現に配慮しつつ対テロ協力を打ち出し、相違が大きいパリ協定については触れずの姿勢で、国内の支持率が気になる両首脳の外交得点稼ぎに貢献した会談と理解しておきます

対中国の部分が気になるので、他に関連報道が出たら追記します。たぶん・・・

米印関係の関連記事
「インド首相のオバマ訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-08
「4月カーター長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-15
「DCでJエンジンやカタパルト議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12
「印検査院がロシア製戦闘機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1

「やっと3カ国 Malabar」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14
「カーター長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04
「米印の国防協力合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26-1
「インド首相の米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-30

「ヘーゲル長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
「米印関係ランクアップ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1

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米下院がINF全廃条約破棄を要求へ [安全保障全般]

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SSC-X-8 2.jpg20日に米下院軍事委員会の戦略戦力小委員会が打ち出した2018年国家授権法(NDAA)案にロシアが2月に配備したと報じられている巡航ミサイルをINF全廃条約違反だと認定し、大統領に同条約からの離脱を勧告する文言が盛り込まれ、更に地上移動発射式の巡航ミサイルを導入するよう求める内容となっている事が明らかになりました

28日に下院軍事委員会で詰めの審議が行われる下院2018年国家授権法(NDAA)案ですが、後日「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」が同案に含まれることもご紹介しますが、「INF全廃条約からの脱退」案も含まれるかなりドラスティックなモノとなっています

INFGorvy.jpgロシアのINF条約違反の巡航ミサイル配備に関しては、その報道の直後から米軍幹部から警鐘を鳴らす発言が続いており、3月にはハリス太平洋軍司令官が「同条約に縛られない中国の様な国に身ぐるみはがれたようなモノだ」、「米国は宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守しており、このカテゴリーのミサイルを一切保有していない」と皮肉たっぷりに表現するなど、問題意識が高まっていたところです

INF条約に関する種々の経緯は末尾の過去記事でご確認頂くとして、「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」と同様に、すんなりと成立するような案件ではないでしょうが、時代の変化を象徴する動きですのでフォローしておきます

22日付米空軍協会web記事によれば
congress.jpg●米下院軍事委員会の戦略戦力小委員会が打ち出した2018年国家授権法(NDAA)案には、「ロシアはINF条約に違反している」との表現が盛り込まれている
●また同案には、議会から大統領への勧告として、これ以上同条約に縛られないと米国として宣言することを認め、ロシアが配備したと同程度の新型ミサイルを開発することを要求することが盛り込まれている

●同案は「射程が500km~5500kmの地上発射型の巡航ミサイルで、地上移動可能なタイプを開発するよう要求する」と表現し、米露が1987年に調印した、いわゆる戦術核兵器の使用を防ぐためのINF全廃条約の第6条を無視するよう明確に求めている

Harris CSIS3.jpg今年2月にロシアによるINF条約違反の巡航ミサイル配備が報じられた後、米軍幹部から懸念の発言が相次ぎ、3月にはSelva統合参謀副議長がロシアの行為は明確なINF条約違反だと下院軍事委員会で証言し、ロシアは戦術的な「核兵器の使用意欲を示した」と批判している
●また4月にはハリス太平洋軍司令官が、中国が保有しているミサイル戦力の9割は、INF条約で縛られた米国が保有できないタイプの兵器でアリ、「身ぐるみはがれたような状態だ」と議会で自虐的にコメントしたところである

ちなみに4月のハリス大将証言の他の部分は
●INF全廃条約は米国とソ連のみが力を持つ2極世界であった1987年に締結されたものだが、我々は今、多くの国が射程500~5500kmの兵器を保有又は開発する世界にいるのだ
イランも、この種のミサイルの発射試験を1月にも行うなど、盛んに増強している

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今年2月にロシアが配備したのは、仮称「SSC-8:9M729」との長射程巡航ミサイルで、全欧州を射程に収めるロシア西部に配備したと米国政府や軍高官が訴えています。

Hyten7.jpg上記以外にも、4月4日には米戦略コマンド司令官が「米国は防御手段を持たない」と危機感を表現してるところです

「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」と同様に、6月28日に下院軍事委員会で議論されるようで、今後の成り行きがに注目ですが、確実にINF条約破棄の気運は盛り上がりつつあると言えましょう

INF条約関連の記事
「ハリス司令官:INF条約は宗教戒律か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

「米とカナダが巡航ミサイル対処に協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14 

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「北極海ブームは幻想」との見方 [安全保障全般]

北極海航路1.jpg雑誌「軍事研究」2017年5月号が、文谷数重氏による「幻想に過ぎぬ北極海ブーム」との論考を掲載し、北極海の「氷」減少による北極航路の活性化やそれに伴う北極資源開発は、日本にとって(中国にとっても)積極的に関与する意味がほとんど無いとの意見を紹介しています

もちろん、北極海沿岸国にとっては航路の活性化はそれなりの意味があり、将来軍事的な側面に影響を与える可能性は依然あるのですが、それ以外の国にはメリットは少ないと筆者は主張し、何となく雰囲気が醸成されつつある「北極海ブーム」を煽る経済誌やマスコミ、またそれに載せられて前のめりな日本政府の姿勢も戒めています。

具体的には、北極航路の「スケールメリットの欠落」、「厳しい気象条件」、「輸送需要との乖離」を理由に挙げ、沿岸国以外にとって有効活用が難しいと説明し、徐々に問題点への理解が進みつつアリ、「北極航路は期待はずれに終わる」と断言しています

まんぐーすも「北極海ブーム」を冷静に見るため、基礎的なことをお勉強しておきたいと思います

北極航路は「スケールメリットが欠落」
北極海航路2.jpg北極航路は浅瀬があるため大型船の運航が出来ず、スケールメリットが享受できず運送コストが高くなる。具体的には水深13mのサルニコフ海峡がネックになる
●海運の比較基準単位(TEU:20フィートコンテナが何個積載可能か)で言うと、南回りでは2万TEU以上の輸送船が出現する中、北極海航路では4千TEUが限界

●船舶の搭載量を2倍にしても、船の価格、燃料費、乗員人件費等を総合しても経費は1.58倍に程度で収まることから、輸送距離の短さを勘案しても、スケールメリットを生かせない北極海航路は南回りに太刀打ちできない
横浜からハンブルクまでの海運経費をコンテナ1個あたりで比較(2万TEUと4千TEU使用で換算)しても、北極海航路の経費は、スエズ運河経由(運河使用量含む)や喜望峰周りに太刀打ちできず、パナマ運河経由よりも高くなる

厳しい気象条件
北極海航路5.jpg北極海航路の気象条件は不安定で厳しく、安定運行できない。また冬季は使用できないのも大きい
夏の間も安定しない。年による氷や天候の変動が大きく、北極海航路の使用可能期間の予測が難しい。また夏季でも高緯度帯にある北極海航路は、不安定で厳しい気象条件に陥りやすく、濃霧の影響も懸念される

●この様に定期運行と相性が悪いことは致命的海運は決まった曜日の決まった時間に出航し、決まった曜日に目的地や寄港地に到達しなければ港湾施設利用上の問題が生じるし、信頼関係が築けない
使用できるときだけ北極海航路を柔軟に使用するとの考え方では、海運業界のなかでは成功が見込めない

世界の輸送需要と航路の乖離
北極海航路3.jpg東西海運の世界需要の柱は、中国沿岸部から欧州のロッテルダムやアントワープ港への輸送が圧倒的だが、この2地点の距離は北極海航路は1.6万kmで、スエズ経由は1.8万kmであり、距離短縮のメリットも北極航路にほとんど無い
加えて北極航路は砕氷船や流氷を避けての航行で速度が落ち、到達時間は同じか余計に必要な可能性も高い。北極海航路最大のメリットである日数短縮も怪しいのが現実だ

●また南回りでは、シンガポール等の海運のハブに寄港して荷物を入れ替えたり加えたりする事で、船舶の輸送容量を最大限効率的に活用可能であるが、北極海航路にはその様なオプションは無い
●更に速度を追求して北極海航路を最大限生かすにしても、ユーラシア大陸の鉄道輸送もライバルとなる。鉄道では途中で積み替えもあるが、それでも北極海航路より早く、毎日のように出荷も可能となる
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以上の様な海運上の北極航路と他の南回り航路との比較だけで無く、「北極海ブーム」のよりどころである「未開の資源開発」にも筆者は厳しい目を向けています。

北極海航路4.jpg具体的には、資源開発の困難性や資源国際価格の低迷等から、「月に核融合用のエネルギー源が豊富にある」との辛辣な表現で、埋蔵は確認できても、コスト的に採算の合う採取・輸送・利用する方法が無いと言い切っています

そしてこの様な現実的な視点が現場や専門家ではかなり共有されているのに、国土交通省以上の政府で認識が不十分だと訴えています。

以上のお話しは、日本や中国の海運業からの視点でアリ、安全保障上の視点からは別の見方もありましょうが、「知らなかった・・」お話しなどで取り上げました

あわれ米国の砕氷艦
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

北極圏:米国防省と米軍の動き
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26

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第2弾:米カナダ防衛戦争が兵器市場で [安全保障全般]

追記第3弾:フィリピン国防次官の発言
米との同盟を敷石と表現も、中国を非難せず、中露とも関係強化
2017年アジア安全保障会議を特集
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
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Bombardier-C2.jpg2日付Defense-Newsが、トランプ政権による北米貿易協定NAFTAの見直し宣言などの保護主義姿勢の流れの中、ボーイングがカナダ航空機メーカーを不当ダンピングだと訴えたことを契機に、カナダ側がボーイング製FA-18購入見直しをちらつかせて勃発した貿易紛争の続報を伝えています

カナダ政府のカナダ航空機メーカー「Bombardier」に対する各種補助金が、同社旅客機「C Series」の米国売り込み価格を不当に押し下げているとのボーイングの訴えに、米国政府当局が調査開始を決定し、これに反発したカナダが18機のFA-18交渉中断したことを先日ご紹介しました

