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米カナダ貿易戦争:カナダがF-18を人質に [安全保障全般]

18日は米カナダ貿易戦争の開戦日か!?

Bombardier-C2.jpg18日、ボーイング社が米商務省に対し、カナダの航空機メーカーによる旅客機の米国売り込みが不当ダンピングだと訴えたことに対し、カナダ外相がボーイング製FA-18購入計画(18機)の見直しを示唆して激しく抗議しました

同日は、米国政府が議会に対し、正式に北米貿易協定NAFTAの再交渉開始を通知した日でもあり、トランプ政権誕生以来、諸外国の間で懸念が広まっている貿易摩擦が、カナダと米国の間で本格化した開戦記念日として記憶されるかもしれません

日本も当然例外ではなく、既に自動車や鉄鋼分野でジャブの応酬が始まっていますが、決して「対岸の火事」ではなく、「他山の石」のすべき点があるのでは・・との思いも秘めつつ、とりあえず現状をご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
Bombardier-C.jpgカナダの航空機メーカーBombardier社は、新型中型旅客機「C Series」の米国輸出に取り組んでいたが、カナダ政府は同社の株式を取得することで約1100億円を投資しており、最近も追加で約270億円の融資を行っている。
●そんなカナダ政府の支援もあり、同社は2016年にデルタ航空から「C Series」75機の受注を獲得した。

●このようなBombardier社の売り込みに反発したボーイング社は、18日米商務省と米貿易評議会のヒアリングの場で、カナダ政府からBombardier社への補助金人について調査し、援助を受け国際市場で有利な立場を得ている「C Series」に対し、課徴関税を課すよう訴えた
ボーイングは、種々の支援を合わせると約3300億円の支援金がカナダ政府からBombardier社に提供され、「C Series」が「他社から顧客を奪い取る価格:predatory pricing」設定になっていると主張し、米商務省はダンピング及び課徴関税調査の開始を決定した

Freeland2.jpg●このようなボーイング社の訴えを受け、カナダのChrystia Freeland 外相は18日、カナダ政府が米国やボーイング社とFA-18戦闘機18機を当面購入し、さらに追加で購入する計画について協議を開始するとした昨年の発表見直しに言及し、「カナダはボーイング関連の軍事調達の見直しを行っている」と警告した
●同外相は、ボーイングの主張は明らかにBombardier旅客機の米国市場進出を狙い撃ちしたものと語り、米商務省のダンピング認定に向けた調査決定を強く非難した

●なお18日は、米国政府が議会に対し、正式に北米貿易協定NAFTAの再交渉開始を通知した日でもあり、米カナダ間の高まる貿易摩擦を象徴する日となった
●また、Bombardier社のライバルとなる「Embraer社」を持つブラジルも、WTOに対し、カナダ政府からBombardier社への補助金問題を問題提起している
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カナダ政府からBombardier社への補助金がかなり「グレー」が感じですが、このケースの細部事情はともかく、本件ではカナダ側がしっかり国として対処している姿勢を学びたいと思います。

F-18.jpg翻って日本が「他山の石」として「強引に」学ぶとすれば、トランプ政権にねつ造される新たな「日米貿易摩擦」の落としどころとして、国防装備品を米国から無理やり買う(買わされる)ことを、なんとしても回避すべきということです。

中国や北朝鮮の軍事的脅威は明らかですが、それを理由に、誤ったシビリアンコントロールにより、自衛隊の前線部隊が望まない高価な装備品を押し付けられ、反動で必要な装備や施策を断念させられては本末転倒です。

オスプレイしかり、グローバルホークしかり・・・F-35の追加も臭うし、BMD装備も必要ですが、THAADやイージスアショアもねぇ・・・。必要と言われれば必要ですが・・・ため息が出ますねぇ・

F-35押し売り懸念:米空軍F-15強制退役か
「ACC司令官:F-15退役やむなし!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

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航行の自由作戦中断とサイバー大統領令に抗議 [安全保障全般]

Trump tel.jpgFBI長官解任で急速に旗色が悪くなりつつあるトランプ大統領ですが、国防関連の施策2つに関し、有力上院議員から相次いで抗議を受けていますのでご紹介します

一つは、昨年10月以来、南シナ海での中国の埋め立て基地建設に対処する「航行の自由作戦」を中断していることに関する抗議で、もう一つは、サイバー政策を検討する基礎となる種々の報告を政府機関に求める等の「サイバー関連の大統領令」への「何をいまさら。行動すべき時だ」抗議です

国防関連で重要なテーマである、対中国と対サイバー戦に関する問題を凝縮したような2つの抗議ですので、米国の現状を考える契機として取り上げます

昨年10月から中断の「航行の自由作戦」を再開せよ
10日、超党派の7名の上院議員がトランプ大統領に対し、2016年10月以来「航行の自由作戦」が中断している現状に懸念を表明する書簡を出した。
●同書簡の起案はBob Corker (R-Tenn.)とBen Cardin (D-Md.)上院議員で、この趣旨に同意する4名の民主党上院議員と3名の共和党上院議員が署名する形で発出されている

Harris CSIS4.jpg●同書簡はハリス太平洋軍司令官の議会証言を引用し、現状認識として、
---中国による南シナ海の軍事基地化は現実の問題となっている
---南シナ海は米国戦略上きわめて重要で、全世界の海洋交通の約3割が通過し、140兆円相当の米国向け海運物資が含まれている

●米国は南シナ海における主権問題に特定の立場をとらない姿勢であるが、中国による一連の攻勢的行動は、「航行の自由作戦」がアジア太平洋地域での航海と飛行の自由を守る米国の広範な戦略の重要要素であることを際立たせている
●トランプ大統領は、定期的に航行の自由作戦行うための必要な措置を行うべき

調査は十分。サイバー政策、戦略、資源投入が必要
McCain-NDAA.jpg11日にトランプ大統領はサイバーに関する大統領令に署名し、国防省を含む政府機関に種々の見積もりや現状把握のための報告を求め、国防省には7つの新レポートを求めた
●大きなものでは、大統領は国防省等に、政府機関が統合したネットワークに移行し、共通のメール、クラウド、セキュリティーサービスを利用する可能性に関する見解を求めている

●また国防省に対しては、国防インフラや軍需産業へのサイバー攻撃状況、サイバー抑止やサイバー施策の優先、米国のサイバー優位のための施策提言を求めている
●この大統領令にをマケイン上院議員は直ちに非難し、「米国が直面しているサイバー関連の課題や問題は、すでに種々の文書にまとめられている」「これ以上の分析やレビューや見積もりは不要だ」との声明を発した

●そして上院軍事委員長である同議員は、「米国に必要なのは、サイバーに関する政策、戦略、そしてそれらを実行する資源投資である」、「このような報告書など早期に仕上げ、国防省リーダーが我が国へのサイバー攻撃に対処し、防御し、抑止し、戦略を練る喫緊の業務に向かわせるべきだ」と訴えた
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Carl Vinson.jpgハリス司令官が「航行の自由作戦」を上申しても、ホワイトハウスが却下していると報道されたり、中国がハリス司令官の解任を要求していると報道が出たりしてますが、昨年10月から同作戦が中断している現状からすれば、そうなのかなぁ・・・と寂しい気分になります。

サイバー対処は単純でない難しい課題ですが、マケイン議員のご指摘はその通りでしょう。課題や問題の把握は十分。必要なのは行動だ・・・ということでしょう。

ところで・・・ここ最近は北朝鮮の話題一色ですが、中国はその隙にしっかりと南シナ海と尖閣諸島で「既成事実」を積み上げており、尖閣周辺での「施政権」は着実に侵されています

関連の記事
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
「北朝鮮対処で中国に配慮し、航行の自由作戦却下との5日CNN報道あり」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29

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脅威の変化を「東アジア戦略概観 2017」で学ぶ [安全保障全般]

east-asia-2017.jpg遅ればせながらGW連休を利用し、3月末に発刊されていた防衛研究所の「東アジア戦略概観 2017」に目を通しました。シンプルに素晴らしいと思いました

「日本政府あるいは防衛省の見解を示すものではない」との大前提ですが、公的機関から出る出版物ですから、米国や日本政府を正面切って批判するような表現はなく、その点は物足りないかも知れませんが、これだけまとまった情勢解説書は他に見当たりません

特に「東アジア」を国際情勢と切り離して論じられないとの問題認識から、第1章に「欧州戦略環境の変動 東アジアへの影響」、第2章に「インド洋地域の安全保障 中国の進出への域内諸国の対応」を設け、より広い視点から論点を提示している姿勢に感心しました。同「概観」編集長である兵頭慎治・地域研究部長のリーダーシップを讃えたいと思います。

個人的には第2章第3節のパキスタンと中国関係(P52~)や同第4節のスリランカと中国関係(P60~)、更にオホーツク海から北方領土周辺のロシア軍事プレゼンスを分析した第6章ロシア第3節(P176~)が大変勉強になりましたが、本日は「脅威の変化」を学ぶ意味で最重要と考える第7章米国の第3節「(2)ロシアの軍事力に対する脆弱性の認識」(P209~)の概要をご紹介します

