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米国の国家安全保障戦略を概観する [安全保障全般]

NSS.jpg19日、トランプ大統領がDCロナルド・レーガン・ビルで演説し、「国家安全保障戦略NSS」を発表しました。
政権交代時に恒例の国家戦略発表ですが、オバマ大統領は就任後16か月後に発表されましたから、1年以内の発表はトランプ大統領の強い思い入れがあってのことかもしれません。

国家安全保障戦略:National Security Strategy」は、アメリカの政権が定期的に作成し議会に提出する文書で、国の安全保障上の課題を指摘したうえで、政権としての指針を示しもので、外交・安全保障政策の基礎となるものです。

トランプ政権は今後「国家安全保障戦略」に基づき、来年1月に「国家防衛戦略NDS」を、来年2月に「核体制の見直しNPR」や「弾道ミサイル防衛の見直しBMDR」といった個別戦略文書を発表する予定です。

一番平易なNHKの19日付webニュースより
trump5.jpg●トランプ大統領は同戦略発表演説で、「アメリカ第1主義」で強いアメリカを追求するとしたうえで、これに挑む競合勢力として中国とロシアを名指しし、政治、経済、軍事の面でアメリカの優位を確保していく方針を示した。
●また軍事力を増強するとともに、経済面の問題も安全保障上の課題と位置づけ、貿易不均衡の是正などに取り組み、政治、経済、軍事の面でアメリカの優位を確保していく方針を明らかにした

外交・軍事戦略の指針として4つの柱を示し、第1の柱、「国民と国土の防衛」では、テロリストの流入や犯罪組織による麻薬の密輸などに対抗するため、国境管理や移民制度改革を進める方針を示した。トピック的には、北朝鮮の生物化学兵器開発の危険性も指摘した点が注目される

Trump cyber.jpg第2の柱、「アメリカの繁栄の促進」では、経済問題を安保上の課題に位置づけ、規制緩和や税制改革により国内経済を活性化し、貿易不均衡の是正と自由で公正な経済関係の構築に向け、各国と2国間の交渉を通じて貿易や投資の合意を形成していく等とした。
●そして、「中国などの競合勢力がアメリカの知的財産や技術などを盗んでいる」、「違反や不正行為、経済的侵略を米国はこれ以上見て見ぬふりはしない」と表現した

第3の柱、「力による平和の維持」では、中露を米の価値観と利益の対局にある「修正主義勢力」だと厳しく批判し、中国には都合のいいように秩序の再構築を図っているとしたうえで、軍事力の増強に強い警戒感を示し、露には米の影響力を弱めようとしていると指摘し、米の優位性を確保するため、軍事力の近代化や能力の強化、即応力の向上を図ると宣言した
●更に同盟国に対しては、共通の脅威への対応でより大きな責任を負うことを期待すると強調した

trump2.jpg第4の柱、「アメリカの影響力の拡大」では、米の繁栄を守るため国際的な影響力を強化し続ける必要性を指摘した。そして中露は開発途上国への支援を影響力の拡大に利用していると指摘し、米国も開発支援などが米企業にとっての機会拡大につなげる必要性を主張した

●各地位ごとに言及した部分でアジア太平洋地域に関しては、「インド太平洋地域」と位置づけ、中国による南シナ海軍事拠点化が地域の安定を損ねていると批判し、同盟国や友好国との関係を深め、航海の自由への関与を強め領有権問題の平和的な解決を目指すとともに、朝鮮半島の非核化に取り組むとした
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米国の国益をより露骨に打ち出して中露に強くあたるが、同盟国等にも負担をしっかり求めていく・・・と読みました

North Korea2.jpg来年2月の「核体制の見直しNPR」と「弾道ミサイル防衛の見直しBMDR」は、お金がない米国投資を占う重要な文書で、マティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長が、多くの課題の方向性をこの2つの文書で明らかにすると言いつづけた文書です

お二人を責めるつもりは毛頭ありませんが、相当に重要な文書です

参考になる過去記事
「CSISレポート南シナ海中国活動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17
「北朝鮮の生物兵器は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-16-1 
「オバマ政権のNSS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-08

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今頃NATOがロシアのINF条約破り非難 [安全保障全般]

2月にNYT紙が報じ、米軍幹部も非難しているロシアの行為を、今頃になってNATOが非難

SSC-X-8 2.jpg15日、NATOが声明を発表し、ロシアが射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するINF全廃条約に違反していると非難しました。

このロシアの巡航ミサイルは、オバマ政権時代から開発段階にあると指摘され、「SSC-X-8:9M729」と呼ばれていた最大射程3400km程度の巡航ミサイルですが、今年に入って配備段階に入ったと米情報機関で確認され、兵器として完成したと米国政府関係筋がNYT紙に語ったのが今年のバレンタインデーに報道されていました

この事実を受け、4月末にハリス太平洋軍司令官は「米国が宗教戒律のように守っているINF全廃条約など破棄せよ」と厳しい言葉で非難し、最近では米国も、配備はまだ決断しないが、同種兵器を開発することを明らかにしています

Selva senate.jpg一方でSelva統合参謀副議長が7月に発言しているように、全てのオプションを検討するも、オプションの基本的考え方に関し、「同条約の規約を露に遵守させられないようであれば、他の全ての合意事項の拘束力も弱体化させかねない」との懸念から、「米国は同条約の規定範囲内の手段で、ロシアを同条約の枠内に引き戻し、核戦力の戦略的バランスを維持しなければならない」との考え方がベースにはあります

軍拡競争に挑む体力が無いということでしょうが、欧州諸国主体のNATOが非難せずに誰が非難するのか・・・と思いますが、今まで公式に非難しなかったのは「大人の事情」があるのでしょうか?

18日付米空軍協会web記事によれば
SSC-X-8.jpg●15日付のNATO声明は、ロシアの条約破りを非難する米国と歩調を合わせ、ロシアにINF全廃条約を順守するよう要求し、「米国は同条約の義務を厳正に遂行している」と表現している
●そして「NATO諸国は深刻な懸念材料となるロシアのミサイルシステムを確認した。NATOとしてロシアに対し、我々の懸念に透明性のある実質的な対応をとることを要求し、米国と検証に関する技術的な対話を米国と行うよう促す」としている

●更に声明は「この条約は欧州と大西洋を囲む同盟にとって重要であり、関連兵器をすべて破棄している」、「INF全廃条約の完全履行こそが必要不可欠で、我々はこの軍備管理の記念碑的条約保全に完全にコミットしていく」と結んでいる。
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PatriotMS.jpgこの面でも米国は露にやりたい放題されてますねぇ・・・

この重要なタイミングで、ポーランドと長年にわたり協議してきたPAC-3ミサイル防衛システム導入について、ポーランド側が想定していた2倍以上の値札を最後に米国は突き付けた様です

米国ファーストがこんなところでこのタイミングで、いろんなところで顔を出しています・・・大丈夫か???

INF条約の経緯とこれまでを解説
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

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北朝鮮は生物兵器を保有するのか? [安全保障全般]

在韓米軍兵士は天然痘と炭そ菌のワクチン接種がマスト

b weapon.jpg10日付ワシントンポスト紙が、煮詰まりつつある北朝鮮情勢に絡め、北朝鮮の生物兵器の現状を様々な角度から考える記事を掲載しましたので、実態はよくわからないながら、本件に関わる関係者の取り組み具合が興味深いのでご紹介します

現状を記事から端的に推測すると、北朝鮮は炭そ菌や天然痘やコレラやペスト菌等の生物兵器病原体を保有し、輸入規制をかいくぐって大量生産用の最新機器も保有し、生物兵器研究の情報や研究者へのアプローチを活発化しているが、兵器化する「GOサイン」はなぜか出ていないようだ・・・・の状態らしいです

生物兵器は、拡散状況が目に見えず、効果の確認に時間がかかり、敵味方を問わず影響を与える可能性が高く、後始末に必要な労力が膨大な可能性があるなど、派生的なリスクが高い兵器として、ロシアさえも腰を引いた状態だと認識していますが、北朝鮮はどうなのでしょう・・・

10日付ワシントンポスト紙によれば
b weapon3.jpg北朝鮮が2006年に最初の核実験を行う5か月前、米国情報機関が議会提出の分析で、北朝鮮は秘密裏に生物兵器に取り組んでおり、炭そ菌や天然痘病原体を保有し、専門家チームを編成しているが、特定の技術スキルに欠けていると報告している
●しかし10年が経過した今、課題はなくなり始めており、北朝鮮は着実に生物兵器製造装置の獲得に近づいていると米国やアジア専門家は見ている。

