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米空軍が次期ICBMと核巡航ミサイルの企業絞り込み [安全保障全般]

Nuclear weapon.jpg8月21日の週、米空軍は相次いで二つの大きなプロジェクト、つまり次期ICBMと次期核搭載巡航ミサイルの発注候補企業を発表しました

いずれのケースも、提案して敗れた企業は10日以内であれば訴えを起こす権利を与えられており、今後ごたごたの可能性を残していますが2つの事業に各2企業が選ばれ、合計4企業がチャンスを得たわけですが、4企業すべてが異なる企業で、結果的には事業の分散も図られた形になっています

結論は以下の通りです

次期ICBM(計画名GBSD)
GBSD2.jpg●8月21日、正確にはGBSD(Ground Based Strategic Deterrent)との計画に、ボーイングとNorthrop Grumman(現有ミニットマンⅢ担当)が選ばれ、ロッキードは選定から漏れた
●選ばれた2つの企業は、今後36か月間かけ、「technology maturation and risk reduction」活動を行う。ボーイングは約380億円、NG社は約360億円の契約を結ぶ
具体的な要求性能等については非公開となっており、ほとんど情報がない

●2企業から最終的な1社に絞り込まれるのは2020年度で、1970年代から使用中のミニットマンⅢの後継ICBMが初期運用態勢を確立するのは2020年代後半と予期されている
●F-35、次期爆撃機B-21や次期空中給油機KC-46Aに続く、最後の大物事業を言われる次期ICBMであるが、その経費規模は米空軍見積もりで6.8兆円だが、国防省のコスト評価部署は10兆円以上に膨らむと早くも警告を発している

次期核搭載空中発射巡航ミサイル(LRSO)
LRSO4.jpg●8月23日、正確にはLRSO(Long Range Standoff weapon)との計画に、Lockheed MartinとRaytheon が選ばれ、ボーイング(現有ALCM:AGM-86B担当企業)や参入を狙っていたNorthrop Grumman は選定から漏れた
●選ばれた2つの企業は、今後54か月間かけ、「technology maturation and risk reduction」活動を行う。Lockheed MartinとRaytheonはそれぞれ、約1000億円の契約を結ぶ。

●2企業から最終的な1社に絞り込まれるのは2022年度で、1980年代初めから使用中のALCM:AGM-86Bは約10年で耐用年数が来ると見積もられており、後継ミサイルが初期運用態勢を確立するのは2020年代後半と予期され、B-52, B-2 とB-21に搭載予定である
●次期ICBM以上に具体的な要求性能等について、情報が厳しく管理されており、ほとんど実態が明らかになっていないが、特に民主党議員からは、経費が膨大なる可能性と、通常兵器も搭載可能となることから核攻撃との誤解を与える等から、厳しい反対意見が出ている

●一方で共和党議員ら支持派は、現ALCMも核と非核弾頭両方が搭載可能で何ら変わりなく、敵の防空能力が強化される中、より遠方から発射できる突破力のある核巡航ミサイルが必要だとの声が出ている
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核態勢見直しNPRが行われている最中で、ICBMとLRSOに国防省がどの程度の能力や性能を求めるかも流動的だと考えられます。
現段階では米空軍の意向を反映した形で進んでいるのでしょうが、NPRをまとめる過程や結果で明らかになる国防省の考え方次第の部分の多分に残されていると思います。

mattis senate2.jpgマティス長官はLRSOに慎重な発言をした経緯があり、、またICBMが今後も本当に有効な投資なのかとの有力議員のアピールもあり、更に抑止の在り方全体をサイバーや宇宙戦を含めて考え直す時だとのもっともな提案もあり、どう転ぶかが注目される大きな案件です

軍需産業政策の観点からすれば、F-35計画という史上最大の装備品計画を担当のロッキードはICBMから外れ、その慰めにLRSOに可能性を残しつつ、レイセオンとしっかり競い合ってもらって力を発揮してもらおうとも読めなくもありません

ICBM後継に関する記事
「ICBM必要性に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

21世紀の抑止概念を目指す
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

NPR(核態勢見直し)関連
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19
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ロッキード社:PAC-3の航空機や艦艇搭載も!? [安全保障全般]

Cahill.jpg17日付Defense-Newsが、Lockheed Martin社の防空&ミサイル防衛担当副社長の発言を紹介し、同社が製造する「PAC-3」「PAC-3 MSE」「THAAD」や「MHTK」の将来方向について、「他のドメインでの活用」や「機能向上&付加」などの視点から語る様子を取り上げています

米国防省や米軍から正式な研究開発依頼があったわけではないと慎重な姿勢を見せつつも、地上配備が前提で開発配備されてきた上記兵器システムを、異なるドメインである海軍アセットや空軍アセットに搭載したり、従来とは異なるセンサーと結びつけることを、脅威の変化から自然なことだと取り組んる様子が伺えます

ついでにこれを機会に、イラクでの米兵士の死亡の2番目に多い原因である敵の「rocket, artillery and mortar (RAM) 」対策として開発された、同社の「MHTK」について少しご紹介したいと思います。ちょっとだけですが

17日付Defense-News記事によれば
PAC-3 Saudi.jpg●17日、ロッキード社防空&ミサイル防衛担当副社長であるTim Cahill氏は、 Space and Missile Defense Symposiumで少数の記者団に対し、既存の防空&ミサイル防衛兵器を他のドメインで使用することや、新機能を付加することに投資していると語った
●そして「全長約6mから50㎝までの防空&ミサイル防衛兵器を開発製造してきたが、これらを伝統的なドメイン以外でどのように活用しようかと考え始めている」と記者団に語った

●例えば「PAC-3 MSEを以上配備以外で活用できないか、パトリオットシステム全体を艦艇に装備できないか、航空アセットにはどうか」との問いである。
●その検討は、ロッキー社内にある他部門のセンサーと結びつけられないか、例えば「Long Range Discrimination Radar」、「Space Fence」、「Q-53 counterfire radar」等とはどうかとの問いである。
そしていろいろな組み合わせやマッチングを検討した結果、従来システムの組み合わせで大丈夫との結論が得られた分野もあると同副社長は説明した

PAC-3 MSE.jpg●またCahill副社長は、幾つかの組み合わせや新能力は契約に近づいているとも語ったが、細部には言及を避けつつも、「皆さんも遠からず知ることになるだろう。防空&ミサイル防衛兵器を他軍種のシステムと連接するような試みをである」と語った

●更に他の取り組みとして、既存のシステムを他のアセットに搭載することに言及し、「例えば、陸軍が運用しているPAC-3 MSEを、他軍種アセットに搭載することも検討している」、「F-16ではないだろうが、F-16より大きな機体で大型ミサイルが搭載可能なもの」、「航空アセットも想定外ではないし、艦艇アセットも想定外ではない」と語った
●ただし同副社長は、航空アセットの場合、より小型のミサイルがよりフィットするだろうとも語り、「PAC-3とMHTKの中間ぐらいの大きさで、2~2.5mぐらいの全長の物」と言及し、「全タイプの航空アセットに搭載可能なhit-to-killタイプの詳細なコンセプトに、積極的に取り組んでいる」と語った

●また同副社長はTHAADの発展型にも言及し、射程を延伸し、センサー能力も向上させ、超超音速兵器(hypersonic weapon)にも対処できるような能力を付加したいと語り、「検討の最中なので細部を語れないが、射程を延伸し、対処高度を増すことを疑いなく求められるだろう」と表現した

MHTKについて
MHTK.jpgMHTK(Miniature Hit-to-Kill)は、イラクでの米兵士死亡の2番目に多い原因である敵の「rocket, artillery and mortar (RAM)」 や無人機兵器対策として開発された兵器システムである
全長73㎝、直径5㎝、重さ2.5㎏のMHTKは、弾頭を搭載せず、運動エネルギーで「Hit-to-Kill」を狙う兵器。1個の発射機に36発搭載され、トラック1台に2個発射機が搭載できる大きさである
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兵器技術の拡散に伴い、弾道・巡航ミサイルから「rocket, artillery and mortar (RAM) 」、更に無人機まで、潜在的敵国にはこれら安価で入手が容易な兵器があふれることになります。

THAAD2.jpg上記のロッキード社の取り組みも、効果があるかどうか、費用対効果はどうなの・・・との精査は必要ですが、西側諸国軍が取り組みべき喫緊の課題です。

少なくとも、近年の脅威の変化を象徴するこれらの兵器は、我が国が「なぜか必死に優先して投資する」戦闘機の運用基地対しに極めて有効です。

お馴染みの関連記事・何度でも!
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「2016中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15 

「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
「中国報道:J-20が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

「ACC司令官も電子戦機を早期に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20


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米大統領のアフガン政策演説に思う [安全保障全般]

Trump afgn3.jpg21日夜9時から、トランプ大統領がFort Myer陸軍基地でアフガン政策に関する政策演説を約25分間行いました。

日本でも、米本土横断の皆既日食ニュースにかき消されて小さい扱いながら、それなりに各種の分析を添えて報道されていると思いますが、まんぐーす自身の整理と頭の体操を兼ねて、概要と思うところを綴って見たいと思います

まず、マティス国防長官の情勢認識と発言など
今年6月上院軍事委員会で→→「米国はアフガンでnot winningであり、敵はsurging(勢力を増している)である。情勢に変化がなければ、タリバンにとっては今年も良い年で終わる(set to have another good year)だろう」
初夏にNATOが声明発表→→NATO加盟国はアフガン軍の支援・育成のため、派遣兵力を増強する

mattis.jpg8月18日Camp Davidに政権の安保関係者が一堂に会し、数ヶ月間にわたって検討してきたアフガン政策の取りまとめのため長時間にわたる協議を行う
8月20日夜→→「大統領は広範な南アジア戦略に関する戦略的決断を固めつつあり、戦術的で作戦的な決断を行いつつある

21日の大統領の演説後→→「大統領が発表した戦略の実行に取り組む。追加増派されるメンバーは、アフガン陸軍やアフガン空軍が、同国東部でISIS関連組織の脅威と対峙し、タリバンの巻き返しを防ぎ、アフガニスタンの安全保障を自ら手で維持するとの希望を達成することを支援する

トランプ演説の映像(約25分)


トランプ大統領の演説概要
米国史上最長の戦いに関する戦略を発表具体的な兵力等増強数に言及せず、スケジュールについても今後数ヶ月(in the coming months)とのみ表現し、「撤収の時期には縛られず、地上の状態によって判断する」と語る。
Trump afgn2.jpg●ただし関与に関する制約を減らすと説明し、最終目標をアフガニスタンにおける「永続的な勝利:enduring victory」と表現

●更に「同盟国等と協力し、相手の意思をくじき、戦力募集を干し挙げ、国境を越えての流入を防ぎ、彼らを手際よく打ち負かす」と表現
●また、強力で能力を備えたアフガン軍の養成が米軍派遣の目的だと語る一方で、アフガン問題に白紙の小切手を繰り出すことはしないとも表現


まんぐーすの情勢認識と思うこと
Dunford.jpg●マティス長官やダンフォード議長やその直属部下は、トランプ政権誕生以降、新政権の国防政策に関わる質問に対し、各種の政策文書(国家防衛戦略NDS、国家軍事戦略NMS、核態勢見直しNPR、ミサイル防衛体制BMDR等々)の検討の中で熟考中だと時間稼ぎ発言を繰り返してきたところ