「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20

FA-18EF2.jpg今回の記事は、カナダがこの流れを受け、7日発表予定の新たな国防政策指針に含まれる予定の戦術ヘリや空中給油機などの装備品購入に関し、欧州製品にも目を向ける見直しを行っている模様だと指摘するものです

トランプ政権は既に、カナダ産の木材に新たな関税を設け、同様の追加関税をカナダ産の日用品にも拡大する方向を示唆しており、両国関係にはよくない雰囲気が漂っています
既に表明しているNAFTA見直しの動向もあり、米国の対外姿勢の変化を見るケーススタディーとして、第2弾で状況をご紹介します

2日付Defense-News記事によれば
●カナダ政府関係者は「Bombardier」旅客機のケースで如何に米側の制裁を抑止するかを検討しているが、同時に、米国企業はカナダ軍装備や関連部品の最大の供給元であり、その供給の流れをカナダは維持したいと考えている
Sajjan Canada.jpg●5月31日にカナダのHarjit Sajjan国防相もカナダ軍需産業関係者に、「米カナダ間の装備や部品流通の流れを確保するよう協力をお願いする。国境が閉じないように皆さんの声が必要だ」と要請したところである

●一方で同国防相は同じ場で、ボーイングの訴えを「信頼できるパートナーの行う行為ではない」と厳しく非難している
●これに対してボーイング社は変化を示さず、6月1日に予定されていたFA-18製造カナダ企業のメンバー発表を突然キャンセルし、「現状の全般状況を踏まえ、今日はこのような良いニュースを共有するにふさわしくないと判断した」とコメントし、今後の日程を明らかにしなかった

●このようなな中、カナダが7日に公表する新たな国防政策指針に含まれるであろう、ボーイング社も売り込みを狙っているヘリや空中給油機や無人機などの新装備品に行くへに関心が集まっている
●1日、公共サービス調達大臣のJudy Foote女史が、カナダ政府として軍事装備の取引企業の再検討を行っていると発言したからである

カナダ国防相も「カナダは信頼できる軍需産業とのみ取引を望む」と発言しているようで、欧州軍需産業関係者がカナダ市場に関心を示している
Griffon heli.jpg●すでに昨年、エアバス社がカナダ空軍に捜索救難機を提供する契約を獲得しており、現在はカナダ空軍の空中給油機選定向け、ボーイング社と対決を予期して製品宣伝を開始している

●他にも、捜索救難機の能力向上や「Griffon helicopters」の後継機検討をカナダ国防相が明らかにしており、欧州軍需産業が参入の機会をうかがっている
●「米カナダ間の貿易紛争は、欧州企業に参入機会となる可能性がある。今後数か月の間、どのような展開を見せるかに注視している」と欧州軍需企業関係者は語っている
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トランプ大統領の「パリ協定脱退」宣言により、米国への風当たりが強くなっていますが、脱退宣言などせず適当に胡麻化していたほうが楽なのに・・・と思います。さほど国内産業や石炭産業に恩恵があるとも思えない脱退に、なぜこだわるのでしょうか???

trump5.jpgいろいろなぞの多いトランプ政権ですが、貿易問題もその一つです。TTPしかり、NAFTAしかり、大局的に見れば続けた方が米国の得なのに・・・と思います

米国とカナダ双方にとって不毛な争いに突入しそうな気配の「Bombardier」と「FA-18」事案ですが、日本のことも顧みつつ、眺めていきたいと思います

米国とカナダの関係
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

日本も対岸の火事ではない
「悲劇:日本のRQ-4購入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-22
「ACC司令官:F-15退役やむなし!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

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ロシアの国防調達計画2025年を探る [安全保障全般]

2017年アジア安全保障会議を特集
(第16回シャングリラダイアログ)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
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Putin-decree.jpg5月25日付Defense-Newsがロシア日刊紙を引用しつつ、ロシア政府が検討している2025年までの国防調達計画の状況を推測レポートしています。

まだ具体的なことは明らかになっていないようですが、何となく雰囲気が伝わってきているようなロシア紙の報道をが元になっていますので、雰囲気を察するべくのぞいてみたいと思います

ウクライナや中東で存在感を見せ、米国を真っ青にさせつつあるロシアですが、伝統の5か年計画では得意の粉飾やごまかしが横行しているようで、専門家の評価は大変厳しいようです

米国軍事メディアで取り上げることが少ないロシア軍事計画ですので、断片的ながら記事を紹介します

25日付Defense-News記事によれば
RS-28 Sarmat.jpg●5月中旬発刊のロシア日刊紙「Kommersant」は、プーチン大統領とロシア軍指導層が会議を行い、2020年までの国防調達計画に続く、2025年までを対象とした国防調達計画を議論したと報じている
●細部は不明だが、新しい国防調達計画においても核戦力の3本柱が重視されているようである。2020年までの計画では、海軍と空軍がその半分を半分を占めており、2025年までの計画でもその方向が維持されるとみられている

●18日付のタス通信は、プーチン大統領が2025年までの調達計画議論について、「ロシアの軍事及び軍需産業政策を遂行する上で、最も重要な手段である」と表現し、2020年までの計画成果を有効活用する機会だと語ったと報じている
2020年までの計画目標は、2020年までにロシア軍全体の装備の7割を再構築(rearm)する目標を掲げ、特に核戦力をすべて新装備に更新する目標を掲げていた。また航空宇宙分野は68%、地上部隊は43%、空てい部隊は58%の更新が目標だった

Bagruzin.jpgロシア軍需産業の専門家であるPavel Luzin氏は、「2020年までの計画と2025年までの計画は重複する部分が多く、2020年までの計画の失敗を隠すことが目的の一つとなっている。2020年計画が失敗したとは言わないが、予算の不足で調達目標にはるかに及ばなかった」と批評している
●ロシア日刊紙によれば、2025年までの計画では、核兵器の3本柱が非常に重視されている。3種類の大陸間弾道弾ICBM計画、RS-26 Rubezh (a development of the Yars-M), RS-28 Sarmatと鉄道移動式のBagruzinが推進されるだろう

●細部は明らかになっていないが、20205年計画では、引き続きSU-30 やSU-35シリーズの戦闘機の調達が重視され、ステルス戦闘機T-50の大量発注も予期される。また長距離爆撃機Tu-160製造と並行し、新型長距離爆撃機の開発も含まれるだろう
海軍関連では、2020年計画に続き、再び原子力潜水艦や小型水上艦艇が重視される。ボレイ級戦略原潜やヤセン級攻撃型原潜の配備計画は完了していないが、2025年計画では新たに「Husky級弾道ミサイル潜水艦」計画の推進を盛り込むだろう

Husky class.jpg2025年計画で最も話題となるのは、新たな空母と原子力推進駆逐艦の建造計画が延期されることとなろう。プーチン大統領とロシア軍指導層が会議を行い、この延期について決定したと伝えられている。
●この延期は、伝統的に潜水艦を重視するロシア海軍の流れを受け継ぐものだともいえるが、ロシア軍需産業が大型水上艦を建造するインフラを保有していない現実もある。(ソ連時代の大型艦艇や大型ディーゼルタービンはウクライナで建造していた)

初実戦経験の空母クズネトフは???
●2025年計画と直接関係ないが、艦載機2機を失い、その存在意義を海外メディアが疑っている空母クズネトフは、初の作戦任務で地中海に進出して対シリア作戦に参加した後、大規模なオーバーホールを受けている
●今回の大規模修理では、新型巡航ミサイル「Kalibr」と対艦ミサイル「Oniks」を発射する垂直発射装置を装備する計画があるといわれている
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Kuznetsov-UK.jpgウクライナ侵攻では、ハイブリッド戦と呼ばれるNATOや米国の弱点を突く作戦を繰り広げたのがロシア軍です。

不正規兵による反政府勢力支援とメディア戦、武力使用段階では巧みな電子戦とサイバー戦、SNSまで活用した目標情報入手と戦力運用など、米軍が腰を抜かすほどの巧みな立ち回りを見せたロシア軍です

しかし上記記事が描くロシア軍は、旧ソ連時代そのままの腐敗体質を引きづる組織の機能不全と、原油価格低迷に苦しむロシア経済の影響を受けた厳しい予算の現実です
二つの側面を持つのがロシア軍の現実でしょうが、足元からはったりの動きまで、しっかり見ていかねばなりません。

潜水艦重視の文化や大型艦艇建造能力がウクライナに残っていることにも注目したいと思います

ロシア軍需産業とロシア製品
「ロシア軍需産業の輸出見通しは悲観的」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-19
「露軍需産業トップが未来を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露の専門家が自国軍需産業を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-13

「中国がSu-35輸入開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「インド検査員が露製艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

ロシアに関する記事
「東アジア戦略概観の視点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に米軍驚嘆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「また、6機目の大事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「航空事故多発の露軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13

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第16回アジア安全保障会議(2017年シャングリラダイアログ)特集 [安全保障全般]

追記番外編!
週刊文春6月22日号(15日発売)が本会議に注目!
稲田大臣:最後の国際会議(?)で渾身のジョーク炸裂か!?

3日、マティス国防長官に続いて登壇したのは3名の国防大臣。日本の稲田大臣、豪州のMarise Payne大臣、そしてフランスのSylvie Goulard大臣の3名で、いずれも同年代の女性国防大臣でした。

週刊文春(151ページ)が注目したのが稲田大臣が懸命に練習したという英語でのスピーチ!
Inada-IISS.jpg●まず最初に主催者であるチャップマンIISS理事長に礼を述べ、次にシンガポールというアジア太平洋地域(Indo-Pacific.と表現して米国との一体感を強調!)の要衝で本会議か開催されることを讃えます。
そして同時に登壇した豪州とフランスの女性国防大臣を紹介し、以下のフレーズを・・・
「We belong to the same gender, we belong to the same generation and, most importantly, we are all good looking.