ただし北朝鮮指導者が、サンプル状態にある病原菌の兵器化や大量生産を命じた証拠は確認されていない。「北朝鮮が生物兵器の原型を保有していることや、製造技術を磨いていることは様々な点から知られているが、なぜ兵器化しないのかは謎である」と専門家は述べている
●一方で、北の指導者が生物兵器の大量生産と兵器化を命じたとしても、西側がそのことを迅速に知ることができるかは疑問である

2015年6月6日の衝撃映像
b weapon2.jpg2015年6月6日、金正恩が新たに建設された農薬研究所を視察する映像が国営放送で放映されたが、北朝鮮軍が所有して運営するその施設の内部に、高価な大量生産用の菌培養槽や、菌を散布しやすくする粉末製造用乾燥装置が映像上で確認された
●これらの最新装置は北朝鮮への輸出が禁止されている生物兵器製造につながる装置であり、専門家らは「この北朝鮮研究所が生物兵器製造施設であることを否定することは難しい」、「現時点で生物兵器製造に使われていなくても、近い将来に可能になるだろう」との見解を示していた

農薬を入手しようとすれば中国から安価に入手可能なのに、このような高価な装置を入手する必要性がないこと、同装置に外部につながる配管がないこと等が、生物兵器製造用であるとの見方の理由である
●一方で、生物兵器施設なら厳重な気密服を着る必要があるが、そのような様子は全く映像から確認できなかったことから、生物兵器との関連を否定する意見もある。生物兵器の大量製造装置を保有していることだけは確かであるが・・・。

共通する見方
b weapon4.jpg北朝鮮による生物兵器の保有と使用のリスクに備え、在韓米軍兵士は天然痘と炭そ菌のワクチン接種を行っており、同時にこれら大量破壊兵器への対処検討や備えに多くの時間を割いている
●しかし、北朝鮮の本当の生物兵器関連能力や、北朝鮮の意図を分析することは、米国情報機関にとって極めて難しい課題である。

米国と韓国の情報機関は一般的に、北朝鮮は炭そ菌、コレラ、ペスト、天然痘の実験を行っていると分析している。また米国の専門家は、1980年代と90年代に脱北した北朝鮮兵士の血液から天然痘の抗体が見つかっていることから、北朝鮮が天然痘ウイルスを保有していると見ている
●この分析は、北朝鮮から亡命者やロシア情報機関も共有しており、ロシア機関は「天然痘と炭そ菌を含む4種類について、高等な軍事生物研究を行っている」とのレポートを出している

技術的な取り組み
北朝鮮研究者が論文を発表することはあまりないが、2015年に中国研究者と共に、北極圏深くのノルウェー領の島の氷河から、未知の病原体を発見したとの論文を発表している
●このほかにも北朝鮮は、海外の関連の企業や研究機関や研究者との関係者との関係構築に取り組んでいることが知られており、ネット検索でも北朝鮮がバイオテクノロジー関連に強い関心を示していることが確認できる

b weapon5.jpg技術と能力はあるが、北の指導者がそれ以上をまだ命じていないとの見方であり、政治的決断があれば事項出来るとの見方が有力である
●元CIAの関連分析官であった人物は、北朝鮮の大量破壊兵器への姿勢を表現し、「核兵器についてはオープンに語って抑止力にしようとしているが、化学兵器と生物兵器は異なる。化学と生物兵器は表に出さない。真のオプションである。彼らは否定出来る可能性を維持しているのだ」と語っている
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勘弁してほしいよなぁ・・・生物兵器・・・。病原菌の存在を確認することが難しく、疑心暗鬼を呼ぶ兵器です

そこに生物兵器が保管されている場所が判明しても、爆弾を落として焼き尽くすとか、消滅させるとかが確実に可能な保証はなく、対応が極めて難しい兵器です

北朝鮮関連の記事
「地上部隊侵攻しかない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-07
「グアムの弾薬10%増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-21
「米陸軍が対北朝鮮に緊急準備開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-12

「米軍事メディアが北朝鮮騒ぎを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-14
「グアムで住民に核攻撃対処要領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-15

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温故知新シリーズ:JASSM-ER [安全保障全般]

温故知新シリーズ:JASSM-ER
防衛省が2018年度予算案に盛り組むことを決定した、射程1000㎞も可能な長射程ステルス巡航ミサイルについて、2017年7月の記事を再掲載いたします
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小さなニュースだが、その意味するところは極めて大
第一列島線の東側から中国大陸に届く射程へJASSM改修へ

JASSM-ER5.jpg19日、Lockheed Martin社が、米空軍と空対地ミサイルJASSMの射程を延長するための翼改修の契約延長を約40億円で結んだと発表しました。ただし、どれだけ射程を延伸することを狙った改修かは明らかになっていません

JASSMは「Joint Air-to-Surface Standoff Missile」の略で、航空機から発射して地上目標を攻撃するステルス性を持つ空対地ミサイルで、現在2150発が米空軍に提供されています。

JASSM-ER7.jpg初期型のJASSMが射程200nm(360km)で、その後改良された射程延伸型JASSM-ER(Extended Range)は射程540nm(1000km)で、射程延伸型JASSM-ERはちょうど、第一列島線上空から中国沿岸部を攻撃できる射程を持つことになります

従って、射程延伸型JASSM-ERより更に射程を延伸すると言うことは、第一列島線の西側(つまり東シナ海)に入ってJASSMを発射することが既に難しいとの認識はあったが、中国のA2AD能力向上に伴い、第一列島線より更に東方の離れた位置からでないと、中国大陸に向けたASMは発射できないとの判断に米空軍が至ったとも解釈できます。

言い換えれば、日本列島の西側は、中国のA2AD圏内に入ったとも考えられます。
JASSM射程延伸の改修へ向けた動きは、たった40億円の小さな契約ですが、こんな風にも解釈できる大きなニュースだと思いご紹介します

まずJAASMの概要
JASSM-ER4.jpgJASSMは1995年から開発が始まり、実験の失敗等で紆余曲折はあったが2001年に初期量産を開始。敵防空網の射程外から発射され、強固な構造を持つバンカーや、ミサイル発射機などの攻撃を行う目的を持つ空中発射ミサイル。対艦ミサイル版のLRASMもある
●低コストの開発を念頭に、画像赤外線センサーは陸軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」から、ターボジェット・エンジンは対艦ミサイル「ハープーン」からと、既存部品を多用している

●航空機から投下されると翼を展開、ターボジェットを始動する。途中、INSとGPSにより誘導され、レーダーに見つかりにくい低空を速度マック0.8で飛行する。
●目標に接近すると画像赤外線センサーにより目標を識別、急上昇してから70度の角度で急降下、突入破壊する。命中精度CEPは約3m

●中央部分の弾頭はタングステン製454kgの貫通モード、または爆風・破片モードを選択可能な多機能弾頭で、貫通力はBLU-109Bと同等とされる
地下施設や強固な施設には貫通モードで、ミサイル発射機やレーダー施設に対しては上空で爆発して爆風と破片を放出する

JASSM-ER9.jpg搭載可能な航空機は、B-2、B-1、B-52H爆撃機、F-15E、F-16戦闘爆撃機など多様
●「JASSM-ER」と「JASSM」の違いは、より大きな燃料タンクと効率の良いエンジンの搭載で射程距離が2.5倍の575マイル(約925km)に延伸したこと。またGPS妨害に対抗できる機能を付加したこと。更にデータリンクを追加装備したことである。

●「JASSM-ER」と「JASSM」は7割が共通部品で構成されており、製造コストの低減に貢献している。
●米空軍は2020年台の製造終了までに、2,400発のJASSM(1発約1億円)と、3,000発のJASSM-ER(1発約1.6億円)を購入予定

25日付Defense-News記事等によれば 
JASSM-ER8.jpgLockheed Martin社のJAASM計画責任者Jason Denney氏は、「A2AD脅威環境で操縦者の生存性を向上させる新たなデザインを開発している」、「我が社の顧客の皆さんは、証明済みのJAASM性能を信頼頂いているが、前線部隊に更なる能力向上型を提供できることを楽しみにしている」と語った
●ロシア製のS-300やS-400と言った高性能地対空ミサイルSAMが登場して世界に拡散する中、これら兵器を使用するA2ADにより、第4世代機の能力発揮できるエリアが制限されつつある

●配備が始まったばかりのF-35や、配備開始が2020年代半ば以降になる次期爆撃機B-21はステルス性も活用して強固な敵防空網を突破できるかも知れないが、しばらくは米軍航空戦力の多数派であるF-15EやF-16C、海軍のFA-18はそうはいかない
●低空を高速で飛行可能なB-1B爆撃機も、JASSMとJASSM-ERの両方が搭載可能だが、強固に防御された敵防空網の突破能力には限界がある

●なお、JASSM-ERの能力を確認した米海軍は、JASSMを対艦ミサイル用に改良することにDARPAと共に着手しており、LRASM(Long Range Anti-Ship Missile:AGM-158C)としてB-1には2018年から、FA-18には2019年から搭載開始される予定である
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最近の北朝鮮絡みで、米軍が韓国展開部隊にJAASMを配備すると発表して大きな話題となりました。

JASSM-ER3.jpgまた昨年11月末、米国がポーランドにJAASM(又はER型)70発を、関連装備を含め僅か200億円で提供すると発表して注目を集めています。何とお得な投資でしょう。何とか日本のF-15JやF-2に搭載可能にして、有効活用できないものでしょうか?

