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ソ連崩壊25周年のロシアを考える [安全保障全般]

12月25日はソ連崩壊25周年に当たりました

Soviet.jpg26日付産経新聞朝刊は、7面に「ソ連崩壊25年 ロシアの改革難しく東欧と格差 民主化、経済成長…消えた希望」とのモスクワ特派員の執筆記事を掲載し、当時の米欧日など西側諸国が新生ロシアに抱いた民主化と市場経済化による発展という希望が消え、旧共産主義陣営の東欧諸国との国力差も鮮明な惨状と、その背景を考察しています

ロシアというと、先日の日露首脳会談に対する「空振り感」が日本に漂い、週末の世論調査の「ロシア嫌い:76%」との数字が示すように、ますます印象は悪くなるばかりですが、ここは「相手の足下」を見つめ、焦らず決して変な妥協はしないの決意を固めるべきと考えます

まぁ・・・「米国による東方拡大姿勢がロシアを変貌させた」との東京新聞社説(25日)やロシア専門家の一部の様な考え方があるとしても、稲田防衛大臣がロシアを刺激しないよう来年1月グアム島訪問時のTHAAD視察中止を検討(26日産経1面)と言われると、日本政府は大丈夫なのかしら・・と心配になることもあり、「崩壊25年」に関する産経記事を取り上げます

26日付産経新聞朝刊7面によれば

1991年から2015年の国内総生産の伸び
(一人当たり:世界銀行調べ)
ロシア  :2.6倍
チェコ  :6.1倍
ポーランド:5.6倍
ハンガリー:3.7倍

平均寿命の伸び
ロシアは68歳から70歳へ2歳伸び
他の上記3ヶ国は、7~8歳伸び

ロシア停滞の背景と今後の見通し
Soviet2.jpg東欧諸国は、WW2後に共産圏に組み込まれ、ソ連型計画経済がソ連ほど根付かず、各国民の欧州帰属意識も残っており、欧州回帰の改革がソ連崩壊後促進された
●これに対し、旧ソ連では、GDPの1/4を占めていた軍需関連を筆頭に、機械製造など多くの産業分野が国の発注や補助金で支えられていた。これらの分野は、ソ連政府崩壊で資金不足に陥ると即座に行き詰まり、業態の転換や市場への適応に向けた改革は困難かつ多大な「痛み」を伴った

●ロシアのエリツィン政権は価格自由化をはじめとする「ショック療法」で切り抜けを図ったが、多くの庶民は年間25%にも達した超インフレなどの打撃を受けた
●「欧州回帰」のような座標軸もないロシア国民の多数派は安定と秩序を求め、2000年就任のプーチン大統領が強権統治を敷くのを歓迎すらした。

●エリツィン政権が1990年代に着手した改革の成果と石油価格の高騰により、プーチン政権のロシアは2000~2008年に年平均7%経済成長を達成
Soviet4.jpg●しかしその後は、地下資源に依存する国家主導型の経済が硬直化し、頭打ちが鮮明になっている。プーチンが真剣な改革に取り組むとは考えられず、ロシア経済の長期的な停滞が予想されている。

●「1990年代のショック療法の再来」を恐れる国民多数派に、変革を求める大きな動きは出ていない。
●専門家は「今より状況の悪かった70~80年代にも、飢えるほどではないと人々は耐えた。強力な特務機関が反発の表面化を抑え、指導部内の対立もなかった。今日も、この3つの条件(国民の我慢、国家機関による監視、指導部の表面的安定)が維持される限りはプーチン体制が続くのではないか」と見ている
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稲田防衛大臣のグアム島THAAD視察断念!?
http://www.sankei.com/politics/news/161226/plt1612260010-n1.html

東京新聞社説「ロシアばかりが悪いと言えない」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122502000120.html

産経記事の指摘以外にもロシアでは、科学者等知識人の海外脱出、若者の無気力感蔓延、人口減少、アル中患者の増加などなど、悲観的な状況が広がっており、明るい兆しなど無いと言えましょう。

Soviet3.jpgもちろん北極航路の確保、天然ガス等のエネルギー資源確保、中国の牽制など、日本の国益を考える上で無視できない観点でロシアは重要な国です

でも注意すべきは短期的な視点で成果を求められる西側指導者の、ロシアへの「すり寄り」ではないでしょうか??? あくまでもビジネスライクに、長期的な視点で国益だけを求め、相手を信じることのないように注意したいものです

ロシアを考える古い記事
「日露を直球と変化球分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-21-1
「ロシア社会の停滞と憂鬱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-15
「INF全廃条約の破棄を願う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

兵頭部長の分析
「露は日露共同演習を目指す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-09-1
「中露関係は頭打ちで複雑化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-03

米国のTPP離脱を安全保障関係者が嘆く [安全保障全般]

Reagan National.jpgレーガン財団が主催した「Reagan National Defense Forum」の議論から、対中国を念頭に置いたアジアでの安全保障枠組みの議論をご紹介し、NATO的な枠組み形成が難しい中で対応を模索しつつ、米国のTPP離脱を米国内外の安保関係識者が嘆く様子をご紹介します。

ハリス太平洋軍司令官はアジアではNATOの様な枠組みは成立しえないので柔軟な関係国協力が重要だと主張し、シンガポール国防相は軍事力の限界に言及して米国のTPP離脱を嘆き共和党系シンクタンクAEIのオースリン氏は日本等との協力強化を訴えつつ、貿易協定の重要性を中国経済下降も見据えた対応準備の必要性も絡めて説いています

3名の立場やいい振りは異なるモノの、主張を単純化すると、NATOのような枠組み構築が難しいアジアでは、軍事以外の多様な手段で対中国に備えるべきであり、TPPはその重要な手段であり、中国の増長と急降下の両方に備える意味で重要なのに・・・と嘆き節に聞こえます

ハリス大将はアジア版NATOの可能性を否定
Harris7.jpg●米国がアジアリバランスを進める過程で、人によってはNATOのような機構がアジアにも必要だと主張するが、実現可能性のある策だとは思わない
●なぜなら、NATOが形成できたのは、ソ連という明確な敵が存在し、ソ連に対抗する国が結びつく必要性が共有されていたからである。一方で、中国に対するアジア各国の思惑は国毎に複雑である

アジア各国の間には、単一のはっきりした共通の敵が存在しない中国はアジアの一部となっており、そのアジアは米国経済活動の一部であるからだ。私はアジア版NATOを想像できない
●米国防省は、アジア版NATOの代わりに、多国間の安全保障ネットワーク開拓に焦点を当て取り組んでいる。例えば、日米韓の3ヶ国軍事協力や、東南アジアの対テロ協力がこれにあたる

●更に、例え軍事同盟にならなくても、ASEANは広範な協力の枠組みを提供してくれると述べ、特に海賊対処や誘拐対処に有効だ。
●また、カーター国防長官が9月29日に言及した「リバランス第3弾」の、「地域国家によるネットワーク化された安全保障、ネットワークとネットワークの融合」「新たなレベルのパートナー関係を見いだす」につながる
トランプ新政権により修正もあろうが、このビジョンを進展させるため、2018年度予算案に数個の取り組み予算を計上している。

シンガポール国防相(Ng Eng Hen)は
Ng Eng Hen4.jpg●発展する中国の封じ込めは可能ではないし、戦略的に必要とも思わないが、米国は軍事力だけに頼って中国を封じ込めようとしても不可能だと認識すべきだ
米国は(中国以外のアジア諸国と)貿易面で発展的な関係に注力することが必要だったはずなのに、この点で米国のTPP離脱はシンガポールにとって極めて残念なことだ