これまで断片的に、ロシア軍のウクライナでの電子戦やハイブリッド戦を「すごい」とご紹介し、米軍幹部の危機感を取り上げてきましたが、執筆担当の防衛研究所・菊池茂雄氏がしっかりと整理し、日本も決して無視できない、対中国に並ぶ米軍全体の大きな課題として問題提起しています。

McMaster.jpg特に、現在トランプ政権の安全保障担当大統領補佐官を務めるマクマスター陸軍中将(以下、M中将)が、前職の陸軍能力統合センター(ARCIC)長としてロシア軍脅威分析の中心人物だったこともあり、米国の対露認識を考える材料としても興味深い所です

まんぐーす的には、米国がアフガンや中東で対テロ作戦に忙殺されている10数年の間に、中国だけで無く、ロシアもしっかり対米軍戦略・戦術を練り、具体的装備を準備してきた事が明示されており、日本の従来の装備体系への疑問がますます高まりました。戦闘機なんかに投資している場合では無いですよ・・・

第7章米国の「露軍事力に対する脆弱性の認識」より
East-Euro22.jpgロシア軍に対し、懲罰的抑止ではなく拒否的抑止を追求する変化の中で、ウクライナ東部への軍事介入で示されたロシア軍の能力と比べ、米軍の能力は明らかに不足し脆弱であることが認識され、危機感を持って議論されている
●米陸軍は2016年4月、上院軍事委員会に「陸軍がアフガニスタンとイラクに関与している間、ロシアは米国側の戦力と脆弱性を研究し、野心的な軍近代化努力に乗り出し、おおむね成功させた」と評価する文書を提出している

具体的分野の第1は電子戦である。露軍はウクライナの指揮通信だけで無く、GPSや無人機誘導電波を妨害し、砲弾の電子信管を無効化するだけで無く、ウクライナ側の電波(無線、味方識別装置、Wi-Fi、携帯電話)を探知し、砲撃目標発見に使用したと分析された。
●そして米軍の電子戦能力の遅れへの懸念は国防省全体で共有されるに至り、「米国が、その情報を収集、配布、調整し、それに基づき行動する能力を弱めるために、敵対者が相当の時間、努力、そして資源を費やした」結果、「電子戦における優位は厳しく脅かされている」と結論付けられた

第2の問題はM中将が「地上からウクライナ上空で航空優勢を確立した」と指摘するロシアの「階層化された防空能力」問題である。
第3 に露軍火砲の能力向上である。これは露軍のミサイルや火砲が「米陸軍の火砲システム・弾薬より射程が長く、威力も上回っている」ことだけでなく、露軍がSNS情報や「ウ」側の通信電波、更には無人機偵察で目標と特定し、集中砲火を浴びせるなどその「高度な技術的洗練」にも米陸軍は脅威を感じている。

●また兵器面でも、ラスター弾やサーモバリック弾、散布型地雷などの面制圧兵器の集中使用は、米軍がクラスター弾の調達を中止した中で脅威でアリ、更に露軍のT-90などの新型戦闘車両や、対戦車ミサイル等から車両を防護する「米軍がまだ研究段階」のアクティブ防御システム(APS)の導入なども、米軍装備を「旧式化」させるモノと認識されている

大前提である航空優勢が成り立たない危機感
McMaster3.jpg●M中将等は、冷戦後、米陸軍が戦力組成から火砲を大幅に削減したのは、ソ連脅威の消滅と、常に航空優勢が確保され、航空支援を得られるという前提があったためであるが、「我々には偉大な空軍がいるが、ここ1、2 年の間、その前提そのものを疑わなければならなくなった」と指摘している
●また2016年5月のCSIS講演でM中将は、米軍部隊が大出力の電波を全方向に発信しており、「我々はある能力を持った一部の敵にはほとんど丸見えになっている」と指摘し、米軍の「脆弱性評価」を行っているが、「どのように能力を開発していくかについて、我々を異なる方向に導こうとしている」と述べ、ロシアの動きが米軍の戦力整備の方向性に影響を与えつつあることを示唆している

●この様な脆弱性認識の元、米国防省はFY2017 予算要求のロシア抑止関連投資として「地上配備防空・ミサイル防衛」を挙げ、また陸軍の戦力組成の見直しの検討報告書は、「重大な能力欠落」「受け入れ難いほど後れている」例として短距離防空(SHORAD)能力を挙げ、「冷戦後、陸軍は潜在的な敵対国空軍の脅威をほとんど感じていなかった」が、「最近のウクライナおよびシリアでの戦闘は、脅威環境が変化したことを示している」と述べている
●そしてM中将は、露によるNATOへの侵略を抑止するには、オフショアバランスや懲罰的抑止は有効でなく、「合理的なコストによって目標を達成することは不可能であると納得させる」という「拒否的抑止に沿った抑止へのアプローチ」を取ることが必要であると主張している。この様に、2014年3月の露によるウクライナ併合から2年、米国防省の対露脅威認識は深刻になっている
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McMaster2.jpgもちろん米陸軍は、海空軍に押されて予算的に厳しい中、巻き返しを図りたい、何とか巻き返しの材料が欲しい、と考えているのでしょうが、欧州米陸軍司令官をして「涙が出るほどすごい」と言わしめたロシア軍の脅威は、正当に評価されていると認識すべきでしょう

ロシアの「階層化された防空能力」で米空軍のステルス攻撃機が無効になるとは言いませんが、明らかにリスクは高まるでしょうし、東シナ海の中国正面はそれ以上かも知れません。

実際、最近になってステルス命だった米空軍幹部が、次世代制空機PCAより、次世代エスコート型電子戦機PEAを優先すべきと発言し始めていることからも、その脅威度が高まっていると認識すべきでしょう

弾道・巡航ミサイル、サイバー&宇宙戦に加え、最近になって電子戦が脅威のセットで米国防省関係者から語られるようになっている背景は、こんな所にあるのでしょう。
そして日本の装備体系において、「戦闘機命派」による「戦闘機投資聖域化」により、上記分野への対応が、外圧部分を除いては、ほとんど手つかずになっていることを改めて注意喚起したいと思います

ATACMS5.jpg追伸→→→第7章米国の第3節「リバランス追求」の「(3)アジア太平洋での軍事態勢」で、中国A2ADへの対処策として、米海兵隊が高機動ロケット砲システム(HIMARS)と陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ミサイルを組み合わせ、LCACで機動輸送して対艦・対地攻撃を繰り返す構想と試験演習が紹介(P196下~)されており、この部分も興味深いです

いずれにしても、まんぐーすの思いつき&細切れ紹介よりも遙かに体系的に整理された資料として、特に対領空侵犯措置のスクランブル回数が史上最高になった事だけにしがみつき、広く全体を見て投資優先を考えない「戦闘機命派」の皆さんにご覧頂きたい素晴らしい資料です。

まぁ相変わらず、米国の「アジア太平洋リバランス」政策の「空虚さ」や「言うだけ番長」スタイルへの突っ込みは不足(皆無)ですが来年度はトランプ政権の対中国姿勢を中心に、しっかりと突っ込んで頂きましょう!!!

何せ、北朝鮮関連で中国の刺激しないよう、米軍が上申した「航行の自由作戦」に待ったをかけたらしい(CNNが5日報道)ですし、トランプ大統領得意の「ディール」で、今後の1年でどれだけ対中姿勢が「転進」するかが注目点ですから

それでも、なんと言っても、ネット上で全文(英語訳も)無料公開ですから・・・

ウクライナや電子戦の教訓
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02 

「副長官が国防省として検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-19
「米陸軍電子戦失われた15年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16
「米軍の電子戦の惨状と取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1

PCA型電子戦機PEA関連
「PCAよりPEAを先に導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20

過去の東アジア戦略概観
「2016年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13-1
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-10
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-03

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ロシア軍需産業の輸出見通しは悲観的!? [安全保障全般]

Denisentsev.jpg4月17日、CSIS客員研究員で露シンクタンク研究員のSergey Denisentsevが講演し、ロシア軍需産業の海外輸出動向について説明し中国やインドの国内軍需産業の成長や、原油価格低迷による顧客購買力の低下、兵器輸出国の増加等により、ロシアの兵器海外輸出が横ばいもしくは低下傾向だが、国内需要は少なくとも今後2年間は堅調だと語りました

そもそも、武器輸出額は把握が困難で、非公開部分や賄賂の存在により正確な統計が難しいとの前提付ですが、同研究員の説明は諸情勢からすると一理ある説明となっていますので、国際情勢を理解する上での一助としてご参考まで紹介します

ロシア軍需産業の海外輸出全般
ロシアの武器輸出額は、ロシアの統計によれば2011年以降ほぼ横ばい傾向にあるが、これを米国やスウェーデンの統計で見ると下降している。Denisentsev研究員によれば、集計する機関毎に統計方法が異なったり、掌握範囲が異なったり、非公開部分があったりで、正確な数値把握が難しいのがこの分野である