1機が100億円以上する戦闘機の数を減らしてでも、平時からグレーゾーン付近でしか活躍が期待できないであろう戦闘機の要求性能を落としてでも、この様な長射程兵器を導入する方向に、考え方を改めていくべきと考えます

米国も輸出に前向きになったようですし、費用対効果の面でも、日本の置かれた地理的な戦術環境からしても・・・

JASSM関連の記事
「ポーランドに70発輸出承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-30
「B-52をJASSM搭載に改良」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「JASSM-ERを本格生産へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17-1
「空中発射巡航ミサイルの後継」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-12-1
「JASSM-ER最終試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-1

LRASM関連の記事
「LRASM開発状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17-1
「米軍は対艦ミサイル開発に力点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
「LRASMの試験開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-23
「新対艦ミサイルLRASM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

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カナダが中古の豪州FA-18購入へ!? [安全保障全般]

F-18.jpg8日付Military.comは、老朽化が進むカナダ空軍CF-18を補完するためにカナダ政府が中古の豪州空軍FA-18を購入する方向にあるとの報道を受け、新造FA-18売込みを見込んでいたボーイングが「決定を尊重する」との声明を発表したと報じています。

カナダはもともと、老朽CF-18後継に60機のF-35を購入予定でしたが、トルドー首相新政権がF-35に強い不信感を持ち、購入決定を先延ばしして「中継ぎ」として新造FA-18購入を示唆していました。

その後、カナダの航空機製造業ボンバルディアがボーイングから、旅客機のダンピング販売で訴えられ、米国とカナダの関係は悪化し、カナダはF-35の代打だったボーイング製新造FA-18にも「怒りの決別状」を突きつけ、中古の豪州FA-18購入を検討中との噂が出ていたところでした

カナダが正式に中古の豪州FA-18購入を決定したのか不明ですが、米国抜きTPP合意を直前になって「ちゃぶ台返し」したトルドー首相ですから、米国相手に何かやりそうです・・

8日付Military.com記事によれば
Trudeau.jpg●8日にボーイングは、「ボーイング社はカナダ政府の決定を尊重し、カナダが北米の安全保障のためNORADと協力し、北米沿岸全域を担当するため引き続きツインエンジン戦闘機を継続使用することを賞賛したい」との声明を発表した
●更に声明は「わが社は新造機を提供する機会や、新造機製造によってカナダに雇用を新たに提供する機会を得られないが、引き続きカナダと建設的な関係構築を探っていく」と述べている

4日の週にロイター通信が、カナダが豪州から中古のFA-18を購入する方向に傾いていると報じており、そんなタイミングで出たボーイングの声明だった
CF-18.jpg●また米国政府は9月に、カナダへ新たに製造する18機のFA-18売却を許可する決定を行ったと発表していたところだった

●ボーイングは「航空宇宙分野へのわが社のコミットメントには変わりなく、ルールに基づく自由で公正な競争環境を構築する全ての努力を引き続き支援していく」と意味深なコメントで声明を締めくくっている
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カナダの航空機製造業ボンバルディアがボーイングから訴えられた件は、米商務省がボンバルディア機に米国への輸入課徴金をつける決定をしました。

Bom C.jpgしかしボンバルディアの関連部門が欧州エアバス社(?)に吸収合併されることになり、米国の工場で製造を担う形にしたことで、米国は輸入課徴金をかけられなくなった聞いています

ボーイングと米国は、ボンバルディアを訴えた時点でカナダや英国等から非難を浴びていましたが、カナダと欧州の連携にしてやられた形となり、大恥をかきました。このまま事態が収集するかは不明ですが・・・

中古の豪州FA-18購入で上手く行くか、最終的なF-35購入をどうするのか・・・カナダの動向に今後も注目したいと思います

そしてトランプ政権の露骨な米国製品売り込みに、他国が連携して対抗する前例となるのか、注目したいと思います

米国とカナダの航空戦争
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

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ロシアとエジプトが相互軍用機乗り入れへ [安全保障全般]

RussiaDM-Shoigu2.jpg11月30日付Defense-Newsは、ロシア政府がエジプトへの武器売却や軍用機の相互乗り入れ等を含む合意文書を承認し、その案文をロシア政府のwebサイトに公開したと報じています。

11月29日には、ロシアのSergei Shoigu国防相がカイロを訪問し、両国の軍事技術協力会議に出席しており、この軍事協力を強化する合意文書の最終的な詰めを行ったものと解釈されています

ロシアとエジプトの関係は、1950~60年代にかけて反米姿勢を強めたナセル大統領の元で発展しましたが、後任のサダト大統領は旧ソ連の顧問団を追放して親米の立場をとり、「アラブの春」までは米国が影響力を保っていました

しかし「アラブの春」でムバラク大統領が追放されてからは、エジプト国内の混乱もあり米国との関係は疎遠になっています。

そうなるとロシアが近寄ってくるのですが、ロシア人のエジプト旅行客224名が搭乗したロシア旅客機が、2015年にエジプトのシナイ半島上空でISISに爆破された事件以降、ロシア政府は旅客機の乗り入れを中止し、エジプト観光産業の苦境がさらに悪化していました

11月30日付Defense-News記事によれば
RussianPair.jpg●11月30日に公開された両国政府が合意している文書案には、ロシアのメドベージェフ首相の署名があり、ロシア軍機がエジプト軍用基地を使用することが可能になることなど、ロシアの中東での影響力を更に強化する内容となっている
ロシアはシリア内戦でシリア軍飛行場や港を使用しているが、エジプトに拠点を確保することでその影響力を中東全域に拡大することにもつながる。エジプトとの合意は5年間有効で、両国が合意すれば延長される

エジプトのシシ大統領政権にとってロシアとの軍事行為は極めて重要で、戦闘機やヘリコプターや兵器を購入する合意も含まれているからである
シシ大統領が就任してから、彼はプーチン大統領と親しい関係を構築しており、ロシアとの経済関係が拡大し、ロシア製兵器購入にも興味を示してきたところである

●29日にカイロでの会議でロシアのShoigu国防相は、「安定して肯定的でダイナミックな軍事協力の地平が広がっている」と語ったと報じられている
Sissi2.jpg●同時に同国防相は、最近シナイ半島のモスクで発生した305名が犠牲になるテロ事件に言及し、お悔やみの言葉を述べている

シシ大統領はシナイ半島のイスラム過激派対策に苦労しており、29日にはシナイ半島北部の安定と安全を3か月以内に回復せよとエジプト軍に指示し、併せて軍参謀総長にすべての軍事的手段の使用を許可したところである
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シシ大統領は剛腕で強権政治手法でありながら、女性にも人気があり、スエズ運河の拡張工事を短期間で成功させたことで海外投資家からも期待が高い政治家です

Suez1.jpgその有能な政治家が、ロシアとの関係強化に動く背景には、人権とか民主主義とかの問題でフィルターをかけたがる米国の姿勢にも原因があるように思います

3か月でシナイ半島の過激派が掃討可能とは考えにくいですが、まずは治安との考え方には一理あります。ロシア製兵器を使ってでも・・

それにしてもロシアは抜け目ないですねぇ・・・。シリアに、トルコに、ベラルーシに、エジプトに・・ですから。

中東関連の気になる記事
シシ大統領がスエズ運河拡張http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-07
激震:トルコがついにロシア製防空システム契約http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
イランがハマスに支援再開http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-29-1
米国が無人機輸出見直しを検討http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04

