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タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ [安全保障全般]

VT4 tank.jpg4日付Defense-Newsによれば、タイ政府報道官が既に28両を2016年に発注している中国製主力戦車VT4(MBT-3000)の追加購入10両を発表した模様です。

朝鮮戦争当時に開発された現有の「米国製軽戦車M41」を更新するモノで、当初はウクライナ製の「T-84 Oplot戦車」200両を購入する方向で、2011年時点で49両を受領していたものの、その後のウクライナ情勢混乱で供給が不能となり、代替戦車として輸出を目的に設計製造された中国製戦車購入にタイが動いているモノです

M41.jpg中国製VY4(重量52トンの重戦車)は2014年から海外売り込みが開始されており、「125mm smoothbore cannon」や「active protection system」、火器管制装置も最新の技術が導入されており、米国製よりも安いことから海外から注目を集めているようです。

本日はこの戦車の戦力的な意味合いでは無く、2014年のタイ軍事クーデター以降、米国から冷たくされているタイが、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)した流れを受け、ますます全方位外交(米国離れ)に傾く現状としてご紹介します

4日付Defense-News記事によれば
US  thai.jpg●この戦車の追加購入報道は、タイと中国が関係強化を図っている最新の事例でアリ、2016年末に固まった3隻のType 039A Yuan級攻撃潜水艦と、今年3月に発表になったばかりの「VN18輪兵員装甲車」購入に続くものである
この他にもタイ軍は、同海軍が中国製のフリゲート艦や沿岸警備艇を既に使用している。これは中国製兵器の価格が安いことに要因がある事は確かだが、IISSアジア部のTim Huxley上級部長は、タイが中国武器に傾きつつあるのは政治的な影響も受けていると語っている

US  thai2.jpg●Huxley上級部長は、西側諸国の2014年クーデターへの反応がタイと(米国等と)の関係を損ね、米国や西側製兵器から中国製兵器への変化の流れを促進していると見て居る
米国は2003年12月にタイを非NATOである主要同盟国と位置づけたが、クーデター以降に軍事援助や諸協定をキャンセルした。回復基調にあるものの

●一方で中国は、タイのクーデター後、主要国で最初に軍事政権を承認し、それ以降はタイの主要貿易相手国となり、タイにとって2番目に大きな投資受け入れ先としてインフラ施策を担っている

2015年7月の中国潜水艦導入発表時の記事
●「単に中国との接近なら理解出来るが、ドイツやスウェーデン製の選択肢がある中での中国潜水艦の購入は、より強い意味を持つ」と専門家は語った
●バンコクの大学の安全保障講座長は、「タイ政権から米国に対する、タイの価値観や国益を注意深く扱うべきとの警報」であり、中国潜水艦の購入決定が米タイ関係を悪化させると見ている。

Cobra Gold.jpg●また、米国の軍事政権批判がタイを中国よりに向かわせる主因だとし、「2006年と2014年のタイ軍事クーデター関係軍人を、中国が賞賛している」、「中国がタイ軍事政権側に立っていることが、タイの体面や正当性を大きく支えている」とも分析している
●シンガポールの専門家も、米国がクーデターや軍事政権の存在でタイに罰を与えることが、米国に害を及ぼすことをタイは示そうとしていると分析している。米国がアジアでの同盟強化に努力する中で、タイは中国との関係強化も可能だと示そうとしていると。

冷戦間、米タイ軍事関係は堅強で、「Cobra Gold演習」も1982年に開始されている。一方で、80年代以降のタイ海軍の艦艇調達先は世界に分散し、中国、イタリア、シンガポール、スコットランド、スペイン、米国である
90年代に入ると、中国から2隻のフリゲート艦と4隻のJianghu III級ミサイルフリゲートを購入している。しかし両艦とも、第3国装備の融合に関する技術的問題に問題を抱えている
●タイはまた、90年代にスペインから空母を調達したが、維持整備の問題で9機のハリアーは運用不能で、空母も大部分の時間はドックに係留されている
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Cobra Gold2.jpgタイも苦渋の決断なんでしょうが、オバマ前政権が進めた「人権重視外交」の代償は大きいです
この点、トランプ政権がどう考えているのかが気になります。実業家らしく、タイ内政の混乱を回復させた軍事政権を認め評価し、実利を重んじる姿勢でタイと仲良くやって頂きたいものです

最近、ホワイトハウスが国務省の政治任用ポスト(主席次官補代理など)50あまりを意図的に空席にし、「クシュナー氏ら」が直接外交を指示するような動きを見せていると報じられており、「人権外交」の流れがどうなるか気になります

その試金石の一つであるタイとの関係に、今後も生暖かく注目したいと思います

米タイ関係を考える記事
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16

シャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01

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米ハイテク技術企業に中国政府系投資資金が [安全保障全般]

china-J21-J31.jpg3月24日付Defense-NewsがNYT紙記事(22日付)を引用しつつ、中国の政府系投資会社がリスクを恐れない姿勢で米国のベンチャー企業に資金を投入し、その額が急増しており、軍事技術を扱う企業もその中に多く含まれていることから、国防省やトランプ政権が技術流失の可能性に警戒感を強めていると報じています

この報道のきっかけは、カーター前国防長官が要請していた外国資金の国内ハイテク企業への投資状況を調査した報告書原案が、20日の週に国防省やトランプ政権関係者に供覧されたことにあり、NYT紙が匿名の関係者に聞き取りをして報じています

国防省報道官は「国防省内部の作業中の文書に関しコメントはしない」との姿勢で正確なところは不明ですが、中国の資金が有望なベンチャー企業に相当流れ込み、その額が急増している様子がうかがえますので、断片的ながらご紹介します

24日付Defense-News記事によれば
parade.jpg中国政府と関係の強い中国投資会社が、軍事分野と関係の深い最先端技術を扱う米国ベンチャー企業(American startups)への投資を増加させている
米国政府も重要技術の流出を防止する監督を行っているが、十分には機能しておらず、担当するCFIUS(Committee on Foreign Investment in the United States)の権限拡大等をトランプ政権も考え始めているようである

●中国資金が流入しているハイテクベンチャー企業には、例えば、宇宙ロケットエンジン企業、自立型海軍艦艇のセンサー企業、戦闘機操縦席への使用が想定される柔軟なスクリーンへの印刷技術企業、人工知能企業等々が含まれている
●投資をする中国系投資会社は、契約を通じて投資先の知的財産や開発プロセスにアクセス可能になるだろうし、企業の設備や人材に関するデータも入手する可能性がある

●民間の調査会社CB Insightsによれば、2015年に中国系投資会社は約1兆円を米ベンチャー企業に投資しており、前年比で4倍の急増を見せている。しかし契約や取引の細部を公開する義務はなく、よくわからない部分が多い
●政府のCFIUSは小規模な投資には目が届かず、チェックが十分できないが、それでも2012年から14年の3年間に確認したケースは358件で、前の3年間の318件から増加しており、その中の中国関係投資は39件から68件に増加し、国別で最も多い

parade2.jpgボストン所在の人工知能ベンチャー企業の「Neurala」は典型的な例である。同社の技術に興味を持った当時のJames空軍長官が来訪し、同社は市販の無人機に開発したソフトを投入し、その技術つをデモした
空軍長官らはその技術の高さに感嘆していたが、それ以降何ら反応はないと同社CEOは嘆き、最終的に中国国営Everbright Group傘下の「Haiyin Capital」から投資を得ることなって現在に至っている。それでも同社CEOは、重要な技術やプログラムが流出しないように細心の注意を払っていると強調している。

最初に報じた22日付NYT紙は
●中国からの投資の多くは問題あるものではなく、純粋に投資益を求めるものや、中国の大気汚染を改善する技術や交通問題を解決する技術などなどへの投資であり、米国の監視強化の動きを批判する者もいる
しかし中国が最近公開したJ-31戦闘機が米国製F-35戦闘機とそっくりであるように、先進軍事技術が米国から中国に流出し、中国が資金を投入することなく技術を手にしているとの批判は絶えない

共産党中央軍事委員会3.jpg●米軍関係者もベンチャー投資の難しさを認めており、「レイセオン社に1兆円は可能でも、ベンチャーには1億円でも容易ではない」と語っている
●また、一度中国資本が入った「Neurala」のような企業に、米国が後から投資することの判断は難しい
カーター前長官はベンチャー技術の発掘を目的として、先端技術発掘のための出張事務所DIU-x(Defense Innovation Unit Experimental)を、先端ベンチャー企業が集まるシリコンバレーやボストンやテキサスに設置したところである

●中国側の米国ベンチャーへの投資意欲は強く、シリコンバレーの銀行「Silicon Valley Bank」の社長は、過去半年間だけで3つの中国政府系企業から、同地域で新技術獲得や新企業投資・買収を行うエージェントにならないかと誘いを受けたと語っている
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DIU-Xや長官直属で新技術を導入するSCOなどの組織は、トランプ大統領とマティス長官の下でも機能しているのでしょうか???

中国資金の動向と同じように気になります

米国製にそっくりな中国ステルス戦闘機
「J-20改良型が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「改良版J-31初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27 
「改良版J-20エアショーで飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

カーター前長官の技術革新促進
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1

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情勢緊迫:シリア軍がイスラエル軍機をミサイル迎撃 [安全保障全般]

シリア攻撃のイスラエル軍機を、シリアが地対空ミサイルで迎撃
シリア軍は1機撃墜主張も、イスラエル軍は否定
イスラエルBMDで落下するシリア軍ミサイルを迎撃?
迎撃ミサイル破片がヨルダンに落下か?