「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20

Work2.jpg●一方で、予算管理法によって縛られ、強制削減や政府機能停止の危機と背中合わせの「綱渡り状態」は変わらず、加えて老朽装備品や関連インフラの更新や維持修理は待ったなしの状態で、トランプ大統領が年6兆円の国防予算増額を根拠なくぶち上げても、実際には現状維持だけで年10兆円の増額が必要だとWork前副長官は公式発言しているとところ(米軍予算は年間約60~70兆円規模)

「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10

●本来このような厳しい環境になればなるほど、サイバーや宇宙など新しいドメインの新しい脅威も踏え、新たな抑止概念の整理やそれに伴う国防予算配分の優先順位議論をまず徹底的に行い、その後各論に入っていくべきであるが、米国の足元を見たロシアや北朝鮮や中国やイランやイスラム過激派が手を緩めない中、米国は危ういトランプ大統領を抱えつつ、とりあえずのその場しのぎ&時間稼ぎで何とか遣り繰り中
国防省の政治任用ポストの75%が未だ空席状態で、当分細部各論には入れそうもない状態が現実

本来あるべき根本的な議論
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止再考を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「国家軍事戦略NMS検討を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06

Goldfein.jpg一方で各軍種は、厳しい予算的遣り繰りの中でも、オバマ前大統領や民主党の締め付けから脱するトランプ政権の「軍事予算大幅増額」大風呂敷に期待し、また他軍種を差し置いても我田引水を勝ち取ろうと、「統合戦力の一翼を担い」とのスローガンとは裏腹に、自分のパイを増やそうとナリフリ構わぬ売り込み工作を推進中


米陸軍:巨大都市戦に備えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-22
「文書:将来の海軍発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-18
空軍は9月に爆撃機計画発表へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28-1
5分間でトランプに訴えたこと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-04

●ホワイトハウス内の勢力争いだけでなく、各軍種間の予算争いも加熱する中、無い袖は触れない&米軍の前線部隊は疲弊している中、更に米国や米軍の「引き潮状態」を取り上げたいメディア対策も考える必要がある中、諸情勢を良く承知しているトリオ(マティス&ダンフォード&マクマスター)は、これまで公表してきたような文書や数字を、揚げ足を取られないように「非公開化」する方向に進んでいる
●例えば、2016年国家軍事戦略(NMS)が従来とは異なり非公開文書となった流れがそれで、この「見えない化」は今回のアフガン政策でも加速している。しかし一方で、ちっちゃな部隊展開を大々的に映像等でアピールする手法も頻発している(例:軍事面で実態として意味が無いB-1爆撃機とF-2戦闘機のツーショット公表など

「国家軍事戦略NMS検討を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06 
「3回目の航行の自由作戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-17

Trump afgn4.jpg●そんな中でのアフガン政策は、本来は議論の最後に出てくるはずの極めて各論の話だが、現場の状況が危機迫っており、何らかの「緊急止血策」が必要なまでに追い込まれており、この時期に打ち出さざるを得なかったと推測
●一方で、足元の予算や米軍の状況を考えると大判振る舞いも難しく、作戦完了の期限を切れるほど効果的な策も打てないから、規模やスケジュールを伏せたまま「地上の状態によって判断する」と発表せざるを得ないのだろう
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USS John S. McCain.jpgマラッカ海峡でタンカーと衝突した米海軍ミサイル駆逐艦マッケインの事故を見るに、米軍もゴムが伸びきった状態なのか・・・と心配になりますが、全くフォローしていないアフガン情勢も極めて厳しい状況なのでしょう

米軍の増強は4000名程度とか報道されていますが、厳しいと言わざるを得ません。そんな中、日本のメディアの「低俗さ」や「浮世離れ」を見ていると、本当に暗くなります

残暑の復活だけで気分がめいっているのに・・・

オバマ演説のトランスクリプト
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/08/21/remarks-president-trump-strategy-afghanistan-and-south-asia


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小ネタ3題:火星12号能力+バノン北朝鮮+空自宇宙部隊 [安全保障全般]

19日午前3時の速報→米ホワイトハウスは18日、バノン首席戦略官・上級顧問が同日付で離職すると発表した。(時事通信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170819-00000007-jij-n_ame

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グアム包囲射撃.jpg表題の通り、18日付報道から「小ネタ」を3つご紹介します

最初は北朝鮮が8日発表した「弾道ミサイル火星12号によるグアム島4発包囲射撃」に関する軍事専門家の見方次にホワイトハウス内で消えそうで消えずに勢力を盛り返しているバノン氏の北朝鮮問題発言最後に全く方向の異なる航空自衛隊内に宇宙デブリなどを監視する「宇宙部隊」創設との報道の3つです

関東地方は雨の週末になりそうですので、のんびりと夏休暇最後の週末をお過ごしください。それにしても、この日照不足は心配だ。体にカビが生えそうです。既に心には生えているとの声も聞こえてきますが・・・

北朝鮮の火星12号にグアム包囲射撃は可能?
NK kasei12.jpg18日付読売新聞朝刊12面の「解説スペシャル」によれば、8日の北による「包囲射撃」発表は、17日から始まった米韓合同軍事演習「Ulchi Freedom Guardian」にヒステリックになった北朝鮮のいつものパターンで、冷静に見たほうが良い
●また同記事は、火星12号による「包囲射撃」の可能性について海自OB伊藤俊幸氏の意見を紹介し、開発途上にある火星12号の技術的課題を挙げている

●伊藤氏は火星12号について、「5月に1回しか撃っていない未完成品で、(ほぼ垂直打ち上げであった5月のロフテッド射撃の実績しかなく、)通常の(弾道ミサイル発射)角度で撃った場合の、大気圏突入時のデータを持っていない。包囲射撃なんて(高度な精密な誘導射撃が)できるはずがない」とコメントしている
弾頭の大気圏再突入は、数千度の高温から弾頭を保護する技術のほか、入射角を6度程度に正確に誘導する技術とデータが必要だからだ

●今後の北朝鮮の動きについて、伊藤氏と米ジョンズホプキンス大の研究チーム「38ノース」はともに、米韓合同演習間にSLBMを発射する可能性があると指摘している

バノン氏:北朝鮮問題に軍事的解決はない
Bannon2.jpg16日付で「The American Prospect」のwebサイトに掲載されたSteve Bannon氏へのインタビュー記事によれば、最近の北朝鮮に対するトランプ大統領の「fire and fury」発言等に関わらず、北朝鮮に関する軍事的解決はないとバノン氏は語っている
●同氏はインタビューで、「北朝鮮に関して軍事的解決はないから、忘れるべきだ(There's no military solution, forget it)」、「開戦30分以内にソウルの市民1000万人が死ぬことがないような解決法を誰かが示してくれない限り、軍事的な解決はない。皆が何のことを語って騒いでいるのか理解できない」と言い切っている

●またバノン氏は、中国との貿易不均衡に関し厳しい姿勢で臨むべきだと強調し、中国が北朝鮮に核ミサイル問題で影響力を行使するかどうかを待つべきではないと主張している
●そして「中国との貿易・経済戦争が全てである。我々は執拗に集中して対応すべきであり、さもなければ、5年後、遅くとも10年後には、もう取り返しのつかない事態(hitting an inflection point)に立ち至る」と訴えている

●更に「アメリカは中国と経済戦争の最中で、北朝鮮問題は余興にすぎない」と述べた。
●なおホワイトハウスは、このインタビュー記事に関する質問にコメントを避けている

空自に宇宙デブリ監視の「宇宙部隊」創設へ
宇宙部隊.jpg18日付読売新聞朝刊4面の記事によれば、防衛省は人工衛星の運用を妨げる宇宙ゴミや対衛星兵器などを常時監視する「宇宙部隊」を航空自衛隊内に創設する方針を固めた
新たに監視レーダーを設置し、2023年度から監視活動を開始する。人材育成のための関連予算を、2018年度概算要求に盛り込む。

●「宇宙部隊」はJAXAとも情報共有し、主にアジア地域に関係する宇宙空間を監視し、米軍と連携することで全世界的な包囲網を整備する
2018年度中に監視レーダーの設置場所等を決める予定だ
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Aegis Ashore2.jpgイージスアショア(地上配備型イージスシステム)もそうですし、空自の宇宙部隊もそうですが、その予算と人員をどこから持ってくるのでしょうか?
マスごみの皆さんに置かれましては、是非そのあたりを突っ込んでいただきたいと思います。

末尾に、宇宙データと宇宙での戦いを考える過去記事を並べました。是非この機会にご覧いただき、頭づくりにご活用ください

バノン氏が敵対勢力を、ホワイトハウスだけでなく、国防省や国務省から排除しようとしていると語ったと同記事は併せて紹介しています。マクマスター、マティス、ダンフォード、ティラーソンなども対象なのでしょうか。しかし内部権力闘争の話を漏らすのは「レッドライン」じゃ・・・

しかし、北朝鮮に関するバノン氏の見方は正論でしょう。マティス国防長官もダンフォース議長が一番そう考えているでしょうし、トランプ大統領も分かっているのでしょうが・・・

グアム島関連の記事
「米軍事メディアが見た北朝鮮騒ぎ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-14
「グアム島の過去と今を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-11
「グアムの核兵器対処要領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-15

宇宙データの共有が鍵
「商用データも取り込み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20-1
「米軍の新型宇宙監視望遠鏡」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15

「空自レーダーで宇宙監視?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-17
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28

宇宙での戦いを訓練
「Red-Flag指揮官が宇宙幹部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「民間企業も交え大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-05
「欧州を主戦場に大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11

「国際宇宙演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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グアム当局配布の核攻撃対処要領に学ぶ [安全保障全般]

Guam fact-sheet.jpg11日、グアム島の民間防衛当局(GHS:Guam Homeland Security )が、北朝鮮による核ミサイル攻撃に備え16万住民に周知したい「緊急事態に備えた対処要領:Fact Sheet In Case of Emergency」をまとめた2ページの配布物を公開しました

事前準備、その時の対処、屋外にいた場合、重要ポイント、学校と子供について、で構成される配布物は、非常にわかりやすくコンパクトに核兵器対処の基本をまとめ、決してひるむことなく「完全でなくても、できることをやるほうがはるかに良い」との姿勢を求めており、その内容に感心させられました

また「人間の5感で察知することができない放射性物質」の性質と対処法を、短節かつ実用的に表現しており、大いに参考になると考え、11日午後に行われた Eddie Calvoグアム知事の住民向けTV演説映像と合わせて概要をご紹介します

Calvoグアム知事の住民向けTV演説(約2分半)


「緊急事態に備えた対処要領:Fact Sheet」の概要

事前準備
家族それぞれで対処プランを話し合い緊急避難できる建物をリストアップしておく
放射性物質が室内に入り込まないように、ビニールシートやテープで玄関やドアを目張りする出来るような準備を

その時の対処
●公的な情報に注意し、警報が出たら素早く身を隠すコンプリートや建物の地下等に避難し、放射性物質から隔離せよ
家族と離れていても、まず近くの避難場所に入って自分の身を守れ
避難したら24時間はその場で待機すること予期せよ。そして情報に耳を傾けよ