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ロシアのベラルーシ大演習を振り返る [安全保障全般]

Zapad 20173.jpg22日付Defense-Newsは、今年の9月中旬に実施されたロシアとベラルーシの共同演習「Zapad 2017」を振り返り危機感を募らせる隣国エストニアの軍情報部長の見方を中心に西側の分析を紹介しています。

隔年で行われてきた同演習ですが、特に今年の演習は、米国トランプ政権が混乱している隙に乗じ、「ロシア軍が演習後もベラルーシに駐留し、ベラルーシのウクライナ化を進めるのでは・・」と専門家の間で危機感が高まった演習でした。

結局、特に異常はなく、演習後も特異な状態にはないようですが、北朝鮮騒ぎの中で世界の動きが見えにくくなっていますので、視野を広める意味で、危機感を募らせるバルト3国エストニア軍人の評価と、演習直前に騒いだ専門家を戒める研究者の意見をご紹介します

22日付Defense-News記事によれば
Belarus2.jpgエストニア軍情報部トップのKaupo Rosin大佐はDefense-Newsとのインタビューにおいて、ショッキングな新事実や明らかになるようなことはなかったと振り返りつつも、これまで同国が懸念していた事項や相手の能力について、多くの事項を再確認することになったと述べ、3つの視点から教訓を語った
まず第1に、ロシア軍が西側軍事力に対抗することを明確に意識し、大規模な電子戦環境下での演習を行い、それも陸軍と空軍の両方が相当のレベルで実行していた点である

●そして「演習内でロシア軍自身に対して行った妨害電子戦の規模に驚かされた。これまでに見たことがないレベルだった。本当にすごかった」と表現した
●演習終了後の現時点では、ロシア軍は地図上もベラルーシの意識の上からも撤退しているが、今回の演習により、ロシア軍はNATO軍の侵攻を阻止するに緊要なノウハウを蓄積し、西側電子戦への対処に習熟したと評価している

Zapad 20172.jpg●この演習状況からすると、NATO軍は単なる妨害ではなく、ロシア側の通信を阻害する新たな方策を探る必要に迫られることになる。「恐らくそれにはサイバー戦が必要だろう」「同時に当然ながら、いかに我々自身の通信を確保するかも考える必要がある。電子戦への備えが求められている」と述べている
●更に、「我が国エストニアは小さな国であり、普段から地図を使用して作戦訓練を行っているから影響は少ないが、他国からの援軍は困難に直面するだろう。NATO軍の組織や指揮系統を考えると、上層部ほど難しい対応を迫られるだろう」と

第2の教訓は、NATOの迅速な対処がカギだという点である。仮にロシア軍がベラルーシ経由でバルト3国に侵攻した場合、NATO同盟国軍が迅速に対応可能かということである
●「かねてから指摘されている課題だが、ロシア軍は戦力面、時間面、空間面で優位な立場にある」、「NATO軍が如何に迅速に国境付近に展開可能にするかの法的整理(figure out legal ways for NATO forces to move more quickly)が、今後数年の焦点の一つとなる」と表現した

Belarus.jpg第3は、今回の演習が行われたベラルーシの役割と地理的重要性である。軍事的にも政治的にも心理的にも、ロシアがベラルーシを傘下に置くことは、ロシアにとって極めて重要である
●「軍事力を用いずにロシアがそれを達成できれば良いが、必要となればロシアは軍事力を間違いなく用いるだろう」、「しかし2017年11月時点での見積もりでは、そしてそのような事態でも、NATOがベラルーシに軍事行動を起こす可能性はない」とエストニア軍情報部長は述べた

CNAS研究員で国防省経験も長い専門家は
●Jim Townsend研究員は「同演習を通じ、ロシアやベラルーシの能力について知見を得ることができた。しかしそれは大部分、これまで我々が課題と考えていた点を再確認する程度においてである」と振り返った
Zapad 20174.jpg●また「我々が騒いだために、彼らは労せずしてプロパガンダ戦で勝利した。彼らにそんなことをさせるべきではなかったのに」と振り返った

●そして「次の機会にはもっとクールに対応すべきで、互いに落ち着こうと言い合うべきだ」、「同演習は長く続いてきたが、最近までほとんど注目を集めなかった。大げさな反応は良くない。落ち着いてぞ状況を観察すべきだ」と語った
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Townsend研究員が反省し、関係者に自戒を求めているほど「Zapad 2017」への警戒感や危機感が西側関係者の間で強かったということでしょう。それは同時に、トランプ政権の欧州政策が「地に足がついていない」ということの裏返しなのでしょう。

エストニア軍情報部長の冷徹な見積もり、「ベラルーシにロシアが軍事侵攻しても、NATO軍は動かない」は、当地の雰囲気を伝える言葉としてTake Noteしておきましょう・・・。

同演習関連の記事
「米軍幹部のコメント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-04
「露がベラルーシで大演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-31

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米議会が倍増以上の米本土ICBM防衛ミサイルを要求 [安全保障全般]

GBI2.jpg17日付Defense-Newsは、米議会が米国防省とミサイル防衛庁MDAに対して、北朝鮮やイランからの大陸間弾道弾ICBMに対処するため、2021年末までに最大104発のICBM迎撃ミサイルGBI(Ground-based interceptors)を配備するよう、配備場所の検討等々を行いよう求めるレポートを作成したと報じています

このレポート「The conference report of the fiscal year 2018 defense policy bill」の位置づけをよく理解していませんが、記事は国防省が「何々しなければならない」と「must」で表現しており、大統領が拒否しない限り実行しなければならない性格のものの様です

ちなみに、現在GBIはアラスカのFort Greelyと加州の米空軍Vandenberg基地に配備されており、44発目が11月2日にアラスカに配備されたところです。したがって104発は、現在の数から60発増強する2倍以上の増強計画です

17日付Defense-News記事によれば
GBI-KV.jpg●この議会レポートが出る以前から、最近数か月間、国防省とMDAは現在の44発を計64発に増強する計画を練っており、9月には総計450億円の計画の第一弾となる150億円の2017年度予算を明らかにした。
ホワイトハウスも11月6日に、2018年度予算に追加で20発のGBIを調達し、アラスカの基地に追加の施設を建設する予算要求を行ったところである。

議会のレポートは国防省に対し、104発のGBIを配備する場所や必要施設を組み込んだ増強計画作成を求めており、2017年末までの提出が求められている弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)にも反映することを求めている
●そしてレポートは、2021年末までに全ての施設整備を実行すべきだとし、その中でも20発のGBIを可及的速やかに行うよう求めている

国防省は弾道ミサイル防衛見直しBMDRを提出後、90日でGBI増強計画を示すことを求められている。そこには、現在存在する(西海岸の)GBI配備基地だけでなく、米本土中部から東海岸も含めて配備候補地を見出し、米本土全体を防御できる体制構築が求められている
米議会は2013年度予算法の中で、2016年末までにGBI計画を提出するよう求めているが、政権交代に伴う弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)開始により、その期限が延期されている

●また同時に、米議会は現在のGBIシステム全体の有効性と信頼性を検証するよう求めており、約60億円の予算執行を信頼検証後でないと認めない方針を打ち出している
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GBI.jpgつい数年前までは、GBIについては全く盛り上がらず、一部の研究者や学者がその必要性を訴えていたようなイメージですが、急速に機運が盛り上がっているようです

この記事が引用している金額があまりにも小さいので気になっているのですが、今後色々と報道が出るでしょうからその時に確認いたしましょう・・・。

GBI関連の数少ない過去記事
「宇宙配備のミサイル防衛センサーが必要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

GMDに関しては、「海国防衛ジャーナル」2017年5月31日付記事が、包括的に解説しており大変勉強になります

初のICBM迎撃実験に成功:米本土ミサイル防衛(GMD)とは
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788602.html 

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将官OBによる政治と軍事の関係を考える意欲作! [安全保障全般]

「政軍関係:Civil Military Relations」を考える意欲作!
タイトル「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」は筆者の本音か、編集者の人寄せキャッチフレーズか?
「東京の郊外より」を読む参考文献としても是非!

hironaka.jpg10月20日に文春新書から、元空将である廣中雅之氏による「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」との書籍が出版され、欧米ではメジャーな学問でありながら、日本ではほとんど見向きもされない「政軍関係:Civil Military Relations」に真正面から取り組む意欲作として注目を集めています。

廣中氏についてはこれまで、豊富な米国大学や研究機関経験を活かし、かつ非パイロットOBの立場から発せられる、対領空侵犯措置中心の防衛力整備に疑問を投げかける論考や発言を画期的なものとしてご紹介してきましたが、「政軍関係」という地道で本質的な分野に、体系的なアプローチを試みる姿勢に「Happy Surprise」です!