Israel Lebanon3.jpg17日早朝、シリア領の目標を攻撃したイスラエル空軍機が、イスラエルに戻る途中、シリア軍の地対空ミサイルに迎撃された模様です。ただ冒頭見出しのように、両国とリビアやレバノンから様々な情報が乱れ飛んでいる状態です。まぁ・・・めったにない事案で今後が懸念される事象ですので取り上げておきます

両国は対立関係にありますが、直接軍事的に衝突することは極めてまれで、2011年春からのシリア内戦やISIS台頭をめぐる混乱の中でも、イスラエルは極力関与を避けてきた経緯があります。

イスラエルはシリア内戦に関与する意図はない(シリアの弱体化を祈りつつ)様ですが、シリア経由でレバノンのヒズボラに武器等が供給される場合や、どさくさの中でシリア軍がイスラエル正面に兵器を配備したりするとピンポイント攻撃を行ってきたようです

地図で関連国の地理的位置をご確認いただきながら、入り乱れる各国の発表や報道をご覧ください。声の大きいものが事実を「仕立てる」のが中東ですから・・・

イスラエル軍やイスラエル報道によれば
●イスラエル軍は、シリア内の複数の目標を攻撃した空軍機がイスラエル領内に帰還したとき、複数の対空ミサイルがシリアからイスラエル軍機に発射されたと発表した
●また、(イスラエル領内に落下する恐れのあった)シリア軍発射ミサイル1発を、イスラエル軍防空システムで迎撃したとも明らかにした。しかし、他のシリア軍発射ミサイルがイスラエルに落下したのか等、細部への言及を避けつつ、イスラエル市民とイスラエル軍機の安全に問題はなかったと明らかにした

Israel Lebanon.jpg●またイスラエル軍は、ヨルダン渓谷のユダヤ人入植地に対し、空襲警報用のサイレンを鳴らした
●一方、シリア軍が主張した1機撃墜等については否定した

●イスラエルのTV「Channel 10」は、イスラエル軍機はイランに支援されているレバノンン所在のヒズボラへの物資輸送車列を攻撃する任務を与えられていたと報じている
●また同TVは、イスラエルが米国と共同開発したBMDシステム「Arrow」を実任務で初展開し、シリア軍が発射したミサイルを迎撃したと報じている。またハーレツ紙は、エルサレムの北方でも行われたと報じている

●ただイスラエル軍は、この迎撃に関し何もコメントしていないし、弾道ミサイル対処用の「Arrow」が地対空ミサイルの流れ弾を迎撃に用いられたのかどうかは不明である。

シリア政府や軍の発表によれば
イスラエル軍機4機がレバノン経由でシリア領空を侵犯し、シリア中央部のシリア軍拠点を攻撃したと発表した。
israel jordan.jpg●そしてシリア軍防空部隊がイスラエル軍機に対処し、1機を迎撃してイスラエル支配地域に墜落させ、別に1機にも被害を与えたと発表した
シリア外務省は国連に対し、国際法違反である乱暴なイスラエルの侵略を非難するよう求めるレターを発出した

ヒズボラの反応
ヒズボラは直接のコメントを出していない
●ヒズボラ寄りの報道で知られる「pan-Arab Al-Mayadeen TV」は、イスラエル軍機の攻撃でヒズボラの指導者「Badee Hamiyeh」が16日にゴラン高原で死亡したとのアラブメディアの報道を否定した

ヨルダンの報道
israel jordan 2.jpgヨルダン北部にミサイルの部品が落下した。ヨルダン軍によれば、シリア軍ミサイルを迎撃したイスラエル軍ミサイルの残骸の模様
●ミサイル部品が落下した地域の市長は、部品落下による被害は大したことはないとメディアに語っている。自宅近傍で爆発音を聞いた地域住民は、自宅周辺の地面に小さな穴が開き、約3mの破片があること見つけて当局に連絡した
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地中海沿岸の中東諸国に、これ以上複雑な要因が加わらないことを祈るばかりです
シリアにはロシア製の高性能地対空ミサイルが持ち込まれており、これが使用されたとなれば、輪をかけて情勢が複雑化します。

israel russia.jpgイスラエルはここ数か月で、数回シリア内へ攻撃を加えているようですが、攻撃したことを公表したことはありませんでした

ネタニアフ首相のロシア訪問が終わったばかりで、プーチン大統領にシリアへの武器供与についても議論があった模様で、ロシアへの警告の意味があったのでは・・・とBBCなどは報じています。今後の報道や各国の動きに注目いたしましょう

イスラエル関連の記事
「イスラエル目線で2017年を予測」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-02
「イスラエル後に湾岸へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

シリア関連の記事
「ロシアの怪しげな関与」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
「ロシアとトルコの共同空爆作戦!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22

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「リバランス」は終了へ:それで??? [安全保障全般]

「Pivotやrebalanceとの言葉は前政権の用語」
「我々は恐らく、わが政権自身の方策を打ち出すだろう」

Thornton2.jpg13日、ティラーソン国務長官による初の日中韓訪問に先立ち、Susan Thornton担当臨時国務次官補が細部は煮詰まっていないが、アジア太平洋地位への政策のスローガンだった「リバランス」や「Pivot」との言葉は前政権の用語だと表現し、トランプ政権としての政策を打ち出す方向だと記者団に示唆しました

もちろん、トランプ政権もアジア太平洋地域には引き続きしっかり関与していくと強調しているようですが、中国や北朝鮮の動きなど情勢が緊迫する中、主要な政治任用ポストの任命が遅れている状況の中での発言だけに、肯定的には受け取れないとの専門家の意見も聞かれるようです

中身はあまりありませんが、数少ないトランプ政権アジア担当関係者の発言ですので、ご紹介しておきます

14日付Defense-News記事によれば
●米国務省の高官によれば、「Pivot to the Pacific」のかけ声で知られるオバマ政権時のアジア太平洋リバランスは、公式に死んだようである
ティラーソン国務長官によるアジア訪問に先立ち、記者団からのリバランス政策に関する質問に答えたSusan Thornton担当臨時次官補は13日、まだまとまってはいないが、新政権は新政権の新しい地域政策を打ち出すと語った

Thornton.jpg●同次官補は「Pivotやリバランスなどの言葉はあるが、これらは前政権のアジア政策を表現する言葉である。皆さんには恐らく、新政権自身の政策枠組みを示すことになるだろう。細部は煮詰まっていないし、どのような形か、新たな枠組みになるかどうかも決定はしていないが・・」と表現した
●しかし同女史は、新政権の当地域への関与の色が変わろうとも、アジア太平洋地域に引き続きコミットしていくことには変化は無いと強調した

●そして「米国は今後もアジアに積極的に関与するし、米国の繁栄と成長にとって、アジア経済は極めて重要だから、公正な貿易と自由貿易問題に取り組み、北朝鮮問題にも対応し、ルールに則った、建設的で平和的で安定した秩序をアジアに求めていく」と語った
●また「(リバランスに代わるような)ステッカーにして貼り付けるような言葉を用いるかどうかは時期尚早だ。政権はスタートしたばかりで、何か言うには早すぎる」と付け加えた

専門家のコメント等
Graham2.jpg●豪州のLowy研究所のEuan Graham国際安全保障部長は、「継続的な関与、自由貿易、ルールに基づく秩序等に言及した点は、同盟国等に歓迎されるだろう」、「しかし、国防省と国務省の政策担当次官が空席な状況など、米国には為すべき事が多く残されており、トランプ大統領や側近がどれだけアジアを米国の国益と関連して捉えているかに関し、懐疑的な見方は静まらないだろう」とコメントしている
●そして、TPPから離脱表明に代表される新政権の姿勢は、オバマ前大統領やカーター前国防長官がTPPを強く押していただけに、地域の同盟国等を疑心暗鬼にさせるに十分な状況にある

予算面でも懸念が見られる。昨年9月、カーター前長官は「リバランスの新たなフェーズ」と表現し、2つの鍵となる分野、沿岸警備隊予算増とASEAN諸国10ヶ国への海外軍事援助(FMF:Foreign Military Financing)増加を打ち出していたが、これが危ういと懸念されている
FMF.jpg●トランプ政権は国防費の増額や公共事業費の増額を打ち出しているが、この代償として、沿岸警備隊予算やFMF予算が削減の対象になるのではと言われている

沿岸警備隊予算については既に超党派の下院議員58名が連名で削減回避を求めたレターを発出したようで、FMFについても上院関係者が懸念の声を上げている
●Graham氏は、オバマ政権のあとの空白を埋める代替物を確保しない段階で、TPP破棄を宣言し、リバランスの看板を下げるような動きは、ネガティブで良い手法とは思えず、中国の思うままになるリスクをはらんでいると懸念している
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ティラーソン長官は、「リスニングモード」だとしても辛い立場だと思います。長官は15日に来日し、17日にはソウル、18日には北京を訪問するそうですが・・・

Tillerson.jpgマティス国防長官は早い段階だったので「とりあえず」感で乗り切りましたが、大暴れ北朝鮮の前で大混乱の韓国、経済の減速待ったなしの中国の変わらぬ南シナ海態度、ロシアに冷たくされて意気消沈の日本など、何を語って帰国するのでしょうか???