●米国のアジアでのプレゼンスが軍事的になものに偏ることは構造的にもろく、TPPは確固として目に見える関与を示し、多側面でのアジアとの関係を形成する圧倒的な力となり得たのに残念な状況だ。中国は独自に多面的な関係強化を図っているのに・・・
●種々の統計資料が示すように、中国はアジアのほぼ全ての国にとって1位か2位の貿易相手国で、米中の関係も強いモノとなっており、「中国は今や、貿易、金融、安全保障面で世界システムのリーダーであると統計が示している」と結んだ

AEIのAuslin研究員は
Auslin5.jpg●(シンガポール国防相の視点を発展させ、)中国経済は今後機能不全を示すようになり、新たな地域諸国の課題となろう。地域諸国が成長する中国を課題として議論しているように、機能不全の中国問題にも直面することになる
●そして、成長する中国への諸国の懸念と対処は、機能不全中国への対処には活用できない

●近々出版の著書「The End of the Asian Century」でも述べているが、アジア版NATOはアジアには不向きである
●米国政府や太平洋コマンドはその点を良く理解し、多国間協力関係の構築に取り組み、ASEANのような枠組み活用に取り組んでいる

●更にやれることは、最初に、地域の貿易協定で遅れを取らないことの他に、日本とのような同盟関係を効果的にして利害共有のコミュニティーを構築すること
●次に、この様な地域の関係を結びつけ、東シナ海と南シナ海とインド洋を別々に扱わないことである。全ての地域を関連付け、「アジアの地中海」と捉える視点が重要
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最近、ティラーソン氏の国務長官指名を受け、米国がロシアと組んで対露包囲網をとか言われていますが、経済的に中国と強く結び付いたアジア全部を包囲する羽目になりそうな気がして心配です。

TPP-Graphic.jpgAEIのAuslin氏の発言の解釈や訳に自信がなく、TPPへの態度もはっきり表現されてはいませんが、共和党系シンクタンク所属ですのでTPPには反対なのかも知れません。

カーター国防長官はTPP協力推進派で、国防省のリバランス関連特設webページのトップに「TPPの重要性」を示す解説図(左図)を掲げるぐらいでした。
まぁ・・気持ちは分かりますが、国防省がTPPをそこまで持ち上げると、軍事面での弱点を認めることになるから控えるべきだと思いましたが、米国のTPP離脱は残念です

NATOのような枠組み構築が難しいアジアでは、軍事以外の多様な手段で対中国に備えるべきであり、猫の手でも借りるべきだと思います

トランプ政権が立ち向かう国防省の課題
「サイバー戦を巡る課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14
「新政権の国防予算はF-35が鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-08
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10

「現在の対テロ7原則を確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-07
「比が米軍機の利用拒否!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11
「北朝鮮でなく中国の問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-28

「新政権の国防予算はF-35が鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-08
「国防省改革はどうなる?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-01
「中露を抑止するには」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-05

「F-35巡り国防省で内紛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-09
「Mattis氏が国防長官へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-02

比は航行の自由作戦の米軍機利用を認めない [安全保障全般]

SouthChina-sea3.jpg8日付NYT紙電子版は、同日にフィリピン国防相が航行の自由作戦で南シナ海を航海又は飛行する米軍艦艇や航空機のフィリピン施設使用を、認めない可能性が高いと発言しました。

6月にドゥテルテ大統領が就任後、米国が比大統領の強硬な麻薬対策を非難したこと等を受け、比大統領が米国への反発を強めて中国に接近していたところですが、トランプ氏の当選を受けドゥテルテ大統領の対米姿勢に変化の兆しが見え始めたところでした

11月21日の週には、米大統領選挙後では初めての米国高官としてハリス太平洋軍司令官がフィリピンを訪問し、軍事関係の改善が期待されていた中でしたが、事態を大きく改善するには至っていないようです

8日付NYT紙電子版によれば
Lorenzana3.jpg8日、フィリピンのDelfin Lorenzana国防相は、米軍の南シナ海パトロールを行う艦艇や航空機の支援を継続するかとの質問に対し、「ドゥテルテ大統領はそれを認めないだろう。南シナ海の緊張をエスカレートさせるような行動を回避するためだ。認める可能性は低い(unlikely)」と述べた
●更に「フィリピンは当面(for the meantime)、緊張を高める行動を回避する」「米国はフィリピン以外の基地を利用して作戦行動が可能だろう」と述べ、グアムや沖縄の米軍基地利用を米軍に勧めた

●この比国防相の発言に対し、米国務省のTrudeau報道官は同発言を確認していないのでコメントできないとし、「米国の航海の自由作戦に取り組む意志はよく知られている。我々は引き続き、公海上であればどこでも航行や飛行を行っていく」と述べた
●また11月にハリス司令官は、比大統領の発言にかかわらず、フィリピンとのとの軍事関係は変わらないと述べていたところだった

ドゥテルテ大統領就任後の対中国関係改善
10月に比大統領が習近平主席と会談後、中国は2012年以降禁じていたスカボロー礁でのフィリピン漁船の操業を容認し、フィリピン沿岸警備隊による同海域のパトロールも再開許容
●また、フィリピンが領有権を主張している「Second Thomas Shoal」へのフィリピンによる物資輸送を、中国沿岸警備隊「海警」が妨害しなくなった

Duterte4.jpg●また比大統領の訪中間に、2004年に中国と合意していたが2012年に当時のアキノ大統領が領有権問題を理由に中断した、軍の学生やオブザーバー相互派遣の再開に合意した
●更に同訪中間、中国側からフィリピンに武器供給の申し出があった

一方で米比関係は、比大統領が米比の共同南シナ海パトロールを含む米比軍事協力を縮小すると発言し、毎年行われてきた複数の共同軍事演習も縮小されている。
●更に今後は、両国間の演習は人道支援や災害対処に限定され、来年からは従来の着上陸演習や水際攻撃訓練は行われない方向である

前フィリピン外務大臣のAlbert del Rosario氏は、「米国が当地域でのリーダーシップを諦めるようなことになれば、その真空を北隣の隣国(中国)が直ちに埋めるだろう」と述べている
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米国の大統領選挙でトランプ氏が当選した直後、ドゥテルテ大統領が手のひら返しの「米国と手打ち宣言」していたので、米比関係が少しは改善するのでは・・・と期待していたのですが、中国との関係改善が進み、後戻りが難しいのでしょうか・・・

トランプ政権のアジアへの姿勢も未だ不明確ですし、「unlikely」とか「for the meantime」との表現や、比大統領が直接発言していないことからも、米国の姿勢を探るような発言とも解釈できます。

米比関係の記事
「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「なぜ10月25日比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

落日の雰囲気漂うミャンマーは大丈夫か? [安全保障全般]

スーチーの実務能力欠如を世界は見抜き・・・
地価崩壊、通貨下落、治安悪化、ゴミ散乱・・・

myannma.jpg忘れた頃に取り上げてきたミャンマーですが、熱狂の政権交代時のかけ声であった「軍事政権から民主的政権へ」の期待は急速にしぼみ、シンボリックな「カリスマ風の人気」だけに支えられたアウンサン・スーチーの実務能力欠如が明らかになってきたようです

ミャンマーに20年以上根を張り、現地の女性と結婚し、世界が見向きもしなかった時代から現地での人脈を気づいてきた日本人の友人と話す機会があり、現地の雰囲気に接する機会がありましたので、断片的ながらご紹介したいと思います

ミャンマーの情勢一般
スーチーやその政権に対する根拠のない熱狂は、ミャンマーに向けた関心を集めて投資を呼び込んだが、化けの皮が剥がれた実務能力無きスーチーや政権に見切りを付け始めた投資マネーは、急速に「引き波」を始めている
myannmarsuti.jpg高騰を続けていた地価は暴落を始め、取引が成立しなくなっている。最近5年間ほど上昇を続けていた現地通貨も下落し始め、世情に敏感な投資家心理を敏感に映し出している。これにインドの高額紙幣流通停止による経済混乱が拍車を掛け、バブルは急速にしぼむだろう

