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「北極海ブームは幻想」との見方 [安全保障全般]

北極海航路1.jpg雑誌「軍事研究」2017年5月号が、文谷数重氏による「幻想に過ぎぬ北極海ブーム」との論考を掲載し、北極海の「氷」減少による北極航路の活性化やそれに伴う北極資源開発は、日本にとって(中国にとっても)積極的に関与する意味がほとんど無いとの意見を紹介しています

もちろん、北極海沿岸国にとっては航路の活性化はそれなりの意味があり、将来軍事的な側面に影響を与える可能性は依然あるのですが、それ以外の国にはメリットは少ないと筆者は主張し、何となく雰囲気が醸成されつつある「北極海ブーム」を煽る経済誌やマスコミ、またそれに載せられて前のめりな日本政府の姿勢も戒めています。

具体的には、北極航路の「スケールメリットの欠落」、「厳しい気象条件」、「輸送需要との乖離」を理由に挙げ、沿岸国以外にとって有効活用が難しいと説明し、徐々に問題点への理解が進みつつアリ、「北極航路は期待はずれに終わる」と断言しています

まんぐーすも「北極海ブーム」を冷静に見るため、基礎的なことをお勉強しておきたいと思います

北極航路は「スケールメリットが欠落」
北極海航路2.jpg北極航路は浅瀬があるため大型船の運航が出来ず、スケールメリットが享受できず運送コストが高くなる。具体的には水深13mのサルニコフ海峡がネックになる
●海運の比較基準単位(TEU:20フィートコンテナが何個積載可能か)で言うと、南回りでは2万TEU以上の輸送船が出現する中、北極海航路では4千TEUが限界

●船舶の搭載量を2倍にしても、船の価格、燃料費、乗員人件費等を総合しても経費は1.58倍に程度で収まることから、輸送距離の短さを勘案しても、スケールメリットを生かせない北極海航路は南回りに太刀打ちできない
横浜からハンブルクまでの海運経費をコンテナ1個あたりで比較(2万TEUと4千TEU使用で換算)しても、北極海航路の経費は、スエズ運河経由(運河使用量含む)や喜望峰周りに太刀打ちできず、パナマ運河経由よりも高くなる

厳しい気象条件
北極海航路5.jpg北極海航路の気象条件は不安定で厳しく、安定運行できない。また冬季は使用できないのも大きい
夏の間も安定しない。年による氷や天候の変動が大きく、北極海航路の使用可能期間の予測が難しい。また夏季でも高緯度帯にある北極海航路は、不安定で厳しい気象条件に陥りやすく、濃霧の影響も懸念される

●この様に定期運行と相性が悪いことは致命的海運は決まった曜日の決まった時間に出航し、決まった曜日に目的地や寄港地に到達しなければ港湾施設利用上の問題が生じるし、信頼関係が築けない
使用できるときだけ北極海航路を柔軟に使用するとの考え方では、海運業界のなかでは成功が見込めない

世界の輸送需要と航路の乖離
北極海航路3.jpg東西海運の世界需要の柱は、中国沿岸部から欧州のロッテルダムやアントワープ港への輸送が圧倒的だが、この2地点の距離は北極海航路は1.6万kmで、スエズ経由は1.8万kmであり、距離短縮のメリットも北極航路にほとんど無い
加えて北極航路は砕氷船や流氷を避けての航行で速度が落ち、到達時間は同じか余計に必要な可能性も高い。北極海航路最大のメリットである日数短縮も怪しいのが現実だ

●また南回りでは、シンガポール等の海運のハブに寄港して荷物を入れ替えたり加えたりする事で、船舶の輸送容量を最大限効率的に活用可能であるが、北極海航路にはその様なオプションは無い
●更に速度を追求して北極海航路を最大限生かすにしても、ユーラシア大陸の鉄道輸送もライバルとなる。鉄道では途中で積み替えもあるが、それでも北極海航路より早く、毎日のように出荷も可能となる
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以上の様な海運上の北極航路と他の南回り航路との比較だけで無く、「北極海ブーム」のよりどころである「未開の資源開発」にも筆者は厳しい目を向けています。

北極海航路4.jpg具体的には、資源開発の困難性や資源国際価格の低迷等から、「月に核融合用のエネルギー源が豊富にある」との辛辣な表現で、埋蔵は確認できても、コスト的に採算の合う採取・輸送・利用する方法が無いと言い切っています

そしてこの様な現実的な視点が現場や専門家ではかなり共有されているのに、国土交通省以上の政府で認識が不十分だと訴えています。

以上のお話しは、日本や中国の海運業からの視点でアリ、安全保障上の視点からは別の見方もありましょうが、「知らなかった・・」お話しなどで取り上げました

あわれ米国の砕氷艦
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

北極圏:米国防省と米軍の動き
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26

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