私なら、挨拶して、お茶を頂いて、夕食会はパスして、次の国へ移動したいところです・・・

アジア太平洋関連の記事
「真剣にF-22迅速展開を検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-08
「比の3閣僚が南シナ海で米空母訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06
「道遠し?:NIFC-CAの進展」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26

「政治任用はマティス長官のみ決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-13

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米空軍トップが再び21世紀の抑止に言及 [安全保障全般]

Gold-Live.jpg2日、Goldfein米空軍参謀総長が米空軍協会主催の「Air Warfare Symposium」で講演し21世紀の抑止についての考え方を説明し、その中での米空軍の役割を訴えています

背景にはサイバーや宇宙と言った新たなドメインが戦いの場に登場し、本国の社会インフラや経済活動に対し、誰が犯人か判らないような手段で甚大な被害を与えることが可能となっており、核兵器を柱とした抑止の考え方を再整理する必要があるとの問題認識があります

またまんぐーすが本件に着目するのは、核戦争に発展するのを懸念するとの理由で、エアシーバトル(ASB)的な考え方を批判し、オフショア・コントロール(OSC)的な経済封鎖を、対中国戦略の一つの柱のように扱う議論が存在する事への、米国防省の姿勢を確認するためです。

ASB1.jpgつまり、米国防省は「第3の相殺戦略」を進める前提として、強固な核戦力を維持する前提の基で、圧倒的な通常戦力を「第3の相殺戦略」への取り組みを通じて米軍が今後も継続保持することによって、潜在的敵国を抑止するんだ!・・と考えていることの確認です

更に言えば、米国防省や米軍は、学者達がどのような議論を展開していようが、ASBを生み出したCSBAの元研究員であるWork副長官らのゲリラチームのような一群が、「第3の相殺戦略」の形を取って、あるべき軍事戦略追求を追求していると言う事です。

以下にご紹介する、空軍参謀総長の発言や、Work副長官やSelva統合参謀副議長の過去の発言は、事柄の性質抽象的な表現が多いですが、「抑止」の根本に関わる議論が始まっていると言うことです。

3月2日、Goldfein米空軍参謀総長は
Goldfein1-1.jpg21世紀の抑止とは陸海空、水中、宇宙、サイバーの多様なドメインで、敵に対して多様なジレンマを与え、かつ圧倒的なテンポで与えることにより敵を圧倒し、敵が我と同様の行動を起こさないようにする事である
●このため、統合戦力の全ての部隊が同じ作戦状況認識を共有する事が不可欠であるが、このために軍需産業界の皆さんには、強靭で新たなネットワークの創造への挑戦を期待したい

●この新たな創造のため、米空軍もこの「combat cloud」を実現するため、新たなアイディアに挑戦する環境提供に尽力するつもりである
●我々は、作戦状況を共有するための手段を創造しなければならない(We have to think about … creating that common operating picture)。

例えば、タクシーのような「Uber」では、アプリ上でUber車が何処に所在し、車種や運転手情報、進行方向、到着予想時間まで簡単に判る仕組みになっている。これが目指すべき方向ではないか。そう思わないですか?

2月7日、同参謀総長は
Goldfein6.jpgトランプ大統領が核兵器の増強発言をしていることに関し、「全てのオプションをオープンに検討する準備がある」「弾頭数や威力の議論も問題ない」「国防省が現在構想している核兵器近代化計画の継続が議論の主対象になるだろう」と述べたが、更に続けて
●「一方で、21世紀の抑止についてより幅の広い議論を期待したい。宇宙やサイバードに戦域が拡大し、世界共通の公共財が目標になり得る時代における、抑止のあり方や核抑止の関わり方にまで議論の幅を広げる必要があろう」と語った

2016年10月28日、Work副長官がCSISで講演し
work AFA.jpgJohn Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と、無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「第3の相殺戦略」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
本戦略は、米国の通常戦力抑止力を強化する事により、主要な大国との本格紛争を回避することを期待する戦略である

同日CSISでSelva副議長は
●「第3の相殺戦略」は、解答ではなく質問である。それは潜在的な敵の能力を凌駕するため、どんな能力が我に必要かを問うものである
同戦略には決められたゴールはなく、単に目的地に向けてドライブするのでも、各軍種にどんな装備を購入すべきかを示してくれるモノではない

Selva-CSIS.jpg●代わりに同戦略は、国防省が繰り返し継続的に、敵がどのような優れた能力を蓄えつつあるかを監視し、その敵がどんな脅威を友軍にもたらすかを考え、その脅威への対処が通常戦力抑止を強化するかを自身に問うことを求める
●そのためには、机上演習や実演習を通じた作戦実験が重要で、これらを通じて技術やアイディアを、戦術や手順やドクトリンに取り込んでいくことが解答につながる

●正しき認識された戦術や手順やドクトリンを試し、それらを米軍や同盟国にも伝え、敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力に対し、優位を確保する手法を考えなければならない
●そして敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力とは、単純化すれば、長射程で、精密誘導で、陸海空だけでなく宇宙やサイバードメインで発揮されるものであろう 


2015年5月、クレピネビックCSBA理事長(当時)は
ASBの運命と第3の相殺戦略への動きを絡め説明し、
krepinevich6.jpg今やエアシーバトルASB検討は統合参謀本部のJ-7に移され、よく分からない別の名前を付けられている。
ASBにペンタゴンは悲鳴を上げた。ある軍種の予算を配分を増やし、ある軍種から削減することになるからだ。結果ASBは拉致監禁(hold)され、今後は困難な道をたどるだろう

●ただ、(拉致されたASB検討とは別に)かつてCSBAで同僚だったWork国防副長官(事実上の第3の相殺戦略発案・推進者)らのゲリラチームのような一群が、(あるべき軍事戦略追求のため、関連装備である)LRS-B(空軍の次期爆撃機)、潜水艦や水中無人艇、空母艦載無人攻撃機UCLASS、エネルギー兵器等の実現・調達等を画策している
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「第3の相殺戦略」が正しいか間違っているかではなく、現在の米国防省において、「第3の相殺戦略」は上記の発言が示すような位置づけにあり、ASB的な考え方で通常戦力を圧倒的レベルに引き上げる努力が行われていると解釈して良いと思います

ASEANPlus.jpgASBが発展し、ASLB(Air,Sea,and Land Battel)になる方向でしょうし、陸軍火力に期待し、MaltiドメインやCrossドメインの方向に進むのかも知れませんが、実務は国防省や米軍が行っているのでアリ、学者の論文で進んでいるのではありません

引き続き、サイバーや宇宙を絡めた抑止議論に早々決着がつくとは到底思えませんし、また「combat cloud」なる新たなネットワークが実現可能で現実の場で有用なのか「???」なのですが、我が国も防衛を考えるに辺り、基礎知識としてMemoしてみました

頭の整理不十分で申し訳ありませんが、今日はここまで!

トランプ政権とNPR(核態勢見直し)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「第3の相殺戦略」関連の記事
「マティス長官と相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19
「この戦略は万能薬ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1
「CSISが相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12

「小野田治の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
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フィリピン主要3閣僚が南シナ海の米空母訪問 [安全保障全般]

CV  Carl Vinson.jpg4日、米国との関係がギクシャクしてるフィリピンの国防相など閣僚3名が、在比米国大使館の招待に応じ、南シナ海で「航行の自由作戦」を遂行中の米空母カールビンソンを訪問し、FA-18の離着陸などの様子を刺殺した模様です。在比米国大使館が明らかにしました

米空母を訪れたのは、Lorenzana国防相、Carlos Dominguez財務相、Vitaliano Aguirre II司法相の3名で、加えて国防官僚が3名同行していたようです

この訪問を報じる5日付「Military.com」は、ドゥテルテ大統領の厳しい対米姿勢に関わらず、軍事関係者の間では「top-level」の交流や意見交換が続いている証拠だと報じています。

そして、CSISの客員研究員で、東南アジアで活動する企業へのアドバイザー企業を経営する専門家の言葉を紹介し、オバマ政権からトランプ政権に交代後、ドゥテルテ大統領のフィリピンへの姿勢が軟化し、両国軍事関係の進展を許容していると記載しています

Lorenzana3.jpgそれが本当であれば、同じ対中国最前線国である同士フィリピンと米国の関係改善は、日本人として喜ばしい出来事ですが、個人的にはまだ疑心暗鬼です

共同軍事演習は災害対処と人道支援の分野だけ」とか、「米中の紛争に巻き込まれたくないから、米軍兵器の比での保管はだめ」とか、ドゥテルテ大統領の発言は明確で、その姿勢が変化しているようには思えないからです

過去の経緯は、末尾の過去記事をご参照願いたいのですが、引き続き要フォロー事項だと思うので、ご紹介しておきます

5日付「Military.com」記事によれば
Sung Kim.jpg在比米国大使のSung Kim氏(韓国系米国人で、前職の北朝鮮問題担当の米国代表として、しばしば韓国や日本を訪問していた)が、3名の閣僚達を空母カールビンソンに案内し、約5500名が勤務する9万5千トンの空母の様子やFA-18の離発着を共に見学した
●3日、同空母群司令官のJames Kilby少将は記者団に対し、「我々は将来もここに存在し、公海は誰もが航行でき、通商に利用できる海域である事を示し続ける」と語っていた