日本の現状を自衛隊の60年と共に振り返り、先駆者である米国と英国の苦闘の歴史に学び、日本への提言を試みる構成ですが、政軍関係に関する理論的研究体系や米国の軍事意思決定過程に関する解説のほか、米英の事例を豊富に取り上げて読者の関心の理解と考察を促す構成に、工夫と努力が感じられます

個人的に印象に残ったのは、聞いてはいたが改めて認識した東日本大震災時の民主党政権のひどさ、田母神元空爆長辞任劇への厳しい批判、日本の文民統制(防衛省内局)の異様さ、パウエル統合参謀本部議長の湾岸戦争時の姿勢への疑問提起、マレン元統合参謀本部議長への賛辞、そして退役軍将官が特定政治家を支持することへの批判です

hironaka4.jpg最後の退役将軍の政治家支援活動批判については、具体的名前は挙げていないものの、航空自衛官OBの宇都隆史参議院議員への、元空幕長らによる選挙応援活動を強く戒める事を意図したものとも解釈できます

読者によっては、本書が示す各種事例の評価・解釈に違和感を抱くことになるかもしれませんし、タイトルの「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」自体に違和感を感じるかもしれませんが、本書の最も重要な狙いは、「政軍関係:Civil Military Relations」を学問分野として体系的に分かりやすく日本に紹介する事だと思います。

以下では廣中氏を簡単にご紹介したのち、書籍の概要というよりも、書籍の主題からは少し離れるかもしれませんが、印象に残ったところをつまみ食いで取り上げ、中核となる「政軍関係」の本質議論は、自身で読んで参考にしていただきたいと思います

廣中雅之氏とは
Hironaka3.jpg廣中雅之氏は防衛大学校出身(23期)でパイロット職ではなく、地対空ミサイル部隊出身者の61歳で、2014年に退官後、2015年から2017年6月までワシントン在住でCNASと笹川財団の研究員を務め、本書の執筆に向け研究を行ったようです。
また現役の間に、ジョンズ・ ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士課程を修了し、CSISやスタンフォード大学国際安全保障研究所の客員研究員も経験している人物です

日本の政軍関係の現状(序章から第2章)
●あるべき政軍関係の基礎には、軍事的専門戦を極めた軍人と政治指導者の信頼関係醸成が必須の要件だが、戦後の政治指導者、金丸信、栗山尚一外務次官、菅直人、北沢防衛相などが、幼少期に体験した旧軍人の態度を根に持ち、自衛隊や自衛隊員を根本的に信頼していなかったことが、健全な政軍関係形成の最大の障害だった
田母神俊雄3.jpg●福島第一原発冷却のため、陸自ヘリによる事故原発への放水任務決定に際して、北沢防衛大臣は「統合幕僚長に判断してもらった」と省内の会議で発言し、防衛大臣命令任務の本質を理解しない日本の政治家の無知無能ぶりを象徴的に示した

田母神元空幕長の事案は、懲戒処分手続きの調査に応じない非協力的な態度で、文民である防衛大臣の判断に異を問えるという、政軍関係の根本に反する行動に出たことで、自衛隊員の精神的健全性や組織文化まで疑われる極めて残念で負の事案であった
●背景には、田母神元空幕長の行政的職務に偏重した経歴と、精神性を高めるに欠かせない作戦部隊の指揮官職経験や教育が不十分だったことがある。今の自衛隊指揮官クラスは多様な経験を職務を積むように管理されており、そのようなことはない

米国における政軍関係の苦悩
powell.jpg●「湾岸戦争の英雄」と讃えられる当時のパウエル統合参謀本部議長(後の国務長官)の判断は後世の批判に耐えられるか? クウェートから撤退するイラク軍への攻撃は、軍事的な視点からすれば必要な作戦だったが、パウエル大将は国際的世論からの批判を恐れるという政治的レベルの判断から避け、早期の停戦を主張し、ブッシュ大統領から最終的に受け入れられた
●チェイニー国防長官から政治レベル判断に介入が過ぎると以前から叱責されていたパウエル大将が、政治的な動きをした事例である。しかしイラク軍の主力に打撃を与えなかったことは、後の中東の不安定化や現在の中東の混乱原因を生んだことにもつながており、彼の政治介入ともいえる当時の行動と彼への歴史的評価は、今後変わっていくかもしれない

1992年の大統領選挙で、86年まで統合参謀本部議長だったクロウ退役海軍大将が突然ビル・クリントン候補の応援に加わり、劣勢気味であった同候補の勝利に大きな役割を果たした。それまでの退役将軍の政治活動を避ける流れに逆行する動きだった
2008年と16年の大統領選挙でも、時の軍人トップは退役将官の選挙戦への関与自制を求めるコメントを発しているが、クロウ大将以降の流れは止められず、多くの将官経験者が候補者の応援に参画している。これは軍人の政治的中立という軍隊の伝統を損なうものだと現職の軍人トップは厳しく批判している
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Hironaka2.jpg書籍の本質的な中核的主張を解説しない、中途半端な紹介となりましたが、約200ページの読みやすい新書サイズの「政軍関係:Civil Military Relations」入門書ですので、ぜひご自身でご覧いただいて考えていただきたいと思います

一つだけ疑問点を上げるとすれば米軍の退役将軍が政治に関与するようになったのは、単に「目立ちたい」「社会的地位を確保したい」等の理由からだけではなく、「ポピュリズム化」が進む社会で、軍人の立場からきちんと発言しないと後輩軍人が苦労するとの強い思いからだと思う点です。

廣中氏が繰り返し訴えている、軍人が軍事的専門性を追求し、政治家との意思疎通の円滑化を図るだけでは、軍事のことなど政治家や一般市民はますます関心を持たなくなるとの危機感が、米退役将軍の中にはあると思うのですが・・・

最近の日本の政治状況と、安全保障環境を考えると、いざという時の「政軍関係:Civil Military Relations」の悲劇的な破綻が想像されるのですが、極めて自然な感覚で安全保障に関し正しい判断ができる若者層が増えているとの世論調査結果に期待し、本書を推薦したいと思います

廣中雅之氏に関する過去記事
「元陸幕長が米軍の列島線離れを指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1

その他の関連記事
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06 
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16

 

書籍のご紹介記事
「究極のインテリジェンス教科書」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22
「司馬遼太郎で学ぶ日本軍事の弱点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-01
「失敗の本質」から今こそ学べ!→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
「イスラエル起業大国の秘密」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20

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中東第2のF-35購入国はUAEか? [安全保障全般]

F-35 Front.jpg4日付Defense-Newsがイスラエル支局長執筆の記事を掲載し米国が中東でのイスラエル軍事力優位を維持するために拒んできた、イスラエル以外へのF-35売却につながるF-35能力等の説明をUAEに対して行う方向に変化しつつあると報じています

あくまでも米国が拒んできた、2011年からUAEが要請しているF-35ブリーフィングの実施について検討することに合意した程度の段階ですが、イスラエル人支局長の記事はUAEに好意的な視点で書かれており、対ISISで米国に協力し、米軍戦力の常駐を受け入れているUAEをはじめとする中東産油国に冷たくすると、ロシアや中国製兵器に市場を奪われるよ・・・と助言するような内容になっています

F-35 Israel3.jpgまたイスラエルの軍事技術優位維持政策に関しても、イランの脅威がイスラエルや湾岸産油国共通の脅威となりつつある中、再考を促すようなニュアンスも感じられる記事となっています

仮にこれから前向きに話が進んでも、UAEにF-35が渡るのは10年後だと言うことですので、イスラエルへの義理は十分に果たしたことになるでしょうから、対イランにF-35がUAEに行くのかもしれません