Russia arms-EX.jpg●一方で全般には、1990年代からロシア軍需産業の主要な顧客であった中国やインドの国内軍需産業が成長し、自国生産を始めた事は伸び悩みに直結している。また、リビアのカダフィー政権崩壊やベネズエラ経済の混乱の影響も大きい
●また原油価格の低迷により、アルジェリアやイラクやシリアからの兵器購入力が低下していることもマイナス要因である。更に、韓国や中国の軍需産業や、規模はまだ小さいながら南アフリカ、トルコ、シンガポールの同産業が、アフリカや中東で販路を拡大していることも、ロシアの足を引っ張っている

●同研究員は、ロシアはより「ニッチ」な、軍事ロボットや潜水艦市場に活路を見いだすべきだと主張した。またこれまでの歴史とは異なるが、自国市場を優先してニーズに応じた製品開発に取り組むべきだと提言した
●更に、ロシア兵器は「安価だが破壊力があり」「操作が容易」との評価で市場を伸ばし、技術移転にも柔軟に対応したことでも顧客を満足させたが、先進航空機の輸出により熟練の技術者を相手側にも求めることとなり、方針に変化があった。

SU-35戦闘機の例では、エクアドルやペルーやコロンビアへの輸出の際は、財政支援や長期ローンを組んだ上で売却していた(が、今は財政事情からその様な支援は難しい)

中国とインド向けの輸出等について
Russia china.jpg●中印両国にとって、特にロシアが技術移転に柔軟であったことが、国内軍需産業育成を狙っていた両国のニーズと合致した。中国はロシア輸出の22%を、インドは31%を占めており、依然として両国に依存する比率は高い

中国は天安門事件以降に海外から経済制裁を受け、それを契機にロシアからの兵器輸入が増えた。ロシアにとっては、ソ連崩壊直後の経済混乱時期を、中国からの需要で生き延びた関係である
●一方インドは、90年代後半の核実験強行により制裁を受け、ロシア製武器の輸入に頼った経緯がある。しかし特に中国は、90年代とは全く異なり(ジェットエンジンを除いては)、駆逐艦も潜水艦も空母まで自国製造が可能となってきた。インドも中国と同様の道を歩んでいるように見える

Russia India.jpgロシア産業はそれでも、第5世代戦闘機、超音速の対艦ミサイル、ミサイル防衛システム&対衛星兵器を自国用に開発しており、中国にとっては魅力的な共同開発分野となり得る
●一方でインドは、先端航空機、レーダー、光学装置で米国やフランス製品のライセンス生産等に傾きつつある

ロシアのシリアでの軍事活動は、輸出にはあまり貢献しないだろう。ロシアは長距離巡航ミサイルの輸出を禁じられているし、高性能防空ミサイルも自国軍の防衛にのみ使用している。大型爆撃機の市場も見当たらない
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以下の過去記事では、ロシアの軍需産業関係者やアナリストが、かなり明るい未来をロシア軍需産業に描いていますが、感覚的には今日ご紹介したような、決して容易ではない厳しい市場競争が待ち構えているのではないでしょうか?

これ以上コメントしようにも、基礎知識が不足しており不可能です。詳しい方のコメント等を募集致します。

なお防衛研究所の「東アジア戦略概観2017」の第6章ロシアでは、ロシア軍需産業の見通しは「右肩上がり」の雰囲気で書かれています
http://www.nids.mod.go.jp/publication/east-asian/j2017.html

ロシア軍需産業とロシア製品
「露軍需産業トップが未来を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露の専門家が自国軍需産業を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-13

「中国がSu-35輸入開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「インド検査員が露製艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

ロシアに関する記事
「露軍の電子戦に米軍驚嘆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「また、6機目の大事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「航空事故多発の露軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13
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EU離脱で英ポンド下落し英国防計画ピンチ [安全保障全般]

May UK.jpg4月25日に英議会の予算監査委員会PACがレポートを発表し、英国防省が2015年に作成した国防計画SDSRは、英国のEU離脱Brexitや新装備開発&導入を巡るコスト不透明性などから、実行可能性が危ぶまれる状態にあると警鐘を鳴らしています

また、英国防省が約束したはずの自助努力による予算削減への取り組みが未達成で、これも2015年の国防計画SDSRの将来を危うくしていると主張しています

英国も多くのNATO諸国や欧州諸国と同様に、冷戦終結後の平和の配当を享受する為、国防費を大幅に削減した経緯があり、最近のロシア軍やイスラム過激派の活発化を受け、米国から国防費をGDP比2%に戻せと厳しく迫られているところです

そんな環境下、米国の一番の同盟国として、国防強化の方向性を明確にした2015年国防計画SDSRを打ち出したのですが、早くも暗雲が立ち込めています。
欧州諸国では、ドイツもフランスも国防テコ入れを迫られているのですが、経済もそんなに順調ではない中、厳しい状況にあるのが現状です。そんな典型的な例として、また英国F-35の購入がピンチだとのお知らせのため、26日付Defense-News記事の概要をご紹介します

26日付Defense-News記事によれば
p8.jpg●4月25日に英議会の予算監査委員会PAC(Public Accounts Committee)が発表した報告書は、英国防省が2015年国防計画SDSR(2015 strategic defense and security review)などで打ち出している装備品調達計画が、予算面から実行可能性が危機に直面していると明らかにした
●そしてPACが2012年に誕生以来、国防計画は裁断の危機に直面していると表現し、「予算面での実行可能性を保つには、国防省が未だに約束を果たしていない、希望的観測に基づく自らの効率性向上による予算捻出に努力してもらうほか無い」と表現している

●例えば英国防省の計画によると、F-35とP-8購入予算がピークとなる2020/21予算年度には、両機種購入だけで「£150 million:2.5兆円」必要だが、2016年度国防予算全体が「£178 billion」であることを考えれば「unaffordable」である
●またPACは、英国防省が5年前から大規模プロジェクト管理を見直していることは認めつつも、2015年国防計画SDSRが打ち出した「£24 billion国防予算増額」を飲み込むことは容易でないと指摘し、国防省が「新たな脅威対処」に準備した「£10.7 billion」も既に底を突いている

May UK3.jpg●今後5年間で英国防省が計画している新装備導入には、P-8対潜哨戒機、アパッチ攻撃ヘリ、MQ-1無人偵察攻撃機、F-35戦闘機、新型フリゲート艦(2隻)、Dreadnought級戦略原潜(4隻)、戦術通信衛星、補給艦、装甲車、新型ミサイル等々がある

●昨今の情勢を受け、保守党政権は国防費増額圧力を受けるだろうが、国防省内の効率化によりその経費を捻出することになっている実態だ。しかし2015年に国防省と財務省が約束した「£7.3 billion」の経費節減でさえ、2015年国防計画SDSR発表後1年経過した今でも「£2.5 billion」しか達成されていない状態だ
更に懸念されているのが「Brexit」による英ポンドの下落だ。2016年予算案が編成された当時の「$1.55 to the pound」から既に30セントも下落しているが、特にF-35とP-8購入に必要な英ポンド下落に伴う追加経費をどのように今後まかなうかについて、何の話し合いも行われていない
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女王陛下の名を冠した英海軍新型空母の艦載機F-35B予算が確保されていない惨状を以前ご紹介しましたが、毅然とした頼もしそうなメイ首相ではあるものの、実態は寂しい限りです

May UK2.jpg国防省の自助努力で効率化して経費捻出とか言っても、6~7年前には国防費大幅削減で「士気崩壊」状態にあった英国軍ですから、「今更何を・・・」と白けたムードだと思います

フランスの大統領が誰になろうとも、ドイツのメルケル首相が如何にがんばろうと、欧州は全体として極めて厳しい歴史の流れの中にあるような気がします。日本だって偉そうに言えた状態ではないのですが・・・。

英国軍を考える記事
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1

ドイツ軍の増強関連
「ドイツ軍が対露で増強へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「ドイツとオランダが連合部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1
「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

NATOがトランプ大統領を懸念
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-15-1

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映像:SpaceXが偵察衛星打上げと1段目回収に成功 [安全保障全般]

reusable-Falcon.jpg米国東部時間の1日朝、Space-X社が「Falcon 9」が初の国家安全保障関連の衛星打ち上げに成功し、売り物である第1段目の垂直着陸回収にも成功しました。
快晴の中で行われた見事な垂直着陸の映像が世界中に配信されていますので、ご紹介します

米国の政府関連事業打ち上げ(軍事衛星など)は、2006年12月にロッキードとボーイングの衛星打ち上げ部門が合併して誕生したULA(United Launch Alliance)が独占し、打ち上げ価格の高止まりなど、競争相手が無いことの弊害が指摘されて来ました。

そこに有名企業家Elon Musk氏が率いるSpace-X社が「Falcon 9」ロケットで参入し、打ち上げ失敗と鈍重な官僚的手続きを乗り越え、2015年5月に参入承認を獲得して大きな期待を集めていました。
しかし2015年6月の国際宇宙ステーションへの物資輸送と、2016年9月のイスラエル商用通信衛星打ち上げに失敗し、米国当局が政府関連事業に備えた安全性確認を再度行っていたところでした