CSISの東南アジア問題アドバイザーであるErnest Bower氏は、「皆の関心は、中国が南シナ海への他国のアクセスを遮断しようとしているのかにある」「米国はその様なことは受け入れない」とマニラで記者団に語った
Bower CSIS.jpg●Bower氏は、オバマ政権が終わってから、ドゥテルテ大統領の米国への発言は穏やかになり、両国軍事交流の発展の機会を認めており、またトランプ政権の安全保障チームは南シナ海問題に対しより強固な姿勢を示すであろうと語っている

●そして同氏は「南シナ海に関し、米国から中国に対し、より少し厳しい姿勢が示されると考えている」「正直に言えば、少しゴタゴタが起こるだろうと思う」と記者団に述べた
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Ernest Bower氏の専門家として位置付けや、発言の信憑性が不明ですが、マニラでの会見でもアリ、米国の東南アジア施策に20年以上関わってきた人物でもアリ、現在も多くの役職についているようなので、その発言をご紹介しておきます

CSISのBower氏経歴紹介
https://www.csis.org/people/ernest-z-bower

Trump tel.jpgトランプ大統領の関心事項が米国内の雇用や産業復活に絞られ、中国関係もその視点が基礎にある事が各方面から指摘されていますが、安全保障チームが中国に厳しい考えを持っていることとの折り合いがどうなるのか、依然不透明です。

比政府の閣僚が3名そろって米空母訪問とは普通ではありませんので、今後の動きに注目致しましょう

米比関係の記事
「米軍兵器の保管は認めない」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

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トルコがロシア製防空ミサイル導入に傾く!? [安全保障全般]

S-400-launch.jpg22日、トルコ国防相が紆余曲折を続ける長射程防空&ミサイル防衛システム選定について、ロシア製の「S-400」が最も選定される可能性が高い(closest option)と言及し、2013年から続く米国、中国、ロシア、ドイツ、フランス、イタリアと関連企業を巻き込んだゴタゴタに、新たな動きを示唆しています。

この選定は2013年に中国製に一端決定したものの、実質トルコの防空を担っている米国やNATOシステムと連接できない等の問題から米国等が猛反発し、2015年11月にはトルコ政府が中国製の選択決定破棄を発表して国産開発の方向を示唆しました。

しかし昨年10月、トルコ大統領とプーチン大統領の会談で、2013年当時は高価格を理由に排除したロシア製の選定への参加をトルコ側が再度要請し、今日に至っていました

まぁ考えてみれば、純粋に防空能力や軍事作戦運用の比較と言うよりも、政治レベルの外交カード(又はリトマス試験紙)になっている感がある同ミサイル選定です。
対ISやトルコの治安悪化を巡り、米露の駆け引きが活発になり、トランプ政権の対露姿勢に関心が集まる昨今ですので、その「指標」の一つとしてご紹介しておきます

22日付Defense-News記事によれば
Turkey Fikri Isik.jpg●22日、トルコのFikri Isik国防相は、トルコとロシアの間で行われている長射程防空&ミサイル防衛システム「S-400」の交渉について、「かなり進展した」と語った
●更に同国防相は「S-400が最も選定される可能性が高い(closest option)」と述べる一方で用心深く、「明日契約を結ぶような段階にあるわけではない」とも説明した

●そして同国防相は、トルコはトルコの防空のため、防空&ミサイル防衛システムを国産する事を優先しているとも語っている
●折しも、米独伊が共同開発したパトリオットミサイルの後継となるMEADS(Medium Extended Air Defense System)の売却に関し、約4400億円とも言われるシステムのトルコ仕様へのカスタマイズ等について、トルコとの交渉が4月から始まっている時である。

2013年に中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定した際、トルコはロシア製を「法外に高価格:exorbitantly expensive」と評して選定から排除していた

トルコ長射程防空システム選定の紆余曲折・・・
●2013年9月
CPMIEC-SAM.jpgトルコ政府は中国CPMIEC製のシステムを約3600億円で調達すると決定
(この選定においてロシア製は「価格が倍以上」として不採用になった。他にはPatriotを提案の「レイセオン&ロッキード」と、SAMP-1を提案の「European Eurosam」(仏と伊)が参戦していた)

以後、米国やNATOが、中国製システムと既存の西側防空システムは情報保護の観点から連接不可能で、作戦運用上で極めて非効率で問題ありと強く抗議

●2015年11月
トルコ政府が中国製を選択した決定の破棄を発表し、国産開発の方向を示唆し具体的関係企業2社に言及
一方で発表後も、米企業チームと欧州チームとも並行して選定協議を継続していた

●2016年10月
10日付Defense-News記事がトルコ外交筋の情報として報ずるところによれば、2016年10月イスタンブールで開催された世界エネルギー会議に出席したプーチン大統領とトルコのエルドワン大統領が会談し、トルコがロシアにミサイル機種選定に参加するよう招待した模様
なお、仮にロシア製を選択した場合、中国製と同様に、既存の西側防空システムとの連接は不可能となる
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Turkey Fikri Isik2.jpgトルコが準国営の2企業「Aselsan and Roketsan」への技術移転要求のため様々な動きを見せているのか、米国や欧州諸国とロシアを天秤にかけて価格交渉を有利に進めようとしているのか、トランプ政権の出方を探るための威力偵察なのか不明ですが、何処の国もしたたかにやっていますねぇ・・・

最終的に国の安全保障上の最大の担保は、健全なバランス感覚を伴う情勢認識力や判断力を持つ国民の存在なのですが、国防への研究協力を拒否する大学の存在や、重箱の隅をつついて揚げ足取りしかやらない民進党など、まだまだ改善の余地がありありのようです・・・

トルコ防空システム選定のゴタゴタ
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2

「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20
「4度目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04
「トルコが中国企業と交渉開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-27

米国とトルコ関係の関連
「対ISで露とトルコが共同作戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22
「トルコがF-35追加購入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01-1

「駐トルコに家族帯同禁止や特別手当」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31

米露関係を考える素資料記事
「露最大の軍事企業CEOが語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21
「露がINF条約違反の巡航ミサイル?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「対IS作戦で米露の主張対立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
「対ISで露とトルコが共同作戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22

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露最大の軍需企業CEOが米との関係など語る [安全保障全般]

Chemezov.jpg20日付Defense-Newsが、ロシア軍需産業の7割を担う巨大企業「Rostec」のCEOであるSergey Chemezov氏との独占インタビューを掲載し、米国とロシアの関係が注目される中、同社と中東やインドやイラン等との武器売却交渉の状況や、米国軍需産業との協力等について状況を紹介しています

インタビューはUAE開催中の兵器等見本市「IDEX in Abu Dhabi」会場付近で行われていますが、同CEOが2018年開始予定のUAEとの「第5世代軽戦闘機共同開発計画」を明らかにしており、米国と中東諸国との関係が微妙になりつつある中、中東との接近度を機を失せずアピールする「立ち回り」はさすがです。

Chemezov4.jpg折しも20日は、マティス国防長官が初の中東訪問の最初の国(2番目はイラク)としてUAEを訪問し、皇太子と会談していたタイミングであり、UAEと結託して共同開発話を披露したのでは・・・とまで感じさせる同CEOの同日の動きです
そして米国との関係に関する発言からは、微妙な表現で相手の反応を探るような言い振りが見られ、まだまだ米国とロシアの関係は、双方の探り合い状況にある雰囲気が感じられます

20日付Defense-News記事によれば
Chemezov3.jpgロシアは米国に次ぐ軍需装備輸出国で、1兆6千億円を超える利益を上げている。「Rostec」はそのロシア軍需産業の7割を傘下に置く巨大企業で、企業収入の7割を軍需装備品で上げている。ただ企業は民需の割合を高めて5分5分にしたい意向を持っているようである。
●20日、「Rostec」CEOのChemezov氏は「IDEX」での記者会見後にインタビューに応じ、会見で明らかにしたUAEとの「第5世代軽戦闘機共同開発計画:light combat fighter」の補足説明や、米国を含む他国とのビジネスの状況を語った

UAEとの「5世代機開発計画」は、協力関係の詳細を今後詰めていくことになるが、UAE政府かUAE企業との共同事業を2018年から7~8年かけて行う方向で、機体製造はUAEの要望に応えてUAE国内で行い、周辺諸国への需要にも応えたいと同CEOは語った
●同CEOは、従来米国が押さえていた市場に参入する自信を示し、競争力の高い価格と品質の組み合わせで、幾つかの分野で米国から市場を奪えるのとの自信を示した

●同社はインドとも5世代機の開発協力を発表したばかりで、インドの「第5世代先進medium combat aircraft」開発を支援する事が明らかになっている
Chemezov2.jpg●また同CEOは細部に触れなかったが、インドネシアにSu-35戦闘機を輸出する交渉が行われており、近いうちに契約が結ばれるだろうと語った

エジプトも同社と交渉中で、Mig-29戦闘機に関心を示している。エジプトと同社は、2014年に航空機、ミサイル、沿岸防御関連で約3800億円の契約を結んだ実績もある
●同社はイランに地対空ミサイルS-300を約1100億円で輸出したが、更なる装備品輸出の可能性も同CEOは示唆し、「我々は攻撃兵器をイランに輸入しない取り決めをしているが、防御兵器については対応可能である」と表現した