そして週刊文春記事は解説します。
●「私たちはみんな美人なんです:we are all good looking」・・・との練りに練った渾身のジョークで会場の注目を集めたはずだった
●将来の女性首相候補と期待されたが、南スーダンPKOでの日報問題や森友学園問題を巡る国会答弁で不安定さを露呈し、これが最後の国際会議になるかも・・・と言われている

実は、まんぐーすも「週刊文春」の取材を受けたんです!
bunsyunn.jpgアジア安全保障会議のブログを見た記者の方から連絡があり、会議の性格や今回の特徴など、約30分間ほどの電話取材でした。

残念ながらまんぐーすの解説は記事の中身に使用されませんでしたが、1/2ページほどの記事なのに、極めて丁寧な取材ぶりで感心させられました

さすが週刊文春! 「文春砲」の陰には、あのような地道な取材の積み重ねがあったのだ!

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追記第3弾
フィリピンは中国を非難せず、米中両方と関係強化
50周年迎えるASEANの議長国なのに・・・

Philip under.jpg4日、今回のフィリピン代表である政策担当国防次官のRicardo A David Jr氏がインドネシアやASEAN事務局長と登壇し、「地域安全保障に共通の目標を見出す」とのテーマで議論が行われました。

冒頭発言で同次官は、南シナ海問題で異なる見解が存在するとのみ表現し、中国を非難せず、米国との関係はそのままで演習等も行うとしつつも、中国やロシアとの新たな軍事関係構築にも取り組むと述べました

国防大臣が参加していない時点でフィリピンの姿勢が伺えますが、地域に共通認識が存在するエリアとして海賊対処、テロ対処、サイバー戦、人道支援・災害対処を上げる一方で、南シナ海の問題を「見解の隔たり」が存在する課題で対処が難しくなっていると、以下のようにちょっとだけ語りました(概要)

見解の隔たりが存在する分野には、南シナ海における領有権や海洋行動に関する論争があるルールの解釈を巡る解釈の相違により、法の枠組みが損なわれ、協力することが困難になっている
国際法を順守しながら、隣国やパートナーとどのように対応するかは、我々の安全で安定的な海を守るコミットメントへの姿勢を明白に表現するものである

Philip under3.jpg●この点で、我々はASEANと中国の間で、南シナ海における行動規範の案(draft framework of the ASEAN-China Code of Conduct on the South China Sea)がまとまったことを歓迎する
●案の完成は、海上での誤算による意図しない事象やアクシデントを避けるための、国防分野での努力の成果である。オープンな対話や現実的な協力は関係国の利益であり、信頼醸成に役立つ

●これらの安全保障問題(北朝鮮問題にも言及)に対応するため、フィリピンは2国間から多国間の協力関係強化を推進する
米国との同盟関係はフィリピンにとって「cornerstone」である。フィリピンは23か国と軍事協力合意を結んでいるが、外国軍との演習を認める米国や豪州との合意もこの一つである

●これまでの国防関係を維持する一方で、相互利益の観点から、新たなパートナー関係構築にも取り組んでおり、中国やロシアとの国防協力関係を改善したり開始したりしている
●強調しておくが、我が国の同盟やパートナーシップは、特定に国を対象としたものではない。相互の利益と懸念解消のためのものである

Philip under2.jpg●ASEANが今年50周年を迎えるが、この記念すべき年にフィリピンは議長国となる。2006年から始まったASEAN国防相会議(ADMM)も契機に、国防分野での関係も対話から実際的な協力に発展してきた
●ASEANの域を超えたADMM-Plusの枠組みでも、意見交換や演習を通じて相互利益拡大を図っている。今年10月にマニラで開催予定の11回ADMMと4回目のADMM-plusで、更に活動を深化させたい

以上のように、フィリピン代表である政策担当国防次官は、米国との同盟を「cornerstone」であると表現しつつも、決して南シナ海問題で中国を非難せず、昨年6月の国際司法裁判所によるフィリピン勝訴判決にも全く触れませんでした

中国への気の使いようはとても大きいといえましょう。でも、上司の国防大臣もこの国防次官も軍人出身(共に大将)であり、実態は分かっているのでしょう。米国と仲良くしなければいけないと・・・
ドゥテルテ大統領に気を使っているのでしょう・・・

米比関係の記事
「フィリピン主要3閣僚が南シナ海の米空母訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06
「米軍兵器の保管は認めない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

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追記第2弾
マティス長官の質疑応答

IISS shang4.jpg講演と同じく、何ら新味のない応対ぶりでしたので、質問のみ概要をご紹介します。
商売人であるIISSのチャップマン理事長は、なるべく多数の関係者に質問機会を与えるため、4人程度の質問をまとめて受けてまとめて回答を3回繰り返しました。

恐らくマティス長官は質問の意味を理解できなかった可能性があり(自らの講演の意味を理解していない可能性も)、最初のグループ質問への回答の前に、かなりの時間チャップマン理事長と相談しています

若干鋭いなと思ったのは、中国軍の大佐クラスが、能力強化への取り組みに関する流れで異例とも言える「台湾」への言及を指摘し、「一つの中国」認識に変化があったのか・・・と質問した部分です。
台湾言及に関しては、恐らく米国としてのシグナル発信なんでしょうが、マティス長官は原則論で間接的な対応をしています。

IISS shang6.jpgもう一つ興味深いのは、マティス長官が最初の回答の前振りでチャーチルを引用し、「米国は最終的に正しい選択や決断をするが、他の全ての間違った策を試した後にそうする」と自虐的に語り、そんな傾向があると認める口ぶりで語っていることです。トランプ大統領の部下になると、この言葉の引用が欠かせないのでしょう・・・

英語の聞き取り能力不足ですが、とりあえず質問はこんな感じでした・・・とご紹介します。それなりに練られた質問揃いですが、回答は準備されたお経を吟じるように基本原則にだけ言及し、個々の質問者は高い月謝を払っただけに終わっています

チャップマン理事長は何となく人気下降傾向の本イベントの人気回復のため、多数の質問を受ける方向に変更したのかもしれません
そういえば、朝日新聞の加藤洋一記者は質問しませんでしたねぇ・・・参加してないのかな? 新聞社やめたのかな?

質問の概要
IISS shang8.jpg●WW2後、地域の安全保障を支えてきた米国による秩序の時代は終わったのか?
河野太郎→TPPからの離脱を表明したトランプ政権は、当地にどのようなコモンバリューを見出すのか?
●中国軍人→この手のスピーチで異例の台湾言及があったが、一つの中国政策に変化か?
中国の南シナ海の埋め立てをはじめとする行為をいかに食い止めるのか

規範基づく秩序を取り戻すタイムテーブルを教えてほしい
TPPに復帰する可能性はないのか?
IISS shang7.jpg●北朝鮮のレジーム転換を追及しないとの話だったが、金正恩に統治の資格はあるのか

地域安全保障枠組みへの期待表明があったが、何を期待する
●中国女性将軍→航行の自由作戦が規範の基づくと主張するなら、どんな規範なのか教えてくれ
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追記第1弾
マティス国防長官のスピーチ

IISS shang3.jpg全く内容のないスピーチでした。
読んでがっかり。映像を見ても、原稿棒読みだし・・・心ここにあらず

前半の情勢認識部分は、上司の発言をそのまま借りて時間を稼ぐ内容で、
後半の米国の取り組み3点など、過去7年間の本会議国防長官スピーチで最低に中身の無いものでした

ただ、スピーチ30分に加え、質疑20分をしっかり確保していましたので、その点は訂正させていただきます
質疑については、気力があれば・・・

●冒頭からスピーチに中身がないことを宣言
IISS shang.jpg本会議参加の第一の目的は耳を傾けることである。聞くことで地域の情勢を把握し、共に問題を解決する方法を考えたい。
Ladies and gentlemen, my primary reason for being here is to listen. My goal is to walk away with a more rigorous grasp of the challenges we face so we can jointly craft solutions.

●北朝鮮問題が一番地域で問題だと語るも、トランプ大統領とペンス副大統領等々の発言を引用してほぼ終了
ペンス「最も喫緊で危険な安全保障脅威は北朝鮮だ」
トランプ「忍耐の時期は終わった」
ティラーソン「体制変更が目的ではない」
中国は北朝鮮への姿勢を行動で示すべきだ

●中国に関する発言にも全く新味なし。インド首相を引用で補強
中国の経済成長は歓迎するが、「rules-based order」への挑戦は受け入れられない
インド首相「インド太平洋のように地理的相互連関がある地域の経済発展と平和には、航行の自由や国際規範への尊重が不可欠」

●過激派によるテロ対処にも新味なし
共に今、戦わなければならない
トランプ大統領発言引用「テロが根を張るところでは、どこでも対処が必要」


●地域課題への米国防省の取り組み3本

第1に、まず地域の同盟強化
IISS shang2.jpg日本(原稿4行)→2015年ガイドライン、海兵隊グアム移転
韓国(2行)、豪州(4行)、合わせ上記3か国の共同体制推進期待

フィリピン(5行でドゥテルテ大統領の反米発言には言及せず比軍育成や共同訓練を着々と発言
タイ(6行で民主化期待、軍事協力推進を期待)
上記2国とはバイ関係だけでなく、国家群連携を期待

第2に、地域国の能力強化(インドネシア大統領の言葉引用)
地域国の能力を高め、地域の安定に貢献するよう働きかける
例えばインド、ベトナム、シンガポール、台湾!!!、ASEAN(今年50周年)
インドネシア大統領「ASEANは我々の家と平和を守らねばならない」

第3に、米軍の軍事力の強化(全く具体的な中身無し)
現在、米海軍艦艇の60%、米陸軍の55%、海兵隊の2/3が太平洋軍エリアにアサインされている(ホンマかいな???)。間もなく、海外展開の戦術航空アセットの60%が同エリアに配備される(はぁ?)
本会議に参加のマケイン上院議員やThornberry下院議員など、当地域への軍事力強化を強く訴える議員の力も借り、米軍戦力を強化したい

講演と質疑応答映像(講演28分、質疑24分)

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米国の姿勢を象徴!?:マティス国防長官はわずか30分
気力があれば、追記していきます・・・