屋外にいた場合
nuclear bomb.jpg爆発や旋光から目をそむけよ。失明する恐れがある。その場に伏せ、頭を守れ。身を少しでも隠すものがあれば利用せよ
●爆発地点から離れていても、風等により放射性物質がやってくるから素早く室内の避難場所に入れ。ポイントは距離の確保、密閉した場所確保、時間の経過を待て・・である。
放射性物資地を浴びたら素早く除去せよ。もっとも上の衣類を脱ぐだけで9割の物質から逃れられる。脱いだ衣類は袋に入れ、人間から離れた場所に置け

可能なら石鹸と多量の水でシャワーを浴びろ。その際、皮膚をひっかいて傷つけたりするな。シャンプーは良いがコンディショナーは物質を髪に定着させるので使うな
●シャワーが使用できなければ、濡れた布で体を拭け。衣服でおおわれていなかった部分を念入りに。鼻や目や耳にも注意し、濡れた布でふくこと。
●公共機関からの情報に注意せよ。指定された汚染地域に近づくな。放射性物質は人間の知覚で察知できない

覚えておくべきこと
Guam fact-sheet2.jpg放射性物質から、距離をとればとるほど、影響は少なくなる。平らな建物の屋根は同物質を集めるので、屋根近くのフロアーは避けよ。屋根に近い部屋も避けよ
●放射性物質の影響を避けるには、分厚いコンクリートや壁、書籍、地面が有効。ドアや窓をビニールシートで覆い、外部の物質を室内に入れないように措置せよ

時間経過とともに放射性物質の影響は急激に減衰する。2週間経過すれば当初の1%にまで減衰する。
どのような防御対策であっても、それがたとえ一時的なものであっても、何もしないよりははるかに効果がある少しでも距離を取り、シールドし、時間を稼げばより良い効果が得られる

子供と学校関連
教師や保育士は関連情報を集め、しっかり準備せよ。その時は落ち着いて行動せよ
学校や公共機関の建物は安全が継続的に確認されている。学校の建物は安全な場所である

●親は公的な情報に注目し、学校に電話を掛けるな。電話すれば学校の対処を遅らせる
慌てて子供を学校から引き取ろうとするな。指示があるまで待て。引き取り指示があった場合にも、学校に登録していない知り合いに頼むな。
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ご自身で、ご家族と共にご確認を!

よく出来た2ページの住民配布ペーパー(現物)
https://assets.documentcloud.org/documents/3923203/Missile-Threat.pdf 

Guam Calvo.jpg米国が騒ぐと、1周遅れで日本も騒ぐのが常ですので、今のうちから予習しておきましょう!
それにしても、北朝鮮がグアム島の名を挙げて騒ぎ始めてからわずか数日後、このような素早い対応ができる社会の仕組みに驚きます

素直に学びたいものです。

グアム島関連の記事
「米軍事メディアが見た北朝鮮騒ぎ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-14
「グアム島の過去と今を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-11
「7月末ハワイが住民教育開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22-1

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「在沖縄米軍家族の避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-21
「嘉手納基地滑走路の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09

「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「ブルネイの飛行場を確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-14

CBP関連の記事
「アジアへの空軍戦力派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-14
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13


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米軍事メディアが見た「北朝鮮騒ぎ」 [安全保障全般]

trump6.jpg北朝鮮が8月中旬に弾道ミサイル4発をグアム島周辺海域に打ち込むと発信しトランプ大統領が今まで見たこともないようなことが北朝鮮に起こるとぶち上げ、お盆休みを返上させられた海上自衛隊や航空自衛隊の隊員の皆さんがイージス艦やPAC-3で緊急配備を命ぜられる中11日付Defense-Newsが西太平洋を担当する米軍の実態とメディアが生み出す騒ぎとの「格差」を紹介しています

「外交上の誤った対応により始まった、第一次世界大戦開戦時の8月を思い出させる・・・」とは、記事に登場する匿名の米政府高官の発言ですが、何が起こるかわからない現代社会においても、足元の事実を押さえておく必要はあろうと考え、記事をご紹介します

少なくとも記事に登場する複数の匿名の米軍人や政府関係者は、ここ一週間ほどの北朝鮮とトランプ大統領の「口撃合戦」に危ういものを感じ、現場の実態を踏まえず加熱する報道に驚き・あきれている様です。

N-Korea2.jpg4月下旬に北朝鮮情勢が話題になった際、米空母カールビンソンが朝鮮半島周辺の急行して何かが起こると大騒ぎになりましたが、ふたを開けてみたら同空母は遥かに離れたインドネシア周辺で当初計画通りの訓練中で、信じられない情報スピンアウトが生じていた・・・との落ちが思い出されます

でも、USAの大統領があそこまで言うのだから・・・と「振り上げたこぶし」の落としどころに何かあるはずだと考えるのは自然なことで、サイバーなど非対称・不正規な手段が練られているのかもしれませんし、「平穏で変化なし」と記事内で語る関係者が「おとぼけ」をかましているのかもしれませんが何となく感じる違和感を、この記事を通じてご紹介したいと思います

11日付Defense-News記事によれば
Trump Coast-G2.jpg●ニュース専用TVや米大統領のツイッターをフォローしている人は、北朝鮮との戦争が迫っているとの印象を受けているかもしれないが、米軍関係者はその蚊帳の外にいる
●B-1爆撃機が北朝鮮のミサイル基地攻撃計画を完成させたとの9日のNBCニュースに接したワシントンDC周辺での盛り上がりとは対照的に、太平洋地域でそのような感覚を覚えることは決してない

●米太平洋艦隊の拠点である横須賀では、空母レーガンと同艦隊の指揮官用艦艇ブルーリッジが静かに並んで停泊しているし、乗員が休暇を取り消されて召集されているようなこともないイージス艦が急きょ周辺海域に出動したとの動きもない
●韓国でも、在韓米国人や在韓米軍家族に対し国外退去するような指示が出たわけでもない。ましてや、同地域の海兵隊員に、強襲揚陸艦に乗り込むよう命令だ出た気配もない。我々は3名の関係情報筋に確認したが、何も特別な動きはない

andersenGM.jpg●公式に米軍関係者が質問されれば、「我々は常に高いレベルの即応態勢を維持しており、北朝鮮を含む、いかなる脅威にも対処する準備がある」と答えるが、個人的に話をすると、皆が4月の空母カールビンソン騒ぎに陥らないように注意しているのがわかる
●そしてある関係者は、「最近の北朝鮮関連の展開はショックだが、様々な発言や報道と現実は一致していない」「第一次世界大戦の開戦過程を描いた書籍「Guns of August」が指摘したように、一連の外交的対処の誤りが戦争を招いたシナリオの再来を恐れている」と話してくれた

●北朝鮮との軍事紛争を担当する太平洋軍情報筋も、「太平洋軍内には誰も髪を逆立てている者はいない。静かでプロの対応だ」「ワシントンDCが騒ぎを引き起こしているだけだ」とそっけなく答えてくれた
●そもそも今回の騒ぎは、北朝鮮が核弾頭小型化に成功してICBMに搭載可能になったとの新たな分析を米情報機関がまとめた、との8日付ワシントンポスト報道が引き金になり、トランプ大統領の「fire and the fury」発言につながったものだ

その後のB-1爆撃機に関する報道など、憶測が憶測を呼んだ事例だ。北朝鮮の国営放送は9日、「北朝鮮に脅しをかけている戦略爆撃機の基地でもあるアンダーセン基地を含むグアム島の米軍を封じ込めるため、北朝鮮軍は態勢を整え、米国に警告を発する」と声明を発表している。

B-1爆撃機を「戦略爆撃機」と誤解する北朝鮮
B-1-UK2.jpg●グアムに所在するB-1には、北朝鮮が「戦略爆撃機」と表現するような核兵器搭載能力はない。この声明を受け米国関係者の間には、更なるB-1爆撃機の朝鮮半島での飛行が、北朝鮮を刺激するトリガーになるのではとの懸念が生じている
●そんなタイミングの11日金曜日、米国防省が2機のB-1がアンダーセン基地を飛び立つ映像を公開したが、この映像を受けB-1が韓国に向かったとの情報がSNS上で駆け巡り、米国が北朝鮮を威嚇下したとの憶測が広がった

●しかし実際にB-1が朝鮮半島で飛行したのは、トランプ大統領が「fire and fury」と発言する前日の7日が最後で、その後は特別な訓練等は行っていないのだ。米太平洋軍報道官が明確に7日以降の飛行は否定している
●情報筋は語ってくれた。「トランプ大統領の発言以外、何も情勢を変えるようなことは起こっていない」「核弾頭の小型化など長年北朝鮮が取り組んでいることであり、今更騒ぐことではない。今我々が目にしているのは、誇大報道がスピンアウトして朝鮮半島を戦争の危機にあるかのように煽っているだけだ。リーク情報のパワーとも言えるが」と。
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PAC-3 Saudi.jpgもう一度、このお盆休みに呼集され、休み返上で北朝鮮のミサイル対応に当たる自衛隊の皆さんに敬意を表します。

そして、書籍「Guns of August」が指摘した、一連の外交的対処の誤りが第一次世界大戦を招いたシナリオの再来がなきことを祈りつつ、ご先祖様に手を合わせたいと思います。

トランプがらみの記事
「露発注の旅客機を米国大統領専用機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-05
「性同一性障害者を米軍排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28-2
「国家宇宙評議会を設置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-08
「インドと軍事協議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-28

「サウジにTHAAD提供?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01
「空母のEMALSはだめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「F-35値引きはフェイク?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-25


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グアム島の過去と今を学ぶ [安全保障全般]

Guam killer.jpg10日付「military.com」が、北朝鮮と米国トップ同士の「口撃合戦」の対象となっているグアム島について、その歴史にさかのぼって紹介しています。

50代以上の皆様にとって、グアム島はビーチリゾートの入門地であり、気軽な価格の夏休みツアーとか卒業旅行ツアーに仲間同士で参加された思い出を持つ方も多いのでは・・・と思います。

観光地としてのグアムは、今や日本以外のアジア人であふれ、特に中国人の急増に伴い、日本人にとっての魅力は急速に失われています
想像できますよね・・・ビーチでのんびりや、マリンスポーツを楽しみにしていったら、大声で騒ぐ中国人グループに圧倒され・・・

おまけに、中国人には「グアムで出産して米国籍を子供に」ツアーが大人気で、ナマコも真っ青な勢いで中国人妊婦がタモンのブランドショップを闊歩している現状で、中国軍や北朝鮮軍のミサイル攻撃を待たずして、「お前は既に死んでいる」状態かもしれません

グアム島の今と歴史を学ぶ
andersenGM.jpgソウルから2000マイル(3200㎞)、東京から1500マイル(2400㎞)、台北から1700マイル(2700㎞)との距離の位置にあり、米軍の作戦拠点が少ない極東地域にあって極めて重要な位置にある
グアム島の人口は約16万人であるが、その中に海軍と空軍を中心とする約7000名の米軍人が所在しており、今後は沖縄から海兵隊員が数千名移動してくる予定である