かつて軍政下で何とか管理してきた国境紛争や民族問題も再燃している。ミャンマー西部国境付近では、イスラム勢力と仏教徒の衝突が再燃し、仏教徒住民を守れない警察や軍を諦めた住民が武装して軍事行動に出る状況に至っており、紛争が無秩序に地域的広がりを見せている

●山岳地域の少数民族問題も同様で、政府も十分に状況を把握できないほど混乱の度を深めている
●20年に渡って変化を見てきた政経中枢であるヤンゴンの雰囲気も良くない。ゴミの収集に代表される社会サービスの質が低下し、一般治安も悪化している

ミャンマー進出を考える日本企業へ
myannma2.jpg主要な産業や商業分野で、ミャンマー市場を狙うのはもう遅い欧米企業が全ての利権を抑えたと考えて良い。2014年にコカコーラが進出してきたが、これは米国との関係に置いて、米軍が展開してきたのと同程度の意味を持つ
日本企業関係者が多数ミャンマー進出の相談に訪れるが、私がいつも言うのは、製造業で、30年スパンで投資を回収するぐらいの覚悟がないと今からでは遅い・・・と言うことである。

スーチーをシンボルにして実務を閣僚が支える体制が期待されたが、閣僚が機能していない知識や経験のない者、スーチー人気にあやかって地位を得たが自身で正面に立つことを嫌って仕事をしない者、早くも利権にまみれている者等が混迷を深くしている
治安の悪化はスーチーに反発する勢力の活動を促し、「スーチー暗殺」の企ての噂が絶えない。スーチーが排除されるようなことになれば軍政回帰が避けられないが、有識者の間にも「軍政時代の方が良かった」「もう一度軍政で落ち着きを取り戻すべきだ」との声が聞かれる状況である
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人権命だったオバマ政権はスーチー応援団でしたが、実務的な視点を持つトランプ政権には、人権命の看板を小さくして欲しいです。そしてフィリピンや東南アジアの国々とも仲良くして欲しいものです。

myannma4.jpgミャンマーのような国では、軍の士官学校しかまともな人材育成をしておらず、海外留学の裕福層は国に根付いた政策を打つ気がない&打てない実態もありますから、軍人の活用は決して不合理ではありません

ミャンマーはアジア唯一のフィロンティアだったのでしょうが、日本はゴリゴリの利権争いに奥ゆかしさが出たようです。まぁ・・でもここは、長期的視点に立って、ビルマ時代からの繋がりもありますから、長い視点で関係を育てていきたいものです

ミャンマー関連の過去記事
「自衛隊トップがミャンマー訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-28
「スーチー女史は英国スパイ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-13-1
「印とミャンマーと日本」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-29
「ミャンマーの魅力と課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-29-1

米大統領が最後に対テロ7原則を再確認 [安全保障全般]

OBAMA-MacDill.jpg6日、オバマ大統領が任期中最後の安全保障演説(ホワイトハウス関係者談)をフロリダのMacDill空軍基地で行い、オバマ政権の対テロ指針を「7原則」で再確認しつつ、トランプ政権への牽制球を交えながら、8年間の成果からアピールしています。

大統領としての主要スピーチと軍事メディアは位置付けており、大統領が持論としてきた対テロ姿勢である「テロは米国の存立を脅かす脅威ではない」「持続可能な態勢で長期的視点で対応」「拷問など非合法的な手段の排除」「地上部隊や大規模空爆ではなく、無人機による焦点攻撃」「明確な戦略に基づく対処」「民主的な手続きを踏んだ対処」を再度強調したと報じています

大統領は演説前に、同じフロリダ州に所在する対テロの中核を担う中央軍司令部と特殊作戦コマンド司令部を訪問して感謝の意を伝えており、対テロが任期中の最も重要な安全保障案件であったとも言えます

一方これにより安倍首相と真珠湾を訪れる際は、対中国メッセージはなく、戦没者慰霊のメッセージと日米同盟への軽い言及に終わる様子が想像できそうです

全文を見たわけではありませんが、米空軍協会web記事とDefense-News記事を組み合わせ、オバマ大統領の考え方を振り返り、今後のトランプ&Mattis体制での変化具合を見る参考にしたいと思います

オバマ政権の対テロ7つの指針と評価
OBAMA-MacDill2.jpg8年間の任期を通じ、次期政権への基礎固めを行えた。ISILの背骨を砕きつつあるが、より大きな過激テロリズム脅威との戦いは1世代の時間が必要だと考える
●テロの脅威を、より多くの爆撃や大戦力を世界中に展開して早期に排除するなどと言った「間違った約束」は批判されるべきであり維持可能でスマートな戦略を生み出す長期的視点が重要

中東やアフガンに展開している米軍兵士は、私が就任した2009年当時より18万人も減少している。海外派遣部隊は一般的に脆弱な状況に置かれており、この点からも維持可能な外交政策を採用すべきだと考える
対テロ同盟の形成努力に成功を収め、情報収集システムや仕組みを確立したが、今後も米国にとって小規模な個人ベースのテロ攻撃はセキュリティー上の問題でアリ続ける


7つの指針の一つ目はテロの脅威に正しい認識を持つことである(keeping the threat in perspective)。テロは危険でそこに存在しているが、米国の存立に直ちに影響を与える脅威ではない
テロリストは世界秩序の支配者や主役であるかのように振るまい演出するが、彼らは単に殺人者でアリ、過剰に評価すべきではない

2つ目は過剰に手を出す範囲を広げて滅んだ過去の大国と同じ過ちを犯してはならない点である。真に必要な場合にのみ、明確な任務の基に兵力を派遣すべきである
3つ目に捕虜等の尋問に拷問を用いるような国に戻ってはいけない。我が国の価値観や法のルールを遵守することは弱みにはならない

OBAMA-MacDill3.jpg4つ目にテロリストを生み出すような戦い方はしない。一般市民を巻き添えにして犠牲者を増やすような大規模空爆や地上部隊の作戦の代わりに、焦点を絞った無人機攻撃を最大活用し続ける事で、攻撃が再びテロリストを生み出さないようにすべき
5つ目に、国家安全保障に関わる施策は透明性と合法性を確保すべき。併せて大統領として、オバマ政権における対テロ戦略の法的根拠をまとめたレポートを発表した

●そして、議会が2001年にテロとの戦いに軍事力の使用を承認して以降、この承認に関して議論せず、結果的に恒久的に戦争状態にあるような形になっていることを国家として不健康な状態であり、志願制軍隊を維持する国家として、また人口の1%だけを危険で困難な任務に従事させることをきちんと議会で議論し承認手続きを行うべきだ

6つ目は民主主義の力を対テロに活用する事を米国の方針として要望すること
7つ目は情報収集に当たって明確な規定と制限を設け、移住者の宗教確認のような手段は行わないことで、我々を守る市民の自由を尊重すること

関連のDefense-News記事は
http://www.militarytimes.com/articles/obama-farewell-speech-troops
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OBAMA-MacDill4.jpgオバマ大統領は大統領で、きちんとその信念を貫いた主張しており、トランプ氏の「ツイッターつぶやき攻勢」よりは明確で整理されており、戦略や指針として議論しやすくなっています

また、イラクから早く撤退しすぎたことがISILの増長を促したとの批判にも、撤退当時の米軍受け入れに対するイラク政府の姿勢からすれば、米軍兵士の身分や安全を保障する観点から最大限の努力をしたとの説明しており、一定の説得力があります

まぁ、人権や透明性と合法性への過度のこだわりには賛成できませんが、依然としてトランプ氏よりは安心してみていられる感は否めません
オバマ大統領もホワイトハウスのどこかの壁に、「あと何日で自由になれる」日めくりカレンダーを吊しているのでしょうか?