IISS Shang.jpg6月2日夕刻から4日午後まで、今年も恒例の第16回アジア安全保障会議(2017年シャングリラダイアログ)が、シンガポールのシャングリラホテルで開催されます
会議の開始は2日(金)の夕食会からで、基調講演を豪州首相が行いますが、2日(金)は昼頃から、各国大臣クラスによる「バイ会談」が複数セットされるのが通例です。

同会議は、英国の民間研究機関IISSが主催する非公式の会議ですが、アジア太平洋のほぼ全てと、欧州主要国の国防大臣が一堂に会する点で、「アジア最大の安全保障イベント」と考えられていました。

IISS Shang3.jpgしかし今年は寂しいです。国防大臣の参加は、米国、日本、豪州、フランス、シンガポール、カナダ、インドネシアだけで、ロシアは副大臣で、フィリピンは政策担当次官、韓国に至っては研究機関の退役少将だけが登壇する予定になっています

ただし、稲田大臣が2日朝会見で、韓国国防相とバイ会談し、「日米韓」と「日米豪」国防相会議をやると発言してますので、韓国国防相は公開討論には出ない裏会談はやるのでしょう

最近数年参加が目立った欧州から少ないのは、対テロや移民対策でそれどころではない、トランプ政権とは距離を置きたい・・・などの様々でしょうが、英国が軍人だけなのは象徴的です

また、矢面に立つことが明らかな中国側の参加者は、ここ最近は中国軍の国際問題担当の副参謀総長レベル(大将)でしたが、今年は軍事科学大学の副学長(中将)がトップで、研究者的な少将とか上級大佐がプログラムに上がっているだけです。


Mattis11.jpgなんと言っても今年の注目はトランプ政権発足以来、ほとんど実質的にアジア太平洋政策について発信が無いトランプ政権が、マティス国防長官を会議に派遣して何を語らせるかです。

注目のマティス国防長官は、3日(土)のトップバッターとして午前9時(日本時間10時)からのセッション「米国とアジア政策」でスピーチし、その後会場からの質問を受けます

ついでに、今回はダンフォード統合参謀本部議長も会議に参加する事になっており、参加体制の上では最大級の配慮をしていますから、なおさら注目です。ちなみに同議長は、同会合での登壇はありませんが、31日に米国を発ち、日本を経由して同会議に参加してバイの会談を複数行い(推定)、その後に豪州訪問予定となっています


しかし・・・プログラムを見てびっくり!
Mattis44.jpgしかしプログラムを見てビックリ!!! メインイベントのマティス長官の時間割り当てが「僅か30分」です。私の知る限り過去7年間、しっかり1時間セットされ、45分程度のスピーチと15分の質疑だったのが半減です。

しかも休憩や予備時間なしで、9時30分から同じ会場で、稲田大臣と豪と仏の国防大臣が11時まで「ルールに基づく地域秩序」をテーマに登壇することになっており、延長一切なしの短い米国防長官プレゼン&ト質疑です。

IISSの関連webページでは、マティス長官が「Major Policy Speech」を行うと紹介し、米国防省webサイトは「マティス長官はトランプ政権の当地域政策を述べることを期待されている」と紹介しています。

IISS Shang2.jpgしかしこの時間配分では何も語れません・・・。トランプ政権が誕生して5か月近く・・・何も決まってないから語れない・・・を象徴するような「30分ステージ」です

そういえば、以下のような申し訳程度の米軍によるアジア太平洋関与活動が、取ってつけたように最近続きましたが、やっぱり本会議に向けた目くらましの手土産代わりだったんだ・・・と感じてしまいます


最近の米軍のアジア太平洋関連動向
●5月25日、昨年10月から中断していた「航行の自由作戦」をミサイル巡洋艦「USS Dewey」で再開
●5月27日、朝鮮半島近海で活動中の空母カールビンソンとレーガンに加え、シアトル近郊の海軍基地から空母ニミッツが派遣され、3隻体制をとることが明らかに(6月1日に出航)
●5月31日、数年ぶりに米軍がICBM迎撃ミサイルの試験を行い成功

USS Dewey.jpg5月24日朝、海南島の南西150マイルを飛行中の米海軍P-3Cに対し、中国軍J-10戦闘機が異常接近との事象もありましたが、アジア安全保障会議を前に、突然、朝鮮半島周辺や南シナ海周辺で米軍の活動が活発になってきたとの印象です

半年ぶりの「航行の自由作戦」しかり、異例の空母3隻体制しかり、取って付けたような、つじつま合わせの様な気がしてなりません。

空母3隻に関しては、ニミッツはカールビンソンと元々交代予定でアリ、レーガンは5月下旬に横須賀での定期修理を終えたばかりで、乗員のリフレッシュ訓練を終了するまでは十分な戦力では無いはずです。

相変わらず、米国防省webサイトは対ISISやアフガニスタン関連の記事で溢れ、アジア太平洋関連の最近の話題は、2018年の環太平洋軍事演習RIMPACに今回も中国を招待する計画だとの軍事メディア報道や、岩国展開の海兵隊F-35B部隊が順調に訓練中とのニュースぐらいです

CV  Carl Vinson.jpgマティス長官講演を「Major Policy Speech」とwebサイトであおっていますが、これも商売人チャップマンIISS理事長の演出のような気がしてなりません。
将来では無く、過去にこんな事をやったと羅列し、これまでの施策を継続すると誓い、同盟国の協力を訴える中身が精一杯では無いでしょうか

何せ米軍は疲弊しています中東や欧州への派遣頻度は高止まりで、装備品の修理費もママならず、空軍パイロットは危機的に不足状況でアリ、アジア太平洋地域に画期的な政策を打ち出す余裕はありません

GBI-KV.jpgおまけに、フィリピンやタイやベトナムや韓国の米国との協力姿勢は冷ややかで、中国や北朝鮮対応に妙案は無いでしょう。

そんな中、トランプ政権のアジア太平洋への姿勢を問われる会議が開催されるわけであり、直前に駆け込み行動「3本立」を詰め込んだ感が立ちこめています。

マティス長官の講演や関連の動きについては、追記しようと思いますが、過去7年間フォローしてきて、最近の新味の無さに飽きが来ていますので、いい加減・・・な感じが予期されます

日本関係者の登場
日本のNSCの山田さんが「アジア太平洋における核の危険」セッションに、統合幕僚副長の住田陸将が「海上紛争を防止する政治手段」のセッションに、それぞれ中国参加者を含む複数国の関係者と登壇して議論します

2017年のスポンサー企業は2社減
IISS Shang5.jpg●スポンサー企業は、2014年の10社から中華系のメディア資本2社(鳳凰網とフェニックスTV)が撤退し、2015年には8社に。
●2016年は米空軍の次期爆撃機を受注して活き上がる「Northrop Grumman」が加わり9社体制

●しかし今年は、「Northrop Grumman」と継続してスポンサーだった「三菱商事」が撤退して7社体制
●結果として、日本からは「朝日新聞社」だけがスポンサーになっています。恐らくスポンサー特権でしょうが、朝日新聞の加藤洋一記者は、米国防長官への質問者に毎年指名されています。

スケジュール
https://www.iiss.org/-/media//documents/events/shangri-la%20dialogue/sld%202017/iiss%20shangri-la%20dialogue%202017%20-%20speaker%20agenda.pdf?la=en

IISSの関連webサイト
https://www.iiss.org/en/events/shangri-la-dialogue

シャングリラ会合の過去記事
「2016年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

米国防省のweb記事
https://www.defense.gov/News/Article/Article/1198377/dunford-to-consult-with-us-partners-during-asia-trip/
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米国がサウジにTHAAD提供へ!? [安全保障全般]

Trump Saudi.jpg30日付Defense-Tech記事は、米国防省のFMS監督部署の文書を元に、20日のトランプ大統領サウジ訪問時に発表された、約12兆円の国防装備品の内容について説明しています。

これまでも報道で、沿岸戦闘艦4隻やヘリ150機などが断片的に報じられていましたが、公式文書を元に、THAADやP-8を含むより具体的な中身が語られていますので、ご紹介したいと思います

トランプ大統領最初の海外訪問国で、次がイスラエルとのインパクト大の訪問で、対イラン姿勢明確とか、イスラエルには説明できるのとか、色々議論がありましたが、装備品の中身から考えたいと思います

30日付Defense-Tech記事によれば
MMSC.jpg完全に固まったわけでは無いが、20日にトランプ大統領がサウジを訪問して発表した約12兆円の兵器取引には、THAADや開発中の最新沿岸戦闘艦が含まれているようで、共にLockheed Martin製である
●トランプ大統領が会見時に、「米国の素晴らしい企業が製造した装備を、サウジの友人が良い条件で入手出来るよう手助けする。この合意はサウジ軍が、より大きな安全保障の役割を担えるよう支援するものだ」と語っていた「a good deal」の事である

米国務省が許可した武器売却FMSを国防省で管轄するDSCA(Defense Security Cooperation Agency)がまとめた、今回の合意に関する「fact sheet」では、「70年育んできた米サウジ関係を極めて大きく拡大するもの」と表現されている
●そして更にトランプ大統領のご意向に配慮してか、「米国のサウジへのコミットメントを示すと共に、米国企業の当地域での事業機会を拡大し、潜在的に米国内で数万人の雇用を生み出す可能性がある」と合意の意義を表現している

●DSCA文書によれば、現在Lockheed Martin社が開発中の「MMSC:Multi-Mission Surface Combatant」提供に国務省が許可を出し、FMS契約でまとまる可能性がアリ、関連部品や兵站支援を含めて約1.3兆円の規模が見積もられている
●この新型艦MMSCは、現在のフリーダム型沿岸戦闘艦LCSの発展型で、高機動性と破壊力に優れた沿岸から海洋での作戦に適した多用途水上艦艇で、フリーダムLCSのディーゼルガスタービン推進システムを活用する艦艇である

THAAD2.jpgTHAADに関しては、ミサイル防衛システムも含まれると覚書きに記載されているとDSCAは説明している
●また合意には、オバマ政権が民間人への被害拡大を恐れ、激しさを増すイエメン過激派組織との戦いにに従事するサウジやUAEに提供を停止していたJDAMも含まれている。