米国との関係については
●国防分野でのトランプ政権との協力強化に関する質問に対して同CEOは、トランプ大統領がビジネス好きで、ビジネス優先と発言していること等に触れつつ、「cautious optimism」を示した
Chemezov5.jpg●そして「トランプ大統領はビジネス界を代表しており、ビジネスとは経済的利益でアリ、経済的利害は政治を常に上回る」「結局のところ、経済関係が良ければ米露関係の改善に好影響があるだろう。それを望んでいるし、世界の政治環境にも自然と影響を与えるだろう」と述べた

●同社関連の事業についてはボーイングとエアバス社との関係に触れ、Rostec製のチタニウム合金を使用した航空機部品で協力関係が続いていることに言及しつつ、「民間航空機用に米国企業と共に開発した合金部品は、軍事装備品にも使用可能だから」と語った
●トランプ大統領のロシア軍需産業への姿勢についての質問に同CEOは、「どれくらい我々にフレンドリーか判らない。ロシアにまだ来ていないんだから」と語った
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フリン氏の辞任に伴い、20日にトランプ大統領が次の安全保障担当大統領補佐官候補に現役兵士であるH.R. McMaster陸軍中将を指名しました。同中将の肩書きは「Director of the Army Capabilities Integration Center」で、軍事戦略の専門家として名を馳せてきた人物らしいです。

trump-mcmaster-kellog.jpgMcMaster陸軍中将の指名を、上下院の軍事委員長であるマケイン議員やThornberry議員が諸手を挙げて歓迎する意向を直ちに発表するなど、いい人のようです。

臨時で現在安保担当補佐官を務めているKeith Kellogg退役陸軍中将が、NSCの「chief of staff」になるのは良いとしても、ネオコンで悪名高い「John Bolton」が何らかのポストに就くともトランプ氏が明らかにしており、気になるところです

写真は、左が「McMaster陸軍中将」、右が「Kellogg退役陸軍中将」です

いずれにしても、いつもラフな格好の「バノン氏」を含め、なかなかいい男のティラーソン国務長官や上記のメンバーがどのような対露姿勢を打ち出すのか、気になるところです。
対中国では「ビジネス重視」が明らかになりつつアリ、対露は対IS協力が焦点となりつつも、ロシアと中東やイランの関係も無視できない気がしますが・・・

米露関係の関連記事
「露がINF条約違反のミサイル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「IS攻撃に米露の主張対立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
「露とトルコが対IS共同航空作戦!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-22

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NYT紙が露のINF条約破りミサイル配備報道 [安全保障全般]

SSC-X-8.jpg14日付NYT紙が、兼ねてからロシアが開発していると見られていたINF(Intermediate-Range Nuclear Forces)全廃条約破りの新型巡航ミサイル1個大隊がついに実戦配備されたと報じました

これまで「SSC-X-8:9M729」と呼ばれていた最大射程3400km程度の巡航ミサイルですが、開発中を示す「X」が米国の情報機関内では無くなり、兵器として完成したモノだと米国政府関係筋が語ったようです

ロシアとの関係が噂されていたフリン大統領補佐官が辞任したタイミングのロシア関連情報でアリ、マティス長官のNATO訪問のタイミングでもアリ、色々な思惑がらみの情報リークと報道のような気がしますが、INF全廃条約は忘れてはならない論点ですので、これを機会に復習します

14日付NYT紙記事によれば
SSC-X-8 2.jpgオバマ政権はロシアを説得して条約違反のミサイル開発を止めさせようとしていたが、何の効果も無く、ロシアは開発を完了させた模様である
●匿名のトランプ政権高官は、ロシアが「SSC-X-8:9M729」ミサイル部隊を2個大隊保有し、1個大隊はロシア南部ボルゴグラード周辺の開発実験施設に置かれて居るが、他の1個大隊が昨年12月にロシア国内に実戦配備されたと語った

●この配備は、配備場所や今後の増強具合にもよるが、NATO諸国には無視できない脅威でアリ、15日にNATO国防相達とブラッセルで会談するマティス国防長官にとっても新たな課題である
●前NATO司令官のBreedlove退役空軍大将は、この展開を「何も対応しないでは済まされない」と警告しているが、同時に、移動式発射車両に6発づつ搭載可能な「SSC-X-8:9M729」は、配備位置の特定や検証が極めて難しいとも指摘している

●匿名のトランプ政権高官は、配備位置について言及しなかったが、「SSC-X-8:9M729」に似たミサイルが中央ロシアに配備されたとの推測報道がある


INF全廃条約とその後の経緯
INF-USRU.jpg1987年12月8日、当時のレーガン大統領とゴルバチョフ首相によって署名された同条約は、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するもの。
●翌年6月1日に施行され、米側はGLCMとPershing IIミサイルを、ソ連側はSS-20中距離弾道ミサイル等を両国総計2689発廃棄することに合意した

条約締結の経緯を復習すると・・・
--ソ連が80年代初め、SS-20という中距離ミサイルをソ連の欧州部と極東部に配備した。
--当時のドイツのシュミット首相が、ソ連がこのミサイルで欧州の諸都市を攻撃した場合、米はNYやDCを犠牲にする覚悟で、米本土からソ連の諸都市を攻撃してくれるのかとの問題提起をして、このSS-20の配備で米と欧州の安全保障がデカプリング(切り離し)されることを問題視した。
INF-inspe.jpg--米国は西ドイツの主張などを踏まえ、結局核搭載パーシングーⅡと巡航ミサイルの欧州配備に踏み切った。それを梃子にSS-20の廃棄をソ連に要求した。紆余曲折があったが、中距離核ミサイルをグローバルに全廃することで米ソは合意した。

●しかし2代目ブッシュ政権時(2001~09)、露のイワノフ国防相は、ロシアが中東の周辺国からの脅威に直面しているとし、同条約の破棄の必要性を示唆
●一方で同ブッシュ大統領は、NATOは同条約を重視し、また同条約破棄によるロシアの軍拡でアジアの米国同盟国も危機感を募らせる恐れがあることから、条約破棄には消極的であった。

2008年4月にプーチンがINF条約存続について疑義を出している。ロシアは中国と北朝鮮と国境を接しており、イランにも近いので、この問題を我々以上に深刻に考えている。そしてこの2008年から「SSC-X-8」(射程300~3400km)の開発が始まったとされている

Pershing II.jpg2013年5月、米国務省の軍備管理担当だったGottemoeller氏は、ロシアによる条約違反の中距離ミサイルの開発を初めてロシア側に訴えた
2013年6月、プーチン大統領は再び、「ほぼ全ての隣国が中距離各ミサイルを開発している」と危機感を訴え、ロシアによる条約破棄は「控えめに言っても議論対象だ」と発言した

2014年、オバマ政権が懸念する地上発射巡航ミサイルの試験が行われた。オバマ政権はロシアに条約違反の恐れのあるミサイルだと訴えたが、それ以上は何もせず、ロシアは開発を継続した
2015年9月2日、ロシアは巡航ミサイルSSC-X-8(9M729)の発射試験を実施。これは条約範囲内の射程500kmの核搭載可能ミサイル「Iskander:9M728」を改良したミサイルで、Iskander配備当初から射程の延伸は難しくないと関係者が言及していた
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トランプ大統領の「核」と「通常兵器」両方の軍拡ツイート等からすると、この条約が廃棄に向かう可能性がオバマ時代よりかなり高まっていると考えられます。
もちろん、いま米国の出方が最も注目されている対ロシア外交の方針次第ですが、INF全廃条約の行く末にも注意しておきましょう

SS-20.jpg同条約が破棄された場合、ロシアが中距離核ミサイルを持つ脅威と、中国などが中距離ミサイルを展開している現状への対応策をどうバランスして考えていくのか、国際情勢判断としても政策問題としても難しい問題ですが、独立国日本として、避けて通れない問題となるでしょう

三浦瑠璃女史が「核兵器の持ち込み禁止」の見直し議論を提案しているのも、北朝鮮問題だけに止まらず、核拡散全般やこの辺りの問題も含めて考える必要がありそうです

それにしても・・・トランプ政権周辺からの情報リークは「ダダ漏れ」状態とも言われてますが、大丈夫でしょうか???

