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第9回中国安全保障レポートは「一帯一路」 [中国要人・軍事]

「核心的利益を追求する中国の行動は、周辺諸国との摩擦を高め、アジアの地域秩序に関する中国戦略は、必ずしも順調ではない」

2019Report中国.jpg1月30日、防衛省の防衛研究所が、第9回となる「中国安全保障レポート」を発表しました副題として「アジアの秩序をめぐる戦略とその波紋」を掲げ、日英中の3か国語で全文が提供され、防衛研究所webサイトで無料公開されていますので、是非ご覧ください。

このレポートは、世界に大きな影響を与えつつある中国の戦略的・軍事的動向を分析し、「あくまでも執筆者の個人的見解で、防衛省の公式見解ではない」との注釈付ながら、実質的には防衛省の見方を国内外に発信するためのものです

記事末尾の過去レポートの紹介記事が示すその時々の中国を表現するテーマを掲げて、中国の動向を分析しており、レポート本文中には、本レポートの内容を基に諸外国の研究機関との意見交換を行っているとの記述も見られます。

one belt one road5.jpg今回のテーマは「一帯一路:one belt one road」や中国の対外政策で、膨大な人口を背景にして魅力的な市場となっている中国が、その経済力をテコに周辺諸国に対して、「真綿で首を締める」様な「協調&強硬路線」を採っている様子を紹介しています

レポートの構成は以下の通りでまず全般状況を概説し、次に地域ごとの様子を取り上げる形をとっていますが、本日は各章の概要をレポートの要約部分から「ちらり」とご紹介します。

第1章 既存秩序と摩擦を起こす中国の対外戦略
第2章 中国による地域秩序形成とASEANの対応
第3章 「一帯一路」と南アジア――不透明さを増す中印関係
第4章 太平洋島嶼国――「一帯一路」の南端

第1章 既存秩序と摩擦を起こす中国の対外戦略
one belt one road.jpg●習近平政権は、「一帯一路」に代表される協調重視の「平和発展の道」と、強引な海洋進出に見られる対立もを辞さない「核心的利益の擁護」という2つの対外方針を同時進行している。
●更に中国は、「中国の特色ある大国外交」を標榜し、中国の発展途上国への発言力強化で国際秩序の改編を目指している。

●こうした中国の動きは、米国や先進国の警戒を呼び、途上国の間には経済合理性や透明性に欠けてる「一帯一路」構想への疑念が拡大している
●更に「核心的利益」を追求する中国の行動は、周辺諸国との摩擦を高め、アジアの地域秩序に関する中国戦略は、必ずしも順調ではない

第2章 中国による地域秩序形成とASEANの対応
one belt one road3.jpg●ASEAN諸国は、台頭する中国に「関与と牽制」、「経済と安全保障」、「中国と米国」といった多様で柔軟な姿勢で対応してきた。中国は、経済的影響力と安全保障を積極的に結びつけ、南シナ海問題などでASEANを中国の意向に従わせようとした。

●「一帯一路」での中国の支援攻勢にASEANは積極的に反応し、ASEANが進めるインフラ整備に中国が大きく寄与することで、ASEANへの中国の政治的影響力は拡大している。中国は「台頭」を超え、地域秩序の「中心」と化しつつあるという意味で、両者の関係は新たな段階へ到達している。
しかしマレーシア新政権による「一帯一路」関連プロジェクトの見直しが顕在化するなど、ASEANの対外戦略の本質は均衡にあることが、2018年にはあらためて明らかになった

第3章「一帯一路」と南アジア―不透明さを増す中印関係
one belt one road2.jpg●「一帯一路」で進む南アジア諸国への中国の経済的関与は、地域での中国の存在を、地域大国インドを上回る支配的地位へと押し上げ得る。インドは警戒感を抱き、「一帯一路」を経済的なプロジェクトではなく政治的・戦略的意図を帯びたものととらえて、域内諸国への関与強化、多国間連結性構想の推進、域外主要国との連携といった対抗策を強めてきた。

●一方で中国は、「一帯一路」にインドの協力を得たい思惑や、ハンバントタ港引き渡しを受けた「一帯一路」のイメージ悪化に対処する必要性から、インドに譲歩する姿勢を見せ、インドも応じる形で、2018年4月の中印首脳会談で関係の「リセット」が行われた。
●しかし、南アジア諸国での中印間の競争は今後も続き、長期的にはそれが、これまで総体的な中印関係が備えてきた、「管理された対立」としての性質を蝕んでいく可能性が高い

第4章 太平洋島嶼国――「一帯一路」の南端
one belt one road4.jpg●中国は「一帯一路」における「21世紀の海上シルクロード」の南端を太平洋島嶼国と定め、近年これらの国々への支援を大幅強化している。島嶼国側は、経済発展のため基本的に中国支援を大いに歓迎し、「一帯一路」構想への参画にも積極的である。

●現在、中国の島嶼国への安全保障面での関与は、主として2国間レベルで進められている。中国が中長期的には戦略的な進出を始める可能性は否定できないものの、中国はまず同地域において経済権益の確保と、経済力を用いて政治的影響力を高めることに注力しているようである。
●島嶼国への中国進出に対し、関係国の警戒感は高まっている。豪州やNZは、自らの影響力の相対的な低下を懸念している。同地域に領土を持つフランスも、警戒感を強めている。
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日中関係改善(米中対立と反比例し)の機運の中で、こっそり発表された印象が強いです。

中国という多様な側面を持ち、日本との利害関係も複雑な対象を報告書にまとめることは、防衛研究所のような公的研究機関でないと難しいと思います。

one belt one road6.jpg企業や財団系のシンクタンクが専門家を集めてレポートをまとめようとしても、個性豊かな断片レポートの寄せ集めになりがちですが、緩やかながらでも組織的統制がある防研のような組織は、全体んバランスや視点を整えることが可能かと思います

もちろん、防衛省という看板を背負っている関係上、「角」がとれた表現に納まっている部分もありますが、日本語で読める得難い資料ですのでご活用ください

注:まんぐーすは防衛研究所の関係者ではありません。誤解されている方がいるようですが・・・

防衛研究所の同レポート紹介webサイト
http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html

過去の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1

4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

防衛研究所が4年かけ取り組んだ大規模研究プロジェクト
全12章の大作:「フォークランド戦争史」
http://www.nids.mod.go.jp/publication/falkland/index.html

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