そんな中でもSpace-X社は、打ち上げコスト削減の鍵であった「第1段目ロケット」の「垂直着陸回収」に挑戦し、何回かの失敗を乗り越え、2015年12月に回収に成功しています。
その他、民間宇宙飛行ビジネスや大型打ち上げロケットにも同社は挑戦しており、その元気な動向が注目されています

5月1日「第1段目の垂直着陸回収」映像(約1分半)

1日付軍事メディア報道によれば
●打ち上げは当初、4月30日の日曜日に予定されていたが、センサーに異常が見つかり、5月1日に延期されていた。
●同社CEOのElon Musk氏は、1日も上空の風が強く限度いっぱいの98.6%だったが、ぎりぎりのコンディションを苦にせず、打ち上げは成功したとツイッター上で振り返っている

reusable-Falcon2.jpg打ち上げはフロリダ州のケネディー宇宙センターで行われ、国家偵察局NRO(National Reconnaissance Office)の非公開衛星衛星を打ち上げた。衛星の細部は一切明らかになっていない。
●「第1段目の垂直着陸回収」は「Cape Canaveral空軍基地」で打ち上げ数分後に行われた。成功の様子を伝える映像に、カリフォルニアの同社本部は歓声に包まれた

陸上で「第1段目の垂直着陸回収」に成功したのは4回目で、海上も何回か成功している
●同社はまた、回収した「第1段目ロケット」の再使用発射を4月に成功している
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「Falcon 9」ロケットの第1段目を再利用可能となったとして、重要性が高く代替衛星の確保が簡単ではない「政府関連事業衛星」を、まだ実績が十分でなくリスクがある「再利用ロケット」で打ち上げるかとの問題が指摘されており、すぐさま打ち上げコスト削減につながる状況ではないようです

Elon Musk.jpgまた「Falcon 9」ロケットは打ち上げ可能重量が小さく、大型の衛星や物資運搬には使えません。

そんなこんなのSpace-X社「Falcon 9」ですが、失敗を乗り越え、着実に実力と実績を積み重ねています。今後も応援したいです!!!

Space-X社の参入とULA
「イスラエル通信衛星失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25
「混迷の米衛星打ち上げ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「軍事衛星打上げにSpaceX参入承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27

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ロシアが北極圏の新しい軍の基地公開 [安全保障全般]

Trefoil 3.jpg4月29日付Military.comが、ロシア国防省がweb上で公開した新しい北極圏の基地「Arctic Trefoil military base」を紹介し北極圏での活動で「遥かにロシアに劣る」現状を嘆く元米沿岸警備隊司令官などのコメントを引用しています

地球温暖化が原因と言われる北極海の「氷の減少」により、北極圏の地下資源や「第2のスエズ運河」と言われる北極航路の開拓を巡り、沿岸のロシアや北欧諸国だけでなく、中国までが乱入して熱いエリアとなっている北極圏の様子を久々に取り上げます

ちなみに北極圏の原油の埋蔵量は41兆バレル以上で、サウジアラビアのそれ以上と言われているようです。

4月29日付Military.com記事によれば
Trefoil.jpg●4月17日付でロシア国防省webサイトに、新たな北極圏の軍基地「Arctic Trefoil military base」のバーチャルツアーが掲載された。同基地はロシアが北極圏に構築した基地の中で最も北に位置し、「Franz Josef Land列島」に設けられた
約14,000平方マイルの敷地を持つ同基地は、ロシア国旗の色をあしらった塗装がなされ、150名の兵士が外部からの支援なしで18ヶ月生活できる施設だとロシアはアピールしている

前海兵隊司令官で現在国務省の北極問題特別代表であるRobert Papp退役大将は、「プロパガンダに満ちたwebサイトだ」と述べつつ、3月にプーチン大統領が同基地を訪問するなど、ロシアの一貫した北極圏への取り組みに危機感を訴えた
●Papp特別代表は「米国は世界中の様々な地域を気に掛けているが、北極圏にはそれが無い」、「一方でロシアは、それが文化の一部であるかのように北極に関与し、地下資源や原油や天然ガスを我が物とすべく取り組んでいる」とFox Newsで語った

●そして同特別代表は、北極圏で実際の戦争が起こる可能性は低いが、新たな冷戦と捉えるべきで、米国は早く目を覚まし、北極圏での活動に早急に備えるべきだと訴えた

Trefoil 4.jpg●アラスカ選出のDan Sullivan上院議員も、「ロシアは着実に北極圏で戦略的能力を蓄えている」「プーチンは北極航路を新たなスエズ運河と呼んで力を入れている」と危機感を訴えている
●同上院議員は長年、米国が北極圏でプレゼンスを示すように訴えてきたが、この結果として、オバマ政権が廃止を決定していた第25歩兵師団の第4旅団(米軍で唯一極地での活動ノウハウを保持する部隊)の存続させることになった

しかしロシアや中国の勢いには及ばないのが現状である。中国の調査船が北極航路調査のために同海域で活動する様子が複数確認され、ロシアは米国を遥かに上回る砕氷船団で北極航路の活用を目指している
●Sullivan上院議員は「ロシアは砕氷船を40隻保有し、更に原子力推進を含む13隻を追加建造しようとしているが、米国は僅か3隻でその中の1隻は故障中である」と圧倒的な能力差を訴えている

ロシア国防省の関連webページ http://eng.mil.ru/en/structure/okruga/north/news/more.htm?id=12118973@egNews
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Trefoil 5.jpg米国の砕氷船は、実質1隻のみが活動可能な状態にあるようです。

新たな建造には時間が掛かり、予算も必要なことから、「とりあえずリースで穴埋めしよう」との案も出ているようですが、小型で旧式な砕氷船しか市場には存在せず、ガッツリ武装した大型のロシア砕氷艦とは比べるのも哀れな話だそうです・・・

ちなみに、ロシアが北方領土に配備した地対艦ミサイルは、北方での活動を活発化する中国艦艇を意識したものとの見方があります

北極&極地関連の記事
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「ロシアが鉄の壁構築」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07

「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02

「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26 

北極海を巡る米国防省と米軍の動き
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

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画期的:ハリス司令官がINF条約見直しを要請 [安全保障全般]

皮肉!「宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守し・・・」

Harris SASC.jpg4月26日から27日にかけ、ハリス太平洋軍司令官が下院及び上院の軍事委員会に出席し、北朝鮮情勢を絡めつつ様々な視点から証言していますが、他のメディアが取り上げていない「時代に合わないINF全廃条約を見直してくれ」発言がありましたのでご紹介します

この両日の議会証言では、「北朝鮮情勢は史上最悪」「空母カールビンソン艦載機は2時間以内に朝鮮半島に到達可能な距離に」「同空母の行動に関し混乱を招いたのは私の責任」との発言が広くメディアで取り上げられ、ごく一部に「ハワイにもICBM防御ミサイル配備を要検討」発言が紹介されましたが、INF条約関連発言のカバーは米空軍協会web記事だけだと思います

最近この条約が話題になっているのは、この米露2国間条約をロシアが破り、仮称「SSC-8:9M729」との長射程巡航ミサイルを、全欧州を射程に収めるロシア西部に配備したと米国政府や軍高官が訴え始めたからで、4月4日には米戦略コマンド司令官が「米国は防御手段を持たない」と危機感を表現しています

「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

今回のハリス司令官による「INF全廃条約を見直し要請」発言は、北朝鮮関連の流れで出たものでしょうが、背景にはロシアの条約破りのほか、中距離弾道ミサイルを戦力の中核にすえる中国やイラン等への大きな危機感があると思います

まずINF全廃条約を再確認
INF-USRU.jpgレーガン・ゴルバチョフ間で1987年12月8日に署名された同条約は、米露が射程500kmから5500kmの地上発射ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するもの。もちろん、中国や北朝鮮やイランを拘束する条約ではない
●特にロシア側は、プーチンが「ほぼ全ての隣国が中距離ミサイルを開発している」と危機感を訴え、ロシアによる条約破棄は「控えめに言っても議論対象だ」と発言しているように、同条約に不満を持っている。しかしロシアは「SSC-8:9M729」が同条約違反だとは認めず、ずるずると実質米国だけが条約に縛られている状態を上手く作為

オバマ政権は、ロシアが同巡航ミサイルが試験発射を行った2014年からINF条約違反だと指摘しているが、ロシアは条約違反を否定し、逆に米国の装備を違反だと批判している
●4月4日、米戦略コマンドのHyten司令官は、最近ロシアが配備したINF全廃条約違反の地上発射型巡航ミサイルに関し、「我々には防御手段が無い。特に欧州同盟国を防衛する手立てが無い」と証言した。なお同巡航ミサイルは2個部隊編制されており、1個がカスピ海北方のボルゴグラード市近郊部隊に配備されているが、もう一つの部隊の所在は不明である(公開されていない)


ハリス太平洋軍司令官の議会証言概要
26日、下院軍事委員会でハリス司令官は、INF全廃条約を時代遅れな条約だと語り、「条約に署名していない国(中国やイランや北朝鮮等)によって詐欺に会い、無一文にさせられたようなものだ」とまで表現した。
●そして同大将は「米国は同条約の再交渉を真剣に考えるべきだと考える」と危機感を訴えた