オバマ大統領の発言記事
「対ISILでNSC招集」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-08
「核先制不使用宣言準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
「卒業式で議会を大批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-03
「シリアに安全地帯は考えない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-17
「サイバー事業者の義務強化法案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-15

CNAS:北朝鮮の問題でなく中国の問題だ [安全保障全般]

2020年代に米国は西太平洋への戦力投射不能に

CNAS-Korea.jpg11月21日、シンクタンクCNASのPatrick Cronin氏が 「Breakthrough on the Peninsula第3の相殺戦略と韓国防衛の将来」とのレポートを発表し、「第3の相殺戦略」を柱にした関係国の国防力強化を訴えつつ、特に米韓の指揮統制や部隊融合の重要性を指摘しています。

また、朝鮮半島の問題は北朝鮮問題に止まらず、究極的には中国によるA2ADにどのように対処するかの問題であると述べ、韓国と日本に強く国防努力を求めて独自の「相殺戦略」を企てるべきだと主張しています。

CNASは現在の米国防省と関係が深く、トランプ次期政権はヘリテージ財団と近くなるのでは・・と噂が飛び交っていますが、どのシンクタンクが見積もっても、各種兵器技術の拡散や西太平洋の地理的環境から、中国の軍拡により米国の軍事的活動の自由度は低下する方向にアリ、日本や韓国への自助努力要求は高まる方向にあると改めて認識する必要があるでしょう

22日付米空軍協会web記事によれば
China N-Korea.jpg朝鮮半島における米軍戦略を考える上で最も緊要な要因は、中国の動向であろう。
●米国は「第3の相殺戦略」を柱として北朝鮮の核開発や恫喝に対抗してことになるが、長期的には、米国の当地域への戦力投射能力に挑戦するのは、北朝鮮のミサイルではなく、中国のA2AD能力である

●現実問題として、2020年代には(中国のA2AD能力により)米国は当地域に戦略投射出来なくなる可能性が高いことから、米国は「第3の相殺戦略」を推進するに当たり、同盟国等との2国間や多国間の共同研究や開発による「第3の相殺戦略」推進を真剣に考えるべきである

●一方で、アジア太平洋の同盟国等にも米国が認識している脅威への対処能力構築努力を行わせるべきでアリ、例えば韓国が北朝鮮の核兵器無効化のため、「高出力マイクロ波兵器」や「EMP爆弾」に取り組んでいるような努力である
中国のA2AD能力が、米軍の西太平洋における行動を制約し、抑止し、打破する可能性がある中、韓国や日本には確かな抑止力や国防能力を確保させるため、それぞれの国の相殺戦略を実行させるべきである

米韓の軍事同盟については
Korea-China3.jpg朝鮮半島におけるパワーバランスを米韓同盟に有利に保つためには、「第3の相殺戦略」が鍵となる。同戦略は技術開発と関係付けられてイメージされる事が多いが、同時に国際協力や統合レベルでの相互運用性でA2ADに対抗することである点も重要だ
●特に北朝鮮対処では、ハイレベルでの政治的結束、緊密な両国間の指揮統制、システムや人材の融合等が強く求められる

●そして米韓同盟に最も求められる「第3の相殺戦略」関連の施策は、北朝鮮と対峙する韓国北部に「連合の戦闘師団:combined combat division」を編制することである
●他方、韓国の国会が戦いの趨勢左右する新たなシステムへの投資に消極的だと非難し、韓国に対し先進技術への投資増を要求する
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Korea-China2.jpg韓国の現状は、細かな国防政策を詰めようもない混乱ですが、「トランプ氏が次期大統領だから」とか、「韓国の新体制がどうだから」とかではなく、大きな「脅威の変化」を見極め、「腰を据えた安全保障議論」が必要な時です。なので本レポートの概要の概要をご紹介しました

韓国が「高出力マイクロ波兵器」や「EMP爆弾」開発に取り組んでいるなら気になりますし、「連合の戦闘師団」の中身も興味をそそられますが、ご興味のある方は、以下のCNASサイトをご覧下さい
https://www.cnas.org/publications/reports/breakthrough-on-the-peninsula

第3の相殺戦略関連の記事
「CSISが特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15

「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1

カーター長官の技術革新促進
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12

Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28

無人機の群れ関連
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04

地上部隊にA2AD網を期待
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

ポーランドに長距離巡航ミサイル輸出へ [安全保障全般]

米国が対ロシアに積極的な兵器輸出へ!?
日本も欲しい・・・・!

JASSM-ER6.jpg11月28日、米国務省がポーランドへの最新ステルス長距離巡航ミサイル「JASSM-ER」の輸出を承認すると発表し、議会の最終許可手続きが残っているものの、実質的に対ロシアの最新兵器輸出が決定しました。

ポーランドは同ミサイルを、空軍のF-16戦闘機に搭載して使用する構想を持っており、射程が900km以上とされる性能からすれば、対ロシアの力強い戦力になると考えられます。
日本にも欲しいなぁ・・との思いを込め、ご紹介致します

米国務省の発表概要
JASSM-ER3.jpg●11月28日、米国務省の武器輸出を管轄する国防安保協力庁(DSCA)は、70発の「JASSM-ER:Joint Air-to-Surface Standoff Missile-Extended Range」に関連装備等を含め、約220億円でポーランドに売却する事を承認したと発表した
●ミサイル以外の関連装備には、同ミサイル搭載のためのF-16戦闘機改修キット、シミュレーター、試験車両等々が含まれている

●最終的に議会主任を得る必要があるが、売却承認についてDSCAは「NATO加盟の同盟国の安全保障を改善することで、米国の安全保障上の目的達成と外交政策に貢献する」ものと声明を出している。
●そしてポーランドについて声明は、「中欧の政治的安定と経済的発展の重要な原動力」だと表現している

●JASSM-ERを製造するロッキード社は、初期型のJASSMを含め、既に2000発の同ミサイルを米空軍に納入しており、「高価値で強固に防御された目標攻撃用」としての役割を果たすミサイルと説明している
●なお「JASSM-ER」は、原形である「JASSM」の2.5倍の射程距離を有している

「JASSM-ER」に関する補足説明
JASSM-ER5.jpg前身のJASSMは1995年から開発が始まり、実験の失敗等で紆余曲折はあったが2001年に初期量産を開始。敵防空網の射程外から発射され、強固な構造を持つバンカーや、ミサイル発射機などの攻撃を行う目的を持つ空中発射ミサイル対艦ミサイル版のLRASMもある
低コストの開発を念頭に、画像赤外線センサーは陸軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」から、ターボジェット・エンジンは対艦ミサイル「ハープーン」からと、既存部品を多用している

航空機から投下されると翼を展開、ターボジェットを始動する。途中、INSとGPSにより誘導され、レーダーに見つかりにくい低空を速度マック0.8で飛行する。
目標に接近すると画像赤外線センサーにより目標を識別、急上昇してから70度の角度で急降下、突入破壊する。命中精度CEPは約3m

JASSM-ER9.jpg●中央部分の弾頭はタングステン製454kgの貫通モード、または爆風・破片モードを選択可能な多機能弾頭で、貫通力はBLU-109Bと同等とされる
地下施設や強固な施設には貫通モードで、ミサイル発射機やレーダー施設に対しては上空で爆発して爆風と破片を放出する

●搭載可能な航空機は、B-2、B-1、B-52H爆撃機、F-15E、F-16戦闘爆撃機など多様
●「JASSM-ER」と「JASSM」の違いは、より大きな燃料タンクと効率の良いエンジンの搭載で射程距離が2.5倍の575マイル(約925km)に延伸したこと。またGPS妨害に対抗できる機能を付加したこと。更にデータリンクを追加装備したことである。

●「JASSM-ER」と「JASSM」は7割が共通部品で構成されており、製造コストの低減に貢献している。
●米空軍は2020年台の製造終了までに、2,400発のJASSM(1発約1億円)と、3,000発のJASSM-ER(1発約1.6億円)を購入予定
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「JASSM-ER」の射程距離である約900kmという距離は、第一列島線から中国大陸を攻撃できる距離です。
従って、中国防空網の脅威外からの攻撃が可能な兵器と言うことで、F-35やF-22には搭載する計画はありません

JASSM-ER8.jpgしかし思います。70発を関連装備を含め僅か200億円で購入可能な高性能兵器です。何とかF-15JやF-2に搭載可能にして、有効活用できないものでしょうか?