4日付Defense-News記事によれば
●まだ最終的な決定はなされていないが、F-35売却に向けた重要な第一歩である非公開情報を含むUAEへのブリーフィングを検討することになり、オバマ政権が固執したイスラエルの軍事技術優位維持政策からの変化を示唆するものとなりそうだ
トランプ政権も米議会が命じるイスラエル軍事技術優位施策の堅持を主張しているが、5月に明らかになった米UAEの国防協力合意では、今後15年間にわたり両国の関係強化を進める意向も示されていたところである

UAE2.jpg●匿名の前米国防省幹部は「イエスと言ったわけではないが、事態が落ち着いてくれば、その方向に向かうだろう」と述べ、サウジ・UAE・バーレーンらがカタールと外交断絶して地域情勢が複雑化しているが、これが落ち着けば対イランに向けたトランプ新戦略が動くだろうと語った

●特にUAEは、1992年の湾岸戦争から米主導多国籍軍に参加し、同国内に数千人の米軍人を駐留させ、米空軍第380派遣航空団を受け入れている国である
●まずUAEは、サウジのようにイスラエルと国境線で接することがなく、またUAE空軍はイスラエル空軍が参加する多国間演習に参加し、最近では3月にギリシャで行われた演習や米ネバダ州でのRed Flag演習にも参加している

●例えUAEにF-35提供で合意したとしても、UAEに機体を手渡すまでの時間を考えれば、イスラエルは10年間以上は中東でF-35を独占することができる。
イスラエル国防省はコメントを避けたが、個人的に関係者は、当初UAEに限定し、他の湾岸諸国に広く提供するようなことがなければ、イスラエルが反対するとは考えにくいと語ってくれた

複数の研究者の見方
●ワシントンDCのユダヤ系シンクタンク研究者も、「UAE同盟国でもないし友人でもないが、UAEがF-35でイスラエルを攻撃する事態を恐れることは、あまりにも非現実的だ」と語っている
●また米UAE関係の研究機関研究者は、「UAEは米国の姿勢に欲求不満を示している。米国はイスラエル対アラブ諸国の構図で見ているが、UAEはイスラエルをそのようには見ていない。だからイスラエル技術優位を基礎とした米国の判断を理解できない」と語っている

UAE.jpg●米UAE国防協力合意について同研究者は、米国は長期にわたっているUAEとのパートナー関係のメリットを熟慮し、この合意をF-35や他の最新兵器だけでなく、共同開発や特殊部隊協力などに発展させるべきと主張している。ちなみにUAEは、米国FMSの最大の対象国の一つである
●そして「UAEは単に安全保障に関するカスタマーではなく、湾岸地域や広く中東全域の安全保障のプロバイダーであることを考慮すべきである」と訴えている

●仮に米国が従来の制約を課すのであれば、今年年初にUAEがロシアとMig-29ベースの第5世代機開発に合意し、Su-35購入にも関心を示したように、また米国が攻撃型無人機を売却してくれない中、中国製無人機を購入したような方向に向かうと、米UAE関係の同研究者は警告している
●しかし同時に同研究者は、UAEは依然として米国製兵器を望んでおり、その訓練や維持支援を希望していると強調している

●別の研究者は、サウジが米国主導の軍事演習にイスラエルとともに参加することが公になれば、サウジのイスラエルへの懸念を払しょくできるかもしれにと述べており、「そうすることでサウジへのF-35輸出の道が開けることにつながる」と見ている
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US GCC 2.jpg繰り返しになりますが、この記事が、Defense-NewsのBarbara Opall-Rome というイスラエル支局長によって書かれた記事であることに注目です。イスラエル側からこのような見方が提示されることが目を引きます

同女性支局長は1988年から米イスラエル関係をフォローしているベテランで、対イランに向かう中東の雰囲気を察しているのでしょう。

対ISIS後を中東の行く末を見据え、どこに精力を注ぐべきか、対ロシアを含め米国はどの方面に力を入れるべきかを示唆した記事と言えましょう

湾岸諸国関連の記事
「カタール首長と大記念撮影」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-15
「米軍の弾薬を頼るな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21-1
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17

「FMS手続きの簡素化がカギ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-05
「ドバイの脅迫:軍需産業の懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16

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米議会見積:今後30年で核兵器予算は140兆円 [安全保障全般]

B-2restart.jpg10月31日、米議会の予算検討室CBOが、現状の政府計画で今後30年間に核兵器の維持開発にどれだけ予算が必要かの見積もりを公表し、近代化に約45兆円($800 billion)、維持と運用に約90兆円($400 billion)など、計約140兆円が必要だと分析しています

同CBOは今年2月、今後10年間の同経費見積もりを約45兆円と発表していましたが、これを30年スパンに拡大して見積もりを公表したもので、つまりは、「こんな計画は実行できるわけねぇーだろ!(怒)」、今政府が検討しているNPR(核体制見直し:Nuclear Posture Review)でしっかり現実を直視してアウトプットを出せ・・・との思いが滲んでいるように感じます

そんな思いは、同見積もりに、全く「近代化」を行わなかった場合は総経費が約50%削減できる、との見積もりも含まれている点からも察することが出来ます。

本見積もりを紹介する31日付Defense-News記事からは、何が近代化で、何が維持なのか、何が国防省担当で、何がエネルギー省担当なのか等々、細部区分がわかりにくいのですが、爆撃機もICBMも指揮統制も負担する米空軍が、F-35やKC-46A購入とダブって「実行可能性?」な状況はTake Noteしておきましょう

31日付Defense-News記事によれば
Ohio-Class.jpg●今後30年間で近代化更新計画されているのは、オハイオ級戦略原潜の後継導入(約35兆円)、ミニットマンⅢ後継ICBM導入(17兆円)、戦略爆撃機B-21導入(約30兆円)、その他に約5兆円とCBOは見積もっている
●これらシステムを維持近代化する国防省が約100兆円で、核弾頭の維持開発や関連研究施設を担当するエネルギー省が約40兆円必要と見積もられている

別の区分でCBO見積もりを見てみると
・「短距離の戦術的運搬システム(航空機)と弾頭の運用・維持・近代化:operation, sustainment, and modernization of tactical nuclear delivery systems — the aircraft capable of delivering nuclear weapons over shorter ranges — and the weapons they carry」に、約3兆円

・「戦略的な核兵器運搬手段と弾頭の運用・維持・近代化、潜水艦用原子炉:operation, sustainment, and modernization of strategic nuclear delivery systems and weapons — the long-range aircraft, missiles, and submarines that launch nuclear weapons; the nuclear weapons they carry; and the nuclear reactors that power the submarine」に、約85兆円

・「核兵器を支える研究や製造施設、指揮統制・通信・早期警戒システム:complex of laboratories and production facilities that support nuclear weapons activities and the command, control, communications, and early-warning systems that enable the safe and secure operation of nuclear forces」に、約50兆円

Minuteman III 4.jpg特筆すべきは、CBO見積もりが、近代化を全く行わず、兵器の更新と維持のみに絞った場合のケースを取り上げ、総経費が約50%削減できると指摘している点だが、この案は国防省がこれまで繰り返し拒否しているところである
●核兵器不拡散(核兵器削減)論者は、皮肉たっぷりに、「CBOが示した数字の実現は、幻想世界の虹の向こうに見える、打ち出の小槌でもない限り、破滅的な現実に直面する」と指摘している

国防省関係者は予算問題に関し、核兵器関連予算の規模は、今後30年間の国防予算の6%に過ぎないと主張しているが、CBOの見積もりでは「2017年に5.5%で始まり、2020年代後半から30年代前半に8%のピークを迎え、20204年代に4.5%まで徐々に下がる」と予想している
●特に、戦略爆撃機と巡航ミサイルとICBMに加え、指揮統制システムも担う米空軍に、F-35とKC-46A等の装備購入が重なる2020年代初頭から中盤にかけて訪れる「装備調達の大波」対応が迫ってくる

●専門家は「もし政権が核体制見直しNPRで3本柱の規模縮小を打ち出さなければ、国家安全保障に重要な他の予算計画を脅かすことになる」と警告している
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B-21 2.jpg核兵器というのはお金がかかるんです。 軽々しく核兵器の保有を叫ぶ人がいたら、その辺への理解をぜひ確認したいものです

またその維持には特別な施設や組織が必要であり、またその運用に携わる人は、使用の可能性が極めて低い中で、訓練や待機を続け、士気を維持しなければなりません。非常に扱いが難しい兵器です

日本では普通に議論できない分野でもありますので、以下の関連記事をご参考に、思索を深めて頂きたいと思います

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19

三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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2つの話題から:露とアジアの関係を見る [安全保障全般]