●約3㎞の滑走路を持つアンダーセン空軍基地には、2004年から始まったCBP(Continuous Bomber Presence)で大型爆撃機がローテーション派遣されており、中東への戦力派遣で手薄になった西太平洋での戦力プレゼンスを補完している
米海軍は島南部の施設に4隻の攻撃型潜水艦と2隻の潜水艦補給艦を配備し、米軍の数少ない優位点である潜水艦能力を支えている。

●また、2013年に米陸軍が弾道ミサイル迎撃用のTHAADミサイルをグアム島に配備し、終末段階での迎撃態勢を整備した

Guam AF2.jpg1898年、米西戦争に勝利した米国は、スペインからグアム島を獲得し、当時のマッキンリー大統領が米海軍に占領を命じた。米海軍は艦艇への石炭補給基地や通信中継基地としてグアム島を活用した
●しかし1941年12月10日、真珠湾攻撃後の勢いそのままに日本軍がグアム島を占領し、1944年7月21日に米国が奪還するまで日本による統治が続いた

ベトナム戦争間、米軍は155機のB-52爆撃機をグアム島に展開し、東南アジアへの爆撃作戦の拠点とするとともに、ベトナム戦に投入される兵士や物資の中継基地としても活用された
●また、同戦争後の混乱で大量発生したベトナム難民の多くが、グアム島を経由して米本土等へ移住した

過去記事よりグアム米軍基地の抗たん性強化
アンダーセン基地全体で、またグアム島全体で建設工事が目白押しだ。アンダーセン基地北部のランプ地区では、沖縄海兵隊数千人の移転に備え、準備が進んでいる
Cope North 15.jpg2014年度予算で基地の航空燃料供給システムの抗たん性強化が認められ、更に強度が強化され整備性も向上する整備用ハンガー2にも予算が認められた。また、米海軍が今後3年間で配備予定の3機のMQ-4(海洋監視型グローバルホーク)用ハンガーも建設中である。

2016年度予算で「塩害腐食整備施設」や、「強靱性強化装備品の倉庫」や「抗たん性強化指揮所」、基地の地下施設のための支援設備工事が計上されている
●同基地幹部はまた、島外からの展開受け入れセンターを航空機ターミナル近傍に建設し、兵站支援態勢の強化や迅速化を進めたいとしている

2016年12月テニアンをグアムの代替基地に指定
2016年12月7日、米空軍は、グアム島アンダーセン基地の代替地としてテニアン国際空港を正式に指定すると発表。今後、様々な米軍機の受け入れが可能なように関連施設や兵士用の施設整備を公式に開始する模様。
●公式には、米太平洋空軍機等の「目的地変更に備えた取り組み:Divert Activities, Exercise Initiative」と呼ばれ、「Record of Decision」との文書に米空軍が7日署名

●アンダーセン基地や西太平洋地域の拠点がアクセス不能や制約を受けた場合に備え、任務遂行のためのニーズに応えるための代替拠点の指定
●7日の決定により、今後テニアン国際空港には、輸送機、空中給油機等のアセットや関連要員の活動を支えるインフラや施設が整備され、西太平洋地域における代替拠点や演習拠点として利用可能になる
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今回の北朝鮮の威嚇に関する軍事技術面での分析は以下の記事が詳しいです!

「海国防衛ジャーナル」より
北朝鮮の「火星12」をグアム近海へ発射警告の分析
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50794358.html
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Guam china.jpg中国の正月や連休期間になると、中国から観光客が大量に押し寄せ、ホテルの確保が難しくなるそうで、日米共同訓練等の障害になることもあるようです。

小さいながら中華街のような地域も出来始め、米軍基地にも軍属や職員として中国系が入り込んでいるでしょうし、地上からの中国のISR体制は完成の域に達しているのでしょう

中国人の両親からグアム島で生まれ、成人して米軍に入った兵士もいるかもしれませんね・・・。中国の長期戦略おそるべし・・・

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「在沖縄米軍家族の避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-21
「嘉手納基地滑走路の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09

「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「ブルネイの飛行場を確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-14

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

CBP関連の記事
「アジアへの空軍戦力派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-14
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04


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米国政府が無人機輸出規制の見直し開始 [安全保障全般]

MQ-9 4.jpg3日付Defense-Newsが、米政府関係者に確認した情報として、2015年にオバマ政権が定めた無人機輸出指針の見直しを開始したと報じています。

アメリカ製品売込みがアメリカ・ファーストであるトランプ大統領の大方針ですが、米国製無人機のコピー製品で世界市場に猛烈な売込みを行っている中国や、無人機利用の先駆者であるイスラエルなど、競争相手が猛烈な売込みを行う中、米軍需産業から見直し要求があるのかもしれません

一方で無人機輸出は、国際的な兵器技術管理枠組みであるMTCR(ミサイル技術管理レジーム:Missile Technology Control Regime)の制約を受けており、主要な西側35カ国が加わる本枠組みが表現する「輸出規制想定:presumption of denial」の解釈を変更することは、極めて慎重な判断を要することとなります

ちなみにMTCR枠組みでは、「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成したロケット・システムや完成した無人航空機システムの輸出に最大限の慎重さを求める。かかる輸出は不許可となる可能性が極めて大きい」としています。加えて今年4月に創設30周年を祝ったばかりのタイミングでもある

3日付Defense-News記事によれば
CH-4 3.jpg米国政府高官はDefense-Newsに、2015年の無人機輸出政策の見直しを進めていると認めた。同政策の見直しについては、6月にインド首相が訪米した際に公にされるのではと噂があったが、米当局は否定していた
●そして同高官は、まだ政策見直しは初期段階にあり、何も決まっていないと強調しつつ、「鍵となるゴール、同盟国などに最高水準の米国製装備を提供しつつ、米国軍需産業の最先端技術を保護し、しかも非拡散と国際安全保障の推進において米国が指導力を発揮することの間に、適切なバランスを保つことだ」と語った

●米国の軍需産業にとっては政策変更は既に遅れている。同産業界は長年、中国やイスラエルに比べ、世界市場で米国が手足を縛られていると不満の声を上げてきた。
●そしてそんな声が一段と高まったのは、米国製をコピーしたかのような中国製無人機が、昨年、米国の戦略的パートナーであるUAEやヨルダンやエジプト軍に導入を開始されるようになってからである

CH-4 2.jpg●しかし政策見直しのスケジュールは不明確である。軍需産業筋の中には9月から10月に終了するのではとの観測もあったが、最近のトランプ政権の混迷振りから、そんなに早くは期待できないとの見方が広がっている
●それでも米軍需産業界は、輸出規制の緩和は多くの雇用と売り上げをもたらすと期待しており、更に「今は無人機技術の民生への応用など考えていないが、輸出が緩和されれば考え方が変わる」と関係者は語っている

MTCRとの関連をどう整理するか?
●ただし見直しは単純ではなく、特に攻撃用無人機の輸出を極めて厳しく規制しているMTCRの「輸出規制想定:presumption of denial」を、どのように解釈変更するかが課題となろう。
●仮にMTCRの変更に動こうとすれば、30カ国以上から賛同を得る必要があるが、単に米国政策の修正であれば容易である。

CH-4 4.jpg●ただしその場合、MTCRの目的である非拡散より、政治的&軍事的利益を優先するとの解釈変更を世界に発信することになる。
●一方で、他の参加国にも「輸出規制想定:presumption of denial」を乗り越えろと促し、MTCRへの参加国を増やす手法を提案する者もいる

●いずれにしても、米軍需産業側から見れば、なぜ元々ミサイルが対象のMTCRで無人機まで縛るのか理解できないし、オバマ政権が2015年に責任ある国への輸出拡大に踏み出した流れがあるものの、依然として個々のケースで全く明確でない長期にわたる官僚手続きに苦しめられている実態がある
●トランプ政権の政策実行力が問われる課題となろう
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INF全廃条約にしても、このMTCRにしても、軍事技術の拡散を背景に、指導者が独裁的力を持つ中国や北朝鮮やイランが好き放題な中で、岐路に立たされています

MQ-9 3.jpg笑えるほど米国製と似ている中国製の無人機を見ていると、それがUAEやヨルダンやエジプトに輸出される様子を見ていると、米軍需産業界の怒りのほどが想像できます。

日本の場合、安くて効果が確認されていても、戦闘機数と飛行対数とパイロット数を死守するために、無人機導入には消極姿勢を保ち続けるでしょうから関係ないのでしょうが、「安全保障感覚の体幹」を鍛えるには必要な報道ですのでご紹介しました

中国と無人機
「中国がサウジで無人攻撃機の製造修理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29
「中国が高性能無人機輸出規制?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03
「輸出用ステルス機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

外務省によるMTCR解説
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html


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核抑止の3本柱は本当に必要なのか? [安全保障全般]

Adam Smith2.jpg20日シンクタンクCAPが、米国防省が現在行っている「NPR:核態勢見直し」に関する討論会を行い基調講演を行った下院軍事委員会の中心メンバーである民主党のAdam Smith議員は、戦略無きママ予算だけが増大していく核兵器近代化の現状に警鐘を鳴らしました。

例えば、限られた予算や将来の抑止を考えれば、またサイバー空間や特殊作戦の重要性が増す中、核抑止の3本柱維持が今後も効率的なのか・・・などの論点を提示し、これまでと同様の方向性を持った戦略では、予算面でも、抑止効果面でも、国防任務を果たせないと危機感を訴えました

この講演を伝える報道によれば、この考え方は同議員だけにとどまらず、民主党の上院と下院両方の主張らしく、今後のNPRの論点とも思われますのでご紹介します

21日付米空軍協会web記事によれば
B-2takeoff.jpg●上院と下院の民主党議員は、トランプ政権により行われているNPRでの全核戦力の更新や近代化に対し、こぞって懸念を表明した
●20日、CAP(Center for American Progress)で講演したAdam Smith下院議員は、このまま行けば国防費は、2018年度予算案の70兆5000億円から、 軽々と年間100兆円を超えるだろうと警鐘を鳴らした

●そして同議員は、核兵器近代化の最大の課題を、戦略の欠如、と表現した。そしてこの分野では常に予算不足が叫ばれるが、一方で国防省は何を優先すべきかについて決定できないでいるとも語った
●具体的に同議員は「仮に65兆円規模の国防予算だけ認められても、米国は国家として国家安全保障ニーズを満たす行動をする必要がある」と語った

Ohio-Class3.jpg●国防における効率性を追及するとすれば、核戦力の近代化分野は、最も明確に予算を節約できる分野である。そのためには、より良い抑止戦略を持つ必要があり、そうでないとロシアとの軍拡競争に引き戻されるリスクがあると述べ、
●より焦点を絞った抑止戦力により、核兵器量を削減しつつ、信頼のおける抑止体制を確立できると同議員は語り、個人的には、3本柱がいまだ有効なのか検証が必要だと確信すると説明した

●そして「個人的な意見だが、核抑止の3本柱が今も有効なのか検証する必要があると考えている。本当にICBMは必要なのか?」と付け加えた
●更に同議員は、バランスの取れた抑止戦略の下では、伝統的な軍事分野への予算配分と合わせ、サイバー戦や特殊作戦能力への投資が含まれるだろうし、同盟国等の力を米国の安全保障に活用することも重要だと主張した

Minuteman III 4.jpg●同議員は、抑止戦略や今次のNPRにとって極めて重要なのは、予算規模にフィットしつつ安全保障目的を達成可能な「限定的な核抑止戦略の在り方」だと訴えた(あわせて、民主党としての考え方だと語った。多分)