1機が100億円以上する戦闘機の数を減らしてでも、平時からグレーゾーン付近でしか活躍が期待できないであろう戦闘機の要求性能を落としてでも、この様な長射程兵器を導入する方向に、考え方を改めていくべきと考えます

米国も輸出に前向きになったようですし、費用対効果の面でも、日本の置かれた地理的な戦術環境からしても・・

JASSM関連の記事
「B-52をJASSM搭載に改良」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「JASSM-ERを本格生産へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17-1
「空中発射巡航ミサイルの後継」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-12-1
「JASSM-ER最終試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-1

LRASM関連の記事
「LRASM開発状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17-1
「米軍は対艦ミサイル開発に力点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
「LRASMの試験開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-23
「新対艦ミサイルLRASM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

偽部品の識別に植物DNAを活用 [安全保障全般]

counterfet6.jpg11月21日付のWeb版「Popular Mechanics」は、米国防省が偽部品対策として、植物のDNAを活用した特殊なインクを電子チップ等に塗って識別可能にして効果を上げていると報じています。

ここでの偽部品とは、米軍が使用する装備品に使用される正規な製造元でない部品のことを指し、重要な半導体からボルトに至まで、様々なモノが問題となっています。

必ずしも偽部品がスパイ行為や妨害工作用に送り込まれたモノではなく品目番号を偽造して中国や発展途上国で安価に製造されて闇市場を流通して兵器製造企業が使用したモノや、新品しか認めないのに廃棄物の中から改修した中古部品を使用する場合などが含まれます

counterfeit3.jpgいずれにしても、完成した装備品が新品に見えても、その中のパーツが基準を満たしていないならば、重大な事故や機能不全を引き起こしたり、誤動作で人の命に関わる事態が発生しかねない点で大きな問題です

2011年にはワシントンポスト紙が、時の米議会が調査した結果を入手し、国防兵站庁(DLA:Defense Logistics Agency)が管理する400万個の部品のうち、約1/4の100万個が偽部品の可能性があると報じて大きな話題となり、そのあたりから対策の必要性が叫ばれ始めていました。

11月21日付「Popular Mechanics」によれば
Applied DNA Sciences社が開発した手法は、植物DNAを使用したエポキシ樹脂インクを部品に塗布する事で、電子部品やボルトのような小さな部品でも性能に影響を与える事無く、またインク離脱の心配なく、偽部品との識別が可能である
●同インクは部品に塗布された後、ある種の熱処理によってシールドされ、同処理が行われた部品は、必要時にユーザーがスキャンすると部品の履歴が判り、偽物との区分が可能である

counterfet5.jpg同手法は偽造が出来ない手法で、同社はDNAレベルの認証システムは偽部品製造者には判読不可能で、植物DNAに加えて複雑な安全対策を施してあると自信を示している
●また、バーコードのように大きなスペースを必要とせず、小さなドットで必要十分であり、他の部品や製品全体への影響もない。

●この手法は、2014年に国防長官室がApplied DNA Sciences社に対し、「緊急革新基金:Rapid Innovation Fund」を拠出することを決定して実用化が加速したものである
●以来これまでに、国防兵站庁(DLA)は同手法で約15万点の電子回路にマーキングを行っている。DLAはまだまだやるべき事が残されているとしている。
今後は電子回路以外の電子部品、ベアリング、車両部品、エンジン部品、配管やチューブ等々にも適用する方向である
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2つ語らせて頂きます
国防装備品に限らず、この様な「偽部品」は大量に市場に出回っている模様で、最終的な製品を管理する企業のチェック体制や熱意によっては、十分紛れ込んでいる可能性が考えられます

counterfet7.jpgもう一つは、植物DNA手法を迅速に取り入れた、米国防省の素早い対応です。2014年と言えば、現在のカーター国防長官が副長官か調達担当次官だった時代で、「緊急革新基金:Rapid Innovation Fund」もカーター氏の努力で実現したものと考えて間違いないでしょう

対策は難しいだろうとボンヤリ思っていたのですが、知恵を絞って懸命に対処が行われています
この様に、民間に生まれた最新技術を迅速に取り入れることが、第3の相殺戦略を基盤を支える重要要素でアリ、中国やロシアに対し軍事技術的優位を保つ必須要素である事を肝に銘じておく必要がありましょう

偽部品関連の記事
「上院による偽部品レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23-1
「米国製兵器は偽物だらけ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-29
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10

その他の関連記事
「装備内蔵システムへのサイバー攻撃に備え」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02
「イージス艦用サーバー企業が中国に身売り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-06
「F-35センサー中国製造疑惑」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-14-1

NATOも米国の出方を大懸念 [安全保障全般]

Stoltenberg.jpg12日付英国紙「The Observer」に投稿したNATOのStoltenberg事務総長は、大統領選挙中からNATOの価値について疑問を呈していたトランプ氏に意見する形で、NATOの負担が米国に偏りすぎていることを認めつつも、欧州加盟国がここ数年改善に向けた努力を続けていると訴えています

アジアでも同盟国や友好国への負担シフトを選挙期間中訴えていたトランプ氏ですが、ロシアの脅威におののく欧州も必死さは同じで、アジア太平洋の日本や韓国を差し置いてでも、中国と裏で手を結んでも、米国を欧州から逃がさないための行動に出る可能性があります。

人種の近さからすれば欧州NATO諸国に分がアリ経済発展の可能性からすればアジア市場の発展とパイ獲得の魅力が上回るでしょうが、米国が中国と「握れば」経済的メリットの享受は可能と考える可能性はゼロではないでしょう

NATO事務総長は投稿の中で
Stoltenberg2.jpg我々は我々の世代における、最大の安全保障上の課題に直面している。欧州と米国との間のパートナーシップの価値に疑問を挟んでいる時間など無い
●(トランプ氏が選挙期間中に批判していたように、)現在、米国がNATO軍事費の約7割を負担しており、米国がより応分な負担のシェアリングを要求するのはもっともなことである

●一方で、この負担分担の不均衡を我々は既に認識し、対処を始めている。2016年度の欧州全体の国防費は3%の伸びを記録し、来年は3年連続での国防費の伸びを皆が目にする事になろう
●ロシアや中東や北アフリカでの課題を目の前に抱え、米国にとっても、欧州にとっても独自の道を歩むことはオプションとしてあり得ない

カーター国防長官は本件に関し
14日の朝、カーター国防長官は、新政権の政策について何ら保障できないがと前置きしつつ、NATO諸国と分かち合ってきた価値観や原則について、米国は関与を続けるよう要望すると述べた
●そして、911同時多発テロ以降、NATOは米国と共にアフガニスタンで行動を開始し、その後一貫して行動を共にしてきたと述べ、「物事を同じ視点で見る国家の仲間のサンプルであった」と表現した
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Flynn.jpg15日付読売新聞は4面各記事で、10月中旬にトランプ氏の安全保障問題の側近であるフリン元国防情報長官(元陸軍中将)が来日し、管官房長官に「安全保障政策は従来通りしっかりやる。トランプ氏は極めてクレバーで現実的だ」と述べ、安全保障政策に大転換はないと強調し、「私が責任を持つ」とも語ったと報じています