Russia fleet Phi2.jpg20日付Defense-Newsが、ロシアとフィリピン、およびロシアとインドの軍事関係に関する記事を2つ掲載し、トランプ政権がゴタゴタし、中東やアフガン問題に手を取られ、北朝鮮問題に悩まされる中、ロシアがアジアに手を伸ばしている様子を紹介しています

必ずしもロシアにとって順調な話ばかりではなく、相手国の現場から反対されている構図も紹介されていますが、長期視点で、隙あらば食い込んでやろうとする絶え間なき取り組みは、大いに学ぶべき点ありと考えます

2つの記事は、ロシア国防相がフィリピンへの手土産に「ライフル5000丁」を持ち込んだお話と、インドとロシアが進めている第5世代機開発に関し、インド空軍が性能不足や整備性の悪さを理由に露との共同開発中断を要求しているとのお話です

露がフィリピン大統領にライフル5000丁
Russia fleet.jpg●20日フィリピンのスービック港に到着したロシア海軍艦艇3隻と、21日に遅れて到着する2隻と合わせた艦隊司令官であるMikhailovロシア海軍少将は、来週開催されるASEAN国防相会議に出席するロシア国防相の来比に合わせた訪問だと語った
●フィリピン大統領にドゥテルテ氏が就任して以来、ロシア艦隊の訪問は今回が3回目となり、フィリピン海軍の発表によれば、21日到着の2隻がドゥテルテ大統領宛の贈り物である「軍事装備品」を輸送していると明らかにしている

ドゥテルテ大統領はロシア艦隊の到着に先立ち、贈り物である「軍事装備品」は「ライフル5000丁」だと語っていた。なお国防相会議には米国、中国、ロシア国防相も参加する
●Mikhailov艦隊司令官は、「この艦隊訪問が、露比両国間の友好関係強化に貢献するよう全力を尽くし、当地域の安全保障に貢献する」と語った

インド空軍が露との戦闘機開発中断を要求
SU-57 2.jpg1兆円規模のロシアとインドの第5世代機開発プロジェクトFGFA(fifth generation fighter aircraft)が、新たな厳しいハードルに直面している。インド空軍が要求を満たさない計画機に反対の姿勢を示したのだ
●インド空軍のリーダーたちが最近インド国防省に対し、FGFAが要求性能を満たさず、米国製のF-35などに及ばないと、強い懸念を表明したとインド空軍関係者が明らかにした

●インド空軍幹部は、FGFAはステルス性やレーダー反射面積の面で要求性能を満たさず、ロシア提示のプロトタイプに大幅な構造的変更を行わなう必要があると懸念している
●またインド空軍は、機体の稼働率確保と整備容易性を狙い、エンジンに「modular engine concept」の導入を要求し、エンジン整備をインド側で実施する形を求めているが、ロシア側はエンジン整備をすべてロシア企業が行うこととしている

●ロシア寄りの専門家は、FGFAのプロトタイプと言われたSU-57(PAK FA:T-50)は「AL-41F1エンジン」を搭載しているが、FGFA量産型は「Product 30エンジン」は燃費が3割向上し、エンジンの可動部分も少なくなり、ライフサイクルで3割もコストが削減できると良さを説明しているが・・
SU-57.jpg●一方でインド側も、米国製戦闘機を運用していないので、ロシア機と米国機の長期にわたる運用経費比較がほとんどできないと言われている

●なおFGFAは、インドが108機購入する前提で開始されており、インド側は段階的に開発経費として約6000億円を拠出する計画になっている
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ロシアはイランや中国に戦闘機や地対空ミサイルを売り込むだけでなく、NATO加盟国トルコへの長射程防空ミサイルを売り込みに最近成功し、その勢いで米国との関係が微妙な雰囲気にある中国周辺国家へのアプローチを加速させています。

しかし・・・フィリピン大統領へのライフル5000丁は何でしょうか? 麻薬撲滅のため、米国の人権派が嫌う「闇の仕置き」をもっとやれ・・・との激励でしょうか・・・
本当に、かゆいところに手が届く国ですねぇ・・・ロシアは・・・

ロシア製品と世界
「ロシア製ロケットエンジンでなく」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-07
「印検査院がロシア製戦闘機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1 
「トルコが露製長距離SAM購入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14

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欧州国軍の象徴か:ドイツ潜水艦が全艦使用不能に [安全保障全般]

冷戦後、放置・削減してきてた国防投資が生んだ惨状か

212A-class.jpg20日付Defense-Newsは、ドイツ海軍が最近購入したばかりの潜水艦に15日に発生したトラブルにより欧州の中核を担うドイツが保有する6隻の潜水艦が全て運用不能に陥ったと、その情けない状況を報じています

ドイツ海軍は、圧倒的な力量と発言力を持つドイツ陸軍の前に「冷や飯」を食わされてきた苦闘の歴史を持ち、例えば、WW2開戦時点に独海軍司令官が「いまや独海軍は勇敢に死ぬことを知っているだけだ」と嘆いた貧弱な状態でした

212A-class2.jpgしかし持ち前のゲルマン魂と知恵で、英国等の連合国に対する通商破壊戦を試み、特に「Uボート」はイギリスを崩壊寸前まで追い詰めて、後にチャーチル英首相に「私が大戦中に恐れたのはUボートの脅威のみである」と言わしめた意地を見せたのがドイツ潜水艦隊です

今でもドイツ軍人によれば、プライドの高い陸軍の発言力が圧倒的に強く、海軍や空軍は弱い立場だそうですが、ロシア軍の活動が活発化し、バルト海周辺の沿岸にロシアの隠密潜水艇が出現しているとの報道がよく出る中、なんともさみしい話です

20日付Defense-News記事によれば
●15日、ドイツ海軍が最近導入したばかりの2隻の「212A級」潜水艦の1隻で、唯一の運用可能状態であった艦番号U-35潜水艦が、ノルウェー沖で潜航動作中にラダーに故障が発生して非稼働状態になった
212A-class3.jpg●U-35は事故後、同潜水艦が建造された北ドイツ沿岸のキール港にある造船所TKMS(ThyssenKrupp Marine Systems)に戻っており、23日の週中には故障の程度を明らかにし、修理に必要な期間等がを見定めることになりそうだ

●TKMS製の「212A級」潜水艦は、イタリアで4隻が既に運用中で、更に今年初めにはノルウェーが発注して話題を集めたばかりである
ドイツ海軍が保有する「212A級」潜水艦6隻の現状は以下のとおりである。なお同潜水艦は、排水量約1500トンのAIP搭載潜水艦で、全長57mです。
・U-31 今年12月まで定期修理中
・U-32 故障で整備ドックの空き待ち
・U-33 来年5月まで修理中
・U-34 故障で整備ドックの空き待ち
・U-35 15日に故障、復旧見積もり中
・U-36 来年2月まで修理中

212A-class4.jpg●ドイツ海軍幹部は潜水艦隊の稼働率低下問題の原因を、部品の調達方式にあると述べ、緊張感のあった冷戦中は修理用予備部品の確保を重視していたが、予算削減の圧力で予備部品が十分確保できないことに根本原因があると訴えている
●それでもドイツ海軍の公式発表によれば、もっとも最近導入した「U-35」と「U-36」 から改善した維持整備方針を導入しており、今回のU-35故障前の段階では、来年中ごろからは3~4隻の潜水艦を運用可能状態で確保できる計画になっている
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ドイツは東西ドイツの統一に伴い、1990年には約80万人のドイツ軍を保有することになりましたが、2010年には約24万人体制(軍人18.5万人、文民5.6万人)にまで縮小されています。

更に2011年当時の政権は追加縮小を打ち出し、軍人18.5万人を6.5万人まで削減し、戦車や戦闘機を3割、攻撃ヘリは80機から40機へ削減する計画までまとめましたが、その後の情勢変化や米国の要請(圧力)もあって踏みとどまり、2016年には軍人と文民あわせて約1.8万人の増強計画を打ち出しました。

D&G3.jpgしかし少子化や人々の軍隊離れから、人集めは難航しており、2014年には給料・諸手当の改善や勤務時間の融通性向上などを含む人材確保策を打ち出し、2015年には今後5年間は国防費5%増を約束するなどしていますが、思うようには進んでいないようです