●一方上院では、22名の共和党議員が連名の書簡を米国政府に出し、NPRでは一般公開可能なバージョンも作成し、また米国の伝統的姿勢である究極的な核兵器廃絶へのコミットメントを明示すべきだと求めた
●更に同書簡では、現在米国が批准している軍備管理の条約をNPRは順守しなければならないと強く求め、更に「新たな核兵器の要求を拒否せよ」「米国は軍備管理と不拡散分野で世界のリーダーであり続けるべきだ」との表現も含まれている

推定される国防省のNPR姿勢
●3月にPaul Selva統合参謀本部副議長、「核抑止の3本柱全てを近代化することが統合参謀本部の最優先課題だ」と語り、その理由を「米国の存亡にかかわる唯一の脅威が核兵器だから」と説明している
●また6月には John Hyten 米戦略軍司令官が議会で、「核抑止3本柱の近代化を、どの分野であれ遅らせてはならない。近代化を遅らせれば、他国との競争についていけないと懸念している」と証言している
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Adam Smith.jpg前オバマ政権に代表される米国民主党の典型的な考え方ですが、現在のトランプ政権のドタバタ具合からすれば、共和党政権内にも民主党の考え方に似たスタンスの議員は、相当数存在すると推定いたします

老朽化著しい核兵器や関連施設の更新や近代化には、ざっくり「130兆円」が必要と言われているようですから、一言いいたくなるのは当然でしょう・・・

重要だと思うのは、このブログでも繰り返しご紹介してきましたが、サイバーや宇宙など新たなドメインが、一般国民を巻き込んで影響力が大きく、匿名性があり、いつどこから攻撃を受けたか迅速な特定が困難な特性を持ち、核兵器による抑止が有効なのか?・・・という点です。

更に、このサイバーや宇宙や特殊作戦を絡めて、限られた予算内で、どのような国家としての抑止戦略を持ち、その中で核抑止を位置づけ、NPRで表現するかということです
日本では未だに議論をする環境が整わない分野ですので、米国の議論動向で今後もお勉強いたしましょう

21世紀の抑止概念を目指す
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

NPR(核態勢見直し)関連
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

米新政権の国防予算を考える
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19

三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359

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インド首相の米国訪問で軍事協議はおだやか!? [安全保障全般]

外国首脳と初のホワイトハウス夕食会
痛いところにあまり突っ込まず友好を軽く演出
パキスタンや環境パリ協定に触れず、記者質問も受けず

trump Modi3.jpg25日から26日にかけインドのモディ首相がワシントンを訪問し、25日には外国首脳として初のホワイトハウス夕食会、26日はトランプ大統領と会談しました。オバマ政権時代に3回訪米したインド首相ですが、トランプ政権後は初の訪米です

全般に米メディアによれば、まだアジア太平洋での立ち位置が定まっていない米国政権も、内外に諸問題を抱えるインドも、以前の3回のインド首相訪米と比較し「low-key」だったとの評価ですが、双方に良い関係を模索しつつ、主張を今後持ち出したいとの思惑もみえる会談だったようです

米国側はインド首相到着の数時間前に、国務省がパキスタンのテロ組織「Hizbul Mujahideen」のリーダー「Syed Salahuddin」への制裁措置を発表し、会談前にC-17輸送機の輸出許可や、総額2000億円以上の無人海洋偵察機「Guardian」22機の取引推進を明らかにし、首脳会談の環境作りに配慮しています

首脳会談の主要ポイント
trump-Modi2.jpg会談後ホワイトハウスの庭に登場した両首脳は、2回もハグしてより緊密になりつつある関係をアピールした。2日間の滞在だったが、両首脳が対話する時間は十分に確保された

●対テロに関しては、トランプ大統領はパキスタンとの言葉は使用せず、「両国ともテロの被害を受けており、テロと過激思想の撲滅の決意を固めている。我々は過激なイスラムテロを撲滅する」と表現した
●一方で1.8億人のイスラム教徒を国内に抱え、パキスタンを根拠とする過激派を警戒するモディ首相も直接パキスタンには言及せず、更に「イスラム」との言葉も使用せず、テロリストの聖域や安住の地を根絶する重要性を語り、米国との情報共有を強化すると表現した

中国に関して両国は懸念を示しており、過去10年間の米印の関係改善はこの要因が大きいが、現時点でトランプ政権は中国を北朝鮮対策の重要な関係国としてしか具体的な動きを示しておらず、米印鑑の具体的な協議内容は不明
インドが2001年以降に総額3000億円を超えるアフガニスタン支援を行っていることも取り上げられ、両国がアフガンに共通の利害を持っていることも確認された

trump Modi.jpg●「America First」と米国内雇用確保を掲げるトランプ大統領と、「Make in India」を推進するインド首相は、経済関係面で難しい関係にある。特に米側は約3兆円もの対インド貿易赤字を抱え、またインド人技術者への米国ビザ発行も問題も検討課題に挙げている
●米大統領は会談後インド首相の前で、「インド市場への米国製品の輸出障壁を取り除くことが重要だ。そのことで対インド貿易赤字を削減する」と明確に述べている

一方で米大統領はインド首相の経済運営を讃え、モディ首相もトランプ大統領やその家族のビジネスマンとしての業績をたたえ、米大統領の指導力が両国関係の「積極的で未来志向の」発展に寄与すると表現し、米大統領をインドに招待すると語っている
●しかし、インドが厳しく非難している米国のパリ協定脱退については、両国首脳とも言及を避けた

軍事協力はまだまだ初期段階か
2016年後半にインド側が米側に要望していた海洋監視無人機「Guardian」は、オバマ政権が次期政権に判断を委ねることにした案件である。
●この他にもインドは米国製無人機を希望しており、その中には無人攻撃機も含まれている。しかし攻撃型無人機の売却は、有志連合を組むレベルの同盟国だけに認めており、これをインドに許可することは「大きな政策変更」を伴うモノと専門家は指摘している。

trump Modi2.jpgインド国防省関係者は匿名で、今回の首脳会談でトランプ大統領は、戦略的な問題に関する重い課題の議論を避け、経済問題を重視していたと語っており、この様な米国の姿勢を受け、インドはイスラエル製の攻撃型無人機の検討も進めるとも明らかにした
●米印間の国防関係は、米がインドに兵器を売却する関係(これまでの総額約1.7兆円)だが、インド側はこれを共同開発レベルにしたいと考えている。この枠組みがオバマ政権時代に結ばれたDTTI(Defence Technology and Trade Initiative)であるが、具体的な共同開発計画に至っていない

オバマ政権時代は、カーター長官が盛んに訪印してDTTI関連協議が行われたが、今回の首脳会談ではDTTI関連議論はなかった
モディ首相は会談後に「トランプ大統領と2国間の国防技術協力強化について議論した」と発言したが、第4世代機であるF-16のインド国内製造レベルに議論が限定され、全ての高価値部品が米国製で占められることから、インド側の技術獲得希望からは大きく離れている
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trump7.jpg米国側は、依然として国防省や国務省の政治任用ポストに「大量の空席」があり、新たな政策や方針を打ち出せる段階にはありません。とりあえず首脳会談を行い、時間を稼いでいる感じでしょうか・・・

トランプ大統領は「America First」を主張する姿勢を、モディ首相も「Make in India」で受けて立ち姿勢をメディアの前でアピールし、「イスラムやパキスタン」への表現に配慮しつつ対テロ協力を打ち出し、相違が大きいパリ協定については触れずの姿勢で、国内の支持率が気になる両首脳の外交得点稼ぎに貢献した会談と理解しておきます

対中国の部分が気になるので、他に関連報道が出たら追記します。たぶん・・・

米印関係の関連記事
「インド首相のオバマ訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-08
「4月カーター長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-15
「DCでJエンジンやカタパルト議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12
「印検査院がロシア製戦闘機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1

「やっと3カ国 Malabar」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14
「カーター長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04
「米印の国防協力合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26-1
「インド首相の米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-30

「ヘーゲル長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
「米印関係ランクアップ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1

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米下院がINF全廃条約破棄を要求へ [安全保障全般]

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SSC-X-8 2.jpg20日に米下院軍事委員会の戦略戦力小委員会が打ち出した2018年国家授権法(NDAA)案にロシアが2月に配備したと報じられている巡航ミサイルをINF全廃条約違反だと認定し、大統領に同条約からの離脱を勧告する文言が盛り込まれ、更に地上移動発射式の巡航ミサイルを導入するよう求める内容となっている事が明らかになりました

28日に下院軍事委員会で詰めの審議が行われる下院2018年国家授権法(NDAA)案ですが、後日「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」が同案に含まれることもご紹介しますが、「INF全廃条約からの脱退」案も含まれるかなりドラスティックなモノとなっています

INFGorvy.jpgロシアのINF条約違反の巡航ミサイル配備に関しては、その報道の直後から米軍幹部から警鐘を鳴らす発言が続いており、3月にはハリス太平洋軍司令官が「同条約に縛られない中国の様な国に身ぐるみはがれたようなモノだ」、「米国は宗教戒律を守るようにINF全廃条約を遵守しており、このカテゴリーのミサイルを一切保有していない」と皮肉たっぷりに表現するなど、問題意識が高まっていたところです

INF条約に関する種々の経緯は末尾の過去記事でご確認頂くとして、「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」と同様に、すんなりと成立するような案件ではないでしょうが、時代の変化を象徴する動きですのでフォローしておきます

22日付米空軍協会web記事によれば
congress.jpg●米下院軍事委員会の戦略戦力小委員会が打ち出した2018年国家授権法(NDAA)案には、「ロシアはINF条約に違反している」との表現が盛り込まれている
●また同案には、議会から大統領への勧告として、これ以上同条約に縛られないと米国として宣言することを認め、ロシアが配備したと同程度の新型ミサイルを開発することを要求することが盛り込まれている

●同案は「射程が500km~5500kmの地上発射型の巡航ミサイルで、地上移動可能なタイプを開発するよう要求する」と表現し、米露が1987年に調印した、いわゆる戦術核兵器の使用を防ぐためのINF全廃条約の第6条を無視するよう明確に求めている

Harris CSIS3.jpg今年2月にロシアによるINF条約違反の巡航ミサイル配備が報じられた後、米軍幹部から懸念の発言が相次ぎ、3月にはSelva統合参謀副議長がロシアの行為は明確なINF条約違反だと下院軍事委員会で証言し、ロシアは戦術的な「核兵器の使用意欲を示した」と批判している
●また4月にはハリス太平洋軍司令官が、中国が保有しているミサイル戦力の9割は、INF条約で縛られた米国が保有できないタイプの兵器でアリ、「身ぐるみはがれたような状態だ」と議会で自虐的にコメントしたところである

ちなみに4月のハリス大将証言の他の部分は
●INF全廃条約は米国とソ連のみが力を持つ2極世界であった1987年に締結されたものだが、我々は今、多くの国が射程500~5500kmの兵器を保有又は開発する世界にいるのだ
イランも、この種のミサイルの発射試験を1月にも行うなど、盛んに増強している

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今年2月にロシアが配備したのは、仮称「SSC-8:9M729」との長射程巡航ミサイルで、全欧州を射程に収めるロシア西部に配備したと米国政府や軍高官が訴えています。