●更に、150機のSikorsky製ブラックホールヘリやボーイング製のP-8哨戒機が含まれている
●DCSAのJoseph Rixey長官は、「これらの武器売却で米とサウジの軍事協力を深化させ、地域の安全保障に貢献する」述べ、更に武器輸出だけでなく、「装備品維持整備訓練だけでなく、戦略やドクトリン研究を行う機関の立ち上げ支援なども合意で取り組んでいく」と説明している
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THAADに関する表現が微妙ですが、全体にはおとなしめの防御兵器が並んでいる印象です。

Trump Saudi4.jpgメディアの中には「サウジとの多額売却合意で、イスラエルが技術優位を犯されることを懸念するのでは」との論評もありましたが、オバマ政権へのサウジの不満を利用し、地域への刺激の少ない武器を大量に売ることに成功したトランプ大統領の成果と見るべきではないでしょうか

イスラエル訪問でも、地域の盟主サウジとの関係を立て直した後に、米大統領として初めて嘆きの壁を訪れ、大使館のエルサレム移転意図を臭わせ、パレスチナ側に強気の姿勢をちらつかせたのではないかと推測しています

週末のアジア安全保障会議(シャングリラダイアログ)で、マティス国防長官が中国や北朝鮮問題に対し何か新機軸を打ち出すとは考えにくいのですが、中東ではトランプ色が打ち出され始めたと思います。

色々考える記事
「中国がサウジで無人攻撃機の製造修理へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29
「米イスラエル関係の転機?:軍事援助を巡る攻防」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26
「中東でF-35はイスラエル独占?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-13

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米カナダ貿易戦争:カナダがF-18を人質に [安全保障全般]

18日は米カナダ貿易戦争の開戦日か!?

Bombardier-C2.jpg18日、ボーイング社が米商務省に対し、カナダの航空機メーカーによる旅客機の米国売り込みが不当ダンピングだと訴えたことに対し、カナダ外相がボーイング製FA-18購入計画(18機)の見直しを示唆して激しく抗議しました

同日は、米国政府が議会に対し、正式に北米貿易協定NAFTAの再交渉開始を通知した日でもあり、トランプ政権誕生以来、諸外国の間で懸念が広まっている貿易摩擦が、カナダと米国の間で本格化した開戦記念日として記憶されるかもしれません

日本も当然例外ではなく、既に自動車や鉄鋼分野でジャブの応酬が始まっていますが、決して「対岸の火事」ではなく、「他山の石」のすべき点があるのでは・・との思いも秘めつつ、とりあえず現状をご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
Bombardier-C.jpgカナダの航空機メーカーBombardier社は、新型中型旅客機「C Series」の米国輸出に取り組んでいたが、カナダ政府は同社の株式を取得することで約1100億円を投資しており、最近も追加で約270億円の融資を行っている。
●そんなカナダ政府の支援もあり、同社は2016年にデルタ航空から「C Series」75機の受注を獲得した。

●このようなBombardier社の売り込みに反発したボーイング社は、18日米商務省と米貿易評議会のヒアリングの場で、カナダ政府からBombardier社への補助金人について調査し、援助を受け国際市場で有利な立場を得ている「C Series」に対し、課徴関税を課すよう訴えた
ボーイングは、種々の支援を合わせると約3300億円の支援金がカナダ政府からBombardier社に提供され、「C Series」が「他社から顧客を奪い取る価格:predatory pricing」設定になっていると主張し、米商務省はダンピング及び課徴関税調査の開始を決定した

Freeland2.jpg●このようなボーイング社の訴えを受け、カナダのChrystia Freeland 外相は18日、カナダ政府が米国やボーイング社とFA-18戦闘機18機を当面購入し、さらに追加で購入する計画について協議を開始するとした昨年の発表見直しに言及し、「カナダはボーイング関連の軍事調達の見直しを行っている」と警告した
●同外相は、ボーイングの主張は明らかにBombardier旅客機の米国市場進出を狙い撃ちしたものと語り、米商務省のダンピング認定に向けた調査決定を強く非難した

●なお18日は、米国政府が議会に対し、正式に北米貿易協定NAFTAの再交渉開始を通知した日でもあり、米カナダ間の高まる貿易摩擦を象徴する日となった
●また、Bombardier社のライバルとなる「Embraer社」を持つブラジルも、WTOに対し、カナダ政府からBombardier社への補助金問題を問題提起している
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カナダ政府からBombardier社への補助金がかなり「グレー」が感じですが、このケースの細部事情はともかく、本件ではカナダ側がしっかり国として対処している姿勢を学びたいと思います。

F-18.jpg翻って日本が「他山の石」として「強引に」学ぶとすれば、トランプ政権にねつ造される新たな「日米貿易摩擦」の落としどころとして、国防装備品を米国から無理やり買う(買わされる)ことを、なんとしても回避すべきということです。

中国や北朝鮮の軍事的脅威は明らかですが、それを理由に、誤ったシビリアンコントロールにより、自衛隊の前線部隊が望まない高価な装備品を押し付けられ、反動で必要な装備や施策を断念させられては本末転倒です。

オスプレイしかり、グローバルホークしかり・・・F-35の追加も臭うし、BMD装備も必要ですが、THAADやイージスアショアもねぇ・・・。必要と言われれば必要ですが・・・ため息が出ますねぇ・

F-35押し売り懸念:米空軍F-15強制退役か
「ACC司令官:F-15退役やむなし!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

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航行の自由作戦中断とサイバー大統領令に抗議 [安全保障全般]

Trump tel.jpgFBI長官解任で急速に旗色が悪くなりつつあるトランプ大統領ですが、国防関連の施策2つに関し、有力上院議員から相次いで抗議を受けていますのでご紹介します

一つは、昨年10月以来、南シナ海での中国の埋め立て基地建設に対処する「航行の自由作戦」を中断していることに関する抗議で、もう一つは、サイバー政策を検討する基礎となる種々の報告を政府機関に求める等の「サイバー関連の大統領令」への「何をいまさら。行動すべき時だ」抗議です

国防関連で重要なテーマである、対中国と対サイバー戦に関する問題を凝縮したような2つの抗議ですので、米国の現状を考える契機として取り上げます

昨年10月から中断の「航行の自由作戦」を再開せよ
10日、超党派の7名の上院議員がトランプ大統領に対し、2016年10月以来「航行の自由作戦」が中断している現状に懸念を表明する書簡を出した。
●同書簡の起案はBob Corker (R-Tenn.)とBen Cardin (D-Md.)上院議員で、この趣旨に同意する4名の民主党上院議員と3名の共和党上院議員が署名する形で発出されている

Harris CSIS4.jpg●同書簡はハリス太平洋軍司令官の議会証言を引用し、現状認識として、
---中国による南シナ海の軍事基地化は現実の問題となっている
---南シナ海は米国戦略上きわめて重要で、全世界の海洋交通の約3割が通過し、140兆円相当の米国向け海運物資が含まれている

●米国は南シナ海における主権問題に特定の立場をとらない姿勢であるが、中国による一連の攻勢的行動は、「航行の自由作戦」がアジア太平洋地域での航海と飛行の自由を守る米国の広範な戦略の重要要素であることを際立たせている
●トランプ大統領は、定期的に航行の自由作戦行うための必要な措置を行うべき

調査は十分。サイバー政策、戦略、資源投入が必要
McCain-NDAA.jpg11日にトランプ大統領はサイバーに関する大統領令に署名し、国防省を含む政府機関に種々の見積もりや現状把握のための報告を求め、国防省には7つの新レポートを求めた
●大きなものでは、大統領は国防省等に、政府機関が統合したネットワークに移行し、共通のメール、クラウド、セキュリティーサービスを利用する可能性に関する見解を求めている

●また国防省に対しては、国防インフラや軍需産業へのサイバー攻撃状況、サイバー抑止やサイバー施策の優先、米国のサイバー優位のための施策提言を求めている
●この大統領令にをマケイン上院議員は直ちに非難し、「米国が直面しているサイバー関連の課題や問題は、すでに種々の文書にまとめられている」「これ以上の分析やレビューや見積もりは不要だ」との声明を発した

●そして上院軍事委員長である同議員は、「米国に必要なのは、サイバーに関する政策、戦略、そしてそれらを実行する資源投資である」、「このような報告書など早期に仕上げ、国防省リーダーが我が国へのサイバー攻撃に対処し、防御し、抑止し、戦略を練る喫緊の業務に向かわせるべきだ」と訴えた
///////////////////////////////////////////////////////////////

Carl Vinson.jpgハリス司令官が「航行の自由作戦」を上申しても、ホワイトハウスが却下していると報道されたり、中国がハリス司令官の解任を要求していると報道が出たりしてますが、昨年10月から同作戦が中断している現状からすれば、そうなのかなぁ・・・と寂しい気分になります。

サイバー対処は単純でない難しい課題ですが、マケイン議員のご指摘はその通りでしょう。課題や問題の把握は十分。必要なのは行動だ・・・ということでしょう。

ところで・・・ここ最近は北朝鮮の話題一色ですが、中国はその隙にしっかりと南シナ海と尖閣諸島で「既成事実」を積み上げており、尖閣周辺での「施政権」は着実に侵されています

関連の記事
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
「北朝鮮対処で中国に配慮し、航行の自由作戦却下との5日CNN報道あり」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29

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脅威の変化を「東アジア戦略概観 2017」で学ぶ [安全保障全般]

east-asia-2017.jpg遅ればせながらGW連休を利用し、3月末に発刊されていた防衛研究所の「東アジア戦略概観 2017」に目を通しました。シンプルに素晴らしいと思いました

「日本政府あるいは防衛省の見解を示すものではない」との大前提ですが、公的機関から出る出版物ですから、米国や日本政府を正面切って批判するような表現はなく、その点は物足りないかも知れませんが、これだけまとまった情勢解説書は他に見当たりません