まぁ・・・計画通り潜水艦の稼働率が改善することを願いますが、国防分野は、一度緩めてしまうと取り返すのが極めて難しいとの事例でしょう。←左はドイツ国防大臣

ドイツ軍の苦悩関連
「美人大臣の増強計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「独と蘭が連合部隊創設へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1

「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

東欧中心に徴兵制等復活の動き
「世論支持7割でスウェーデンが検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-15
「ルーマニア・チェコ・リトアニア復活へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-04
「ノルウェーは女性徴兵へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「オーストリア徴兵制維持へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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東南アジア3主要国が共同海洋パトロールへ [安全保障全般]

Sulu Sea2.jpg13日、マレーシアの空軍基地で、マレーシア、インドネシア、フィリピンの3か国が協力し、同3か国で囲まれた「スールー海:Sulu Sea」の航空機による共同パトロールを開始する式典が開催され、同海域を通じて海賊行為や活動家の移動を行ているISISやイスラム過激派の警戒を強化することになりました

このTAP(Trilateral Air Patrol)活動は、同3か国が結んでいる「協力合意:Trilateral Cooperative Arrangement」に基づくもので、既に6月から開始されている水上艦艇による共同水上パトロールに続くものです

まぁ・・しかし、3か国の航空アセットは決して潤沢ではなく、フィリピンに至っては監視用航空機を保有していないことから、輸送機の転用まで検討されているらしく、月に1回の1機による共同パトロールと、各国による航空監視活動は、シンボリックな意味以上のものではありません

13日付DEfense-News記事によれば
Sulu Sea3.jpg●13日、マレーシアの Subang空軍基地に3か国の国防相が集まり、TAPの公式開始を披露するセレモニーが行われた
●マレーシア国防相から発表された報道発表によれば、TAPは2つの部分からなり、一つは同一航空機に3か国から派遣された要員が同乗し、文字通り共同でパトロールを行うもので、

もう一つは、それぞれの国が互いに連携しつつ、それぞれの領域内で航空アセットによるパトロールを行う活動である
同一航空機に同乗するパトロールは、第一回目が11月にマレーシア航空機により行われ、12月はフィリピン航空機で、来年1月はインドネシア航空機で行う計画である

●同3か国が取り囲む形になる「スールー海」は、ISIS関連のイスラム過激派が活動家の移動に使用しているといわれ、ISIS関連組織が支配するフィリピン南部の都市マラウィー(Marawi)で5月から続いているフィリピン軍軍との戦で、大きくその問題がクローズアップされている
●しかし地域の専門家は、広大な同海域を監視するには3か国のアセットがあまりにも貧弱で、長期的な活動には無理があると指摘している

CASA IPTN CN-235.jpg●現状、マレーシアは海洋監視用の2機のBeechcraft B200Tを保有し、インドネシア軍は8機のCASA/IPTN CN-235と少数のNC-212s海洋監視機を保有しているが、フィリピンは海洋監視用の航空機を保有していない

●この状況を受け同専門家は、3か国は例えば輸送機であるC-130まで駆り出す必要に迫られるだろうと述べつつも、イスラム過激派が頻繁に使用している小型のスピードボートを夜間や天候が良くない状況で発見するために必要な海上監視レーダーやセンサーを、輸送機が装備していない事の問題も指摘した
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ちなみに艦艇による共同パトロールは、インドネシアのタラカンに3か国の合同警備司令センターを設置し、2017年6月19日からフィリピンやマレーシアとともにパトロールを開始しているようです

Sulu Sea.jpgあまり実質的な効果がありそうもない、このようなパトロールを行う背景には、それぞれの国民へのアピール目的があるのか、米国からの働きかけがあるのか承知していませんが東南アジア諸国の実力はこの程度ということでしょう。

地図で見て頂くと、スールー海は南シナ海より引っ込んだ部分です。期待は薄いですが、3か国で南シナ海に打って出るくらいの話になれば、大きく取り上げられるのでしょうが・・・

米国とフィリピン関係
「比南部のIS戦に米も協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-12
「アジア安全保障会議での発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
「比の主要閣僚3名が米空母へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06
「米軍兵器の保管は認めない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31

「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11
「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06
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岩田元陸幕長が米軍の第一列島戦離れを指摘 [安全保障全般]

Stimson5.jpg9月15日、ワシントンDCのシンクタンクStimson Cenrterで、辰巳由紀・同センター日本部長の主催による毎年恒例の日米安保を考えるイベント「Voices from Japan」が開催され、「Visions for Japan’s Future Defense Posture」をテーマに、防衛大学校の同期生である3名の自衛隊元将軍がパネル討議を行いました

議論を行ったのは、防大23期生の岩田元陸幕長、武居元海幕長、そして広中元空将(教育集団司令官)で、前者2名が昨年まで陸自と海自のトップを務め、広中氏も今年までCNASの客員研究員を務めていたこともあり、現役が語れない生の声に近いものが聞けると期待を集めました

Stimson3.jpgこのイベント「Voices from Japan」にはこれまで、西元事務次官、小野寺元防衛相(2015年当時)、野田元総理などが交代で招聘されてきましたが、今回は同期生の元自衛官3名が、事前に綿密な打ち合わせをして臨んだと思われ、発言の重複や論理の混乱もなく、理路整然と3名が多様な角度から「Japan’s Future Defense Posture」の方向を語ることに挑んでいます

映像で約90分のイベントが公開されていますが、本日は岩田元陸幕長の発言から、米軍が西太平洋での有事の際、第一列島戦からグアム島まで後退する可能性が検討される中防衛大綱とガイドライン見直しを同時にリンクさせてやり直す必要があるとの主張部分の発言要旨をご紹介します

Stimson Cenrter公開映像の42分付近から


極東付近の軍事情勢は、予想していたよりも急速なペースで変化しており、北朝鮮の核やミサイル開発にしても、中国の第一列島戦を超えての艦隊や航空機の活動にしても、日米同盟に迅速な対応を求めている
米国の極東や西太平洋での軍事戦略は、シンクタンクCSBAや国防省のNet Assesment Officeが中心となって検討されており、これまでエアシーバトル(ASB)や第3の相殺戦略といった概念を打ち出してきていると認識している

●この米国内での検討では、(敵対国の弾道・巡航ミサイル等戦力の充実を受け、)米軍が現在展開している在日米軍基地をはじめとする第一列島戦の位置から東へ一時後退し、グアム島のラインまで引くことがオプションとなっている
Stimson2.jpg●この体制で敵の一撃や初動の攻勢を凌ぎ、後に経済封鎖や遠方からの長距離攻撃を中心とした軍事作戦で、巻き返しを狙う軍事戦略や作戦も検討されていると認識している

現在の日本の防衛体制や防衛戦略は、4年前に防衛計画の大綱を定め、その2年後に米国と協議してガイドラインの見直しを行っているが、(大綱の枠に縛られ、ガイドライン再検討時に米側と十分にすり合わせができていないことから、)十分な状態にあるとは考えていない
●現在の脅威環境に的確に対処するには、大綱の議論と日米の協議を同時に進め、「Mission」「Role」「Capability」の3側面で、日米がしっかり協力できる体制を再構築する必要がある

●そして、日本は守り、米国が攻撃といった従来の役割分担ではなく、例えば日本がイージス艦やPAC-3のミサイル防衛で貢献するだけでなく、敵基地攻撃能力についても考えていく必要がある
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エアシーバトルがCSBAオリジナルな考え方から変遷し、地上部隊も交えた概念に強制改宗された数年前あたりから、これを陸自生き残り策にしようとする陸自幹部やOBによる「CSBA詣」が続いており、陸自の我田引水の動きには注意が必要です。

Stimson.jpgしかし現実として米軍が有事に、第一列島戦から少なくとも一時的に後退するとの認識は重要ですし、昨年退官したばかりの陸自トップが、海空元将軍と事前協議のうえで発言していることに大注目ですし、正しい情勢認識として歓迎すべきことです

この発言に続き、空自代表で登場している広中氏(非パイロット)には、戦闘機への投資を削減すべきだと発言してほしかったのですが極めてぼんやりとした「資源配分を再検討すべき」との言葉に終わっていて残念でした

きっと昨年ご紹介した広中氏による「対領空侵犯措置の効果」に疑問を呈する論考が反響を呼びすぎ、発言を控えているのでしょう・・・。残念なことです・・・。

陸自のCSBA傾倒
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12

関連の多様な記事
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06 

「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02 

「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

「ACC司令官も電子戦機を早期に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20

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