Harris HASC.jpg翌日の27日、今度は上院軍事委員会で同司令官は、「INF全廃条約は米国とソ連のみが力を持つ2極世界であった1987年に締結されたものだが、我々は今、多くの国が射程500~5500kmの兵器を保有又は開発する世界にいるのだ」と訴えている
●更に、中国とイランは差し迫った懸念対象であり、「中国が保有する弾道・巡航ミサイルの9割が(米国が条約に縛られ保有できない)このカテゴリーに属しており、イランはこの種のミサイルの発射試験を1月にも行うなど、盛んに増強している」と強調した

●そしてハリス司令官は、「米国は宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守し、このカテゴリーのミサイルを一切保有していない」と皮肉たっぷりに表現し、合わせてロシアが2月に条約破りの巡航ミサイルを配備した点にも言及した
●また「中露の超超音速兵器を懸念している。なぜなら、米国は同条約の制約で同種兵器の開発が制約を受けるからだ」とも訴えた
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SSC-X-820.jpg前オバマ政権が「言うだけ番長」の対中国姿勢であった中、自らの職責の限界ぎりぎりラインで中国への厳格な姿勢を冷静な態度で貫き、アジア太平洋の米国同盟国の光明であったハリス司令官ですが、夏には交代又は退役が噂されています

中国はハリス司令官交代のタイミングを狙って「反転攻勢」を仕掛けてくるのでは・・という軍事専門家もいるほどの司令官ですので、2012年末からINF条約問題を訴えてきたまんぐーすとしては、これほど嬉しいことはありません。

当然課題もあり、同条約が破棄されれば、ロシアが極東に堂々と中距離弾道・巡航ミサイルを配備し、戦術核兵器が搭載されることも想定する必要がありましょう。
しかし・・・中国のことを考えれば、そんな事をいっている場合じゃないと思うのですが・

INF条約関連の記事
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

「米とカナダが巡航ミサイル対処に協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

超超音速技術やPGC関連の記事
「艦艇配備の超超音速兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-04
「超超音速ミサイルの脅威が大きな話題に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

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タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ [安全保障全般]

VT4 tank.jpg4日付Defense-Newsによれば、タイ政府報道官が既に28両を2016年に発注している中国製主力戦車VT4(MBT-3000)の追加購入10両を発表した模様です。

朝鮮戦争当時に開発された現有の「米国製軽戦車M41」を更新するモノで、当初はウクライナ製の「T-84 Oplot戦車」200両を購入する方向で、2011年時点で49両を受領していたものの、その後のウクライナ情勢混乱で供給が不能となり、代替戦車として輸出を目的に設計製造された中国製戦車購入にタイが動いているモノです

M41.jpg中国製VY4(重量52トンの重戦車)は2014年から海外売り込みが開始されており、「125mm smoothbore cannon」や「active protection system」、火器管制装置も最新の技術が導入されており、米国製よりも安いことから海外から注目を集めているようです。

本日はこの戦車の戦力的な意味合いでは無く、2014年のタイ軍事クーデター以降、米国から冷たくされているタイが、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)した流れを受け、ますます全方位外交(米国離れ)に傾く現状としてご紹介します

4日付Defense-News記事によれば
US  thai.jpg●この戦車の追加購入報道は、タイと中国が関係強化を図っている最新の事例でアリ、2016年末に固まった3隻のType 039A Yuan級攻撃潜水艦と、今年3月に発表になったばかりの「VN18輪兵員装甲車」購入に続くものである
この他にもタイ軍は、同海軍が中国製のフリゲート艦や沿岸警備艇を既に使用している。これは中国製兵器の価格が安いことに要因がある事は確かだが、IISSアジア部のTim Huxley上級部長は、タイが中国武器に傾きつつあるのは政治的な影響も受けていると語っている

US  thai2.jpg●Huxley上級部長は、西側諸国の2014年クーデターへの反応がタイと(米国等と)の関係を損ね、米国や西側製兵器から中国製兵器への変化の流れを促進していると見て居る
米国は2003年12月にタイを非NATOである主要同盟国と位置づけたが、クーデター以降に軍事援助や諸協定をキャンセルした。回復基調にあるものの

●一方で中国は、タイのクーデター後、主要国で最初に軍事政権を承認し、それ以降はタイの主要貿易相手国となり、タイにとって2番目に大きな投資受け入れ先としてインフラ施策を担っている

2015年7月の中国潜水艦導入発表時の記事
●「単に中国との接近なら理解出来るが、ドイツやスウェーデン製の選択肢がある中での中国潜水艦の購入は、より強い意味を持つ」と専門家は語った
●バンコクの大学の安全保障講座長は、「タイ政権から米国に対する、タイの価値観や国益を注意深く扱うべきとの警報」であり、中国潜水艦の購入決定が米タイ関係を悪化させると見ている。

Cobra Gold.jpg●また、米国の軍事政権批判がタイを中国よりに向かわせる主因だとし、「2006年と2014年のタイ軍事クーデター関係軍人を、中国が賞賛している」、「中国がタイ軍事政権側に立っていることが、タイの体面や正当性を大きく支えている」とも分析している
●シンガポールの専門家も、米国がクーデターや軍事政権の存在でタイに罰を与えることが、米国に害を及ぼすことをタイは示そうとしていると分析している。米国がアジアでの同盟強化に努力する中で、タイは中国との関係強化も可能だと示そうとしていると。

冷戦間、米タイ軍事関係は堅強で、「Cobra Gold演習」も1982年に開始されている。一方で、80年代以降のタイ海軍の艦艇調達先は世界に分散し、中国、イタリア、シンガポール、スコットランド、スペイン、米国である
90年代に入ると、中国から2隻のフリゲート艦と4隻のJianghu III級ミサイルフリゲートを購入している。しかし両艦とも、第3国装備の融合に関する技術的問題に問題を抱えている
●タイはまた、90年代にスペインから空母を調達したが、維持整備の問題で9機のハリアーは運用不能で、空母も大部分の時間はドックに係留されている
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Cobra Gold2.jpgタイも苦渋の決断なんでしょうが、オバマ前政権が進めた「人権重視外交」の代償は大きいです
この点、トランプ政権がどう考えているのかが気になります。実業家らしく、タイ内政の混乱を回復させた軍事政権を認め評価し、実利を重んじる姿勢でタイと仲良くやって頂きたいものです

最近、ホワイトハウスが国務省の政治任用ポスト(主席次官補代理など)50あまりを意図的に空席にし、「クシュナー氏ら」が直接外交を指示するような動きを見せていると報じられており、「人権外交」の流れがどうなるか気になります

その試金石の一つであるタイとの関係に、今後も生暖かく注目したいと思います

米タイ関係を考える記事
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16

シャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01

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米ハイテク技術企業に中国政府系投資資金が [安全保障全般]

china-J21-J31.jpg3月24日付Defense-NewsがNYT紙記事(22日付)を引用しつつ、中国の政府系投資会社がリスクを恐れない姿勢で米国のベンチャー企業に資金を投入し、その額が急増しており、軍事技術を扱う企業もその中に多く含まれていることから、国防省やトランプ政権が技術流失の可能性に警戒感を強めていると報じています

この報道のきっかけは、カーター前国防長官が要請していた外国資金の国内ハイテク企業への投資状況を調査した報告書原案が、20日の週に国防省やトランプ政権関係者に供覧されたことにあり、NYT紙が匿名の関係者に聞き取りをして報じています

国防省報道官は「国防省内部の作業中の文書に関しコメントはしない」との姿勢で正確なところは不明ですが、中国の資金が有望なベンチャー企業に相当流れ込み、その額が急増している様子がうかがえますので、断片的ながらご紹介します

24日付Defense-News記事によれば
parade.jpg中国政府と関係の強い中国投資会社が、軍事分野と関係の深い最先端技術を扱う米国ベンチャー企業(American startups)への投資を増加させている
米国政府も重要技術の流出を防止する監督を行っているが、十分には機能しておらず、担当するCFIUS(Committee on Foreign Investment in the United States)の権限拡大等をトランプ政権も考え始めているようである

●中国資金が流入しているハイテクベンチャー企業には、例えば、宇宙ロケットエンジン企業、自立型海軍艦艇のセンサー企業、戦闘機操縦席への使用が想定される柔軟なスクリーンへの印刷技術企業、人工知能企業等々が含まれている
●投資をする中国系投資会社は、契約を通じて投資先の知的財産や開発プロセスにアクセス可能になるだろうし、企業の設備や人材に関するデータも入手する可能性がある