INF条約関連の記事
「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

Iskander:9M728の配備関連
「ロシア飛び地にミサイル配備?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「プーチンが展開否定も???」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19-1

トランプ政権はNPR(核態勢見直し)をどうする?
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

三浦瑠麗女史の「核持ち込み容認論」
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/02/13/153801
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トランプ政権はNPR(核態勢見直し)をどうするのか? [安全保障全般]

核兵器関連のトランプ発言&ツイート

12月22日と23日
「世界の核兵器情勢を踏まえれば、核戦力を大幅に強化拡大する必要がある」
「核兵器の軍拡競争だ」「米国は対抗する国全てを圧倒するであろう」

1月27日の大統領令
「国防長官にNPR(Nuclear Posture Review)を命じる。米国の核抑止力が、最新で強固で柔軟性に富み、強靭で即応態勢に有り、21世紀の脅威を適切に抑止し、同盟国に信頼されるモノであるような態勢を検討させる」

B-2takeoff.jpg8日付Defense-Newsが、上記のトランプ大統領指示等を受け、米国の核兵器やその体制が今後どのように変化する可能性があるのか、NPR検討をマティス国防長官らがどのように進めるのか等々について、様々な専門家の見解を紹介しています

現時点で断定的に言える材料は無いが、そんなに劇的な変化が可能とも思えない一方で、不拡散態勢や核実験禁止条約に手を付ける可能性も否定できないし、ご覧の通りのトランプ大統領なので注視する必要がある・・・と言った雰囲気です

ただし、前回2010年のオバマ政権時のNPRが基本としていた「3つのNO」、つまり、「新たな弾頭、新たな能力、新たな任務は追及しない:no new warheads, capabilities, and missions」方針は、北朝鮮やイランやパキスタン等の動向からしても議論すべき・・・との雰囲気はあるようです

前回のNPR発表は、3回に亘る発表延期の末、オバマ大統領誕生から1年3ヶ月も経過後に行われており、脅威の変化や核拡散の中で抑止全体を議論する困難な作業で、オバマ時代からの大転換を臭わせるトランプ政権下での作業を考えると、時間がかかる可能性も大です。実際、NPR検討を命じる大統領令も、特に期限を設けていません

長い記事なので、いろんな視点を少しずつ、何時ものように独断と偏見で「つまみ食い」紹介を試みます。

8日付Defense-News記事によれば
B-52-UK.jpg●NPRを命じる大統領令は、マティス国防長官に大きな裁量の余地を残しており、誰がどのように何時まで等の点に関し、特段指定していない。従って大統領は国防長官に任せたのだと見る専門家もいる
●どのような変革が予期されるかについては種々の意見はあるが、オバマ政権時代に方向付けられているB-21爆撃機、次期戦略原潜、ICBM後継設計に大きな変更は無いだろうと多くの専門家や関係者は見て居る。

●トランプ政権は全ての既定政策を吟味するだろうが、現在国防省内で検討されている新たな指揮統制システムや核搭載巡航ミサイルは、色々と話題を呼ぶ可能性がある
●また、オバマ前政権が核兵器の削減を追求していた方向とは異なり、脅威の状況から、「抑止の重要性や優先度」をより重視する方向に向かう可能性を、トランプ政権の安保関係スタッフは示唆しているようだ

B-61 LEP.jpg●まだ多くの関連スタッフが埋まっていないことから予測が難しいとしつつも、新政権は不拡散態勢よりも抑止と戦力近代化を重視し、「ブッシュ政権時のように、実現可能性が薄くても、あくまで理想の強固な核戦力態勢を目標に掲げる可能性が、マティス&Work体制にはあり得る」との見方もある
●別の専門家は、オバマ政権時の核戦力近代化計画を前倒し推進する方向を予測し、核弾頭近代化を担うNNSAへの予算増額を優先するのではと指摘している。具体的には、現在5種類の戦術核を2種類(W80-4 and the B61-12)に更新集約し、5種類の戦略核ミサイル弾頭を3つ(IW-1, IW-2, and IW-3)に集約する計画の加速である

昨年12月に国防科学評議会がまとめたレポートを基礎に、新たな核兵器オプションを新大統領に提示する可能性も指摘されている。2010年NPRの「3つのNO」方針から離れ、より威力の小さな核兵器や運搬手段をオプションとする構想が含まれる可能性がある

抑止概念の再検討や不拡散や核実験条約も議論に
B-21 2.jpg●7日の記者会見でGoldfein空軍参謀総長は、「全てのオプションをオープンに検討する準備がある」「弾頭数や威力の議論も問題ない」「国防省が現在構想している核兵器近代化計画の継続が議論の主対象になるだろう」と述べたが、更に続けて
●「一方で、21世紀の抑止についてより幅の広い議論を期待したい。宇宙やサイバードに戦域が拡大し、世界共通の公共財が目標になり得る時代における、抑止のあり方や核抑止の関わり方にまで議論の幅を広げる必要があろう」と語った

前回のNPRに国防省の担当次官補代理として関わったHersman氏は、実務上の論点として、ペンタゴン以外の外部有識者を何処まで関与させるかを論点としてあげている。多くの意見を聞くことでプラスもあるが、議論を複雑にして集約に時間を要すると注意喚起している。
NPRの完成時期については、トランプ大統領から具体的な指示が無いと国防省関係者も認めている。議会から早期の検討を求められるかも知れないし、2018年度予算案に反映させるためなら早期のとりまとめが必要となろう

Minuteman III 4.jpg●別の観点として、核兵器の不拡散には超党派で支持が強く、これを新政権が無視することは難しいだろうが、国際環境を踏まえ、駆け引きの材料になる可能性は否定できない
●同様に、核抑止や核開発の専門家の間では、ケリー前国務長官らが再強調していた核実験禁止条約の効力を疑問視し、同条約の存在意義を再評価すべきとの意見も聞かれる

●一方で、核非拡散の諸国間には、米国が核兵器使用の原則を堅持しない可能性への懸念が広がりつつアリ、2010年NPRの「3つのNO」変更は、不必要に不安定化を招いてコストが増すだけで無く、主要な同盟国を含む国内国外の分断を招く恐れがある
トランプ大統領が核ボタンを保持していることだけでも懸念の材料となっている中、更に恐れや懸念を大きくする可能性があると、NPR検討を心配する声もある
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通常戦力の増強どころか、維持費の捻出にも苦労している米軍部隊の現状を何回かご紹介してきましたが、核兵器に関わる「忘れられた・無視され続けた」現場の状況は、更に輪をかけて厳しいのが現状です。
この対策には、今後20年間、毎年約2兆円の追加予算が必要とWork副長官が見積もっており、その捻出だけでも容易ではありません

SSBN.jpgですから、トランプ氏の「核兵器増強」ツイート等が、「大山鳴動してネズミ一匹」で収束する可能性も大なのですが、それでは再び現場の士気は「ウナギ下がり」が予想され、反動が懸念されます。

「不拡散の見直し」は日本や韓国に核武装を・・・とのトランプ発言を受けた話題でしょうが、2017年に入ってから一度も耳にしませんので、スルーして良いかと思います

ところで空軍参謀総長が言及している「抑止全般の再検討が必要」との問題認識は、日本の関係者にも注目してもらいたいモノです。
何時までも、実質的に効果の薄い対領空侵犯措置だけに「陶酔」し、脆弱性が増すばかりの「戦闘機部隊だけ命」思考では、日本の抑止力向上は図れません

戦闘機の存在による抑止効果が「ウナギ下がり」である事を良く認識し、抗たん性のある戦力構成への投資シフトや、脆弱なサイバーや電子戦、はたまた宇宙アセット代替確保等々への投資を、真剣に議論すべき時を既に迎えているはずです

前回のNPR(核態勢見直し:Nuclear Posture Review)
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

米新政権の国防予算を考える
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10

空自OBが対領空侵犯措置の効果を疑問視
「対領侵中心の体制見直しを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

米軍「核の傘」で内部崩壊
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27

「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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映像と5つの視点で学ぶ:核兵器 [安全保障全般]

atomic city3.jpg米軍事情報サイト「Military.com」が提供しているシリーズ「5 Things You Don't Know About」をまたまたご紹介します
このシリーズは軍事装備品を映像と共に、5つの豆知識から学ぼうとするもので、これまで7つほどご紹介してきました。過去の記事は末尾をご覧下さい

今日のテーマは「核兵器:Nuclear Weapons」で、2016年7月に作成されたものですが、いつものように同テーマに5つの話題でアプローチします。聞き取りの間違いにはご容赦を・・・

5つの視点は旧ソ連核兵器の再利用、ラスベガスは核実験観光で儲けていた、未だに原因不明の核爆発、現在の核弾頭保有数、そして米軍核兵器を保管・使用可能な他国について です。

映像は約7分です


話題1:旧ソ連核兵器を米国は核燃料に
米ソの戦略兵器削減交渉の結果、両国が核弾頭の削減に合意したが、あわせて旧ソ連の核弾頭を原子力発電のウラン燃料に転換し、米国内で使用するプロジェクトが1993年にスタートした
1993年から2013年まで行われたこの「メガトンTOメガワット」プロジェクトにより、旧ソ連の核弾頭2万発が核燃料に転換され、米国の発電所で使用されている

話題2:ラスベガスは核実験観光で
atomic city.jpg1951年から1963年の間に、ラスベガスから約65NM離れた核実験場で計200回の核実験が行われたが、これは3週間に一度の頻度であった。
核実験によって発生する「キノコ雲」がラスベガスから視認できたので、「Atomic City」の名で町を宣伝し、カジノやホテルは「核実験キノコ雲見学」を売り物に観光客を集めたほか、
●当時ラスベガスには、核実験に参加する兵士を歓迎するネオンサインや、キノコ雲との記念撮影が人気で、「Atomicカクテル」まで現れた時代だった

話題3:未だに原因不明の核爆発
atomic city2.jpg●核実験による大気汚染や「死の灰」が問題視され、やっと1963年に関係国で部分的核実験禁止条約が締結されて核実験が制限されるようになった
●これを受け、米国は監視衛星「ディーラー」等で核実験の監視体制を整えたが、そんな中で1979年9月にに原因不明の「閃光」「振動」等々が「インド洋」で観測され、その特定に全力を挙げた
●当時の米国情報機関は、諸情報から当該爆発が核実験だと断定したが、現在に至るまで、誰がこれを引き起こしたのかは不明のママである

話題4:各国の核弾頭保有数
●現在、世界には約16000発の核弾頭が存在している。最も多く保有しているのがロシアの7700発、ついで米国が7100発、フランスが3000発、以下、中国と英国が各250発等と言われている(まんぐーす注:合計があわないのですが、解説はそうなっています)

話題5:米軍核兵器を保管・使用可能な他国
米国の核弾頭(戦術核兵器)が、以下のNATO諸国に分散保管されており、保管する各国は有事に米国の承認を得て、各国の戦闘爆撃機機に搭載して同兵器を使用できることになっている
●現在この形態の核弾頭を保管している国は、ドイツ、イタリア、ベルギー、トルコ、オランダの5カ国である。昨今のトルコ情勢の流動化を受け、トルコ保管の核兵器の安全性が最近議論になっている
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「核実験観光」ですか・・・時代に流れを感じますねぇ・・・
しかし、1979年9月の「なぞ」は何とかならないんでしょうか・・・・・・。誰か取り上げて欲しいですね・・・。イスラエルとか南アフリカとかが疑惑の対象らしいですが・・・

なかなか興味深い「5 Things You Don't Know About」シリーズでした!!!