特に「東アジア」を国際情勢と切り離して論じられないとの問題認識から、第1章に「欧州戦略環境の変動 東アジアへの影響」、第2章に「インド洋地域の安全保障 中国の進出への域内諸国の対応」を設け、より広い視点から論点を提示している姿勢に感心しました。同「概観」編集長である兵頭慎治・地域研究部長のリーダーシップを讃えたいと思います。

個人的には第2章第3節のパキスタンと中国関係(P52~)や同第4節のスリランカと中国関係(P60~)、更にオホーツク海から北方領土周辺のロシア軍事プレゼンスを分析した第6章ロシア第3節(P176~)が大変勉強になりましたが、本日は「脅威の変化」を学ぶ意味で最重要と考える第7章米国の第3節「(2)ロシアの軍事力に対する脆弱性の認識」(P209~)の概要をご紹介します

これまで断片的に、ロシア軍のウクライナでの電子戦やハイブリッド戦を「すごい」とご紹介し、米軍幹部の危機感を取り上げてきましたが、執筆担当の防衛研究所・菊池茂雄氏がしっかりと整理し、日本も決して無視できない、対中国に並ぶ米軍全体の大きな課題として問題提起しています。

McMaster.jpg特に、現在トランプ政権の安全保障担当大統領補佐官を務めるマクマスター陸軍中将(以下、M中将)が、前職の陸軍能力統合センター(ARCIC)長としてロシア軍脅威分析の中心人物だったこともあり、米国の対露認識を考える材料としても興味深い所です

まんぐーす的には、米国がアフガンや中東で対テロ作戦に忙殺されている10数年の間に、中国だけで無く、ロシアもしっかり対米軍戦略・戦術を練り、具体的装備を準備してきた事が明示されており、日本の従来の装備体系への疑問がますます高まりました。戦闘機なんかに投資している場合では無いですよ・・・

第7章米国の「露軍事力に対する脆弱性の認識」より
East-Euro22.jpgロシア軍に対し、懲罰的抑止ではなく拒否的抑止を追求する変化の中で、ウクライナ東部への軍事介入で示されたロシア軍の能力と比べ、米軍の能力は明らかに不足し脆弱であることが認識され、危機感を持って議論されている
●米陸軍は2016年4月、上院軍事委員会に「陸軍がアフガニスタンとイラクに関与している間、ロシアは米国側の戦力と脆弱性を研究し、野心的な軍近代化努力に乗り出し、おおむね成功させた」と評価する文書を提出している

具体的分野の第1は電子戦である。露軍はウクライナの指揮通信だけで無く、GPSや無人機誘導電波を妨害し、砲弾の電子信管を無効化するだけで無く、ウクライナ側の電波(無線、味方識別装置、Wi-Fi、携帯電話)を探知し、砲撃目標発見に使用したと分析された。
●そして米軍の電子戦能力の遅れへの懸念は国防省全体で共有されるに至り、「米国が、その情報を収集、配布、調整し、それに基づき行動する能力を弱めるために、敵対者が相当の時間、努力、そして資源を費やした」結果、「電子戦における優位は厳しく脅かされている」と結論付けられた

第2の問題はM中将が「地上からウクライナ上空で航空優勢を確立した」と指摘するロシアの「階層化された防空能力」問題である。
第3 に露軍火砲の能力向上である。これは露軍のミサイルや火砲が「米陸軍の火砲システム・弾薬より射程が長く、威力も上回っている」ことだけでなく、露軍がSNS情報や「ウ」側の通信電波、更には無人機偵察で目標と特定し、集中砲火を浴びせるなどその「高度な技術的洗練」にも米陸軍は脅威を感じている。

●また兵器面でも、ラスター弾やサーモバリック弾、散布型地雷などの面制圧兵器の集中使用は、米軍がクラスター弾の調達を中止した中で脅威でアリ、更に露軍のT-90などの新型戦闘車両や、対戦車ミサイル等から車両を防護する「米軍がまだ研究段階」のアクティブ防御システム(APS)の導入なども、米軍装備を「旧式化」させるモノと認識されている

大前提である航空優勢が成り立たない危機感
McMaster3.jpg●M中将等は、冷戦後、米陸軍が戦力組成から火砲を大幅に削減したのは、ソ連脅威の消滅と、常に航空優勢が確保され、航空支援を得られるという前提があったためであるが、「我々には偉大な空軍がいるが、ここ1、2 年の間、その前提そのものを疑わなければならなくなった」と指摘している
●また2016年5月のCSIS講演でM中将は、米軍部隊が大出力の電波を全方向に発信しており、「我々はある能力を持った一部の敵にはほとんど丸見えになっている」と指摘し、米軍の「脆弱性評価」を行っているが、「どのように能力を開発していくかについて、我々を異なる方向に導こうとしている」と述べ、ロシアの動きが米軍の戦力整備の方向性に影響を与えつつあることを示唆している

●この様な脆弱性認識の元、米国防省はFY2017 予算要求のロシア抑止関連投資として「地上配備防空・ミサイル防衛」を挙げ、また陸軍の戦力組成の見直しの検討報告書は、「重大な能力欠落」「受け入れ難いほど後れている」例として短距離防空(SHORAD)能力を挙げ、「冷戦後、陸軍は潜在的な敵対国空軍の脅威をほとんど感じていなかった」が、「最近のウクライナおよびシリアでの戦闘は、脅威環境が変化したことを示している」と述べている
●そしてM中将は、露によるNATOへの侵略を抑止するには、オフショアバランスや懲罰的抑止は有効でなく、「合理的なコストによって目標を達成することは不可能であると納得させる」という「拒否的抑止に沿った抑止へのアプローチ」を取ることが必要であると主張している。この様に、2014年3月の露によるウクライナ併合から2年、米国防省の対露脅威認識は深刻になっている
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McMaster2.jpgもちろん米陸軍は、海空軍に押されて予算的に厳しい中、巻き返しを図りたい、何とか巻き返しの材料が欲しい、と考えているのでしょうが、欧州米陸軍司令官をして「涙が出るほどすごい」と言わしめたロシア軍の脅威は、正当に評価されていると認識すべきでしょう

ロシアの「階層化された防空能力」で米空軍のステルス攻撃機が無効になるとは言いませんが、明らかにリスクは高まるでしょうし、東シナ海の中国正面はそれ以上かも知れません。

実際、最近になってステルス命だった米空軍幹部が、次世代制空機PCAより、次世代エスコート型電子戦機PEAを優先すべきと発言し始めていることからも、その脅威度が高まっていると認識すべきでしょう

弾道・巡航ミサイル、サイバー&宇宙戦に加え、最近になって電子戦が脅威のセットで米国防省関係者から語られるようになっている背景は、こんな所にあるのでしょう。
そして日本の装備体系において、「戦闘機命派」による「戦闘機投資聖域化」により、上記分野への対応が、外圧部分を除いては、ほとんど手つかずになっていることを改めて注意喚起したいと思います

ATACMS5.jpg追伸→→→第7章米国の第3節「リバランス追求」の「(3)アジア太平洋での軍事態勢」で、中国A2ADへの対処策として、米海兵隊が高機動ロケット砲システム(HIMARS)と陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ミサイルを組み合わせ、LCACで機動輸送して対艦・対地攻撃を繰り返す構想と試験演習が紹介(P196下~)されており、この部分も興味深いです

いずれにしても、まんぐーすの思いつき&細切れ紹介よりも遙かに体系的に整理された資料として、特に対領空侵犯措置のスクランブル回数が史上最高になった事だけにしがみつき、広く全体を見て投資優先を考えない「戦闘機命派」の皆さんにご覧頂きたい素晴らしい資料です。

まぁ相変わらず、米国の「アジア太平洋リバランス」政策の「空虚さ」や「言うだけ番長」スタイルへの突っ込みは不足(皆無)ですが来年度はトランプ政権の対中国姿勢を中心に、しっかりと突っ込んで頂きましょう!!!

何せ、北朝鮮関連で中国の刺激しないよう、米軍が上申した「航行の自由作戦」に待ったをかけたらしい(CNNが5日報道)ですし、トランプ大統領得意の「ディール」で、今後の1年でどれだけ対中姿勢が「転進」するかが注目点ですから

それでも、なんと言っても、ネット上で全文(英語訳も)無料公開ですから・・・

ウクライナや電子戦の教訓
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02 

「副長官が国防省として検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-19
「米陸軍電子戦失われた15年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16
「米軍の電子戦の惨状と取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1

PCA型電子戦機PEA関連
「PCAよりPEAを先に導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20

過去の東アジア戦略概観
「2016年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13-1
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-10
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-03

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ロシア軍需産業の輸出見通しは悲観的!? [安全保障全般]

Denisentsev.jpg4月17日、CSIS客員研究員で露シンクタンク研究員のSergey Denisentsevが講演し、ロシア軍需産業の海外輸出動向について説明し中国やインドの国内軍需産業の成長や、原油価格低迷による顧客購買力の低下、兵器輸出国の増加等により、ロシアの兵器海外輸出が横ばいもしくは低下傾向だが、国内需要は少なくとも今後2年間は堅調だと語りました

そもそも、武器輸出額は把握が困難で、非公開部分や賄賂の存在により正確な統計が難しいとの前提付ですが、同研究員の説明は諸情勢からすると一理ある説明となっていますので、国際情勢を理解する上での一助としてご参考まで紹介します

ロシア軍需産業の海外輸出全般
ロシアの武器輸出額は、ロシアの統計によれば2011年以降ほぼ横ばい傾向にあるが、これを米国やスウェーデンの統計で見ると下降している。Denisentsev研究員によれば、集計する機関毎に統計方法が異なったり、掌握範囲が異なったり、非公開部分があったりで、正確な数値把握が難しいのがこの分野である

Russia arms-EX.jpg●一方で全般には、1990年代からロシア軍需産業の主要な顧客であった中国やインドの国内軍需産業が成長し、自国生産を始めた事は伸び悩みに直結している。また、リビアのカダフィー政権崩壊やベネズエラ経済の混乱の影響も大きい
●また原油価格の低迷により、アルジェリアやイラクやシリアからの兵器購入力が低下していることもマイナス要因である。更に、韓国や中国の軍需産業や、規模はまだ小さいながら南アフリカ、トルコ、シンガポールの同産業が、アフリカや中東で販路を拡大していることも、ロシアの足を引っ張っている