一方で同じ来日時にフリン氏と会談した民主党の長島昭久議員は、「日本は、中国や北朝鮮が脅威だと言うが、ほとんど防衛費が変わらないではないか。これはおかしい」とフリン氏に言われたと読売に語っています。

Ayotte5.jpg一部には、旦那が元A-10操縦者で、上院女性議員の中で2番目に若いAyotte女史が国防長官候補だとの報道があるようですが、国防省が懇願している無駄基地の整理統合に反対する「選挙区への利益誘導型議員」の側面もアリ、頻繁に国防省の人事案に反対姿勢を見せていた「ヒステリック」な側面もアリ、上院軍事委員会メンバーながらちょっと気になります。

トランプ関連の記事
「マキアベリと三浦瑠麗の視点で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-10-1
「トランプの世界地図」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10

国防長官候補Ayotte女史
「無駄な基地整理再編に反対」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16-1 
「旦那が元A-10操縦者でA-10全廃にも反対」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-07

ロシア空母艦載機がシリア沖で墜落 [安全保障全般]

各種報道によれば、11月15日から、ロシア軍は空母艦載機も含めたアレッポ周辺への攻撃を再開したようです
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Mig-29K4.jpg14日付FoxNewsは、地中海へ派遣されているロシア空母Kuznetsovの艦載機Mig-29が、シリアでの作戦に備えて準備訓練中に海中に墜落したと、米国当局者からの情報として報じています

ロシア空母Kuznetsovは、就航後26年目にして初めての実戦に参加するため10月中旬に欧州ロシアを出発し、英仏海峡を通過する際には黒煙を蒸気船のごとく吐き出す様子で西側軍事メディアの冷ややかな視線を集めていましたが、他に3隻のロシア海軍艦艇を引き連れて地中海に到着し、キプロス南方のシリア沖で作戦準備をしていました

9日付のFoxNewsでは、同じく米国防高官の話として、シリアへの作戦準備は一応整ったように見え、間もなく艦載機による空爆作戦が開始されるだろうと報道されていたところ、この墜落事案発生です。

14日付FoxNews記事によれば
Kuznetsov-UK.jpg2人の米国関係者によれば、13日、シリア沖で訓練中のロシア空母KuznetsovのMig-29艦載機が、空母から離陸直後に海面に墜落した。
●話によれば、3機のMig-29戦闘機がカタパルトのないスキージャンプ方式の空母Kuznetsovからシリア方向に向けて離陸したが、その中の1機が機体のトラブルを発生した模様で、空母に戻ろうと旋回して戻ってきた。

同トラブル機は着艦を目指していたようだが到達できず、海上に墜落した。当該機の操縦者は脱出し、ロシア軍ヘリに救助された模様だが、安否等の細部は不明。同機は1970年代後半の設計で、1980年代前半から使用されている
●空母艦載機墜落の報道は、ロシア国営メディアが、シリア作戦に長距離爆撃機であるTU-95やTU-160投入をロシア軍が準備していると報道した翌日に発生している

9日付FoxNews記事は作戦準備完了と報道
Mig-29K24.jpg●(恐らく9日)米国防高官はFoxNewsに対し、正確にいつ空母艦載機による空爆作戦を開始するかは不明だが、間もなくであろうと表現し、「ロシア軍はその態勢にある」と最近の情報分析を元に語った
●(目撃日時は明確ではないが、)同高官は、ロシア空母艦載機は翼下に兵器を搭載して離陸する様子が確認されており、10月中旬に欧州ロシアの母基地を出向して以来の初飛行だったと語っていた

●元々、西側軍事専門家は、スキージャンプ方式では燃料や兵器搭載量に大きな制約を受けるため、ロシア空母艦載機の戦力としての効果に疑問を呈していたところ
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別の米軍事メディアは、ロシア空母艦載機の空爆戦力としての効果は期待できないが、これまでもロシア機のシリアでの活動は米国を中心とする有志連合の航空作戦を複雑かつ困難にしており、ロシア空母艦載機の進入により、更に安全確保や地上部隊との意思疎通が困難になるとの米軍関係者の弁を紹介しています

初めから戦力として「期待薄」な老朽&経験不足な空母を、なぜプーチンが派遣したのかは当初から疑問符で、Mig-29を継続購入しそうなインドへのアピールとか、最近指揮の怠慢で上層部が一新された北海艦隊への「喝」を入れるためだとか、上記の有志連合を困惑させるためだとか諸説ありますが、戦闘機10機程度しか搭載していない同空母が、今後どのような対応を取るかに生暖かく注目です

ロシア空母の行動関連
「西側冷笑:露空母の英仏海峡通過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-24
「26年目の初出動:ロシア空母の哀愁」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-23
「インドがロシア製空母艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1

西側メディアが酷評:露空母の英仏海峡通過 [安全保障全般]

「機関室の兵士が一酸化炭素中毒にならないか心配」

Kuznetsov-UK.jpg10月21日、ロシア海軍の空母「Admiral Kuznetsov」がシリア沖の東地中海での「26年目で初作戦行動」に向け、英仏海峡(ドーバー海峡)を通過する様子が確認され、黒煙を上げて航行する様子を西側関係者が冷ややかに評価しています

同空母が地中海に展開して中東作戦(対ISIL作戦)に参画することは、7月に「匿名の露軍事外交筋情報」として報道されましたが、当時から米軍事メディアは、同空母は「あまりに小さく、頼りにならない」、また「その艦載機の能力は戦力として意味はない」と厳しく評価していたところです

そして「好意的に」見ても、「ほとんど出航の機会がなかった乗員に訓練の機会を与える」、又は「空母艦載機Mig-29をロシアから継続購入しているインドへのアピールを狙う」程度の目的ではないかと、参戦の真意を測りかねているところです

21日付Defense-Tech記事によれば
Kuznetsov4.jpg海軍専門家は、黒煙を上げて航行する同空母に容赦ないコメントをSNS上で浴びせている。
●あるツイートは、19世紀に石炭を燃料としていた蒸気船もこの様な姿で黒煙を発していたことだろう・・・とジョークを飛ばしている

●またMark Best氏は、「これほどまでに過剰な黒煙は、燃料に余分な水分が含まれているか、燃料の不完全燃焼が原因だ」、更に「我々としては、同空母の機関室勤務員が一酸化炭素中毒にならないことを祈るばかりだ」と投稿している

●同空母の任務についてTASS通信は、シリアのラタキア近郊の露空軍「Hmeymim air base」に展開している露軍機と協力し、(対ISIL作戦とロシアが呼称する)航空攻撃任務に従事すると報じている

7月25日付記事より同空母あれこれ
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-23
●匿名の軍事外交筋の情報として、26年前に就航して以来、一度も実戦に参加していなかった空母「Admiral Kuznetsov」が、今年10月に地中海に展開して対ISIL攻撃に参戦する模様。派遣期間は10月から、約4ヶ月間に及ぶとも報じている
●同空母はカタパルトを持たないスキージャンプ型の空母で、計25機の航空機やヘリを搭載可能と言われています。攻撃戦力としては10機のSu-33やMIg-29K、15機の攻撃へりKa-52K, Ka-27やKa-31を搭載可能と言われている

Kuznetsov.jpg●同空母の艦載機はカタパルトを使用できないことから離陸重量に制約を受け、航続距離や搭載量は大きく削減されるだろう。また15機の攻撃機のセンサー性能等々も不足しており、9ヶ月に及ぶロシアのシリア軍事介入に意味ある貢献は出来ないだろう
米海軍の空母は60機以上の航空機を搭載し6ヶ月以上の作戦行動が可能であり、40機以上のFA-18は一日に100回以上の出撃が可能。しかも全機が精密誘導爆弾を搭載可能。一方でロシア空母艦載機は、24時間かけても50回の出撃は不可能で、大部分は誘導装置のない自由落下爆弾