映像で5つの視点から学ぶ
「米海軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-27
「米海軍潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26
「火炎放射器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-2
「負傷者救出ヘリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-07

「B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「AK-47ライフル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-28
「原子力潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1

映像で見るシリーズ
「12㎏の兵器搭載地上ロボット」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-09
「防空&ミサイル防衛の融合IAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27-2
「威力強烈:AC-130」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-06
「CASの歴史を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-19

「イメージ中国軍の島嶼侵攻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「泣ける:帰還兵士と犬との再会」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-05
「レーザー兵器試験@ペルシャ湾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13

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フィリピン大統領が米軍兵器の国内保管を拒否 [安全保障全般]

Sung Kim.jpg下記のドゥテルテ大統領発言に関し、1月31日、フィリピン駐在の新しい米国大使Sung Kim氏は米国はフィリピン内に弾薬貯蔵庫を建設する予定は当初から無いとし、兵器の貯蔵を懸念するような表現をした比大統領発言を否定した

そして同大使は、5カ所のフィリピン軍基地内に「facilities and structures」を構築する計画が2014年の合意に含まれていると説明しつつも、フィリピン指導者や国民から許しを得られなければ、その建設も不可能であると語った

まんぐーすの感想
ドゥテルテは、米軍装備がフィリピン内に「一時的」にしろ存在することで、米中紛争に巻き込まれることを毛嫌いしているのだから、弾薬庫であろうが、「facilities and structures」であろうが、反対するのだと推測します
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Duterte US3.jpg1月29日、フィリピン大統領はTV放映されている記者会見で、米中の戦闘に巻き込まれたくないから2014年の米比国防合意に基づき米軍が開始している米軍兵器の比軍基地内保管を認めないと語りました。そして、2014年の米比国防合意の破棄も示唆しました

当該会見は、フィリピン大統領が比軍と比警察幹部などの治安機関幹部との会議後に行われた会見であり、記者からの質問にその場で答えたものか、自ら積極的に発言したモノかは不明ですが、南シナ海近傍のフィリピン軍基地内に関連施設の建設を始めた米軍にとっては、ちゃぶ台返しの発言でしょう

Duterte.jpg2014年の米比国防合意は、米軍がクラーク空軍基地やスービック海軍基地から撤退した1990年代以降、中国の台頭を踏まえて数年の交渉を経てやっと合意した「米軍による一時的なフィリピン軍基地の使用」を認め、他の軍事協力も併せて推進する内容で、米国にとっては悲願の合意でした。

その後、比の最高裁判所まで「合意」の合憲性が争われ、やっと昨年ぐらいから米軍の比基地での活動が始まった矢先であり、米軍との軍事演習の中断などの動きもドゥテルテ大統領は見せていたものの、根本合意の破棄まで言及されては溜まりません。

1月30日付Mmilitary.com記事によれば
●1月29日、フィリピンのドゥテルテ大統領はTV放映記者会見で、米中間に生起する戦闘に巻き込まれる恐れがあるので、2014年の米比国防合意に基づき米軍が開始している米軍兵器の比軍基地内保管を認めないと発言した
●また同大統領は、米軍が比軍基地内に兵器保管施設を設けたなら、「米軍による一時的なフィリピン軍基地の使用」を認めると規定した2014年の米比軍事合意を破棄することを検討するとも発言した

Duterte US.jpg●ドゥテルテ大統領は、「米軍は兵器の持ち込みを始めようとしているが、私は米軍に対し止めろと通告している。私は兵器の持ち込みを許さない」と明言した
●2014年の米比国防合意は、両国の国防協力を定めた「EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement」も含めて結ばれたが、比大統領はその合意の多くから引き始めている

●1月26日、フィリピンのLorenzana国防相が、今年早い時期に同合意で規定された施設を米軍が建設開始する予定だと述べたばかりであった。そして合意に記されていた3箇所の比軍基地名に触れ、兵舎や装備保管庫の建設が始まると説明していた
米側政府関係者は、これまでのところ、同大統領発言に対しコメントしていない
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Duterte US2.jpgドゥテルテ大統領は、トランプ政権の対フィリピン政策だけでなく、南シナ海政策にまで「強行偵察」「威力偵察」を実施してくれているようにも見えますが、米側の反応に興味津々です。

特定の中東諸国からの入国拒否問題で、最優先事項である対ISの有志連合国からも反発の声が上がるトランプ政権ですが、対中国の前線国家であるフィリピンとの関係をどう考えるでしょうか?

似たタイプの人物としてメディアが取り上げる2国のリーダーですが、似たもの対決は同様な方向に向かうのか・・・引き続き注目したいと思います

米比関係の記事
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11
「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08

「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

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情勢更に不可解:露とトルコが対IS共同航空作戦!? [安全保障全般]

Syria Turkey.jpg18日付BBC等の報道によれば、トルコ国境近郊(約20km)のシリア都市「Al Bab」のISIL拠点に、史上初めてロシア軍とトルコ軍の攻撃機18機が共同作戦で空爆を行い、合計36目標に攻撃を加えた模様です

この付近は、昨年12月にトルコ地上軍が大きな損害を受け、米国の支援を受けてトルコ軍が反撃を試みていた場所であり、米国とロシアとトルコが対ISILとの一つの目標に向かって行動したと考えられれば良いのですが、誰もそう考えてはおらず、「情勢の複雑さが増した」状態です

最近トルコは、NATO加盟国でありながらロシアへの接近を強め、逆に米国には冷たい姿勢が増しており、米国との同盟の象徴で極めて重要なトルコ南部のインジュリック空軍基地の米空軍への嫌がらせ的な行為が増えている状況です

Syria Turkey2.jpg更に1月9日の週には、ロシアを牽制するため3000名の米陸軍部隊が、戦車や装甲車と共にポーランド駐留を開始したところであり、ウクライナ事案以降のNATOとロシア関係は冷え込んだままです。

一方で、16日にはカザフスタンのアスタナで、ロシアとトルコとイランが、シリア和平議論を行ったタイミングだけに、この共同作戦が注目を集めています

18日の攻撃対象や成果、このように大規模な空爆作戦になった理由、なぜロシアが、なぜトルコと・・・などなど、疑問の種は尽きませんが、取りあえず事象や関係者の発言をご紹介しておきます

18日にGoldfein米空軍参謀総長は
Goldfein1-4.jpg●(AEIでの講演で本件に触れ、)この両国の動きは事態を複雑にするものだが、具体的に懸念事項が生じているとは承知していな
●これまでもロシアの行動には「言行不一致」が見られ、ロシアはISILへの攻撃を行っていると主張しているが、実際にはアサド大統領のシリア政権支援を行っている

●この作戦が「共通の敵に向けたもの」であれば問題は生じないが、共通の目標から逸脱する行動はより複雑な問題を生み出す
米軍の航空作戦統制センターとロシア軍側との連絡電話ラインはこれまで良く機能しており、ロシア語を話せる米軍大佐が、ロシア軍機の空域使用に伴う危険回避や緊張緩和に貢献している
●同大将は「これまでの所、ロシア軍機の活動は米側有志連合の作戦に影響を与えていないが、世界中でシリア上空ほど複雑な場所はなく、ロシアが行動方針を変化させれば複雑さが増すことになる」と言及した

18日付BBC報道によれば
Su-24 Russia.jpg当該地域は過去5ヶ月に渡り、トルコ軍とISとクルド勢力が交戦を続けており、同じ週に米軍機もトルコ軍と協力しつつ空爆を加えていたエリアである。
●約1年前に当地域周辺で空中戦を行ったトルコとロシアが、そしてNATO加盟国トルコと非加盟国のロシアが、共同航空作戦を行うのは極めて異例である

●この作戦発表はロシア国防省が行い、トルコ軍関係者が「トルコと連携して行った」と認めたと報じられているが、どの程度共同作戦だったのか、相互に連携して調整した目標を攻撃したのか疑問の声もある
トルコ側の主な目的にはクルド勢力の北上牽制があるが、米側は対ISにクルドを支援しており、情勢を更に複雑にしている

F-16 turkey.jpg●ロシア報道官の中将は、空爆に参加したのはロシア軍(4機のSU-24、4機のSu-25、1機のSu-34)とトルコ空軍(各4機のF-16とF-4)だとリストを明らかにし、細部には言及せず36目標を攻撃したと発表した
●トルコ軍はこの共同作戦前、昨年12月にロシア軍機による最初の対IS空爆が当該地域に行われ、トルコに対する支援作戦だとの認識を明らかにしていた、