Hyten7.jpg上記以外にも、4月4日には米戦略コマンド司令官が「米国は防御手段を持たない」と危機感を表現してるところです

「米空軍から宇宙部門を実質切り離し案」と同様に、6月28日に下院軍事委員会で議論されるようで、今後の成り行きがに注目ですが、確実にINF条約破棄の気運は盛り上がりつつあると言えましょう

INF条約関連の記事
「ハリス司令官:INF条約は宗教戒律か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

「米とカナダが巡航ミサイル対処に協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14 

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「北極海ブームは幻想」との見方 [安全保障全般]

北極海航路1.jpg雑誌「軍事研究」2017年5月号が、文谷数重氏による「幻想に過ぎぬ北極海ブーム」との論考を掲載し、北極海の「氷」減少による北極航路の活性化やそれに伴う北極資源開発は、日本にとって(中国にとっても)積極的に関与する意味がほとんど無いとの意見を紹介しています

もちろん、北極海沿岸国にとっては航路の活性化はそれなりの意味があり、将来軍事的な側面に影響を与える可能性は依然あるのですが、それ以外の国にはメリットは少ないと筆者は主張し、何となく雰囲気が醸成されつつある「北極海ブーム」を煽る経済誌やマスコミ、またそれに載せられて前のめりな日本政府の姿勢も戒めています。

具体的には、北極航路の「スケールメリットの欠落」、「厳しい気象条件」、「輸送需要との乖離」を理由に挙げ、沿岸国以外にとって有効活用が難しいと説明し、徐々に問題点への理解が進みつつアリ、「北極航路は期待はずれに終わる」と断言しています

まんぐーすも「北極海ブーム」を冷静に見るため、基礎的なことをお勉強しておきたいと思います

北極航路は「スケールメリットが欠落」
北極海航路2.jpg北極航路は浅瀬があるため大型船の運航が出来ず、スケールメリットが享受できず運送コストが高くなる。具体的には水深13mのサルニコフ海峡がネックになる
●海運の比較基準単位(TEU:20フィートコンテナが何個積載可能か)で言うと、南回りでは2万TEU以上の輸送船が出現する中、北極海航路では4千TEUが限界

●船舶の搭載量を2倍にしても、船の価格、燃料費、乗員人件費等を総合しても経費は1.58倍に程度で収まることから、輸送距離の短さを勘案しても、スケールメリットを生かせない北極海航路は南回りに太刀打ちできない
横浜からハンブルクまでの海運経費をコンテナ1個あたりで比較(2万TEUと4千TEU使用で換算)しても、北極海航路の経費は、スエズ運河経由(運河使用量含む)や喜望峰周りに太刀打ちできず、パナマ運河経由よりも高くなる

厳しい気象条件
北極海航路5.jpg北極海航路の気象条件は不安定で厳しく、安定運行できない。また冬季は使用できないのも大きい
夏の間も安定しない。年による氷や天候の変動が大きく、北極海航路の使用可能期間の予測が難しい。また夏季でも高緯度帯にある北極海航路は、不安定で厳しい気象条件に陥りやすく、濃霧の影響も懸念される

●この様に定期運行と相性が悪いことは致命的海運は決まった曜日の決まった時間に出航し、決まった曜日に目的地や寄港地に到達しなければ港湾施設利用上の問題が生じるし、信頼関係が築けない
使用できるときだけ北極海航路を柔軟に使用するとの考え方では、海運業界のなかでは成功が見込めない

世界の輸送需要と航路の乖離
北極海航路3.jpg東西海運の世界需要の柱は、中国沿岸部から欧州のロッテルダムやアントワープ港への輸送が圧倒的だが、この2地点の距離は北極海航路は1.6万kmで、スエズ経由は1.8万kmであり、距離短縮のメリットも北極航路にほとんど無い
加えて北極航路は砕氷船や流氷を避けての航行で速度が落ち、到達時間は同じか余計に必要な可能性も高い。北極海航路最大のメリットである日数短縮も怪しいのが現実だ

●また南回りでは、シンガポール等の海運のハブに寄港して荷物を入れ替えたり加えたりする事で、船舶の輸送容量を最大限効率的に活用可能であるが、北極海航路にはその様なオプションは無い
●更に速度を追求して北極海航路を最大限生かすにしても、ユーラシア大陸の鉄道輸送もライバルとなる。鉄道では途中で積み替えもあるが、それでも北極海航路より早く、毎日のように出荷も可能となる
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以上の様な海運上の北極航路と他の南回り航路との比較だけで無く、「北極海ブーム」のよりどころである「未開の資源開発」にも筆者は厳しい目を向けています。

北極海航路4.jpg具体的には、資源開発の困難性や資源国際価格の低迷等から、「月に核融合用のエネルギー源が豊富にある」との辛辣な表現で、埋蔵は確認できても、コスト的に採算の合う採取・輸送・利用する方法が無いと言い切っています

そしてこの様な現実的な視点が現場や専門家ではかなり共有されているのに、国土交通省以上の政府で認識が不十分だと訴えています。

以上のお話しは、日本や中国の海運業からの視点でアリ、安全保障上の視点からは別の見方もありましょうが、「知らなかった・・」お話しなどで取り上げました

あわれ米国の砕氷艦
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

北極圏:米国防省と米軍の動き
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26

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第2弾:米カナダ防衛戦争が兵器市場で [安全保障全般]

追記第3弾:フィリピン国防次官の発言
米との同盟を敷石と表現も、中国を非難せず、中露とも関係強化
2017年アジア安全保障会議を特集
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
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Bombardier-C2.jpg2日付Defense-Newsが、トランプ政権による北米貿易協定NAFTAの見直し宣言などの保護主義姿勢の流れの中、ボーイングがカナダ航空機メーカーを不当ダンピングだと訴えたことを契機に、カナダ側がボーイング製FA-18購入見直しをちらつかせて勃発した貿易紛争の続報を伝えています

カナダ政府のカナダ航空機メーカー「Bombardier」に対する各種補助金が、同社旅客機「C Series」の米国売り込み価格を不当に押し下げているとのボーイングの訴えに、米国政府当局が調査開始を決定し、これに反発したカナダが18機のFA-18交渉中断したことを先日ご紹介しました

「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20

FA-18EF2.jpg今回の記事は、カナダがこの流れを受け、7日発表予定の新たな国防政策指針に含まれる予定の戦術ヘリや空中給油機などの装備品購入に関し、欧州製品にも目を向ける見直しを行っている模様だと指摘するものです

トランプ政権は既に、カナダ産の木材に新たな関税を設け、同様の追加関税をカナダ産の日用品にも拡大する方向を示唆しており、両国関係にはよくない雰囲気が漂っています
既に表明しているNAFTA見直しの動向もあり、米国の対外姿勢の変化を見るケーススタディーとして、第2弾で状況をご紹介します

2日付Defense-News記事によれば
●カナダ政府関係者は「Bombardier」旅客機のケースで如何に米側の制裁を抑止するかを検討しているが、同時に、米国企業はカナダ軍装備や関連部品の最大の供給元であり、その供給の流れをカナダは維持したいと考えている
Sajjan Canada.jpg●5月31日にカナダのHarjit Sajjan国防相もカナダ軍需産業関係者に、「米カナダ間の装備や部品流通の流れを確保するよう協力をお願いする。国境が閉じないように皆さんの声が必要だ」と要請したところである

●一方で同国防相は同じ場で、ボーイングの訴えを「信頼できるパートナーの行う行為ではない」と厳しく非難している
●これに対してボーイング社は変化を示さず、6月1日に予定されていたFA-18製造カナダ企業のメンバー発表を突然キャンセルし、「現状の全般状況を踏まえ、今日はこのような良いニュースを共有するにふさわしくないと判断した」とコメントし、今後の日程を明らかにしなかった

●このようなな中、カナダが7日に公表する新たな国防政策指針に含まれるであろう、ボーイング社も売り込みを狙っているヘリや空中給油機や無人機などの新装備品に行くへに関心が集まっている
●1日、公共サービス調達大臣のJudy Foote女史が、カナダ政府として軍事装備の取引企業の再検討を行っていると発言したからである

カナダ国防相も「カナダは信頼できる軍需産業とのみ取引を望む」と発言しているようで、欧州軍需産業関係者がカナダ市場に関心を示している
Griffon heli.jpg●すでに昨年、エアバス社がカナダ空軍に捜索救難機を提供する契約を獲得しており、現在はカナダ空軍の空中給油機選定向け、ボーイング社と対決を予期して製品宣伝を開始している

●他にも、捜索救難機の能力向上や「Griffon helicopters」の後継機検討をカナダ国防相が明らかにしており、欧州軍需産業が参入の機会をうかがっている
●「米カナダ間の貿易紛争は、欧州企業に参入機会となる可能性がある。今後数か月の間、どのような展開を見せるかに注視している」と欧州軍需企業関係者は語っている
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トランプ大統領の「パリ協定脱退」宣言により、米国への風当たりが強くなっていますが、脱退宣言などせず適当に胡麻化していたほうが楽なのに・・・と思います。さほど国内産業や石炭産業に恩恵があるとも思えない脱退に、なぜこだわるのでしょうか???

trump5.jpgいろいろなぞの多いトランプ政権ですが、貿易問題もその一つです。TTPしかり、NAFTAしかり、大局的に見れば続けた方が米国の得なのに・・・と思います

米国とカナダ双方にとって不毛な争いに突入しそうな気配の「Bombardier」と「FA-18」事案ですが、日本のことも顧みつつ、眺めていきたいと思います

米国とカナダの関係
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

日本も対岸の火事ではない
「悲劇:日本のRQ-4購入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-22
「ACC司令官:F-15退役やむなし!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

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ロシアの国防調達計画2025年を探る [安全保障全般]

2017年アジア安全保障会議を特集
(第16回シャングリラダイアログ)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
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Putin-decree.jpg5月25日付Defense-Newsがロシア日刊紙を引用しつつ、ロシア政府が検討している2025年までの国防調達計画の状況を推測レポートしています。

まだ具体的なことは明らかになっていないようですが、何となく雰囲気が伝わってきているようなロシア紙の報道をが元になっていますので、雰囲気を察するべくのぞいてみたいと思います

ウクライナや中東で存在感を見せ、米国を真っ青にさせつつあるロシアですが、伝統の5か年計画では得意の粉飾やごまかしが横行しているようで、専門家の評価は大変厳しいようです

米国軍事メディアで取り上げることが少ないロシア軍事計画ですので、断片的ながら記事を紹介します

25日付Defense-News記事によれば
RS-28 Sarmat.jpg●5月中旬発刊のロシア日刊紙「Kommersant」は、プーチン大統領とロシア軍指導層が会議を行い、2020年までの国防調達計画に続く、2025年までを対象とした国防調達計画を議論したと報じている
●細部は不明だが、新しい国防調達計画においても核戦力の3本柱が重視されているようである。2020年までの計画では、海軍と空軍がその半分を半分を占めており、2025年までの計画でもその方向が維持されるとみられている