ロシアも同空母の限界をよく承知しており、空母はシリア海岸近くに展開し、攻撃目標への距離を局限するだろう。退役ロシア海軍大佐のシンクタンク研究副部長も、同空母は地上攻撃任務に従事したことはなく、作戦面での意味はないと述べている
●ロシアの海軍艦艇建造は大きな産業だが、空母と艦載機に関しては「crappy:粗末、劣悪、役に立たない」との悪評を得ている。例えばインド海軍に納入した空母「Vikramaditya」は、2013年の初航海で、大きなエンジントラブルに見舞われている
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ロシア帝国の復興やプライドを重視するプーチン大統領が、なぜこれほど「役立たず」のレッテルを貼られた空母「Admiral Kuznetsov」を地中海に派遣するのか理解できません

何か、あっと驚くような「隠れ任務」や「新兵器」を繰り出すのか? はたまた「難民救出」を演出して国際社会でのアピールを狙うのか? 何時ものように・・・生暖かく見守りたいと思います

「インド検査院がロシア製空母艦載機を酷評」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1

挙動不審な最近のロシア軍
「イランに防空ミサイル輸出完了」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-16
「欧州飛び地やトルコで不穏な」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「露が新たなフィンランド化追求?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-09

「バルト海上空での安全確保指示」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-03
「東欧4カ国にNATO大隊配備へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-17

「超超音速ミサイルの脅威が大きな話題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

ロシアがイランに防空ミサイル輸出完了 [安全保障全般]

S-300.jpg14日付Defense-Techが複数のメディア情報を総合し、イランとの核開発合意後の禁輸解除を受け、ロシアがイランに地対空ミサイルS-300(SA-10)の輸出を完了した報じています。

S-300はロシア版ペトリオットミサイルと呼ばれ、最新ピカピカとは言えないものの、航空機や巡航ミサイルに対処する射程200kmのロシア標準の地対空ミサイルで、弾道ミサイル防衛にも限定的ながら対応可能と言われています

ロシアとイランの間では、2007年に同ミサイル4セットの売却契約が一端成立しましたが、イランの核開発疑惑により(米国やイスラエルからの圧力も加わり)、ロシアも西側諸国と共に経済制裁をイランに課し、同ミサイル輸出も棚上げになりました

しかしイランと西側諸国間で核開発関連協議の進展を受け、米国やイスラエルの反対にもかかわらず、2015年にプーチン大統領が同ミサイルを含む禁輸措置の解除を決定し、実際のミサイルシステム提供が完了したとロシア政府が発表した様です

14日付Defense-Tech記事によれば
S-300-2.jpg13日、ロシア政府の武器輸出庁がイランへのS-300ミサイルの輸出完了を発表したと、ロシアのRIA news、ロイター等々が報じた。4セットの価格は約850億円と言われている
ロシアはその国境を囲むようにS-300やその改良型であるS-400の配備を進めており、欧州飛び地カリーニングラード、クリミア半島やウクライナ周辺地域、シリアのラタキア等々に配備が進んでいる

●専門家は、ロシアが黒海、東地中海、中東において安全保障バランスの変更を企てており、大きなA2ADゾーンを構築しつつあると表現し、防空ミサイル配備により西側航空機の接近に大きな脅威を提示していると分析している

ウィキペディア情報によれば
S-300-1.jpg●核開発疑惑があるイランへの配備は、イランの核関連施設の防御に使用される恐れがあることから、イスラエルと米国が神経を尖らせてきた。
2007年にイランとロシアの間で結ばれたS-300の購入契約は、イスラエルや米国の抗議により契約履行が引き延ばされてきたが、2010年4月の軍事パレードにイラン国内で製造したS-300が初登場し、2010年5月のイスラエルメディアが、イランのイスラム革命防衛隊要員がS-300ミサイルシステムの操作訓練をロシア軍基地で受けていると報じた。

2016年4月、イランの外務報道官はロシアからの購入契約が実行に移されたと記者会見で明言。同年8月、イラン国営テレビが同国中部フォルドゥの原子力施設付近に配備したとするS-300の映像を放映した。
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S-400-2.jpgS-300やS-400は、ロシア極東のウラジオストック周辺にも配備され、中国の東シナ海沿岸地域にも導入されており、米国が警戒するA2AD網の中核を担う防空ミサイルです
また、米国の懸念表明や圧力を無視し、外貨獲得のためどんどん海外に売り込んでいる防空ミサイルです

イランの状況は把握していませんが、不安定さを増す中東の一画に間違いはなく、「イラン中部フォルドゥの原子力施設付近に配備」されたこと等から、取りあえずご紹介しておきます

ロシアの動向関連記事
「露軍は鉄の壁を構築中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02 
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

世界初:多国間で海空無人機の融合演習 [安全保障全般]

Unmanned War.jpg17日付Defense-Techが、スコットランド西岸域で8日から20日の間に行われた、「多国間」の海と空の無人機を連携させて活用する検証演習「Unmanned Warrior」の様子を報じています。

同演習は英国海軍の統合演習「Joint Warrior」を拡大発展させ、NATO加盟国や関係同盟国軍から約40名の海と空の「無人機専門家や開発者」が参加する形式にしたもので、将来の戦いで無人システムが活動する領域拡大を意図した演習です

米海軍研究室(ONR:Office of Naval Research)が主導しているようですが、同研究室の地元である米西海岸やメキシコ湾岸とは異なる、北大西洋の厳しい環境を求め、英軍の支援を得て行われている様です

17日付Defense-Tech記事によれば
Unmanned War2.jpg●この演習「Unmanned Warrior」は、多国間でそれぞれ保有する無人システムの連携を検証しようとするものである。その背景には、将来の戦闘行為に自立型無人システムが加速度的に関与してくるだろうとの見込みがある
NATO加盟国や関係同盟国軍から参加した約40名は、以下の5つのテーマから、10種類の異なる技術の可能性を演習で確認する

-Geospatial Intelligence(画像地理情報)
-Anti-Submarine Warfare(対潜水観戦)
-Mine Countermeasures(機雷対処)

-Intelligence, Surveillance, Targeting and Reconnaissance
-Command & Control

●本演習に関する14日の会見で、米ONRで米海軍艦艇コマンド補佐官や無人システム技術責任者を務めるTepaske博士は、英軍と米軍の無人水中システムUUVをネットワーク化し、意思疎通させる手法を見いだした事が重要な成果の一つだと語った
Unmanned War3.jpg●また「機雷対処における統合や多国間協力の水中無人システム作戦分野で、幾つか世界初の試みに成功した」と述べ、「英米システムのネットワーク分野で従来の範囲を拡大する事が出来た」と説明した

●更に、参加研究者は演習間、多様な無人システムが相互に意思疎通して連携し、人間の指揮センターにフィードバックする事にも成功した
●例えば、水上無人システムが無人航空機を通信中継装置として活用し、陸上部隊と意思疎通を図る検証を行った

●米海軍ONRのBeth Creighton大佐は、温暖な加州やメキシコ湾岸でない「興味深い」環境で、世界レベルの研究者が一堂に会することで世界初の挑戦ができ、従来の限界を突破することが出来たと語り、その教訓をリストに整理していると述べている。
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Unmanned War4.jpg事柄の性質上、「Unmanned Warrior」の細部や「教訓リスト」が明らかになる事は無いのでしょうが、四面環海の日本も、この様な仲間にぜひ加わって欲しいものです

いろんなシンクタンクの研究レポートを見ても、「水中戦」分野は、対中国でまだ技術的にリードを保っているフィールドで、この分野で優位を確保し拡大する事で抑止力を強化したいものです

戦闘機の機数を削減しても、水中戦には注力したいものです!