昨年12月にトルコ軍は同地域で、12名の死者と33名の負傷兵を1日で出す国境付近で最大の被害を受けており、クルド勢力への警戒を強めており、当地域の不安定さは今後も継続するだろう
トルコ軍は、本作戦によりクルド勢力の進出を抑え、IS駆逐に貢献できたと評価し、ロシア軍報道官は対IS共同作戦は極めて効果的だった」と述べている
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Syria russia.jpgロシアとトルコが共同空爆で、米国が対ISのため支援するクルド勢力を叩いた可能性も考えられますが、両軍それぞれが好き勝手な目標を攻撃しながら、米国への当てつけに「共同作戦」をアピールしたのかもしれません。あくまでも「ISIL攻撃の共同空爆作戦」だと言い張りながら・・・

20日にトランプ大統領が就任し、マティス国防長官も承認されました。
しかし依然として米国政府は政権移行中であり、この間隙を利用しようと考える勢力には格好のチャンスです。この共同作戦モドキの背景や狙いは不明確ですが、米国やNATOの対応が後手に回っているのは確かでしょう・・・

リビアのISIL拠点にB-2爆撃機を派遣した作戦はお見事でしたが、継続的になすべき事をなさなければ、あっという間につけ込まれると言うことです。中国や北朝鮮にも注意しないと・・・

米国とトルコ関係の関連
「トルコがF-35追加購入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01-1
「駐トルコに家族帯同禁止や特別手当」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12

「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31

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米と比が細々とHA/DR訓練を開始 [安全保障全般]

Eagle Vision3.jpg12日付米太平洋空軍web記事によれば、16日から25日の間、米軍(陸軍&空軍)とフィリピン軍がフィリピンのクラーク空軍基地でHA/DR(人道支援/災害復旧)の訓練を行っているようです。

ただし短い記事は「フィリピン政府の招待」を受けたものと表現しているものの、「訓練」との用語を使用しておらず、専門家の交流(Exchanges)との表現になっており、米軍の商用衛星画像分析装備を持ち込んで使用し、その様子をフィリピン軍にも見せて参考にしてもらう程度の内容のようです。

昨年6月にドゥテルテ大統領が就任後、比大統領が米国への反発を強めて中国に接近し、米軍との軍事演習は全て中止してHA/DR訓練だけにすると打ち出して米側が困惑しています。

Duterte5.jpgまたトランプ氏の当選を受け、ドゥテルテ大統領の対米姿勢に変化の兆しが見え、昨年11月の米大統領選挙後にハリス太平洋軍司令官がフィリピンを訪問して軍事関係の改善を図ろうとしましたが、これも不発で、昨年12月にはフィリピン国防相が、航行の自由作戦で南シナ海を航海又は飛行する米軍艦艇や航空機のフィリピン施設使用を、認めない可能性が高いと発言していました。

12日からの安倍首相のフィリピン訪問は、比大統領の故郷であるダバオ市を訪問し、日本との関係が深い同市民から熱烈歓迎を受ける「感慨ひとしお」の訪問となりましたが、漏れ聞こえてくるところによれば比大統領は、「米兵はフィリピンにいらない。自国で自国を守りたい」旨の発言をしたとかで、米比関係に光明は見えないようです

12日付米太平洋空軍web記事によれば
Eagle Vision.jpg●1月16日から25日の間、米陸軍と米空軍はフィリピン政府の招待を受け、フィリピン軍と比のクラーク空軍基地でHA/DR 関連のSMEEs(Subject Matter Expert Exchanges)を実施する
●今回の交流では、米空軍がフィリピンに持ち込む移動用衛星画像分析システム「Eagle Vision」の活用が中心となる

●「Eagle Vision」はリアルタイムで商用衛星画像を入手して分析に使用でき、米太平洋コマンド地域における人道支援能力を大きく飛躍させる装備である
●同装備によるHA/DR 関連能力の向上に加え、この交流は、2国間の相互運用性を強化し、長年に亘る2国間の同盟関係を引き続き強化するものとなる
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「Eagle Vision」は主に州軍が運用しているようで、種々の写真から推測すると、パラボラアンテナの大きさは折りたたんでC-17輸送機に搭載できそうな規模です。

Eagle Vision2.jpg操作や分析車両を含めて5つのパーツから構成されているようで、台風や竜巻の被害現場に24~48時間程度で展開し、現場密着で衛星画像情報を提供可能なようです

米太平洋空軍web記事は、米軍から派遣された人員数や「交流」の細部にも記事は触れておらず、記事の末尾を「この交流は、2国間の相互運用性を強化し、長年に亘る2国間の同盟関係を引き続き強化するものとなる」と結んでいるものの、シャビーで哀愁漂うものとなっています

そう言えば、昨年4月にカーター国防長官が大々的に打ち出し、当時はF-22戦闘機のフィリピン展開が間近と報じられた「航空戦力ローテーション派遣」も、昨年9月に2機のC-130が派遣されたのを最後に「ぷっつり」途絶えています

Abe Davao.jpg安倍首相は訪比時の会談で、「米国との関係は重要」との認識で一致したと発表されていますが、なかなか実態が伴ってきません

ドゥテルテ大統領は市長時代地元に、戦前戦中戦後に活躍した日本人の慰霊碑を自費で建立し、大規模な慰霊祭まで行ってきた親日家ですが、米国には根強い不信感があるようです。

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

米比関係の記事
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11
「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08

「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

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イスラエル目線で2017年の中東を [安全保障全般]

Netaniaf.jpg元旦付Defense-Newsが、恐らく1日に行われたイスラエル国防省(又は国防情報部)関係者による記者団に対する「2017年予想見積もり」ブリーフィングの様子を紹介しています。

「A senior defense official」が語ったと言うことで表現が微妙ですが、全般にイスラエルが戦争に巻き込まれる可能性は低いと「cautiously optimistic」に見積もりながら、今日の中東では、双方が相互に「戦争したくない」と考えている時に地域の力学で緊張がエスカレートしがちだと警戒しています

イスラエルの脅威分析ではお馴染みの、北のレバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、西岸のパレスチナ自治政府PA、そしてシリアやイランが順次分析に現れますが、ロシアにも言及しているところが興味深いです

最近中東専門家の間では、対ISILやソマリアやリビア等で中東が混乱し、イスラエルから世界の目が離れている間隙に、西岸地区での入植地拡大をイスラエルが急速に図っているとして厳しい非難の声が挙がっていますが、当然一切触れていません

馴染みのない方にはご興味のない話でしょうが、中東を無視は出来ませんので、勉強のため取り上げます

元旦付Defense-News記事によれば
Nasrallah.jpg●イスラエルの不安定を招く可能性の一番高いのは西岸地区のPAとガザ地区のハマスであり、これには引き続き警戒の手を緩めるわけには行かない
イスラエルと接する一番強力な戦力を持つのはヒズボラであるが、緊張のエスカレーションに陥らない限りは、直接対峙の可能性は低い

●戦乱で疲弊したシリアに関しては、ロシア等がそのプレゼンスを後退させた時に、イランやヒズボラがどのような動きに出るかに関し、不安は尽きない。シリアのアサド大統領に対しては有利な位置にあるが、イランとヒズボラの伸張を懸念しており、現在の混乱の着地点として恐れる方向
ヒズボラの構成員は約8000人と見積もっているが、2011年以降、既に1700名が戦死し、数千名の負傷者が出ている。それでもヒズボラはイスラエルとの戦いに備えて武装努力を継続しており、イスラエルの攻撃に備えている

Khamenei.jpgヒズボラ指導者のNasrallahは毎週のようにイスラエル征服を訴えるような人物であり、イスラエルは悠長に構えていられない
●イランに支援されたヒズボラからは目を離せない。特にヒズボラが航空機攻撃用の対空火器は、将来ロシアに対して使用される可能性もあり、機会があればプーチン大統領に助言したい。中東の安定と中東でのロシア国益を確保したいならば、ヒズボラから目を離すなと

●イランに関しては、P5と独がロシアと合意した核包括合意が、イランからの核脅威を当面の間は取り除いたが、イランのシリアやレバノンやガザや西岸のテロ組織に対する行動は、イスラエルに対する耐えることのない脅威の源泉である
●(トランプ大統領や米国の共和党政権誕生により、核包括合意が破棄されたり再交渉となる可能性に関する質問に対し、)イランがテロの源泉であり、弾道ミサイルを活発に開発しており、国際社会は「あめとむち」で対処しなければならないが、この合意は安定を改善する機会であり、この機会を逃すべきではない

Rouhani.jpgイランは5月に大統領選を迎え、イランは不安定の年を迎える。ロウハニ大統領は内政問題を訴えるだろうが、ハメネイ最高指導者や革命防衛軍は「革命の輸出」を主張するだろう。
昨年6月の議会選挙では現大統領側が有利に戦ったが、依然として最高指導者側はシステム全体のコントロールを握っている。一方で最高指導者側も国民への圧力作用の限界を知っている
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イスラエルが得意の「プロパガンダ」と見るのも結構ですが、イスラエルがイランとの核合意を一定評価している点が興味深いです。あれだけ核合意に反対していたのに・・・。トランプ氏に中東をかき回されてはたまらない・・・との思いが先行しているのでしょうか・・・。

いずれにしても、相変わらず激動であろう2017年を見る視点の一つとしてご活用下さい

イスラエル関連の記事
「国際消火飛行隊を提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-29
「イスラエル後に湾岸へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

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