●18日付のタス通信は、プーチン大統領が2025年までの調達計画議論について、「ロシアの軍事及び軍需産業政策を遂行する上で、最も重要な手段である」と表現し、2020年までの計画成果を有効活用する機会だと語ったと報じている
2020年までの計画目標は、2020年までにロシア軍全体の装備の7割を再構築(rearm)する目標を掲げ、特に核戦力をすべて新装備に更新する目標を掲げていた。また航空宇宙分野は68%、地上部隊は43%、空てい部隊は58%の更新が目標だった

Bagruzin.jpgロシア軍需産業の専門家であるPavel Luzin氏は、「2020年までの計画と2025年までの計画は重複する部分が多く、2020年までの計画の失敗を隠すことが目的の一つとなっている。2020年計画が失敗したとは言わないが、予算の不足で調達目標にはるかに及ばなかった」と批評している
●ロシア日刊紙によれば、2025年までの計画では、核兵器の3本柱が非常に重視されている。3種類の大陸間弾道弾ICBM計画、RS-26 Rubezh (a development of the Yars-M), RS-28 Sarmatと鉄道移動式のBagruzinが推進されるだろう

●細部は明らかになっていないが、20205年計画では、引き続きSU-30 やSU-35シリーズの戦闘機の調達が重視され、ステルス戦闘機T-50の大量発注も予期される。また長距離爆撃機Tu-160製造と並行し、新型長距離爆撃機の開発も含まれるだろう
海軍関連では、2020年計画に続き、再び原子力潜水艦や小型水上艦艇が重視される。ボレイ級戦略原潜やヤセン級攻撃型原潜の配備計画は完了していないが、2025年計画では新たに「Husky級弾道ミサイル潜水艦」計画の推進を盛り込むだろう

Husky class.jpg2025年計画で最も話題となるのは、新たな空母と原子力推進駆逐艦の建造計画が延期されることとなろう。プーチン大統領とロシア軍指導層が会議を行い、この延期について決定したと伝えられている。
●この延期は、伝統的に潜水艦を重視するロシア海軍の流れを受け継ぐものだともいえるが、ロシア軍需産業が大型水上艦を建造するインフラを保有していない現実もある。(ソ連時代の大型艦艇や大型ディーゼルタービンはウクライナで建造していた)

初実戦経験の空母クズネトフは???
●2025年計画と直接関係ないが、艦載機2機を失い、その存在意義を海外メディアが疑っている空母クズネトフは、初の作戦任務で地中海に進出して対シリア作戦に参加した後、大規模なオーバーホールを受けている
●今回の大規模修理では、新型巡航ミサイル「Kalibr」と対艦ミサイル「Oniks」を発射する垂直発射装置を装備する計画があるといわれている
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Kuznetsov-UK.jpgウクライナ侵攻では、ハイブリッド戦と呼ばれるNATOや米国の弱点を突く作戦を繰り広げたのがロシア軍です。

不正規兵による反政府勢力支援とメディア戦、武力使用段階では巧みな電子戦とサイバー戦、SNSまで活用した目標情報入手と戦力運用など、米軍が腰を抜かすほどの巧みな立ち回りを見せたロシア軍です

しかし上記記事が描くロシア軍は、旧ソ連時代そのままの腐敗体質を引きづる組織の機能不全と、原油価格低迷に苦しむロシア経済の影響を受けた厳しい予算の現実です
二つの側面を持つのがロシア軍の現実でしょうが、足元からはったりの動きまで、しっかり見ていかねばなりません。

潜水艦重視の文化や大型艦艇建造能力がウクライナに残っていることにも注目したいと思います

ロシア軍需産業とロシア製品
「ロシア軍需産業の輸出見通しは悲観的」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-19
「露軍需産業トップが未来を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露の専門家が自国軍需産業を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-13

「中国がSu-35輸入開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「インド検査員が露製艦載機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

ロシアに関する記事
「東アジア戦略概観の視点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に米軍驚嘆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「また、6機目の大事故」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15
「航空事故多発の露軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13

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第16回アジア安全保障会議(2017年シャングリラダイアログ)特集 [安全保障全般]

追記番外編!
週刊文春6月22日号(15日発売)が本会議に注目!
稲田大臣:最後の国際会議(?)で渾身のジョーク炸裂か!?

3日、マティス国防長官に続いて登壇したのは3名の国防大臣。日本の稲田大臣、豪州のMarise Payne大臣、そしてフランスのSylvie Goulard大臣の3名で、いずれも同年代の女性国防大臣でした。

週刊文春(151ページ)が注目したのが稲田大臣が懸命に練習したという英語でのスピーチ!
Inada-IISS.jpg●まず最初に主催者であるチャップマンIISS理事長に礼を述べ、次にシンガポールというアジア太平洋地域(Indo-Pacific.と表現して米国との一体感を強調!)の要衝で本会議か開催されることを讃えます。
そして同時に登壇した豪州とフランスの女性国防大臣を紹介し、以下のフレーズを・・・
「We belong to the same gender, we belong to the same generation and, most importantly, we are all good looking.

そして週刊文春記事は解説します。
●「私たちはみんな美人なんです:we are all good looking」・・・との練りに練った渾身のジョークで会場の注目を集めたはずだった
●将来の女性首相候補と期待されたが、南スーダンPKOでの日報問題や森友学園問題を巡る国会答弁で不安定さを露呈し、これが最後の国際会議になるかも・・・と言われている

実は、まんぐーすも「週刊文春」の取材を受けたんです!
bunsyunn.jpgアジア安全保障会議のブログを見た記者の方から連絡があり、会議の性格や今回の特徴など、約30分間ほどの電話取材でした。

残念ながらまんぐーすの解説は記事の中身に使用されませんでしたが、1/2ページほどの記事なのに、極めて丁寧な取材ぶりで感心させられました

さすが週刊文春! 「文春砲」の陰には、あのような地道な取材の積み重ねがあったのだ!

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追記第3弾
フィリピンは中国を非難せず、米中両方と関係強化
50周年迎えるASEANの議長国なのに・・・

Philip under.jpg4日、今回のフィリピン代表である政策担当国防次官のRicardo A David Jr氏がインドネシアやASEAN事務局長と登壇し、「地域安全保障に共通の目標を見出す」とのテーマで議論が行われました。

冒頭発言で同次官は、南シナ海問題で異なる見解が存在するとのみ表現し、中国を非難せず、米国との関係はそのままで演習等も行うとしつつも、中国やロシアとの新たな軍事関係構築にも取り組むと述べました

国防大臣が参加していない時点でフィリピンの姿勢が伺えますが、地域に共通認識が存在するエリアとして海賊対処、テロ対処、サイバー戦、人道支援・災害対処を上げる一方で、南シナ海の問題を「見解の隔たり」が存在する課題で対処が難しくなっていると、以下のようにちょっとだけ語りました(概要)

見解の隔たりが存在する分野には、南シナ海における領有権や海洋行動に関する論争があるルールの解釈を巡る解釈の相違により、法の枠組みが損なわれ、協力することが困難になっている
国際法を順守しながら、隣国やパートナーとどのように対応するかは、我々の安全で安定的な海を守るコミットメントへの姿勢を明白に表現するものである

Philip under3.jpg●この点で、我々はASEANと中国の間で、南シナ海における行動規範の案(draft framework of the ASEAN-China Code of Conduct on the South China Sea)がまとまったことを歓迎する
●案の完成は、海上での誤算による意図しない事象やアクシデントを避けるための、国防分野での努力の成果である。オープンな対話や現実的な協力は関係国の利益であり、信頼醸成に役立つ

●これらの安全保障問題(北朝鮮問題にも言及)に対応するため、フィリピンは2国間から多国間の協力関係強化を推進する
米国との同盟関係はフィリピンにとって「cornerstone」である。フィリピンは23か国と軍事協力合意を結んでいるが、外国軍との演習を認める米国や豪州との合意もこの一つである

●これまでの国防関係を維持する一方で、相互利益の観点から、新たなパートナー関係構築にも取り組んでおり、中国やロシアとの国防協力関係を改善したり開始したりしている
●強調しておくが、我が国の同盟やパートナーシップは、特定に国を対象としたものではない。相互の利益と懸念解消のためのものである

Philip under2.jpg●ASEANが今年50周年を迎えるが、この記念すべき年にフィリピンは議長国となる。2006年から始まったASEAN国防相会議(ADMM)も契機に、国防分野での関係も対話から実際的な協力に発展してきた
●ASEANの域を超えたADMM-Plusの枠組みでも、意見交換や演習を通じて相互利益拡大を図っている。今年10月にマニラで開催予定の11回ADMMと4回目のADMM-plusで、更に活動を深化させたい

以上のように、フィリピン代表である政策担当国防次官は、米国との同盟を「cornerstone」であると表現しつつも、決して南シナ海問題で中国を非難せず、昨年6月の国際司法裁判所によるフィリピン勝訴判決にも全く触れませんでした

中国への気の使いようはとても大きいといえましょう。でも、上司の国防大臣もこの国防次官も軍人出身(共に大将)であり、実態は分かっているのでしょう。米国と仲良くしなければいけないと・・・
ドゥテルテ大統領に気を使っているのでしょう・・・

米比関係の記事
「フィリピン主要3閣僚が南シナ海の米空母訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06
「米軍兵器の保管は認めない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

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追記第2弾
マティス長官の質疑応答

IISS shang4.jpg講演と同じく、何ら新味のない応対ぶりでしたので、質問のみ概要をご紹介します。
商売人であるIISSのチャップマン理事長は、なるべく多数の関係者に質問機会を与えるため、4人程度の質問をまとめて受けてまとめて回答を3回繰り返しました。

恐らくマティス長官は質問の意味を理解できなかった可能性があり(自らの講演の意味を理解していない可能性も)、最初のグループ質問への回答の前に、かなりの時間チャップマン理事長と相談しています

若干鋭いなと思ったのは、中国軍の大佐クラスが、能力強化への取り組みに関する流れで異例とも言える「台湾」への言及を指摘し、「一つの中国」認識に変化があったのか・・・と質問した部分です。
台湾言及に関しては、恐らく米国としてのシグナル発信なんでしょうが、マティス長官は原則論で間接的な対応をしています。

IISS shang6.jpgもう一つ興味深いのは、マティス長官が最初の回答の前振りでチャーチルを引用し、「米国は最終的に正しい選択や決断をするが、他の全ての間違った策を試した後にそうする」と自虐的に語り、そんな傾向があると認める口ぶりで語っていることです。トランプ大統領の部下になると、この言葉の引用が欠かせないのでしょう・・・

英語の聞き取り能力不足ですが、とりあえず質問はこんな感じでした・・・とご紹介します。それなりに練られた質問揃いですが、回答は準備されたお経を吟じるように基本原則にだけ言及し、個々の質問者は高い月謝を払っただけに終わっています

チャップマン理事長は何となく人気下降傾向の本イベントの人気回復のため、多数の質問を受ける方向に変更したのかもしれません
そういえば、朝日新聞の加藤洋一記者は質問しませんでしたねぇ・・・参加してないのかな? 新聞社やめたのかな?