中国の軍事力を考える記事
「2016年版中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「10分野で米軍と中国軍を比較」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-18
「ありがちな誤解:中国軍分析注意点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-30

「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30
「仰天:DF-26も空母キラー?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04
「米中の宇宙戦を描く小説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-08
「米空母監視衛星打ち上げへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-10

トルコ駐留米軍に家族帯同禁止や特別手当 [安全保障全般]

Turkey USA2.jpg7月に発生したトルコ軍によるクーデター以降、同盟国であるはずの米国とトルコの関係が急速に悪化していますが、同時にエルドワン大統領の強硬姿勢を受け、テロなど治安悪化も進んでおり、米軍がトルコ駐留軍人の安全確保と人材確保の狭間で苦労しています

9月末には米軍人の家族帯同禁止を命じ、連続勤務期間を最長12か月とする指示を出しましたが、恐らく人材確保が難しくなったのでしょう・・・10月14日には24か月連続勤務に応ずれば、毎月特別手当をだすとの方針を明らかにしています

政情に振り回される米軍の大変さを見る事例として、ご紹介いたします

9月21日には家族帯同禁止令など
Incirlik AB.jpg●9月21日、米空軍はトルコ勤務を命じられた場合は家族を帯同しないこと、および連続勤務期間を12カ月に短縮する旨の命令を発出した。
従来は、家族帯同の場合24か月、単身での赴任の場合は15か月と基準が定められていた。既に3月には、トルコ南部で勤務する米軍関係者の家族に帰国指示を出していたところ

●なお、現在15か月任期で勤務しているものは、来年8月31日までには勤務を終了する。文民職員も現在は24か月任期となっているが、12か月勤務に短縮される
●米空軍の発表声明は「地域の安全保障環境と米国務省やトルコ政府との協議により決定した」と説明している。

10月14日には2年勤務復活で手当支給も
Turkey USA.jpg●9月21日に今後トルコ勤務は12か月間との指示が米空軍から発出されていたが、10月14日には希望者は24か月間勤務可能で、24か月勤務に応じたものには手当を支給すると米空軍は発表した
手当額は1か月300ドルで、今年8月29日から2018年12月31日の間支給される

●既にトルコ勤務を開始している者も、24か月間の勤務に同意するものは手当支給対象となる
●この空軍による発表は、自主的により長期の勤務に応ずる空軍兵士等に特別手当を支給するものである
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トルコに駐留する米軍兵士等の生活環境や基地外への外出時の制約がどれほどか不明ですが、個人的には、「1か月300ドル」の特別手当が効果を発揮するのか疑問です

Turkey USA3.jpgまた、手当支給の期間が2018年12月31日までとは何を指しているのでしょう。行政手続き上の「当面の区切り」かもしれませんが、ちょっと気になりました。

いずれにしても、米艦艇にイエメン反政府組織がミサイル攻撃を仕掛け、米海軍がイエメンのレーダー基地3カ所に反撃するも、再び米艦艇が攻撃を受ける等、中東情勢はますます不透明性を増しており、ある日突然原油がストップ・・・なんてことになりかねないと心配する一方で、反原発再稼働の県知事が誕生した新潟県や日本との空気感の差を感じる今日この頃です

トルコ政府の不穏な動きと反米
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31
「トルコクーデターに噂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-2

ロシアが欧州飛び地やトルコで不穏な動き [安全保障全般]

ロシアが欧州飛地(Kaliningrad)やトルコで不穏な動き

Kaliningrad33.jpg8日、ロシア国防省はKaliningrad(リトアニアとポーランドとバルト海に囲まれた飛び地)に、定期的な軍事演習のため短距離弾道ミサイル「Iskander-M」を展開させたと発表し、周辺国と米国防省が非難する声明を発表しています

なお、同ミサイルは射程500㎞程度で周辺国は全て射程内で、射程700㎞への延伸改修が完了していれば、ベルリンも射程内に収めることが可能です。
特に「M型」は核弾頭搭載可能で、射程延伸型であれば射程1000㎞以上と言われる巡航ミサイルの「K型」とあわせ、INF条約違反が警戒されている兵器です

またトルコ外交筋によれば、10日にプーチン大統領とトルコ大統領がイスタンブールで会談し、紆余曲折を繰り返してやり直し状態にあるトルコ長距離防空システムの選定候補に、再びロシア製システムも加えることになった模様です

日本との領土および経済交渉でも利害追求の不穏な立ち回りを見せそうなロシアですが、欧州から中東方面では相変わらず嫌われ者役を堂々と演じ、国益追求だけに邁進しているようです

飛び地に「Iskander-M」展開
Iskander-M2.jpg●8日、ロシア国防省の報道官は、定期的な演習で同ミサイルを展開したと発表し、「Kaliningradへの展開は初めてではない」との声明を発表した
●ロシア報道官は米国の偵察衛星にわざと見つかるように配備していると語り、「頑張っておられる米側の皆さんが、配備を確認するのに時間はかからないだろうと」と皮肉たっぷりに語った

●展開飛び地に隣接するリトアニアの外相は、「このような露の行動は地域の緊張を高めるだけでなく、500km以上の弾道ミサイルの展開を制限した取り決めに反する可能性がある」と警告した
●リトアニア外相は更に「本件はNATO-Russia Councilでも議題となるだろう。単に事実を確認するだけでなく、国際合意との整合を問いただすのだ」とコメントしている

米国防省も警告
Iskander-M.jpg●なお米国の情報関係者は、7日時点で同ミサイルの移動が行われているのを確認しており、NATOへの威嚇行為だとみている
●(3連休明けの)11日、米国防省はロシアによる同ミサイルの展開を、既に高い緊張状態にある同地域の緊張感を、不必要に高める行為だと警告した。


ロシアが再びトルコ防空システムに参戦
3年前に価格で敗退したはずが、露とトルコの再接近で再び参戦
●トルコ外交筋の情報として10日付Defense-News記事が報ずるところによれば、イスタンブールで開催された世界エネルギー会議に出席したプーチン大統領とトルコのエルドワン大統領が会談し、トルコがロシアにミサイル機種選定に参加するよう招待した模様
●なお、仮にロシア製を選択した場合、中国製と同様に、既存の西側防空システムとの連接は不可能となる

同ミサイル機種選定の紆余曲折・・・
●2013年9月
CPMIEC-SAM.jpgトルコ政府は中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定
(この選定においてロシア製は「価格が倍以上」として不採用になった。他にはPatriotを提案の「レイセオン&ロッキード」と、SAMP-1を提案の「European Eurosam」が参戦していた)
以後、米国やNATOが、中国製システムと既存の西側防空システムは情報保護の観点から連接不可能で、作戦運用上で極めて非効率で問題ありと強く抗議し

●2015年11月
トルコ政府が中国製を選択した決定の破棄を発表し、国産開発の方向を示唆し具体的関係企業2社に言及
一方で発表後も、米企業チームと欧州チームとも並行して選定協議を継続していた
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これまで何回も取り上げましたが、米露のINF全廃条約や弾道ミサイルを制限する条約は、中露北朝鮮などなどの条約に縛られない国を利するだけなので、今一度議論が必要だと思います。

PAC-3.jpgそのよう議論が国際社会で起きないと、日本で独自に現在の壁を突破して「弾道ミサイル保有」に進むことは厳しいです。
ロシアが極東に中距離弾道ミサイルを持ち込んだらどうするかとの問題もありますが、中国を優先すべきでしょう・・・

トルコが何を考えているか良く分かりませんが、少なくともエルドワン大統領が軍事のことを優先して考えていないことは明白でしょう・・・

約3年前からKaliningradに展開実績か?
「プーチンが展開否定も???」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19-1

トルコ政府の反米と軍粛清
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31
「トルコクーデターに噂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-2

トルコ防空システム選定のゴタゴタ
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2
「対IS空爆作戦にトルコ協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-24

「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20
「4度目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04
「トルコが中国企業と交渉開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-27

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