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悲観的な軍需産業年次レポート2019 [米国防省高官]

1か月以上前の発表ですが
軍需産業基盤の弱体化が顕著

Industrial Base.jpg27日付Defense-Newsが、5月13日に国防省が発表した「Industrial Capabilitie報告書」の概要を取り上げ、2016年から増加している兵器調達で軍需産業全体は莫大な利益を上げているが、軍需部品のサプライヤー数は減少し、調達数の不安定さや上下動により緊要な部品等を提供する零細企業の倒産や撤退が見られると警鐘を鳴らしています

また企業買収や合併によって寡占や独占によって部品供給元が減少し、結果として製品の質低下や価格高騰に繋がったり、有事の増産に対応できない状態に陥るケースが増えていると指摘しています

先日ご紹介した米海軍の造船所や艦艇修理工場の例でもありましたが、従業員の高齢化も相当深刻なようで、高齢者の定年退職に伴う熟練作業者の不足も年々顕在化していると訴えています

「いずこも同じ・・・」な感は否めませんので、軍事力の基盤を支える土台の崩壊状況を米国を例に、分野別に確認しておきましょう。
上記のような共通問題以外の分野別の課題を中心に事例を交えてご紹介します

27日付Defense-News記事によれば(分野別にご紹介)

●航空機関連
Industrial Base2.jpg---生産が長期間に及び、生産数量が限られ、高い品質を求めて高価格となる特徴から多くの課題が生起しており、全ての大規模プロジェクトに共通している
---労働者の高齢化や寡占独占による弊害は下請け企業群にも広がっており、供給元の減少やシングルソース化はリスクが拡大している

---例えば、海兵隊の輸送機を支える鋳物企業の倒産で代替部品が見つけられず、機体の製造修理があ遅れる事態となっている
---ソフトウェア技術者の確保も大きな問題となっており、今後の航空アセットがますますソフト依存度を高める中、能力の高い同技術者確保が喫緊の課題となっている

●地上システム
Industrial base2.jpg---地上システムの新規開発が激減し、現有システムの段階的改修や近代化が主流となっていることから、前線の要望事項を戦闘車両の設計に落とし込み、生産工程にまで結びつけるシステムデザインを経験したことのない技術者が一つの世代を形成しており、将来の新規装備開発要求に対応できるか懸念される

---存続が懸念される、各種自走砲や野砲、迫撃砲などの砲身を製造する企業を、国防省や陸軍がまとめて一つの組織体として運営する検討が必要
---これら複数の企業はたった一つの生産ラインしか保有しておらず、仮に海外からの大きな需要が入ったりした場合、米国の需要に対応することが難しくなる恐れがある

●艦艇建造と修理
---この分野の最大の懸念は、多くの部品や装置を単一の企業が支えている点である。能力不足、競争の欠如、労働者の技量不足と低下が、需要の不安定により悪化の一途にある Industrial Base5.jpg---4企業が7つの海軍用造船所すべてを管理している寡占体制や、高圧ケーブル、バルブ、推進部分の部材提供など独占が進んで競争がなくなっている分野が多く問題である

---労働力の高齢化や技量の問題も深刻である。米労働省の推計によれば、2026年までに本分野の労働力は6-17%減少する予測となっており、船体構造材の成形、溶接、鋳造分野は特に深刻な打撃を受け、米海軍の長期計画を支えられないだろう

●弾薬製造分野
---昨年の本レポートで大きな懸念と指摘されたのが弾薬分野だが、今年も問題の範囲と大きさに変化はない。弾薬の原材料確保と単独製造元への不安、株下請け企業の現状の不透明さ、新規設計や製造能力の喪失、有事増産能力や計画能力の不足、製造及び試験装置の老朽化など全てが深刻である

---例えば国防省製造用ミサイルに使用される起爆システムや最終誘導装置では、重要部品を製造する企業が買収合併された後に工場を閉鎖に追い込まれたが、その後2年経過するまでその事実を国防省として把握できず、部品が6か月分しか確保できなかった事例が報告されている
---別の例で、固体燃料ロケットに必要な2種類の化学物質が確保不能になり、代替品を急きょ探し回ることになった事例もある

●CBR防御装備関連
Industrial base3.jpg---CBR兵器から身を守る防護マスク、防護呼吸器、ワクチンを製造する企業の劣化が激しく、救済法(Defense Production Act Title III)に基づき公的資金を投入して体制維持を図る必要が生じるだろう
---例として、国防装備にしか使用されない「ASZM‑TEDA1吸着カーボン」は、72種類のCBR除去システムのフィルターに使用されているが、製造する企業は独占企業であり、その品質や価格を適切と判断しにくい状態にあり、製造装置も需要に応じられない状態にある。これも救済法で製造ラインを近代化する必要がある

●宇宙用システム分野
---急速に課題となる宇宙ドメインであるが、宇宙アセットに必要な構造材や炭素繊維、放射線耐性のある電子部品、放射線試験、衛星用部品組み立ての分野で零細な産業基盤が問題となっている
---また、宇宙で使用する太陽光発電パネル企業も、不十分なビジネス規模から研究開発費をねん出できず、政府の支援を必要としている。「traveling-wave tube:進行派菅」や「精密ジャイロスコープ」の鍵となる部品製造企業も存続が懸念されている

●電子部品分野
---この分野は中国製部品が世界市場を席巻し始めており、「printed circuit board」等で危機感が高まっている。米国産の生産量が2000年当時の1兆円規模から、2015年には7割減の3000億円規模に激減し、世界市場の半分を中国産が占めるようになっている
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Industrial Base3.jpg信頼する Aaron Mehta副編集長の解説記事ですが、長い報告書を短い紹介記事にしているため各分野の事情や専門用語を理解してまんぐーすには解釈や補足説明が難しく、的外れな訳や説明になっている可能性大です

なんとなく、全体の雰囲気を感じて頂ければ・・・・と思います

業界全体で「莫大な利益:massive profits」をあげていながら、重要なパーツを担う企業が困窮しているという、どこかで聞いたような構図です。寡占や独占は水が濁るんですねぇ・・・

昨年の同レポート
「米軍需産業の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1

艦艇の修理や兵たんの課題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
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