●同研究員は、ロシアはより「ニッチ」な、軍事ロボットや潜水艦市場に活路を見いだすべきだと主張した。またこれまでの歴史とは異なるが、自国市場を優先してニーズに応じた製品開発に取り組むべきだと提言した
●更に、ロシア兵器は「安価だが破壊力があり」「操作が容易」との評価で市場を伸ばし、技術移転にも柔軟に対応したことでも顧客を満足させたが、先進航空機の輸出により熟練の技術者を相手側にも求めることとなり、方針に変化があった。

SU-35戦闘機の例では、エクアドルやペルーやコロンビアへの輸出の際は、財政支援や長期ローンを組んだ上で売却していた(が、今は財政事情からその様な支援は難しい)

中国とインド向けの輸出等について
Russia china.jpg●中印両国にとって、特にロシアが技術移転に柔軟であったことが、国内軍需産業育成を狙っていた両国のニーズと合致した。中国はロシア輸出の22%を、インドは31%を占めており、依然として両国に依存する比率は高い

中国は天安門事件以降に海外から経済制裁を受け、それを契機にロシアからの兵器輸入が増えた。ロシアにとっては、ソ連崩壊直後の経済混乱時期を、中国からの需要で生き延びた関係である
●一方インドは、90年代後半の核実験強行により制裁を受け、ロシア製武器の輸入に頼った経緯がある。しかし特に中国は、90年代とは全く異なり(ジェットエンジンを除いては)、駆逐艦も潜水艦も空母まで自国製造が可能となってきた。インドも中国と同様の道を歩んでいるように見える

Russia India.jpgロシア産業はそれでも、第5世代戦闘機、超音速の対艦ミサイル、ミサイル防衛システム&対衛星兵器を自国用に開発しており、中国にとっては魅力的な共同開発分野となり得る
●一方でインドは、先端航空機、レーダー、光学装置で米国やフランス製品のライセンス生産等に傾きつつある

ロシアのシリアでの軍事活動は、輸出にはあまり貢献しないだろう。ロシアは長距離巡航ミサイルの輸出を禁じられているし、高性能防空ミサイルも自国軍の防衛にのみ使用している。大型爆撃機の市場も見当たらない
////////////////////////////////////////////////////

以下の過去記事では、ロシアの軍需産業関係者やアナリストが、かなり明るい未来をロシア軍需産業に描いていますが、感覚的には今日ご紹介したような、決して容易ではない厳しい市場競争が待ち構えているのではないでしょうか?

これ以上コメントしようにも、基礎知識が不足しており不可能です。詳しい方のコメント等を募集致します。

なお防衛研究所の「東アジア戦略概観2017」の第6章ロシアでは、ロシア軍需産業の見通しは「右肩上がり」の雰囲気で書かれています
http://www.nids.mod.go.jp/publication/east-asian/j2017.html

ロシア軍需産業とロシア製品
「露軍需産業トップが未来を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露の専門家が自国軍需産業を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-13

「中国がSu-35輸入開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「インド検査員が露製艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

ロシアに関する記事
「露軍の電子戦に米軍驚嘆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「また、6機目の大事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「航空事故多発の露軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13
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EU離脱で英ポンド下落し英国防計画ピンチ [安全保障全般]

May UK.jpg4月25日に英議会の予算監査委員会PACがレポートを発表し、英国防省が2015年に作成した国防計画SDSRは、英国のEU離脱Brexitや新装備開発&導入を巡るコスト不透明性などから、実行可能性が危ぶまれる状態にあると警鐘を鳴らしています

また、英国防省が約束したはずの自助努力による予算削減への取り組みが未達成で、これも2015年の国防計画SDSRの将来を危うくしていると主張しています

英国も多くのNATO諸国や欧州諸国と同様に、冷戦終結後の平和の配当を享受する為、国防費を大幅に削減した経緯があり、最近のロシア軍やイスラム過激派の活発化を受け、米国から国防費をGDP比2%に戻せと厳しく迫られているところです

そんな環境下、米国の一番の同盟国として、国防強化の方向性を明確にした2015年国防計画SDSRを打ち出したのですが、早くも暗雲が立ち込めています。
欧州諸国では、ドイツもフランスも国防テコ入れを迫られているのですが、経済もそんなに順調ではない中、厳しい状況にあるのが現状です。そんな典型的な例として、また英国F-35の購入がピンチだとのお知らせのため、26日付Defense-News記事の概要をご紹介します

26日付Defense-News記事によれば
p8.jpg●4月25日に英議会の予算監査委員会PAC(Public Accounts Committee)が発表した報告書は、英国防省が2015年国防計画SDSR(2015 strategic defense and security review)などで打ち出している装備品調達計画が、予算面から実行可能性が危機に直面していると明らかにした
●そしてPACが2012年に誕生以来、国防計画は裁断の危機に直面していると表現し、「予算面での実行可能性を保つには、国防省が未だに約束を果たしていない、希望的観測に基づく自らの効率性向上による予算捻出に努力してもらうほか無い」と表現している

●例えば英国防省の計画によると、F-35とP-8購入予算がピークとなる2020/21予算年度には、両機種購入だけで「£150 million:2.5兆円」必要だが、2016年度国防予算全体が「£178 billion」であることを考えれば「unaffordable」である
●またPACは、英国防省が5年前から大規模プロジェクト管理を見直していることは認めつつも、2015年国防計画SDSRが打ち出した「£24 billion国防予算増額」を飲み込むことは容易でないと指摘し、国防省が「新たな脅威対処」に準備した「£10.7 billion」も既に底を突いている

May UK3.jpg●今後5年間で英国防省が計画している新装備導入には、P-8対潜哨戒機、アパッチ攻撃ヘリ、MQ-1無人偵察攻撃機、F-35戦闘機、新型フリゲート艦(2隻)、Dreadnought級戦略原潜(4隻)、戦術通信衛星、補給艦、装甲車、新型ミサイル等々がある

●昨今の情勢を受け、保守党政権は国防費増額圧力を受けるだろうが、国防省内の効率化によりその経費を捻出することになっている実態だ。しかし2015年に国防省と財務省が約束した「£7.3 billion」の経費節減でさえ、2015年国防計画SDSR発表後1年経過した今でも「£2.5 billion」しか達成されていない状態だ
更に懸念されているのが「Brexit」による英ポンドの下落だ。2016年予算案が編成された当時の「$1.55 to the pound」から既に30セントも下落しているが、特にF-35とP-8購入に必要な英ポンド下落に伴う追加経費をどのように今後まかなうかについて、何の話し合いも行われていない
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女王陛下の名を冠した英海軍新型空母の艦載機F-35B予算が確保されていない惨状を以前ご紹介しましたが、毅然とした頼もしそうなメイ首相ではあるものの、実態は寂しい限りです

May UK2.jpg国防省の自助努力で効率化して経費捻出とか言っても、6~7年前には国防費大幅削減で「士気崩壊」状態にあった英国軍ですから、「今更何を・・・」と白けたムードだと思います

フランスの大統領が誰になろうとも、ドイツのメルケル首相が如何にがんばろうと、欧州は全体として極めて厳しい歴史の流れの中にあるような気がします。日本だって偉そうに言えた状態ではないのですが・・・。

英国軍を考える記事
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1

ドイツ軍の増強関連
「ドイツ軍が対露で増強へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「ドイツとオランダが連合部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1
「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

NATOがトランプ大統領を懸念
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-15-1

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映像:SpaceXが偵察衛星打上げと1段目回収に成功 [安全保障全般]

reusable-Falcon.jpg米国東部時間の1日朝、Space-X社が「Falcon 9」が初の国家安全保障関連の衛星打ち上げに成功し、売り物である第1段目の垂直着陸回収にも成功しました。
快晴の中で行われた見事な垂直着陸の映像が世界中に配信されていますので、ご紹介します

米国の政府関連事業打ち上げ(軍事衛星など)は、2006年12月にロッキードとボーイングの衛星打ち上げ部門が合併して誕生したULA(United Launch Alliance)が独占し、打ち上げ価格の高止まりなど、競争相手が無いことの弊害が指摘されて来ました。

そこに有名企業家Elon Musk氏が率いるSpace-X社が「Falcon 9」ロケットで参入し、打ち上げ失敗と鈍重な官僚的手続きを乗り越え、2015年5月に参入承認を獲得して大きな期待を集めていました。
しかし2015年6月の国際宇宙ステーションへの物資輸送と、2016年9月のイスラエル商用通信衛星打ち上げに失敗し、米国当局が政府関連事業に備えた安全性確認を再度行っていたところでした

そんな中でもSpace-X社は、打ち上げコスト削減の鍵であった「第1段目ロケット」の「垂直着陸回収」に挑戦し、何回かの失敗を乗り越え、2015年12月に回収に成功しています。
その他、民間宇宙飛行ビジネスや大型打ち上げロケットにも同社は挑戦しており、その元気な動向が注目されています

5月1日「第1段目の垂直着陸回収」映像(約1分半)

1日付軍事メディア報道によれば
●打ち上げは当初、4月30日の日曜日に予定されていたが、センサーに異常が見つかり、5月1日に延期されていた。
●同社CEOのElon Musk氏は、1日も上空の風が強く限度いっぱいの98.6%だったが、ぎりぎりのコンディションを苦にせず、打ち上げは成功したとツイッター上で振り返っている

reusable-Falcon2.jpg打ち上げはフロリダ州のケネディー宇宙センターで行われ、国家偵察局NRO(National Reconnaissance Office)の非公開衛星衛星を打ち上げた。衛星の細部は一切明らかになっていない。
●「第1段目の垂直着陸回収」は「Cape Canaveral空軍基地」で打ち上げ数分後に行われた。成功の様子を伝える映像に、カリフォルニアの同社本部は歓声に包まれた

陸上で「第1段目の垂直着陸回収」に成功したのは4回目で、海上も何回か成功している
●同社はまた、回収した「第1段目ロケット」の再使用発射を4月に成功している
/////////////////////////////////////////////////////////

「Falcon 9」ロケットの第1段目を再利用可能となったとして、重要性が高く代替衛星の確保が簡単ではない「政府関連事業衛星」を、まだ実績が十分でなくリスクがある「再利用ロケット」で打ち上げるかとの問題が指摘されており、すぐさま打ち上げコスト削減につながる状況ではないようです

Elon Musk.jpgまた「Falcon 9」ロケットは打ち上げ可能重量が小さく、大型の衛星や物資運搬には使えません。

そんなこんなのSpace-X社「Falcon 9」ですが、失敗を乗り越え、着実に実力と実績を積み重ねています。今後も応援したいです!!!