●民間の調査会社CB Insightsによれば、2015年に中国系投資会社は約1兆円を米ベンチャー企業に投資しており、前年比で4倍の急増を見せている。しかし契約や取引の細部を公開する義務はなく、よくわからない部分が多い
●政府のCFIUSは小規模な投資には目が届かず、チェックが十分できないが、それでも2012年から14年の3年間に確認したケースは358件で、前の3年間の318件から増加しており、その中の中国関係投資は39件から68件に増加し、国別で最も多い

parade2.jpgボストン所在の人工知能ベンチャー企業の「Neurala」は典型的な例である。同社の技術に興味を持った当時のJames空軍長官が来訪し、同社は市販の無人機に開発したソフトを投入し、その技術つをデモした
空軍長官らはその技術の高さに感嘆していたが、それ以降何ら反応はないと同社CEOは嘆き、最終的に中国国営Everbright Group傘下の「Haiyin Capital」から投資を得ることなって現在に至っている。それでも同社CEOは、重要な技術やプログラムが流出しないように細心の注意を払っていると強調している。

最初に報じた22日付NYT紙は
●中国からの投資の多くは問題あるものではなく、純粋に投資益を求めるものや、中国の大気汚染を改善する技術や交通問題を解決する技術などなどへの投資であり、米国の監視強化の動きを批判する者もいる
しかし中国が最近公開したJ-31戦闘機が米国製F-35戦闘機とそっくりであるように、先進軍事技術が米国から中国に流出し、中国が資金を投入することなく技術を手にしているとの批判は絶えない

共産党中央軍事委員会3.jpg●米軍関係者もベンチャー投資の難しさを認めており、「レイセオン社に1兆円は可能でも、ベンチャーには1億円でも容易ではない」と語っている
●また、一度中国資本が入った「Neurala」のような企業に、米国が後から投資することの判断は難しい
カーター前長官はベンチャー技術の発掘を目的として、先端技術発掘のための出張事務所DIU-x(Defense Innovation Unit Experimental)を、先端ベンチャー企業が集まるシリコンバレーやボストンやテキサスに設置したところである

●中国側の米国ベンチャーへの投資意欲は強く、シリコンバレーの銀行「Silicon Valley Bank」の社長は、過去半年間だけで3つの中国政府系企業から、同地域で新技術獲得や新企業投資・買収を行うエージェントにならないかと誘いを受けたと語っている
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DIU-Xや長官直属で新技術を導入するSCOなどの組織は、トランプ大統領とマティス長官の下でも機能しているのでしょうか???

中国資金の動向と同じように気になります

米国製にそっくりな中国ステルス戦闘機
「J-20改良型が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「改良版J-31初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27 
「改良版J-20エアショーで飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

カーター前長官の技術革新促進
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1

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情勢緊迫:シリア軍がイスラエル軍機をミサイル迎撃 [安全保障全般]

シリア攻撃のイスラエル軍機を、シリアが地対空ミサイルで迎撃
シリア軍は1機撃墜主張も、イスラエル軍は否定
イスラエルBMDで落下するシリア軍ミサイルを迎撃?
迎撃ミサイル破片がヨルダンに落下か?

Israel Lebanon3.jpg17日早朝、シリア領の目標を攻撃したイスラエル空軍機が、イスラエルに戻る途中、シリア軍の地対空ミサイルに迎撃された模様です。ただ冒頭見出しのように、両国とリビアやレバノンから様々な情報が乱れ飛んでいる状態です。まぁ・・・めったにない事案で今後が懸念される事象ですので取り上げておきます

両国は対立関係にありますが、直接軍事的に衝突することは極めてまれで、2011年春からのシリア内戦やISIS台頭をめぐる混乱の中でも、イスラエルは極力関与を避けてきた経緯があります。

イスラエルはシリア内戦に関与する意図はない(シリアの弱体化を祈りつつ)様ですが、シリア経由でレバノンのヒズボラに武器等が供給される場合や、どさくさの中でシリア軍がイスラエル正面に兵器を配備したりするとピンポイント攻撃を行ってきたようです

地図で関連国の地理的位置をご確認いただきながら、入り乱れる各国の発表や報道をご覧ください。声の大きいものが事実を「仕立てる」のが中東ですから・・・

イスラエル軍やイスラエル報道によれば
●イスラエル軍は、シリア内の複数の目標を攻撃した空軍機がイスラエル領内に帰還したとき、複数の対空ミサイルがシリアからイスラエル軍機に発射されたと発表した
●また、(イスラエル領内に落下する恐れのあった)シリア軍発射ミサイル1発を、イスラエル軍防空システムで迎撃したとも明らかにした。しかし、他のシリア軍発射ミサイルがイスラエルに落下したのか等、細部への言及を避けつつ、イスラエル市民とイスラエル軍機の安全に問題はなかったと明らかにした

Israel Lebanon.jpg●またイスラエル軍は、ヨルダン渓谷のユダヤ人入植地に対し、空襲警報用のサイレンを鳴らした
●一方、シリア軍が主張した1機撃墜等については否定した

●イスラエルのTV「Channel 10」は、イスラエル軍機はイランに支援されているレバノンン所在のヒズボラへの物資輸送車列を攻撃する任務を与えられていたと報じている
●また同TVは、イスラエルが米国と共同開発したBMDシステム「Arrow」を実任務で初展開し、シリア軍が発射したミサイルを迎撃したと報じている。またハーレツ紙は、エルサレムの北方でも行われたと報じている

●ただイスラエル軍は、この迎撃に関し何もコメントしていないし、弾道ミサイル対処用の「Arrow」が地対空ミサイルの流れ弾を迎撃に用いられたのかどうかは不明である。

シリア政府や軍の発表によれば
イスラエル軍機4機がレバノン経由でシリア領空を侵犯し、シリア中央部のシリア軍拠点を攻撃したと発表した。
israel jordan.jpg●そしてシリア軍防空部隊がイスラエル軍機に対処し、1機を迎撃してイスラエル支配地域に墜落させ、別に1機にも被害を与えたと発表した
シリア外務省は国連に対し、国際法違反である乱暴なイスラエルの侵略を非難するよう求めるレターを発出した

ヒズボラの反応
ヒズボラは直接のコメントを出していない
●ヒズボラ寄りの報道で知られる「pan-Arab Al-Mayadeen TV」は、イスラエル軍機の攻撃でヒズボラの指導者「Badee Hamiyeh」が16日にゴラン高原で死亡したとのアラブメディアの報道を否定した

ヨルダンの報道
israel jordan 2.jpgヨルダン北部にミサイルの部品が落下した。ヨルダン軍によれば、シリア軍ミサイルを迎撃したイスラエル軍ミサイルの残骸の模様
●ミサイル部品が落下した地域の市長は、部品落下による被害は大したことはないとメディアに語っている。自宅近傍で爆発音を聞いた地域住民は、自宅周辺の地面に小さな穴が開き、約3mの破片があること見つけて当局に連絡した
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地中海沿岸の中東諸国に、これ以上複雑な要因が加わらないことを祈るばかりです
シリアにはロシア製の高性能地対空ミサイルが持ち込まれており、これが使用されたとなれば、輪をかけて情勢が複雑化します。

israel russia.jpgイスラエルはここ数か月で、数回シリア内へ攻撃を加えているようですが、攻撃したことを公表したことはありませんでした

ネタニアフ首相のロシア訪問が終わったばかりで、プーチン大統領にシリアへの武器供与についても議論があった模様で、ロシアへの警告の意味があったのでは・・・とBBCなどは報じています。今後の報道や各国の動きに注目いたしましょう

イスラエル関連の記事
「イスラエル目線で2017年を予測」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-02
「イスラエル後に湾岸へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

シリア関連の記事
「ロシアの怪しげな関与」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
「ロシアとトルコの共同空爆作戦!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22

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「リバランス」は終了へ:それで??? [安全保障全般]

「Pivotやrebalanceとの言葉は前政権の用語」
「我々は恐らく、わが政権自身の方策を打ち出すだろう」

Thornton2.jpg13日、ティラーソン国務長官による初の日中韓訪問に先立ち、Susan Thornton担当臨時国務次官補が細部は煮詰まっていないが、アジア太平洋地位への政策のスローガンだった「リバランス」や「Pivot」との言葉は前政権の用語だと表現し、トランプ政権としての政策を打ち出す方向だと記者団に示唆しました

もちろん、トランプ政権もアジア太平洋地域には引き続きしっかり関与していくと強調しているようですが、中国や北朝鮮の動きなど情勢が緊迫する中、主要な政治任用ポストの任命が遅れている状況の中での発言だけに、肯定的には受け取れないとの専門家の意見も聞かれるようです

中身はあまりありませんが、数少ないトランプ政権アジア担当関係者の発言ですので、ご紹介しておきます

14日付Defense-News記事によれば
●米国務省の高官によれば、「Pivot to the Pacific」のかけ声で知られるオバマ政権時のアジア太平洋リバランスは、公式に死んだようである
ティラーソン国務長官によるアジア訪問に先立ち、記者団からのリバランス政策に関する質問に答えたSusan Thornton担当臨時次官補は13日、まだまとまってはいないが、新政権は新政権の新しい地域政策を打ち出すと語った

Thornton.jpg●同次官補は「Pivotやリバランスなどの言葉はあるが、これらは前政権のアジア政策を表現する言葉である。皆さんには恐らく、新政権自身の政策枠組みを示すことになるだろう。細部は煮詰まっていないし、どのような形か、新たな枠組みになるかどうかも決定はしていないが・・」と表現した
●しかし同女史は、新政権の当地域への関与の色が変わろうとも、アジア太平洋地域に引き続きコミットしていくことには変化は無いと強調した