質問の概要
IISS shang8.jpg●WW2後、地域の安全保障を支えてきた米国による秩序の時代は終わったのか?
河野太郎→TPPからの離脱を表明したトランプ政権は、当地にどのようなコモンバリューを見出すのか?
●中国軍人→この手のスピーチで異例の台湾言及があったが、一つの中国政策に変化か?
中国の南シナ海の埋め立てをはじめとする行為をいかに食い止めるのか

規範基づく秩序を取り戻すタイムテーブルを教えてほしい
TPPに復帰する可能性はないのか?
IISS shang7.jpg●北朝鮮のレジーム転換を追及しないとの話だったが、金正恩に統治の資格はあるのか

地域安全保障枠組みへの期待表明があったが、何を期待する
●中国女性将軍→航行の自由作戦が規範の基づくと主張するなら、どんな規範なのか教えてくれ
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追記第1弾
マティス国防長官のスピーチ

IISS shang3.jpg全く内容のないスピーチでした。
読んでがっかり。映像を見ても、原稿棒読みだし・・・心ここにあらず

前半の情勢認識部分は、上司の発言をそのまま借りて時間を稼ぐ内容で、
後半の米国の取り組み3点など、過去7年間の本会議国防長官スピーチで最低に中身の無いものでした

ただ、スピーチ30分に加え、質疑20分をしっかり確保していましたので、その点は訂正させていただきます
質疑については、気力があれば・・・

●冒頭からスピーチに中身がないことを宣言
IISS shang.jpg本会議参加の第一の目的は耳を傾けることである。聞くことで地域の情勢を把握し、共に問題を解決する方法を考えたい。
Ladies and gentlemen, my primary reason for being here is to listen. My goal is to walk away with a more rigorous grasp of the challenges we face so we can jointly craft solutions.

●北朝鮮問題が一番地域で問題だと語るも、トランプ大統領とペンス副大統領等々の発言を引用してほぼ終了
ペンス「最も喫緊で危険な安全保障脅威は北朝鮮だ」
トランプ「忍耐の時期は終わった」
ティラーソン「体制変更が目的ではない」
中国は北朝鮮への姿勢を行動で示すべきだ

●中国に関する発言にも全く新味なし。インド首相を引用で補強
中国の経済成長は歓迎するが、「rules-based order」への挑戦は受け入れられない
インド首相「インド太平洋のように地理的相互連関がある地域の経済発展と平和には、航行の自由や国際規範への尊重が不可欠」

●過激派によるテロ対処にも新味なし
共に今、戦わなければならない
トランプ大統領発言引用「テロが根を張るところでは、どこでも対処が必要」


●地域課題への米国防省の取り組み3本

第1に、まず地域の同盟強化
IISS shang2.jpg日本(原稿4行)→2015年ガイドライン、海兵隊グアム移転
韓国(2行)、豪州(4行)、合わせ上記3か国の共同体制推進期待

フィリピン(5行でドゥテルテ大統領の反米発言には言及せず比軍育成や共同訓練を着々と発言
タイ(6行で民主化期待、軍事協力推進を期待)
上記2国とはバイ関係だけでなく、国家群連携を期待

第2に、地域国の能力強化(インドネシア大統領の言葉引用)
地域国の能力を高め、地域の安定に貢献するよう働きかける
例えばインド、ベトナム、シンガポール、台湾!!!、ASEAN(今年50周年)
インドネシア大統領「ASEANは我々の家と平和を守らねばならない」

第3に、米軍の軍事力の強化(全く具体的な中身無し)
現在、米海軍艦艇の60%、米陸軍の55%、海兵隊の2/3が太平洋軍エリアにアサインされている(ホンマかいな???)。間もなく、海外展開の戦術航空アセットの60%が同エリアに配備される(はぁ?)
本会議に参加のマケイン上院議員やThornberry下院議員など、当地域への軍事力強化を強く訴える議員の力も借り、米軍戦力を強化したい

講演と質疑応答映像(講演28分、質疑24分)

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米国の姿勢を象徴!?:マティス国防長官はわずか30分
気力があれば、追記していきます・・・

IISS Shang.jpg6月2日夕刻から4日午後まで、今年も恒例の第16回アジア安全保障会議(2017年シャングリラダイアログ)が、シンガポールのシャングリラホテルで開催されます
会議の開始は2日(金)の夕食会からで、基調講演を豪州首相が行いますが、2日(金)は昼頃から、各国大臣クラスによる「バイ会談」が複数セットされるのが通例です。

同会議は、英国の民間研究機関IISSが主催する非公式の会議ですが、アジア太平洋のほぼ全てと、欧州主要国の国防大臣が一堂に会する点で、「アジア最大の安全保障イベント」と考えられていました。

IISS Shang3.jpgしかし今年は寂しいです。国防大臣の参加は、米国、日本、豪州、フランス、シンガポール、カナダ、インドネシアだけで、ロシアは副大臣で、フィリピンは政策担当次官、韓国に至っては研究機関の退役少将だけが登壇する予定になっています

ただし、稲田大臣が2日朝会見で、韓国国防相とバイ会談し、「日米韓」と「日米豪」国防相会議をやると発言してますので、韓国国防相は公開討論には出ない裏会談はやるのでしょう

最近数年参加が目立った欧州から少ないのは、対テロや移民対策でそれどころではない、トランプ政権とは距離を置きたい・・・などの様々でしょうが、英国が軍人だけなのは象徴的です

また、矢面に立つことが明らかな中国側の参加者は、ここ最近は中国軍の国際問題担当の副参謀総長レベル(大将)でしたが、今年は軍事科学大学の副学長(中将)がトップで、研究者的な少将とか上級大佐がプログラムに上がっているだけです。


Mattis11.jpgなんと言っても今年の注目はトランプ政権発足以来、ほとんど実質的にアジア太平洋政策について発信が無いトランプ政権が、マティス国防長官を会議に派遣して何を語らせるかです。

注目のマティス国防長官は、3日(土)のトップバッターとして午前9時(日本時間10時)からのセッション「米国とアジア政策」でスピーチし、その後会場からの質問を受けます

ついでに、今回はダンフォード統合参謀本部議長も会議に参加する事になっており、参加体制の上では最大級の配慮をしていますから、なおさら注目です。ちなみに同議長は、同会合での登壇はありませんが、31日に米国を発ち、日本を経由して同会議に参加してバイの会談を複数行い(推定)、その後に豪州訪問予定となっています


しかし・・・プログラムを見てびっくり!
Mattis44.jpgしかしプログラムを見てビックリ!!! メインイベントのマティス長官の時間割り当てが「僅か30分」です。私の知る限り過去7年間、しっかり1時間セットされ、45分程度のスピーチと15分の質疑だったのが半減です。

しかも休憩や予備時間なしで、9時30分から同じ会場で、稲田大臣と豪と仏の国防大臣が11時まで「ルールに基づく地域秩序」をテーマに登壇することになっており、延長一切なしの短い米国防長官プレゼン&ト質疑です。

IISSの関連webページでは、マティス長官が「Major Policy Speech」を行うと紹介し、米国防省webサイトは「マティス長官はトランプ政権の当地域政策を述べることを期待されている」と紹介しています。

IISS Shang2.jpgしかしこの時間配分では何も語れません・・・。トランプ政権が誕生して5か月近く・・・何も決まってないから語れない・・・を象徴するような「30分ステージ」です

そういえば、以下のような申し訳程度の米軍によるアジア太平洋関与活動が、取ってつけたように最近続きましたが、やっぱり本会議に向けた目くらましの手土産代わりだったんだ・・・と感じてしまいます


最近の米軍のアジア太平洋関連動向
●5月25日、昨年10月から中断していた「航行の自由作戦」をミサイル巡洋艦「USS Dewey」で再開
●5月27日、朝鮮半島近海で活動中の空母カールビンソンとレーガンに加え、シアトル近郊の海軍基地から空母ニミッツが派遣され、3隻体制をとることが明らかに(6月1日に出航)
●5月31日、数年ぶりに米軍がICBM迎撃ミサイルの試験を行い成功

USS Dewey.jpg5月24日朝、海南島の南西150マイルを飛行中の米海軍P-3Cに対し、中国軍J-10戦闘機が異常接近との事象もありましたが、アジア安全保障会議を前に、突然、朝鮮半島周辺や南シナ海周辺で米軍の活動が活発になってきたとの印象です

半年ぶりの「航行の自由作戦」しかり、異例の空母3隻体制しかり、取って付けたような、つじつま合わせの様な気がしてなりません。

空母3隻に関しては、ニミッツはカールビンソンと元々交代予定でアリ、レーガンは5月下旬に横須賀での定期修理を終えたばかりで、乗員のリフレッシュ訓練を終了するまでは十分な戦力では無いはずです。

相変わらず、米国防省webサイトは対ISISやアフガニスタン関連の記事で溢れ、アジア太平洋関連の最近の話題は、2018年の環太平洋軍事演習RIMPACに今回も中国を招待する計画だとの軍事メディア報道や、岩国展開の海兵隊F-35B部隊が順調に訓練中とのニュースぐらいです

CV  Carl Vinson.jpgマティス長官講演を「Major Policy Speech」とwebサイトであおっていますが、これも商売人チャップマンIISS理事長の演出のような気がしてなりません。
将来では無く、過去にこんな事をやったと羅列し、これまでの施策を継続すると誓い、同盟国の協力を訴える中身が精一杯では無いでしょうか

何せ米軍は疲弊しています中東や欧州への派遣頻度は高止まりで、装備品の修理費もママならず、空軍パイロットは危機的に不足状況でアリ、アジア太平洋地域に画期的な政策を打ち出す余裕はありません

GBI-KV.jpgおまけに、フィリピンやタイやベトナムや韓国の米国との協力姿勢は冷ややかで、中国や北朝鮮対応に妙案は無いでしょう。

そんな中、トランプ政権のアジア太平洋への姿勢を問われる会議が開催されるわけであり、直前に駆け込み行動「3本立」を詰め込んだ感が立ちこめています。

マティス長官の講演や関連の動きについては、追記しようと思いますが、過去7年間フォローしてきて、最近の新味の無さに飽きが来ていますので、いい加減・・・な感じが予期されます

日本関係者の登場
日本のNSCの山田さんが「アジア太平洋における核の危険」セッションに、統合幕僚副長の住田陸将が「海上紛争を防止する政治手段」のセッションに、それぞれ中国参加者を含む複数国の関係者と登壇して議論します

2017年のスポンサー企業は2社減
IISS Shang5.jpg●スポンサー企業は、2014年の10社から中華系のメディア資本2社(鳳凰網とフェニックスTV)が撤退し、2015年には8社に。
●2016年は米空軍の次期爆撃機を受注して活き上がる「Northrop Grumman」が加わり9社体制

●しかし今年は、「Northrop Grumman」と継続してスポンサーだった「三菱商事」が撤退して7社体制
●結果として、日本からは「朝日新聞社」だけがスポンサーになっています。恐らくスポンサー特権でしょうが、朝日新聞の加藤洋一記者は、米国防長官への質問者に毎年指名されています。

スケジュール
https://www.iiss.org/-/media//documents/events/shangri-la%20dialogue/sld%202017/iiss%20shangri-la%20dialogue%202017%20-%20speaker%20agenda.pdf?la=en

IISSの関連webサイト
https://www.iiss.org/en/events/shangri-la-dialogue

シャングリラ会合の過去記事
「2016年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

米国防省のweb記事
https://www.defense.gov/News/Article/Article/1198377/dunford-to-consult-with-us-partners-during-asia-trip/
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