Space-X社の参入とULA
「イスラエル通信衛星失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25
「混迷の米衛星打ち上げ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「軍事衛星打上げにSpaceX参入承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27

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ロシアが北極圏の新しい軍の基地公開 [安全保障全般]

Trefoil 3.jpg4月29日付Military.comが、ロシア国防省がweb上で公開した新しい北極圏の基地「Arctic Trefoil military base」を紹介し北極圏での活動で「遥かにロシアに劣る」現状を嘆く元米沿岸警備隊司令官などのコメントを引用しています

地球温暖化が原因と言われる北極海の「氷の減少」により、北極圏の地下資源や「第2のスエズ運河」と言われる北極航路の開拓を巡り、沿岸のロシアや北欧諸国だけでなく、中国までが乱入して熱いエリアとなっている北極圏の様子を久々に取り上げます

ちなみに北極圏の原油の埋蔵量は41兆バレル以上で、サウジアラビアのそれ以上と言われているようです。

4月29日付Military.com記事によれば
Trefoil.jpg●4月17日付でロシア国防省webサイトに、新たな北極圏の軍基地「Arctic Trefoil military base」のバーチャルツアーが掲載された。同基地はロシアが北極圏に構築した基地の中で最も北に位置し、「Franz Josef Land列島」に設けられた
約14,000平方マイルの敷地を持つ同基地は、ロシア国旗の色をあしらった塗装がなされ、150名の兵士が外部からの支援なしで18ヶ月生活できる施設だとロシアはアピールしている

前海兵隊司令官で現在国務省の北極問題特別代表であるRobert Papp退役大将は、「プロパガンダに満ちたwebサイトだ」と述べつつ、3月にプーチン大統領が同基地を訪問するなど、ロシアの一貫した北極圏への取り組みに危機感を訴えた
●Papp特別代表は「米国は世界中の様々な地域を気に掛けているが、北極圏にはそれが無い」、「一方でロシアは、それが文化の一部であるかのように北極に関与し、地下資源や原油や天然ガスを我が物とすべく取り組んでいる」とFox Newsで語った

●そして同特別代表は、北極圏で実際の戦争が起こる可能性は低いが、新たな冷戦と捉えるべきで、米国は早く目を覚まし、北極圏での活動に早急に備えるべきだと訴えた

Trefoil 4.jpg●アラスカ選出のDan Sullivan上院議員も、「ロシアは着実に北極圏で戦略的能力を蓄えている」「プーチンは北極航路を新たなスエズ運河と呼んで力を入れている」と危機感を訴えている
●同上院議員は長年、米国が北極圏でプレゼンスを示すように訴えてきたが、この結果として、オバマ政権が廃止を決定していた第25歩兵師団の第4旅団(米軍で唯一極地での活動ノウハウを保持する部隊)の存続させることになった

しかしロシアや中国の勢いには及ばないのが現状である。中国の調査船が北極航路調査のために同海域で活動する様子が複数確認され、ロシアは米国を遥かに上回る砕氷船団で北極航路の活用を目指している
●Sullivan上院議員は「ロシアは砕氷船を40隻保有し、更に原子力推進を含む13隻を追加建造しようとしているが、米国は僅か3隻でその中の1隻は故障中である」と圧倒的な能力差を訴えている

ロシア国防省の関連webページ http://eng.mil.ru/en/structure/okruga/north/news/more.htm?id=12118973@egNews
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Trefoil 5.jpg米国の砕氷船は、実質1隻のみが活動可能な状態にあるようです。

新たな建造には時間が掛かり、予算も必要なことから、「とりあえずリースで穴埋めしよう」との案も出ているようですが、小型で旧式な砕氷船しか市場には存在せず、ガッツリ武装した大型のロシア砕氷艦とは比べるのも哀れな話だそうです・・・

ちなみに、ロシアが北方領土に配備した地対艦ミサイルは、北方での活動を活発化する中国艦艇を意識したものとの見方があります

北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07

「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02

「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26 

北極海を巡る米国防省と米軍の動き
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

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画期的:ハリス司令官がINF条約見直しを要請 [安全保障全般]

皮肉!「宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守し・・・」

Harris SASC.jpg4月26日から27日にかけ、ハリス太平洋軍司令官が下院及び上院の軍事委員会に出席し、北朝鮮情勢を絡めつつ様々な視点から証言していますが、他のメディアが取り上げていない「時代に合わないINF全廃条約を見直してくれ」発言がありましたのでご紹介します

この両日の議会証言では、「北朝鮮情勢は史上最悪」「空母カールビンソン艦載機は2時間以内に朝鮮半島に到達可能な距離に」「同空母の行動に関し混乱を招いたのは私の責任」との発言が広くメディアで取り上げられ、ごく一部に「ハワイにもICBM防御ミサイル配備を要検討」発言が紹介されましたが、INF条約関連発言のカバーは米空軍協会web記事だけだと思います

最近この条約が話題になっているのは、この米露2国間条約をロシアが破り、仮称「SSC-8:9M729」との長射程巡航ミサイルを、全欧州を射程に収めるロシア西部に配備したと米国政府や軍高官が訴え始めたからで、4月4日には米戦略コマンド司令官が「米国は防御手段を持たない」と危機感を表現しています

「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

今回のハリス司令官による「INF全廃条約を見直し要請」発言は、北朝鮮関連の流れで出たものでしょうが、背景にはロシアの条約破りのほか、中距離弾道ミサイルを戦力の中核にすえる中国やイラン等への大きな危機感があると思います

まずINF全廃条約を再確認
INF-USRU.jpgレーガン・ゴルバチョフ間で1987年12月8日に署名された同条約は、米露が射程500kmから5500kmの地上発射ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するもの。もちろん、中国や北朝鮮やイランを拘束する条約ではない
●特にロシア側は、プーチンが「ほぼ全ての隣国が中距離ミサイルを開発している」と危機感を訴え、ロシアによる条約破棄は「控えめに言っても議論対象だ」と発言しているように、同条約に不満を持っている。しかしロシアは「SSC-8:9M729」が同条約違反だとは認めず、ずるずると実質米国だけが条約に縛られている状態を上手く作為

オバマ政権は、ロシアが同巡航ミサイルが試験発射を行った2014年からINF条約違反だと指摘しているが、ロシアは条約違反を否定し、逆に米国の装備を違反だと批判している
●4月4日、米戦略コマンドのHyten司令官は、最近ロシアが配備したINF全廃条約違反の地上発射型巡航ミサイルに関し、「我々には防御手段が無い。特に欧州同盟国を防衛する手立てが無い」と証言した。なお同巡航ミサイルは2個部隊編制されており、1個がカスピ海北方のボルゴグラード市近郊部隊に配備されているが、もう一つの部隊の所在は不明である(公開されていない)


ハリス太平洋軍司令官の議会証言概要
26日、下院軍事委員会でハリス司令官は、INF全廃条約を時代遅れな条約だと語り、「条約に署名していない国(中国やイランや北朝鮮等)によって詐欺に会い、無一文にさせられたようなものだ」とまで表現した。
●そして同大将は「米国は同条約の再交渉を真剣に考えるべきだと考える」と危機感を訴えた

Harris HASC.jpg翌日の27日、今度は上院軍事委員会で同司令官は、「INF全廃条約は米国とソ連のみが力を持つ2極世界であった1987年に締結されたものだが、我々は今、多くの国が射程500~5500kmの兵器を保有又は開発する世界にいるのだ」と訴えている
●更に、中国とイランは差し迫った懸念対象であり、「中国が保有する弾道・巡航ミサイルの9割が(米国が条約に縛られ保有できない)このカテゴリーに属しており、イランはこの種のミサイルの発射試験を1月にも行うなど、盛んに増強している」と強調した

●そしてハリス司令官は、「米国は宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守し、このカテゴリーのミサイルを一切保有していない」と皮肉たっぷりに表現し、合わせてロシアが2月に条約破りの巡航ミサイルを配備した点にも言及した
●また「中露の超超音速兵器を懸念している。なぜなら、米国は同条約の制約で同種兵器の開発が制約を受けるからだ」とも訴えた
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SSC-X-820.jpg前オバマ政権が「言うだけ番長」の対中国姿勢であった中、自らの職責の限界ぎりぎりラインで中国への厳格な姿勢を冷静な態度で貫き、アジア太平洋の米国同盟国の光明であったハリス司令官ですが、夏には交代又は退役が噂されています

中国はハリス司令官交代のタイミングを狙って「反転攻勢」を仕掛けてくるのでは・・という軍事専門家もいるほどの司令官ですので、2012年末からINF条約問題を訴えてきたまんぐーすとしては、これほど嬉しいことはありません。

当然課題もあり、同条約が破棄されれば、ロシアが極東に堂々と中距離弾道・巡航ミサイルを配備し、戦術核兵器が搭載されることも想定する必要がありましょう。
しかし・・・中国のことを考えれば、そんな事をいっている場合じゃないと思うのですが・

INF条約関連の記事
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

「米とカナダが巡航ミサイル対処に協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

超超音速技術やPGC関連の記事
「艦艇配備の超超音速兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-04
「超超音速ミサイルの脅威が大きな話題に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

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