●そして「米国は今後もアジアに積極的に関与するし、米国の繁栄と成長にとって、アジア経済は極めて重要だから、公正な貿易と自由貿易問題に取り組み、北朝鮮問題にも対応し、ルールに則った、建設的で平和的で安定した秩序をアジアに求めていく」と語った
●また「(リバランスに代わるような)ステッカーにして貼り付けるような言葉を用いるかどうかは時期尚早だ。政権はスタートしたばかりで、何か言うには早すぎる」と付け加えた

専門家のコメント等
Graham2.jpg●豪州のLowy研究所のEuan Graham国際安全保障部長は、「継続的な関与、自由貿易、ルールに基づく秩序等に言及した点は、同盟国等に歓迎されるだろう」、「しかし、国防省と国務省の政策担当次官が空席な状況など、米国には為すべき事が多く残されており、トランプ大統領や側近がどれだけアジアを米国の国益と関連して捉えているかに関し、懐疑的な見方は静まらないだろう」とコメントしている
●そして、TPPから離脱表明に代表される新政権の姿勢は、オバマ前大統領やカーター前国防長官がTPPを強く押していただけに、地域の同盟国等を疑心暗鬼にさせるに十分な状況にある

予算面でも懸念が見られる。昨年9月、カーター前長官は「リバランスの新たなフェーズ」と表現し、2つの鍵となる分野、沿岸警備隊予算増とASEAN諸国10ヶ国への海外軍事援助(FMF:Foreign Military Financing)増加を打ち出していたが、これが危ういと懸念されている
FMF.jpg●トランプ政権は国防費の増額や公共事業費の増額を打ち出しているが、この代償として、沿岸警備隊予算やFMF予算が削減の対象になるのではと言われている

沿岸警備隊予算については既に超党派の下院議員58名が連名で削減回避を求めたレターを発出したようで、FMFについても上院関係者が懸念の声を上げている
●Graham氏は、オバマ政権のあとの空白を埋める代替物を確保しない段階で、TPP破棄を宣言し、リバランスの看板を下げるような動きは、ネガティブで良い手法とは思えず、中国の思うままになるリスクをはらんでいると懸念している
/////////////////////////////////////////////////////

ティラーソン長官は、「リスニングモード」だとしても辛い立場だと思います。長官は15日に来日し、17日にはソウル、18日には北京を訪問するそうですが・・・

Tillerson.jpgマティス国防長官は早い段階だったので「とりあえず」感で乗り切りましたが、大暴れ北朝鮮の前で大混乱の韓国、経済の減速待ったなしの中国の変わらぬ南シナ海態度、ロシアに冷たくされて意気消沈の日本など、何を語って帰国するのでしょうか???

私なら、挨拶して、お茶を頂いて、夕食会はパスして、次の国へ移動したいところです・・・

アジア太平洋関連の記事
「真剣にF-22迅速展開を検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-08
「比の3閣僚が南シナ海で米空母訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06
「道遠し?:NIFC-CAの進展」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26

「政治任用はマティス長官のみ決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-13

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米空軍トップが再び21世紀の抑止に言及 [安全保障全般]

Gold-Live.jpg2日、Goldfein米空軍参謀総長が米空軍協会主催の「Air Warfare Symposium」で講演し21世紀の抑止についての考え方を説明し、その中での米空軍の役割を訴えています

背景にはサイバーや宇宙と言った新たなドメインが戦いの場に登場し、本国の社会インフラや経済活動に対し、誰が犯人か判らないような手段で甚大な被害を与えることが可能となっており、核兵器を柱とした抑止の考え方を再整理する必要があるとの問題認識があります

またまんぐーすが本件に着目するのは、核戦争に発展するのを懸念するとの理由で、エアシーバトル(ASB)的な考え方を批判し、オフショア・コントロール(OSC)的な経済封鎖を、対中国戦略の一つの柱のように扱う議論が存在する事への、米国防省の姿勢を確認するためです。

ASB1.jpgつまり、米国防省は「第3の相殺戦略」を進める前提として、強固な核戦力を維持する前提の基で、圧倒的な通常戦力を「第3の相殺戦略」への取り組みを通じて米軍が今後も継続保持することによって、潜在的敵国を抑止するんだ!・・と考えていることの確認です

更に言えば、米国防省や米軍は、学者達がどのような議論を展開していようが、ASBを生み出したCSBAの元研究員であるWork副長官らのゲリラチームのような一群が、「第3の相殺戦略」の形を取って、あるべき軍事戦略追求を追求していると言う事です。

以下にご紹介する、空軍参謀総長の発言や、Work副長官やSelva統合参謀副議長の過去の発言は、事柄の性質抽象的な表現が多いですが、「抑止」の根本に関わる議論が始まっていると言うことです。

3月2日、Goldfein米空軍参謀総長は
Goldfein1-1.jpg21世紀の抑止とは陸海空、水中、宇宙、サイバーの多様なドメインで、敵に対して多様なジレンマを与え、かつ圧倒的なテンポで与えることにより敵を圧倒し、敵が我と同様の行動を起こさないようにする事である
●このため、統合戦力の全ての部隊が同じ作戦状況認識を共有する事が不可欠であるが、このために軍需産業界の皆さんには、強靭で新たなネットワークの創造への挑戦を期待したい

●この新たな創造のため、米空軍もこの「combat cloud」を実現するため、新たなアイディアに挑戦する環境提供に尽力するつもりである
●我々は、作戦状況を共有するための手段を創造しなければならない(We have to think about … creating that common operating picture)。

例えば、タクシーのような「Uber」では、アプリ上でUber車が何処に所在し、車種や運転手情報、進行方向、到着予想時間まで簡単に判る仕組みになっている。これが目指すべき方向ではないか。そう思わないですか?

2月7日、同参謀総長は
Goldfein6.jpgトランプ大統領が核兵器の増強発言をしていることに関し、「全てのオプションをオープンに検討する準備がある」「弾頭数や威力の議論も問題ない」「国防省が現在構想している核兵器近代化計画の継続が議論の主対象になるだろう」と述べたが、更に続けて
●「一方で、21世紀の抑止についてより幅の広い議論を期待したい。宇宙やサイバードに戦域が拡大し、世界共通の公共財が目標になり得る時代における、抑止のあり方や核抑止の関わり方にまで議論の幅を広げる必要があろう」と語った

2016年10月28日、Work副長官がCSISで講演し
work AFA.jpgJohn Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と、無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「第3の相殺戦略」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
本戦略は、米国の通常戦力抑止力を強化する事により、主要な大国との本格紛争を回避することを期待する戦略である

同日CSISでSelva副議長は
●「第3の相殺戦略」は、解答ではなく質問である。それは潜在的な敵の能力を凌駕するため、どんな能力が我に必要かを問うものである
同戦略には決められたゴールはなく、単に目的地に向けてドライブするのでも、各軍種にどんな装備を購入すべきかを示してくれるモノではない

Selva-CSIS.jpg●代わりに同戦略は、国防省が繰り返し継続的に、敵がどのような優れた能力を蓄えつつあるかを監視し、その敵がどんな脅威を友軍にもたらすかを考え、その脅威への対処が通常戦力抑止を強化するかを自身に問うことを求める
●そのためには、机上演習や実演習を通じた作戦実験が重要で、これらを通じて技術やアイディアを、戦術や手順やドクトリンに取り込んでいくことが解答につながる

●正しき認識された戦術や手順やドクトリンを試し、それらを米軍や同盟国にも伝え、敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力に対し、優位を確保する手法を考えなければならない
●そして敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力とは、単純化すれば、長射程で、精密誘導で、陸海空だけでなく宇宙やサイバードメインで発揮されるものであろう 


2015年5月、クレピネビックCSBA理事長(当時)は
ASBの運命と第3の相殺戦略への動きを絡め説明し、
krepinevich6.jpg今やエアシーバトルASB検討は統合参謀本部のJ-7に移され、よく分からない別の名前を付けられている。
ASBにペンタゴンは悲鳴を上げた。ある軍種の予算を配分を増やし、ある軍種から削減することになるからだ。結果ASBは拉致監禁(hold)され、今後は困難な道をたどるだろう

●ただ、(拉致されたASB検討とは別に)かつてCSBAで同僚だったWork国防副長官(事実上の第3の相殺戦略発案・推進者)らのゲリラチームのような一群が、(あるべき軍事戦略追求のため、関連装備である)LRS-B(空軍の次期爆撃機)、潜水艦や水中無人艇、空母艦載無人攻撃機UCLASS、エネルギー兵器等の実現・調達等を画策している
/////////////////////////////////////////////////////

「第3の相殺戦略」が正しいか間違っているかではなく、現在の米国防省において、「第3の相殺戦略」は上記の発言が示すような位置づけにあり、ASB的な考え方で通常戦力を圧倒的レベルに引き上げる努力が行われていると解釈して良いと思います

ASEANPlus.jpgASBが発展し、ASLB(Air,Sea,and Land Battel)になる方向でしょうし、陸軍火力に期待し、MaltiドメインやCrossドメインの方向に進むのかも知れませんが、実務は国防省や米軍が行っているのでアリ、学者の論文で進んでいるのではありません

引き続き、サイバーや宇宙を絡めた抑止議論に早々決着がつくとは到底思えませんし、また「combat cloud」なる新たなネットワークが実現可能で現実の場で有用なのか「???」なのですが、我が国も防衛を考えるに辺り、基礎知識としてMemoしてみました

頭の整理不十分で申し訳ありませんが、今日はここまで!

トランプ政権とNPR(核態勢見直し)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「第3の相殺戦略」関連の記事
「マティス長官と相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19
「この戦略は万能薬ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1
「CSISが相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12

「小野田治の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
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フィリピン主要3閣僚が南シナ海の米空母訪問 [安全保障全般]

CV  Carl Vinson.jpg4日、米国との関係がギクシャクしてるフィリピンの国防相など閣僚3名が、在比米国大使館の招待に応じ、南シナ海で「航行の自由作戦」を遂行中の米空母カールビンソンを訪問し、FA-18の離着陸などの様子を刺殺した模様です。在比米国大使館が明らかにしました

米空母を訪れたのは、Lorenzana国防相、Carlos Dominguez財務相、Vitaliano Aguirre II司法相の3名で、加えて国防官僚が3名同行していたようです

この訪問を報じる5日付「Military.com」は、ドゥテルテ大統領の厳しい対米姿勢に関わらず、軍事関係者の間では「top-level」の交流や意見交換が続いている証拠だと報じています。

そして、CSISの客員研究員で、東南アジアで活動する企業へのアドバイザー企業を経営する専門家の言葉を紹介し、オバマ政権からトランプ政権に交代後、ドゥテルテ大統領のフィリピンへの姿勢が軟化し、両国軍事関係の進展を許容していると記載しています

Lorenzana3.jpgそれが本当であれば、同じ対中国最前線国である同士フィリピンと米国の関係改善は、日本人として喜ばしい出来事ですが、個人的にはまだ疑心暗鬼です

共同軍事演習は災害対処と人道支援の分野だけ」とか、「米中の紛争に巻き込まれたくないから、米軍兵器の比での保管はだめ」とか、ドゥテルテ大統領の発言は明確で、その姿勢が変化しているようには思えないからです

過去の経緯は、末尾の過去記事をご参照願いたいのですが、引き続き要フォロー事項だと思うので、ご紹介しておきます

5日付「Military.com」記事によれば
Sung Kim.jpg在比米国大使のSung Kim氏(韓国系米国人で、前職の北朝鮮問題担当の米国代表として、しばしば韓国や日本を訪問していた)が、3名の閣僚達を空母カールビンソンに案内し、約5500名が勤務する9万5千トンの空母の様子やFA-18の離発着を共に見学した
●3日、同空母群司令官のJames Kilby少将は記者団に対し、「我々は将来もここに存在し、公海は誰もが航行でき、通商に利用できる海域である事を示し続ける」と語っていた

CSISの東南アジア問題アドバイザーであるErnest Bower氏は、「皆の関心は、中国が南シナ海への他国のアクセスを遮断しようとしているのかにある」「米国はその様なことは受け入れない」とマニラで記者団に語った
Bower CSIS.jpg●Bower氏は、オバマ政権が終わってから、ドゥテルテ大統領の米国への発言は穏やかになり、両国軍事交流の発展の機会を認めており、またトランプ政権の安全保障チームは南シナ海問題に対しより強固な姿勢を示すであろうと語っている

●そして同氏は「南シナ海に関し、米国から中国に対し、より少し厳しい姿勢が示されると考えている」「正直に言えば、少しゴタゴタが起こるだろうと思う」と記者団に述べた
//////////////////////////////////////////////////

Ernest Bower氏の専門家として位置付けや、発言の信憑性が不明ですが、マニラでの会見でもアリ、米国の東南アジア施策に20年以上関わってきた人物でもアリ、現在も多くの役職についているようなので、その発言をご紹介しておきます

CSISのBower氏経歴紹介
https://www.csis.org/people/ernest-z-bower

Trump tel.jpgトランプ大統領の関心事項が米国内の雇用や産業復活に絞られ、中国関係もその視点が基礎にある事が各方面から指摘されていますが、安全保障チームが中国に厳しい考えを持っていることとの折り合いがどうなるのか、依然不透明です。

比政府の閣僚が3名そろって米空母訪問とは普通ではありませんので、今後の動きに注目致しましょう

米比関係の記事
「米軍兵器の保管は認めない」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

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トルコがロシア製防空ミサイル導入に傾く!? [安全保障全般]

S-400-launch.jpg22日、トルコ国防相が紆余曲折を続ける長射程防空&ミサイル防衛システム選定について、ロシア製の「S-400」が最も選定される可能性が高い(closest option)と言及し、2013年から続く米国、中国、ロシア、ドイツ、フランス、イタリアと関連企業を巻き込んだゴタゴタに、新たな動きを示唆しています。

この選定は2013年に中国製に一端決定したものの、実質トルコの防空を担っている米国やNATOシステムと連接できない等の問題から米国等が猛反発し、2015年11月にはトルコ政府が中国製の選択決定破棄を発表して国産開発の方向を示唆しました。

しかし昨年10月、トルコ大統領とプーチン大統領の会談で、2013年当時は高価格を理由に排除したロシア製の選定への参加をトルコ側が再度要請し、今日に至っていました

まぁ考えてみれば、純粋に防空能力や軍事作戦運用の比較と言うよりも、政治レベルの外交カード(又はリトマス試験紙)になっている感がある同ミサイル選定です。
対ISやトルコの治安悪化を巡り、米露の駆け引きが活発になり、トランプ政権の対露姿勢に関心が集まる昨今ですので、その「指標」の一つとしてご紹介しておきます

22日付Defense-News記事によれば
Turkey Fikri Isik.jpg●22日、トルコのFikri Isik国防相は、トルコとロシアの間で行われている長射程防空&ミサイル防衛システム「S-400」の交渉について、「かなり進展した」と語った
●更に同国防相は「S-400が最も選定される可能性が高い(closest option)」と述べる一方で用心深く、「明日契約を結ぶような段階にあるわけではない」とも説明した

●そして同国防相は、トルコはトルコの防空のため、防空&ミサイル防衛システムを国産する事を優先しているとも語っている
●折しも、米独伊が共同開発したパトリオットミサイルの後継となるMEADS(Medium Extended Air Defense System)の売却に関し、約4400億円とも言われるシステムのトルコ仕様へのカスタマイズ等について、トルコとの交渉が4月から始まっている時である。

2013年に中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定した際、トルコはロシア製を「法外に高価格:exorbitantly expensive」と評して選定から排除していた

トルコ長射程防空システム選定の紆余曲折・・・
●2013年9月
CPMIEC-SAM.jpgトルコ政府は中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定
(この選定においてロシア製は「価格が倍以上」として不採用になった。他にはPatriotを提案の「レイセオン&ロッキード」と、SAMP-1を提案の「European Eurosam」(仏と伊)が参戦していた)

以後、米国やNATOが、中国製システムと既存の西側防空システムは情報保護の観点から連接不可能で、作戦運用上で極めて非効率で問題ありと強く抗議

●2015年11月
トルコ政府が中国製を選択した決定の破棄を発表し、国産開発の方向を示唆し具体的関係企業2社に言及
一方で発表後も、米企業チームと欧州チームとも並行して選定協議を継続していた

●2016年10月
10日付Defense-News記事がトルコ外交筋の情報として報ずるところによれば、2016年10月イスタンブールで開催された世界エネルギー会議に出席したプーチン大統領とトルコのエルドワン大統領が会談し、トルコがロシアにミサイル機種選定に参加するよう招待した模様
なお、仮にロシア製を選択した場合、中国製と同様に、既存の西側防空システムとの連接は不可能となる
/////////////////////////////////////////////////

Turkey Fikri Isik2.jpgトルコが準国営の2企業「Aselsan and Roketsan」への技術移転要求のため様々な動きを見せているのか、米国や欧州諸国とロシアを天秤にかけて価格交渉を有利に進めようとしているのか、トランプ政権の出方を探るための威力偵察なのか不明ですが、何処の国もしたたかにやっていますねぇ・・・

最終的に国の安全保障上の最大の担保は、健全なバランス感覚を伴う情勢認識力や判断力を持つ国民の存在なのですが、国防への研究協力を拒否する大学の存在や、重箱の隅をつついて揚げ足取りしかやらない民進党など、まだまだ改善の余地がありありのようです・・・

トルコ防空システム選定のゴタゴタ
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2

「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20
「4度目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04
「トルコが中国企業と交渉開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-27

米国とトルコ関係の関連
「対ISで露とトルコが共同作戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22
「トルコがF-35追加購入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01-1

「駐トルコに家族帯同禁止や特別手当」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31

米露関係を考える素資料記事
「露最大の軍事企業CEOが語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露がINF条約違反の巡航ミサイル?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「対IS作戦で米露の主張対立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
「対ISで露とトルコが共同作戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22

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